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岡倉天心生誕百五十年・没後百年・五浦六角堂再建!数々の奇行と修羅場、その裏にあった人間と美術への愛。清張自ら天心の足跡をたどり新資料を発掘し、精緻に描いた異色の評伝。
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Posted by ブクログ
岡倉天心は、「茶の本」という日本というものを 世界に知らしめた人で、法隆寺の秘仏を開き、 大観、春草を育てた人で、自ら取り立ててくれた文部官僚の九鬼男爵の 奥さんを寝取って、修羅場をくぐり、東京美術学校の校長を追放された人。 そして、美術史を編纂し、伊東忠太の建築史にも影響を与えた。 という風に、あ...続きを読むる程度の理解していたが、 松本清張にかかると、実に 人間臭い岡倉天心が、噴出する。 手法としては、原典にあたり、そこから解釈して、 天心はどのような人物だったのか?を明らかにしようとする。 最初に、東京府巣鴨病院長(精神病学の権威)への九鬼男爵の申請書から 始まるのであるが、原文そのままなので、読みづらく、 ヒーコラして、読んで、なんとなく、松本清張の原典主義が理解できた。 まず、その推薦者も、名士がずらりと並び、恐れ多いほどの プライバシーのなさに、不思議な違和感を感じる。 結局、妻初子を 病院に入れたいということなんだけど、ここまでの格式がいるのか というような、大層なものから始まる。 天心は、若くして結婚し、茶屋の娘で、教養もなく、 嫉妬心で、天心の英語の卒論を破いてしまい、 結果として短期間で「美術論」を書いて出したことが、 美術に大きく関わることになった。 その前に、フェノロサの通訳をしたことも大きい。 天心は、外国人並みの英語を操れたというから、その当時ではすごい。 松本清張は、岡倉天心の様々な事件と事例を分析しながら、 人はとかく天心を芸術家として見たがるが、東大卒の文部官僚にすぎないと看破する。 文部官僚だったから、東京美術学校長は快適だった。 確かに、天心は芸術的な先見性(着眼性)を持っていたことで、 魅了し、カリスマ性もあった。 天心は、天才的なアジテーターであり、稀有のオルガナイザーであり、 またプロデューサーであった。天心は、創造の人であり、守成の人では無かった。 得意の時は、翼羽ばたいて発想雲のごとくわくが、失意の時は何もかも投げやりになる弱い性格。 うまくいかないと、逃げ出してしまう傾向にある。 その上、天心の下半身は 継母や姪にさえ節操もない。 姪に産ませた子供を弟子に押し付けて結婚させる。 その上、取り立ててくれた男爵の奥さんを寝とる。 まぁ。自己愛パーソナリティ障害なのかもしれない。 また、自分の言い訳をあまりしないことが、ダンディと思っている。 九鬼男爵の息子 九鬼周造、息子の岡倉一雄の本から見た天心もなんと言えず、かわいそうな存在でもある。 微細に人間を暴露していく 松本清張の冷徹な目は、天心を裸にする。いやはや、すごい話だった。
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