松本清張のレビュー一覧
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新聞社の才媛たる姉信子は妹祥子に告げた行先と違う場所でバス事故死。知り合いの同乗者が見捨てたと推理した祥子は縁故採用で新聞社に入社し各界の著名人達の中に犯人がいると睨み調査するが関係者が不審死を遂げていくサスペンス。
読後感としては祥子及び周囲は信子の優秀さを褒めていたが、寧ろ妹の方が男のあしらい方(主要人物の大半が彼女に肉欲的関心がある様な動きをしている)や事件を調査する行動力が優れている。
警察でないためにアリバイ調査や罠の掛け方が上手くいかずギリギリのところで死人が発生するというのはサスペンスとして上手くできている。あまりにも手際が良いので自分は犯人が解明編まで分からなかった。最後に決着をつけるところがスッキリした。 -
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松本清張文学忌、清張忌
1958年文藝春秋連載
1959年第16回文藝春秋読者賞受賞
社会派ノンフィクション
1948年、帝国銀行で起きた毒殺事件。12人が命を落とし、現金が奪われた帝銀事件
まだ日本は、GHQの占領下にあった
当初は参考人のひとりだった画家・平沢貞通が、ある時点から犯人と断定され、死刑判決を受けるまでの経緯には、今も多くの謎が残っている
まず、事件の経過を資料に基づいて小説として再現、次に捜査や証拠への疑問を提示し、そして清張なりの推理と再考を試みている
読み終えて強く印象に残ったのは、容疑者・平沢の言動の不安定さだった
虚言癖や経歴詐称が、むしろ「犯人らしさ」を強めてしまう言動が目につく
清張も彼を無条件に擁護していないという事なのかなと思う
ただ、あいまいな証拠と不透明な捜査のなかで、なぜここまで断定できたのか―その疑問は、今も重く残る
もしかしたら 書けなかった事もあるのかもしれません -
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ネタバレ気になっていた事件。
ついに読むことができた。
タイトルに小説とついているが、
帝銀事件をそのまま描いている。
編集者があるきっかけでこの事件を調べ
まとめた形になっている。
帝銀事件は昭和23年1月26日に起こった
毒殺・強盗事件だが、
その手口があまりに手慣れていて
犯人は軍関係者だと目された。
しかし、操作は行き詰まり
名刺という証拠品から絵描きが浮上する。
物的証拠は間接的なものばかりなのに
強要された自白により
犯人とされ死刑判決を受けてしまう。
旧刑訴法では、自白を証拠とできたためだ。
この犯人はおそらく冤罪と思われる。
死刑執行はされず獄中で高齢でなくなっている。
この本は、事件の内容を
緻密に淡々と説明していて
なかなか読みにくい本ではあった。
操作資料や裁判資料をもとに事実確認をしていく。
犯人として疑わしい描かれ方をするとき
犯人かもしれないと思ってしまい、
また犯人ではあり得ないと主張されるとき
これは冤罪だと感じてしまう。
自分が簡単に説得されやすく
流されやすい存在だと気づかされた。
世論といったものも似たようなものだと思う。
GHQ統治下の時代の空気がわからないので
なんとも言えないが、この本は
事件の真実に迫ろうとする
危険も伴う作品なのではないかと感じた。
表向きは解決しているが、
本当の意味では迷宮入りしているこの事件に
問題提起する形で、小説というよりは
ジャーナリズムを感じる作品だった。
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山狭の章
昌子は夫の堀沢と妹の伶子が時を同じくして行方不明となり、安否を気づかう。2人は、作並温泉の「山狭」で帰らぬ姿となって発見される。
経済計画庁に勤ていた堀沢は、有能な人物のようにみえるのだが、日々課長らに付随するのにあくせくしているようであった。昌子は、このような夫にしっくりしない想いを抱くようになっていた。
一方、妹の伶子は、堀沢を避けていた、このような失態を犯すはずがない、と晶子は確信していた。
昌子の真相究明がはじまる、堀沢の上司の課長ら、伶子の付き合っていた年配者や女性に面談し、思考をめぐらす。
東和財政研究所に勤める吉木は、昌子がずっと気になる存在だった。物語の後半で、昌子と吉木は、やっと再会し、さまざまな謎が解けていく。
そして事件が解明される。堀沢と伶子を殺害したのは、誰か、そして事件の真相はいかに! -
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頼りにならない夫と別れた恵子が魑魅魍魎とする出版業界で味わう受難を描いた長編の後編。本作は女流作家梶村の失踪を扱うがお馴染みの殺人とはならない。殺人でないが故に警察も介入せず薄汚い工作が行われている。恵子の義侠心は涼とすべきだが相手も方法もまずかった。ここは現実社会でも参考になるだろう。
昭和30年代の古き良き世界を描いた『三丁目の夕日』という漫画があるが本作はその真逆で昭和30年代の弱肉強食世界を描いているように思う。セクハラだけではなく全てのハラスメント要素があるオールハラスメントともいうべき酷さ。男達の獣欲に閉口しそうになるが悪い意味でもエネルギーには満ちていて高度経済成長(本作は1962年の作品)の何%かの要因と言えそうではある。
ネズミの嫁入りみたいなラストだが、どういう結末かは実際にお読みいただきたい次第である。
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姑のいびりと夫の不甲斐なさから家を出た井沢恵子。かつての伝手で女流作家の家に行くが評論家大村から仕事のあてを紹介された事で魑魅魍魎な雑誌の世界に巻き込まれる話。タイトルと異なり全然美しくないように思えるが巨匠による意図か?
好色破廉恥漢な大村を始め出てくる男達が現代の価値観で言うところのクソ。連載時期が1962年と高度成長期にあたるので人権も何もなかったのだろう。仕事そのものは恵子の実力で取っているのに邪な気持ちを持つ連中が多すぎて本来の実力を発揮させないところが本当に酷い。綺麗事を並べるつもりは無いけど、こうやってせっかく輝きを持つ人物を社会的に封殺するという点で社会的殺人事件ともいうべきである。 -
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ネタバレ『砂の器』の時にも感じた、今の時代では使えない、当時だからこそのトリックに驚かされた。
結婚間もない夫の失踪、そのため夫の事情が何も分からない主人公、その中で少しずつ真相に近づいていく展開から目が離せなかった。
本多からの想いも、全く靡かないのが良かった。勝手なイメージだけれど、これが他の方が書いていると本多と道ならぬ恋…とかなっていそうだったので。身持ちの固い主人公だからこそ、まだ日の浅い夫のために駆けずり回る描写が違和感なく見られたのかなと。
ラストの沖に向かう船に乗った妻が崖の上の夫に手を振っていた、という描写がなんとも美しかった。死へ向かう残酷さが、その情景に言いしれない美しさを与えているように感じた。
なにかの後書きで、松本清張は難しい表現はあまり使わず、簡便な文体だからこそ輝く、といった意見を見たけれど、難しくない簡便な文体であそこまで美しく描写できるのは素晴らしいと思った。