【感想・ネタバレ】北の詩人 新装版のレビュー

あらすじ

第二次世界大戦後間もなくの朝鮮半島。詩人・林和は、かつて祖国を裏切り、日本警察の弾圧に屈服して日本帝国主義の植民地政策に加担したという暗い過去があった。その過去をアメリカ軍諜報機関は利用し、林和をスパイとして操ろうとする。謀略の罠に捕らわれていく林和。弾圧から逃れ北朝鮮に逃亡するも、朝鮮の北にも南にも理解されることはなく、ついにはアメリカのスパイとして軍事裁判で処刑されてしまう。イデオロギーと政治権力に押しつぶされ、現在でも南北の朝鮮文学史から完全に抹殺されている悲劇のプロレタリア詩人を描いたノンフィクション・ノベル。

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Posted by ブクログ

日本の敗戦から朝鮮半島の分断。米ソの狭間で独立を目指す朝鮮人の活動家。戦時中は転向、その経歴を握られ米のスパイとなった詩人を主役とした異色の小説。

日本の敗戦から朝鮮戦争までの朝鮮半島情勢は日本ではあまり話題になっていないように思う。エアポケット的な部分をあの
松本清張が小説にしていたことを知りさっそく購読。

スリーパーとなった男の不安。それは小さな嘘を重ね破滅に進む清張ドラマの主役そのもの。

結果として日本の敗戦のタイミングが、南北分断を招いている。祖国が分断された悲しみは日本人には理解できない、負の部分だろう。

金日成と李承晩による南北別れた独立の少し前を描いた傑作でした。
やはり清張ドラマは奥が深い。

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2022年08月06日

Posted by ブクログ

実存した朝鮮のとある詩人の存在を基に描かれるフィクション。
日本統治から解放された朝鮮半島で、独立を望む朝鮮の人々(その中でもさまざまな立場があり)とアメリカ、ソ連の大国の思惑とが交錯する。
林和という人が本当はどういう人間だったか分からないが、この小説において描かれる彼の想いや翻弄される様はリアルで、この当時こういう人がいたのかもしれないと思える。
やっと占領から解放されて自分たちの国を取り戻せると思ったのに、そこから5年で朝鮮戦争が起こり未だに平和的解決に至っていない。いつだって大国の思惑に翻弄されるのは、立場の弱い国とそこで暮らす人々なのだ。悔しい。

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2025年03月15日

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