原田マハのレビュー一覧
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『すべてが円くなるように』(原田マハ)
先日、中之島美術館のヨハネス・フェルメール展で、「真珠の耳飾りの少女」に会ってきたばかりだったので、ジャケットに惹かれて、初めて原田マハさんの小説に手を出しました。
「真珠の耳飾りの少女」が出てくるのは最初の「フェルメールとの約束」だけで、短編小説でした。それを読んだだけでやめようかとも思ったのですが、この本は単純にフェルメールの解説本ではありませんでした。
原田さんに似た美術評論家の女性が、争奪戦の激しいフェルメール展のチケットのあてがないのに、フェルメールに会いたくてオランダのアムステルダムへやってきます。そして、偶然知り合ったホテルのコンシェルジュの女性(彼女はロシアのエルミタージュからやってきていた)からチケットを譲ってもらい、「真珠の耳飾りの少女」に会えることになった物語でした。
真珠を通した7篇の物語が語られ、中には、実在の作家・森茉莉さんや、ル・コルビュジエに見出された女性デザイナー、シャルロット・ペリアンも登場しました。
森茉莉さんの小説も読んだことはなかったのですが、原田さんが書く森茉莉さんがあまりにカッコ良いので、森さんの小説も読んでみたいと思いました。
「真珠の輝きには、宝石の輝き――たとえばダイヤモンドのような鉱物の持つ鋭い輝きとは異なる繊細さがある。リタいわく、真珠は『有機的な宝石(オーガニック・ジェム)』だからこそ、ほかの宝石にはないやわらかくあたたかな光に私たちは魅了されるのかもしれない。」
とあるように、真珠をめぐる人びとの営みと美術品、センスのいい人たちが出てきて、憧れながら、読み終わるのが惜しいような気持ちで、すぐに読んでしまいました。
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Posted by ブクログ
様々な状況にあり、それぞれ悩みを抱える女性たちが、それらから独立していく様子を描いた短編が23個収録された短編集。
登場人物たちが何かから独立していく様子は、ときには再び立ち上がるような強さを、ときには重荷を手放すような軽やかさを感じさせた。
状況や悩みが様々あるのと同じように、「独立」のあり方にも色々あることをそっと教えてくれる。
また本作では、1つの物語に登場した人物が次の話の主人公になっているのが特徴的。
自分は元々、作品ででてきた人物が別の物語に出てくるという構成は、世界観の繋がりや広がりを感じられて好きだ。
この作品は20以上の短編がバトンを渡すように繋がっていて、同じ世界で皆がそれぞれの人生の主人公であるということが伝わってくる。
そのため、最後の話でそのような点について触れられていたように思えた箇所があって、心が温かくなった。
自分の周りの人たちのその先にも、様々な繋がりが続いているのだということに、前よりも少しだけ思いを馳せることができた作品だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ特に印象に残ったのは、テオが兄ゴッホを献身的に支え続ける姿だった。金銭的にも支え続ける一方で、ゴッホはそのお金を酒などに使ってしまう。それでもテオは兄を信じて支え続ける。
ただ、読んでいて「テオは兄だから支え続けたのか、それとも兄の才能を信じていたからなのか」と考えてしまった。血縁だからなのか、ゴッホの絵に何かを感じていたからなのか。その両方なのだろうけれど、もしゴッホに絵の才能がなかったとしても、テオは同じように兄を支え続けただろうか、ということも気になった。
そして、これだけ献身的に支えてくれる弟がいながら、自分の作品はなかなか評価されない。ゴッホの側からすれば、才能を信じてもらっているからこそ、その期待に応えられない苦しさもあったのではないかと思う。社会や周囲への不満を酒で紛らわせてしまう姿にも、単純に「だらしない」とは言えないものを感じた。
作中では浮世絵についても何度も描かれていて、当時の日本では価値を認められていなかったものが、フランスで評価されることで日本でも見直されていったという話が出てくる。
芸術は作品そのものだけでなく、それを評価する時代や環境にも大きく左右される。ゴッホに才能がなかったのではなく、彼の才能を理解し、評価できるところまで見る側が追いついていなかったのだと思う。
そう考えると、生前ほとんど評価されなかったことこそ、ゴッホの不幸の一つだったのではないかと感じた。 -
Posted by ブクログ
すごく読みやすい。
旅先の風景の描かれ方が美しく、行ったことがなくてもその景色が見えてくるようで、特に川辺に行きたい気持ちになった。
各短編の内容そのものは、個人的にはすごく好きな話と、いまいち共感できない話に分かれた。
1番好きだったのは「長良川」で、”幸福のかたちが目に見えた”という台詞に思わずウルっときた。それは、文字通り幸せでもあり、その時間が思い出になると切なくもある、けれどもその時間を持てたことがあたたかく、その後の生きていく糧になるのだと感じた。
「沈下橋」、「寄り道」も好きだった。
自然豊かな場所に行きたくなると同時に、大切な人を今大切にしなければと思わせられる3作だった。