上〜下巻を丸一日で一気読み、見事に涙腺のツボをやられ10回くらい泣いた。。
■この本について
1950年代に史実として残る天正遣欧使節団に、
“実は当時10代半ばの俵屋宗達が絵師として同乗しており、ローマ教皇に謁見、美術作品の献上を果たす、その背景に重要なトリガーとして織田信長や、狩野永徳まで登場”、という壮大なフィクション。
(今回はアートミステリーというよりは、冒険記に近い。)
・前提として、かの有名な「俵屋宗達」という人物について、その生没年すらも曖昧なくらい実体不明であり、そこに対しての脚色という着眼点がまず面白い。
・当時、日本〜ローマを帆船で航海するということは、今でいう宇宙旅行くらいの感覚だと思う。自分は以前船乗りとして外航船に乗っていたことも相あり当時の記憶が蘇り、僅か10代の使節団のメンバーが感じていたであろう覚悟感や、各国に寄港した際の、見るもの全てに対する新鮮な感動を想像すると、余計に浪漫を感じた。
・日本史を想像するときに、「その時に世界で何が起きていたか」ということを知ることで見えてくるものがある、ということを改めて感じる。
この本でいうと、
織田信長が天下統一を目指す戦国時代、そのときに狩野永徳や俵屋宗達は同じ時代を生きていたし、一方海の向こうのヨーロッパでは、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロはそのちょっと前に死んでいた。
当時の日本にはまだ読み書きすら社会に広くは浸透していなかったが、西欧にはすでに活字印刷があった。
こういった海の向こうとの「ヨコの繋がり」がどんな化学反応を起こしたのか、といったこと、もっというと例え教科書には絶対に書かれていないような小さな事実や人物が、実はその後の世界に大きな影響を与えた「かもしれない」のだと妄想力を働かせることがとても楽しかった。
そしてそんなイマジネーションの最大級こそ原田マハなのだと熟思う。