原田マハのレビュー一覧
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風神雷神を描いた俵屋宗達の物語である。風神雷神は、京都博物館で見た。また、建仁寺でも見た。
その雰囲気とバランス、二神の画面からはみ出た躍動感が素敵だ。色彩も鮮やかで、特に白の雷神と緑の風神の対比がいい。その作品を描いたのが、俵屋宗達である。
俵屋宗達、1570年〜1640年とされている。生まれた年も、死んだ年のもよくわかっていない。そして、素性も不明である。残された真筆の画は少ない。その時代は、織田信長1543年〜1582年本能寺で自害の時代だった。織田信長に寵愛されたのが狩野永徳、1543年〜1590年で47歳で死す。
それにしても、この物語の虚構性の着目が素晴らしい。天正遣欧少年使節が、出発したのが1582年。その年に織田信長は亡くなっている。その天正遣欧少年使節団に、俵屋宗達が法皇に狩野永徳が描いた『洛中洛外図屏風』を献上させるというフィクション。1584年にポルトガル、リスボンに到着。1585年3月にローマ教皇、グレゴリウス13世に謁見する。実に3年の月日を要する。
物語は、京都国立博物館研究員望月綾が、江戸初期の謎の絵師 俵屋宗達『風神雷神図屏風』について、講座で説明するところから始まる。
そこに、マカオ博物館の学芸員、レイモンドウォンが望月彩を尋ねて、マカオに来てほしいと要請する。望月彩は、早速マカオに飛び、そこで絵と文書を初めてみる。マカオは、天正遣欧使節の原マルティーノが死去した場所で、その文書には原マルティーノの文字があった。
俵屋宗達が、不明のことが多いので、そこに妄想を働かせて、俵屋宗達の物語を作り上げる手腕は、さすが原田マハである。
京都の扇屋の俵屋の息子、伊三郎は、扇の絵を描くのに優れており、その扇の絵が目につけられ、織田信長に召されて、絵を描くように言われる。そのとき12歳であった。織田信長は、見たこともないものを描けという注文をしたら、伊三郎は 杉戸に象の絵を描いた。これは、伊三郎が近くにある南蛮寺で見かけたものだった。伊三郎は、見たこともないことを描くということで、実物の象は見たこともなかったが、描ききった。信長は、それを褒めて、宗達という名前をつけた。俵屋宗達の始まりである。
そして、宗達の父親は、絵師にするために狩野永徳におとづれ、宗達を弟子入りさせてほしいと懇願するが、認められなかった。しかし、突然永徳から家に来るように言われ、手伝いとして、3ヶ月間絵の手伝いで、使うと決まった。それは、織田信長が、永徳を使って、『洛中洛外図』を作るように命じたからだ。永徳の『洛中洛外図』は、織田信長に命じられて一度書いたのだが、その逸話が興味深い。
それを上回る『洛中洛外図』を描くように織田信長に言われる。
宗達は、初めての屏風の大作で、永徳の仕事ぶりを膝下と見て、覚え、飛躍的に成長するのだった。また永徳は宗達の才能を認め、織田信長に、狩野永徳の容姿にしたいと申し出るが、信長は認めなかった。信長は、宗達を別の使い方をしたかったのだ。
それが、天正遣欧使節(原マルティーノ、伊東マンショ、千々石ミゲル、中浦ジュリアン)と一緒に俵屋宗達を行かせることだった。そして、宗達は、法皇に『洛中洛外図屏風』を献上させ、ローマの状況の図を描かせて、ローマの実情を知りたいということだった。
そして、天正遣欧使節団は、ポルトガル、そしてローマに向かうところで、上巻は終わる。
織田信長の大胆な構想力と好奇心の凄さ、そして、その下での狩野永徳に対する保護や支援は並大抵のものではなかった。安土城には狩野永徳の絵でうめつくされていいた。
俵屋宗達の風神雷神の図の構想が、日本の絵の構想とは、明らかに違う。宗達がローマまで行った経験があると考えた方が妄想が広がる。ミケランジェロ、レオナルドダヴィンチの絵の影響を受けたということだ。 -
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西洋美術系の原田マハさんの本は結構読んだことはあるが、この前板上に咲くを読んで以前から気になってた民藝にとっても興味が湧きこちらの本を読むことに。
大人になってからでも同じ興味を持ってる人とはこうも簡単に友達になれるんだなって羨ましく思ったし、こんな高い志を持った人々が民藝を広めたんだなと思ったら行動した結果がはっきりと歴史に残されていて納得がいった。
この本を読む前はなかなか覚えられなかった人物名も物語を読むことですらすらと頭に入ってきた。
そして何より私が大好きなイギリスが出てきてまた行きたいところが増えた。リーチポタリー行ってみたいなーランズエンドの方も。 -
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ジャンル分けするとミステリになるのだろうか。導入部の不可思議さと、結末に舌を巻いた。まるで不可思議な絵画の世界に迷い込んだようなふわふわとした奇妙な感覚がある(そんな話では全くないのに)。
芸術や美しさを見ると心が洗われる人間がほとんどだが、それを見ると狂わされる人間もいる。例えば古の神話に姿を見ただけで狂うものがいるように、美しさはある特定の人間にとっては劇薬以上の何かの役割を果たすのではないか。
本作の登場人物たちも、美術や芸術の美しさによって狂わされていく。ある者は性愛に、あるものは金に。不思議なのは狂わされた人間たちが誰一人として欠片も自らを省みない事だ。運が悪かった、とでも言うように。芸術に全てを振り切りすぎると人としての常識が才能の代償に抜け落ちるのかもしれない。
柔らかな破滅に向かってひた走るのに後味は悪くない。酒の苦味がまずくなく、癖になるのと同じように。 -
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ネタバレ初めから暖かい雰囲気で始まって、『ツバキ文具店』や『今宵も喫茶ドードーのキッチンで』みたいな柔らかさと安心感を感じた。登場するどの家族も暖かさがあるし、ハラハラするような事件は起きないから安心して読み進められる。
でも暖かさが胸に沁みて涙が出てくるから注意!
いっこおばちゃんが旅行中の怪我で歩けなくなって真っ暗なトンネルに入ってしまった時、晴日の結婚報告がきっかけでリハビリを頑張るようになる。家族が暗闇から救ってくれる存在になっているって理想的だなぁと思う。
初出に、阪急不動産株式会社ホームページって書いてあって調べたら、阪急不動産の「阪急宝塚山手台」とコラボした書き下ろし小説らしい。
そして一般公募した家族や住まいにまつわるエピソードが脚色されて物語の中に落とし込まれているとのこと。
本当にこんな暖かい家族があるんだと思うと、羨ましいし、なんだか安心する。
理想の家族がギュギュッと詰まった暖かい連作短編集だった。