The Modernがニューヨーク近代美術館(The Museum of Modern Art)の愛称だというのは初めて知った。勤務していたMoMAのことを東北大震災と9.11テロという災厄を織り交ぜながら、上手に描いていく手練手管はさすが。今でも福島第1原発を遺棄された場所として考えざるを得ない現状で、発災直後に福島に赴くことは、確かに被ばくを覚悟することであり、わざわざアメリカから危険を冒す必要などないと感じるのも無理からぬことと納得できる。そんな緊迫感を織り交ぜ、困難を抱える福島に生まれつきの難病を抱えながら生きるクリスティーナを描くアンドリュー・ワイエスの絵を置く構図が素晴らしい。やはり原田マハさんの絵にまつわるお話は面白い。読み終わって「フクシマ近代美術館」は実在しないと知り、舞台も作って話を作り上げるこの短編にますます感じ入ってしまった。