あらすじ
芸術(アート)という名のタイムカプセルが、いま開かれる――。京都国立博物館研究員の望月彩のもとに、レイモンド・ウォンと名乗るマカオ博物館の学芸員が現れた。彼に導かれ、マカオを訪れた彩が目にしたものは、「風神雷神」が描かれた西洋絵画と、天正遣欧少年使節の一員・原マルティノの署名が残る古文書、そしてそこに記された「俵…屋…宗…達」の四文字だった――。天才絵師・宗達の名画〈風神雷神図屏風〉を軸に描く冒険譚。「縦横無尽な想像力に操られたマハさんの筆致にすっかり魂を持っていかれた。カラヴァッジョと宗達を繋げてしまう発想には脱帽です」漫画家・文筆家・画家 ヤマザキマリさん推薦!
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Posted by ブクログ
マルティノと宗達の出会いから友情が芽生え、お互いを心の支えとしていくところがよかった。実際に「洛中洛外図屏風」「風神雷神」を観に行きたい。
同じ時代に生きた日本の偉人同士が絵画を通じてつながていくところが面白い。こんなことが本当に起こっていたのかも、と夢が広がっていく。
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風神雷神を描いた俵屋宗達の物語である。風神雷神は、京都博物館で見た。また、建仁寺でも見た。
その雰囲気とバランス、二神の画面からはみ出た躍動感が素敵だ。色彩も鮮やかで、特に白の雷神と緑の風神の対比がいい。その作品を描いたのが、俵屋宗達である。
俵屋宗達、1570年〜1640年とされている。生まれた年も、死んだ年のもよくわかっていない。そして、素性も不明である。残された真筆の画は少ない。その時代は、織田信長1543年〜1582年本能寺で自害の時代だった。織田信長に寵愛されたのが狩野永徳、1543年〜1590年で47歳で死す。
それにしても、この物語の虚構性の着目が素晴らしい。天正遣欧少年使節が、出発したのが1582年。その年に織田信長は亡くなっている。その天正遣欧少年使節団に、俵屋宗達が法皇に狩野永徳が描いた『洛中洛外図屏風』を献上させるというフィクション。1584年にポルトガル、リスボンに到着。1585年3月にローマ教皇、グレゴリウス13世に謁見する。実に3年の月日を要する。
物語は、京都国立博物館研究員望月綾が、江戸初期の謎の絵師 俵屋宗達『風神雷神図屏風』について、講座で説明するところから始まる。
そこに、マカオ博物館の学芸員、レイモンドウォンが望月彩を尋ねて、マカオに来てほしいと要請する。望月彩は、早速マカオに飛び、そこで絵と文書を初めてみる。マカオは、天正遣欧使節の原マルティーノが死去した場所で、その文書には原マルティーノの文字があった。
俵屋宗達が、不明のことが多いので、そこに妄想を働かせて、俵屋宗達の物語を作り上げる手腕は、さすが原田マハである。
京都の扇屋の俵屋の息子、伊三郎は、扇の絵を描くのに優れており、その扇の絵が目につけられ、織田信長に召されて、絵を描くように言われる。そのとき12歳であった。織田信長は、見たこともないものを描けという注文をしたら、伊三郎は 杉戸に象の絵を描いた。これは、伊三郎が近くにある南蛮寺で見かけたものだった。伊三郎は、見たこともないことを描くということで、実物の象は見たこともなかったが、描ききった。信長は、それを褒めて、宗達という名前をつけた。俵屋宗達の始まりである。
そして、宗達の父親は、絵師にするために狩野永徳におとづれ、宗達を弟子入りさせてほしいと懇願するが、認められなかった。しかし、突然永徳から家に来るように言われ、手伝いとして、3ヶ月間絵の手伝いで、使うと決まった。それは、織田信長が、永徳を使って、『洛中洛外図』を作るように命じたからだ。永徳の『洛中洛外図』は、織田信長に命じられて一度書いたのだが、その逸話が興味深い。
それを上回る『洛中洛外図』を描くように織田信長に言われる。
宗達は、初めての屏風の大作で、永徳の仕事ぶりを膝下と見て、覚え、飛躍的に成長するのだった。また永徳は宗達の才能を認め、織田信長に、狩野永徳の容姿にしたいと申し出るが、信長は認めなかった。信長は、宗達を別の使い方をしたかったのだ。
それが、天正遣欧使節(原マルティーノ、伊東マンショ、千々石ミゲル、中浦ジュリアン)と一緒に俵屋宗達を行かせることだった。そして、宗達は、法皇に『洛中洛外図屏風』を献上させ、ローマの状況の図を描かせて、ローマの実情を知りたいということだった。
そして、天正遣欧使節団は、ポルトガル、そしてローマに向かうところで、上巻は終わる。
織田信長の大胆な構想力と好奇心の凄さ、そして、その下での狩野永徳に対する保護や支援は並大抵のものではなかった。安土城には狩野永徳の絵でうめつくされていいた。
俵屋宗達の風神雷神の図の構想が、日本の絵の構想とは、明らかに違う。宗達がローマまで行った経験があると考えた方が妄想が広がる。ミケランジェロ、レオナルドダヴィンチの絵の影響を受けたということだ。
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上下巻のボリュームになかなか食指が動かず1年以上積読していたが、面白かった!!!!!
もちろん俵屋宗達の風神雷神は見たことがあったものの、遣欧少年使節団や琳派のことは、うっすらとした知識しか持ち合わせていなかったが、特に織田信長が出てきてからは面白すぎて、ページを捲る手が止まらなかった。
俵屋宗達のキャラクターが本当に魅力的で、実際は謎が多い方だし、織田信長や狩野永徳と邂逅した史実はないみたいだけど、読んでいてとてもワクワクしたなあ〜。
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なかなか分厚目の作品ですが、面白すぎて夢中になり数日で読み終えてしまいました。
謎の多い宗達を史実にうまく交えてフィクションとして描いている。史実に則りながらも詳しくは分からないはずの経緯や想い、願い、人々の関係性などが素敵なストーリになっている。
読み進めながら一人一人の登場人物の生涯や作品も調べたくなってしまい、しっかり歴史にも詳しくなりました!下編も楽しみです。
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〈俵屋宗達の生涯は謎のヴェールに包まれている。〉
その宗達に興味を抱き、京都国立博物館の研究員として働く望月彩は、俵屋宗達の代表作〈風神雷神図屏風〉を中心とする琳派の展覧会を開いた際、マカオ博物館の学芸員レイモンド・ウォンから面会を求められる。キリスト教美術を専門とする彼から、俵屋宗達に関係した史料らしきものが見つかったことを匂わせられ、彩はマカオに招かれる。そこで待っていたのは、バロック時代のヨーロッパの画家の手による『ユピテル、アイオロス(風神雷神)』の絵と十六世紀末に天正遣欧使節のひとりとして海を渡った原マルティノの署名が入った紙束。原マルティノが書いたと思わしき古文書には、『俵…屋…宗…達』の四文字が記されていた。
というのが、本書の導入。現代パートはプロローグとエピローグのみで、それ以外、謎めいた生涯を送った俵屋宗達の壮大な友情と冒険の物語が綴られていきます。見たことのないものを見たい、絵にしたい、と願った少年絵師の想いに、織田信長、原マルティノ、狩野永徳、カラヴァッジョ……など様々な人物が関わっていき、それが少年の成長に繋がっていく様子がとても気持ちの良い作品です。
困難な旅を強いられる少年たちの冒険小説としても大変面白く、時代背景の説明は丁寧に噛み砕かれているので、歴史小説はすこし苦手、というひとにもおすすめしやすい作品にもなっています。想像の余地の多い人物に、奔放な想像力をつぎ込み、新たな世界を浮かび上がらせる。物語って本当に楽しいですね。
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緊迫感のある描写、魅力的な歴史の偉人たち。
学生時代に読んでたらもっと日本史も世界史も好きになってたかもしれない。
京都、マカオ、イタリア、美術館に行きたくなりました。
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まだ下巻が読めてないけど、既に面白すぎる!
歴史苦手だけど、そんな事どうでも良いくらい楽しく読めます。安土城や南蛮寺、作品、人物等スマホ片手に読み進めました。マハさんのアート小説は久々ですが、史実なのかフィクションなのかその絶妙なバランスがやっぱりいいです。もはや史実であってほしいです。絵を描くシーンはこちらも息が苦しくなるほど没頭して読んでしまいました。物語のメインやはり風神雷神だと思いますが、洛中洛外図が見たい!狩野永徳が描いた洛中洛外図屏風は米沢市の上杉博物館にあるそうなので、いつか絶対に行きます。マハさんの小説はいつも色々な場所へ導いてくれます。
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マハさんの美術歴史ものおもしろくないはずもなく。ロマン溢れる。ワクワクする!!どんどん読める!絵を描くシーンはどれもホントに胸が熱くなる
なんで自分はどこにも行けないなんて思っているんだろう…って考えさせれる
宗達もマルティノも永徳もいいが
織田信長の存在感、凄い
この人の好奇心、野望がなかったら日本の文化は大きく変わっていたのでは?と思わせる
文化芸術面での織田信長の功績もドでかいだなあ
Posted by ブクログ
USJの逆向きジェットコースターを並ぶ列2時間で半分読めた。ジェットコースターもう乗らなくてもいいや、と思えるほどの没入感が味わえる。読み応え、ストーリーの展開、何をとっても読んでよかったと思える作品。
Posted by ブクログ
俵屋宗達の人物像が面白く、生没年すらも判然としていない人物をここまで生き生きと描ける技量に驚きました。また日本画の技法についての細かな説明が興味深かったです。
同じ表現や説明が何度も書かれており少ししつこいと感じる箇所もありましたが、文章が易しく明瞭で、全体的な読みやすさとしては申し分ありませんでした。
Posted by ブクログ
自由奔放な信長が
これまた自由奔放で屈託のない
伊三郎本人と絵をいたく気に入り「宗達」と名づけ
物語りが進んで行く
マルティノと宗達は親友となり
中浦ジュリアン、伊東マンショ、千々石ミゲルとも
船旅の序盤で理解し合い友情が芽生える
本編最後では宗達とその両親の話を
マルティノが聞きそして涙する
読んでいる私も、、、
またキリスト教と全く無縁に
生きてきた自分だが
本作品を読んだことにより
非常にこれに興味が湧き、近所の教会の主日礼拝に
一度くらいお邪魔させていただこうかと
思っている
原田マハさんのアートに関する創作は
だいたい裏切らない。
面白いの一言
Posted by ブクログ
歴史全くわからないけど読める!
歴史を知りたくなったし、今のわたしがいるのもこの方達がいた後の道なんだなと思って面白かった。
昔の実際にあった話を現代の物語に取り入れてしまうという本に出会ったことがなく面白かった。
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俵屋宗達が主人公の小説。粋なのは俵屋宗達の風神雷神のように屏風にその全容が入りきっていない描き方でその世界が見るものによって無限に広がっていることを、俵屋宗達という人物の謎の多さと重なっているというところ。それが天正遣欧使節や信長との関係。フィクションとして面白く読めた。
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「風神雷神」という漢字四文字のタイトルと表紙の絵画の迫力に圧倒され、しばらくの期間、手が伸びなかった作品でした。しかし、読んでみると少年たちの大冒険活劇。しかも、誰でも知っているような歴史上の人物がたくさんでてくる。帆船で大海原に挑み、苦難を乗り越え、仲間との絆が深まり…。当初の印象なんて吹き飛び、夢中で読み進めることができました。
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俵屋宗達の風神雷神をモチーフに、戦国時代と現代を結ぶ歴史ミステリー、これはまだ前半。大半が俵屋宗達と天正少年使節団の原マルティノ、織田信長など過去の話。
俵屋宗達は琳派であること以外知らなかった。フィクションであることは分かってるけど、少年たちの冒険小説的な要素もあってワクワクする話です◎
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織田信長、風神雷神、宗教、絵画等、私の好きなものがたくさん詰めこまれており、原田マハ氏の作品ともなれば面白くないわけがない。俵屋宗達が狩野永徳とともに洛中洛外図屏風を描き上げるシーンは途中で止められず、寝る間も惜しんで読んでしまった。ゴリゴリの時代小説ももちろん大好きだが、本書は文章が易しく読みやすい。下巻も非常に楽しみであると同時に、もう終わりに向かってしまうのかと少し寂しくもある。
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登場人物が多く、歴史が苦手なので読み進めるのに時間がかかった。歴史の勉強をしてるみたいで、読むの大変だったが話の面白さと学びを同時に体感できた。
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マハさんの美術ものなので、面白くないわけがありませんが、上巻は、ペースが上がりませんでした。宗達の信長との謁見、狩野永徳との共同制作など、相変わらずどこまでが史実かどうかはわかりませんが、上巻だけを見れば、展開に起伏が少なく、淡々と進んでいる印象です。この時代の航海は風まかせなので、マカオで風を待つために半年以上滞在するって、そちらのほうに驚きです。ローマ到達後、どうなるのか楽しみです。
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ずっと積読していてようやく読み終えた。かなりな分厚さで読み応えあり。当時の日本とキリスト教との関わりを描きつつも、一心に絵を探究しようとする俵屋宗達が見ていて眩しい。
Posted by ブクログ
プロローグの期待感と、少年たちの物語もわくわくして一気読み。
2つの洛中洛外図屏風が描かれるまでのさまがありありと浮かんてくるようで、永徳と宗達のそれぞれ良かった。
さすがの原田マハさん。歴史上の人物が、本当にこんな人でこんなことがあったのかもと思ってしまう。少年たちのその後も楽しみ!
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物語も面白いが特に、今や当たり前のように私たちの生活の中ある(当時でいう「南蛮」の)文化、物、渡航の機会などがほとんど無かった安土桃山の時代に生きる子どもたちの喜怒哀楽を擬似体験、追体験できるところがとっても楽しい。
これほどまでにリアルな子どもたちの内面をに想像し、表現できる知識と技術に脱帽!
Posted by ブクログ
俵屋宗達の人生ってあまり判明していないようで、そこをうまく物語を作られているのが、さすがです。
一緒に希望峰を回ってヨーロッパまで旅しているように読みました。
Posted by ブクログ
『リボルバー』と同じ「型」だなと読み始めて思った。
時系列で言えばリボルバーの方が後に書かれた作品ですが。
物語の始まり方、実在のアート作品に謎が…それが解き明かされていく。という大枠。
その中のストーリーは原田マハさんのアートに関する知識力とストーリーを広げる能力が遺憾無く発揮されてオリジナリティ溢れるけれど大枠はすでにリボルバーで読んだものかと読み始めた時は少し気分が下がった。
ただ読み始めるとどんどん引き込まれ、ページをめくる手が止まらない。
日本史の授業で見知った単語、出来事、人物にこんな個性が、こんな裏側があったのかと驚いた。
もちろんわかっている。フィクションだと。
でも、教科書で見ていた過去の人たち、テストで出てくる問題に関わるものとして温度なく受け取ってきたものたちが、生き生きとしてる様に心が踊り、過去に生きていた人たちが紡いで歴史となったのだと改めて感じることができるのが面白い体験だった。
俵屋宗達の言動が、船の上ではワンピースのルフィみたいに感じるところがありそれは少し冷めるところはあった。
Posted by ブクログ
大部分が織田信長の時代の話だとは思わずに読んだけれど、青年たちの言動や葛藤に魅了されてページを捲る手がどんどん進む。
下巻ではどうなっていくのか、楽しみ。
Posted by ブクログ
「風神雷神」の俵屋宗達を欧州遣欧使節団に組み込んで描く。
上下巻なのでながかったー。同じような記述が数ページ後にくるなどちょっとくどいと感じました。もう少し節約すれば1冊にできたのにな。
宗達と信長のあたりはとても面白かったですが、船旅とかなんかペラッペラだった。。
■引用
歴史は、ときに残酷である。起こってしまった出来事を、なかったことには決してできない。しかし、だからこそ、人は歴史に学び、先人たちが遺してくれたさまざまな知恵を現在に生かすことができるのだ。
Posted by ブクログ
海を渡ることが本当に命がけだった時代なんだな、と思いました。そうしながらローマに行って戻ってきたら世の中がガラッと変わっている、その時マルティノや宗達は何を思ってどうしたのか下巻が気になります。
Posted by ブクログ
織田信長、天正遣欧少年使節、俵屋宗達、日本の戦国時代に揃った類まれなる才能を持った人々が、それぞれの立場思惑によって結びつき、行動を共にすることになります。一枚の絵画「風神雷神」から膨らまされた著者の想像力が大いなる物語を導き出されています。歴史には描かれなかった部分について、飛躍した想像力をもって補われることで、イフ以上のストーリーが出来上がることが面白く読ませていただきました。キリシタン大名やその部下武将の子息として、絵師の子供として、少年達はローマに赴く使命を与えられます。目的地を同じくする彼らは日本を旅立ち、胸に燃えるものを持って海路を進んでいきます。無事にローマに辿り着けるのか。下巻が楽しみです。