あらすじ
1954年、大分の小鹿田を訪れたイギリス人陶芸家バーナード・リーチと出会った高市は、亡父・亀乃介がかつて彼に師事していたと知る。──時は遡り1909年、芸術に憧れる亀乃介は、日本の美を学ぼうと来日した青年リーチの助手になる。柳宗悦、濱田庄司ら若き芸術家と熱い友情を交わし、才能を開花させるリーチ。東洋と西洋の架け橋となったその生涯を、陶工父子の視点から描く感動のアート小説。第36回新田次郎文学賞受賞作。
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Posted by ブクログ
2025/08/11
とても読み応えがありました。延べ600ページくらいあって初めてこのくらいの分量の小説を読んだのですが、どんどん話に引き込まれていく感覚があります。
実在したイギリス人陶芸家のリーチ先生(バーナード・リーチ)や日本の文化を担っていた実在の人物たちの史実における交流や変遷を、沖高市とその父である沖亀之助という架空の人物をおりまぜることで進んでいく陶芸という芸術ジャンルの国際交流や、陶芸という世界を目指す人たちの当時の奮闘を描いたお話しです。
高市のいる町にリーチ先生が視察にやってきて、そこで高市がリーチ先生と過去に深いつながりのあった亀之助の息子であることが分かる。その後、亀之助の過去をなぞる形でリーチ先生がどうして陶芸の世界を目指すことになったのかに至る経緯(父の生き様)を知ることになる。
高市と亀之助は架空の人物であるということが分からないくらい史実に基づいて、けれども歴史を語りすぎることなく人々の人間模様に重点を置いて話が進んでいくので、ストーリーが分かりやすかったです。
尚且つ、日本とイギリスにおける戦時中の陶芸という文化面での交流についてや、そこに関わっていた文化面の先人たちの様子もイメージしやすく描かれています。
史実を元にしたフィクションですと注意書きが書いてありますがその解像度はきっとかなり高いのではないでしょうか。
当時を生きた文化人のそばでその様子を目撃した人になれる一冊だと思います。
Posted by ブクログ
西洋美術系の原田マハさんの本は結構読んだことはあるが、この前板上に咲くを読んで以前から気になってた民藝にとっても興味が湧きこちらの本を読むことに。
大人になってからでも同じ興味を持ってる人とはこうも簡単に友達になれるんだなって羨ましく思ったし、こんな高い志を持った人々が民藝を広めたんだなと思ったら行動した結果がはっきりと歴史に残されていて納得がいった。
この本を読む前はなかなか覚えられなかった人物名も物語を読むことですらすらと頭に入ってきた。
そして何より私が大好きなイギリスが出てきてまた行きたいところが増えた。リーチポタリー行ってみたいなーランズエンドの方も。
Posted by ブクログ
本書を読むと陶芸をしてみたくなる。
明治時代に日本の美術に興味を持ちイギリスから訪れたバーナード・リーチ氏は実在の芸術家だ。英国人として(外国人として?)初めて本格的に日本の陶芸を学び、母国でも陶芸および日用品の美しさを広めるために尽力した。彼が日本で交流し刺激を受けていたのは、武者小路実篤とか高村光太郎などそうそうたる白樺派の文豪たちであり、芸術家たちであった。
何十年もリーチの助手として共に成長した亀之助が主人公である。著名な陶芸家となったリーチ氏が晩年に九州の窯元を訪れたときに亀之助の息子と出会うことから話が始まる。
原田マハさんはあのペースで出版しながら、一つ一つの著書に克明なリサーチをしているのがすごい。陶器のことやイギリスのことなど情報がとても多いので、前半はやや冗長であるのが否めないが、彼女お得意のじんわりとした感動を呼び起こすストーリー展開ある。出てくる人があまりにも全員いい人すぎるかなとは思った。リーチ氏を全く知らなかったので、当時の日英の交流など知ることができて、とてもよかった。
本書を読んでから、リーチ・ポタリーが今でもセントアイビスで展開していて、実際に器を購入したり陶芸を学んだりできることを知って興奮した。陶器には詳しくないが、色合いに温かみがあり素敵だと思った。
Posted by ブクログ
2025年1番最初に読んだ作品。
何か新しいことを始めたい時に読むべき一冊。
出てくる登場人物全員が一生懸命に生きており、温かい。「芸術」「陶芸」に真っ直ぐに向き合う姿がとても好い。
毎日の生活はそれなりに幸せで充実してる、でも何か足りない。何かを始めたい。
そんな時にこの作品から、前向きなエネルギーをもらえたような気がする。
一年のはじめに読んだ本がこの作品で本当に良かった。亀之助やリーチ先生のように自分自身の生き方を見つけて、一生懸命に日々を過ごしていきたい。
Posted by ブクログ
民藝に興味があり普段使いの工芸品を作る人達のお話だと言うことで、大作でしたが読んでみました。原田マハさんの作品の中で芸術家主人公の作品に初チャレンジ。戦前戦後の今とは比べ物にならないくらい移動や連絡の手段がなかった頃に、異郷の地で陶芸に目覚めた突き進むバーナードリーチと彼を支えた亀之助達の日々が細かく、生き生きと描かれていて、好きな事につき進むエネルギーを感じました。何もせずに日々を過ごしがちですが、良い刺激を与え手貰いました。
Posted by ブクログ
フィクションとノンフィクションをここまで巧みに混ぜ合わせ、「アート小説」という新しいジャンルの先駆者として書き続ける、「美術史小説家」の原田マハさんには感動する。
こんな風に現実と創作を融合させるのは良くないという教育者や学者、その他様々な人は沢山いると思う。
でもこのアート小説のおかげで、
美術というものの敷居を低く感じてくれる人がいて、美術館に実際に足を運んでくれる人が増えているのは間違いないと思う。
だったら全然ありなのでは?
読んでいて、「ここは美術史として学びに繋げられそうだな」って部分と、ここは「フィクションかな」と思い、知識としてではなくエンターテーメントとして楽しむ部分が、すぐに分かる気がする。
この本の場合も、
知識の浅い私は主人公の「沖亀之助」が、実在するのか、しないかも定かではなかったけれど、読み終わった後にググればすぐ分かる。
そしてざっとバーナードリーチや、柳宗悦、濱田庄司等の人物の歴史をネットで読めば、「あ、ここは小説に出てきて事実に基づいてるところだ」と振り返りながらおさらいできる。
解説にもあるように、最近よくある「自分を中心に500メートル以内の情況」を描き、作品のスケールが小さく、暗いものではなく、
もっと大きく、造詣も深く、グローバルで広い小説を読みたい時には原田マハさんで決まりだと思う。
Posted by ブクログ
個人的に「民藝ブーム」だった当時、それならばと友人から勧められたのが本書。これがきっかけで原田マハさんのファンになりました♡ 日田の情景がリアルに目に浮かぶような描写が印象的で、今もよく記憶しています。
Posted by ブクログ
史実でありフィクションでもある、
マハさんのこちらの小説。
民藝という物を余りよく知らない人でも、
素直に内容が頭に入ってくる、尚且つ民藝のもつ魅力に気付かせてくれる。とても温かな一冊です。
イギリス人のバーナード・リーチが日本の美に触れ、民陶に触れ、自分の郷里でやりたいことを成し得るまで。
まずはマハさんの膨大な知識量に脱帽いたしました。リーチ先生はじめ、登場する柳宗悦や濱田庄司などの見事なまでに性格や思考の癖を捉えた言葉遣い。1人1人の人物の心の豊かさが、マハさんを通して温かく伝わってくる。
また、解説でも述べられていたがバーナード・リーチの伝記ということもあり、本書を読むだけで、
知らず知らずのうちに民藝の歴史を知り得ることにもなっています。興味がてら柳宗悦の生い立ちの本を並行して読み進めていくと、いかに骨組みのしっかりした内容の小説であるかが伺えます。様々な技法に触れることもでき、読み進めていたら知らずのうち歴史が馴染んでいたことに、感動すらいたしました。
また、オリジナルキャラクターである亀之介親子の人柄もリアリティがあってよい。日本人ならではの考え方やもがき方に一緒になって苦しさや嬉しさを感じられます。
終盤のリーチ先生とのはちきれんばかりの思いの数々には思わず涙をすることもありました。
民藝というもの本書をきっかけにとても興味を持ち、もっともっと深く知りたい、関わってみたいと思えるようになりました。
マハさんの視点は美術に対して愛が溢れていてとても大好きです。自分にとっても、自身のあり方を考えさせられる大切な小説となりました。
是非興味を持たれた方は一度読んでみてください。
Posted by ブクログ
原田マハさんのフィクションとノンフィクションを見事に組み合わされた物語の手法には、いつも驚かされ、引き込まれる。長編だけど、引き込まれて一気に読んでしまいました。
Posted by ブクログ
最初、割と可愛らしい表紙だったので、コメディっぽい話なのかと思ったけれど、バーナード・リーチという陶芸家のお話だった。
やっぱり原田マハさんの小説は良い!
というのが読み終わった…あとの感想。
芸術っていうのは冒険なんだな、と思った。
登場人物が、純粋に芸術という憧れを追い求めていくからこそ、読んでいる私もハラハラドキドキしてしまうんだろう、きっと。
日本に帰ってから、結局リーチに合わずじまいで、名も無い花として九州に骨を埋めた亀之助。
日本に帰ったあとの亀之助の人生は小説には書かれていないけども、濱田と別れてから亀之助は何を思って各地を彷徨い、どういう気持の変化があったんだろうかと考えてしまった。
私としては、大好きだったリーチ先生にも、シンシアにも会わずに人生を終えた亀之助はやっぱり寂しいと思ったのだけど、息子の高市やリーチ先生はそうは思わなかったんだなあ。
ラストで、亀之助の昔の恋人のシンシアが出てきたけど、亀之助の帰りを待って、工房を守ってたとしたら切なすぎるよ。いや、そこら辺は何も書かれていないので、シンシアも他の人と結婚して、子どももいるかもしれないけどさぁ。
でも読後感は悪くなかった。亀之助の陶芸への想いが息子の高市に受け継がれて、芸術や生活は続いていくんだなと思うと、素直に温かい気持ちになった。
Posted by ブクログ
大きなフィクションが仕込まれている事を読後の解説で知りましたが、解説の通り、最後まで健やかな気持ちで一気に読みました。自分を作り上げるということに対する作者の想いが作中に貫かれています。快作と思います。
Posted by ブクログ
数ヶ月かけて読み終えた。リーチ先生や周囲の人々の優しさや熱さに感動。陶芸の道をひたすらまっすぐと進み、自分だけの作品を作りたいと願う人々のなんと眩しいことか。フィクションでありながら、同時代に日本で活躍し、今に至るまでその名を残す柳宗悦や高村光太郎の姿にも強く惹きつけられた。
Posted by ブクログ
とってもよかった!感動的。。
民藝の歴史などを調べると必ず出てくるイギリス人の陶芸家「バーナード・リーチ」の史実を基にした小説。
器や陶芸に興味がある人におすすめ。
解説にもあった通り、どこまでが史実でどこまでか創作なのか、読んでいると分からなくなった。その位、史実を徹底して研究し書いたことがよく分かり、そこに織り込むフィクションも違和感がなく良く馴染んで巧みだった。
沖親子の存在はフィクションでも、そのきらりと光る存在感と受け継がれる精神は、この小説にはなくてはならないものだった。私も「名もなき花」として日本の陶芸を受け継いで来てくれた先人達に感謝したい。
リーチの「欲望が創造を生む」という言葉が印象的だった。
Posted by ブクログ
実在したバーナードリーチに関わる美術について、読みやすく書かれており、原田マハさんの他の本と同様に興味深く読めました。個人的には楽園のカンヴァスの方が謎めいていて面白かったですが、この本は美術に関わる人達の生き様や考え方を知る事が出来て面白かったです。
世界は広い、自分も、もっと冒険し知りたいと単純ですが思いました。
Posted by ブクログ
民藝が好きだ。器が好きだ。この作品が好きだ。
原田マハさんのアートを主題にした長編作品はいつも、フィクションとノンフィクションが交差して、架空の人物なのに、本当にその時その場所にいたのでは?とか、本当にその絵がこの世に存在するのでは?と思ってしまうほど。
かめのすけは架空の人物で、でも、そんな人がいたとしても不思議じゃない。
バーナード・リーチは確かに日本にいて、日本各地を渡り歩いてスリップウェアやコーヒーカップの取手付けの技術を伝えてくれた。今でも日本全国でスリップウェアやリーチの取手を見ることが出来る。
この作品は、物語の中だけでも不思議な没入感を味わえるけど、実際に立杭焼や湯町窯、小鹿田焼等日本各地でリーチの足跡に触れると、「あぁ、確かにここにバーナード・リーチが居たんだな。日本と民藝に対する熱い思いを届けてくれたんだな。そしてその想いが今この時までそれが脈々と引き継がれているんだな」と感じられて、時空を超えて、本からも飛び出して不思議な没入感を味わえる。何とも不思議な体験でした。良いタイミングで、良い本に出会えた。
Posted by ブクログ
創作に対する意欲は
様々な人との出会いにより、増幅してゆき、
焼き窯を見つめる職人の視線が熱く
土や火をコントロールすることが
今より難しかった時代に
織りなされる作品の素晴らしさに
作者自身が感動し
作り手の思いが
伝播していく
手づくりがさらに好きになる本でした。
Posted by ブクログ
前に前に進んでいく清々しさ。
普段のマハさんのミステリテイストが少なく、現代においては巨匠とも呼ばれる、当時の名もなき若者たちの熱い想いにじんとくる。
民藝のなんたるかが少しわかった気がする。
数年前に訪ねた世田谷美術館で見た北大路魯山人の茶器(湯呑み)、ガラスケースの中に展示されていたものの一つが気に入り、「これでお茶が飲みたい」と思ったことを思い出す。
ガラスケースに入ったら最後、二度とお湯を注がれ、人の手に包まれ、唇に触れることなんてないであろう。
その器は、果たして幸せなんだろうか?
芸術、生活に根ざした器、どちらが上ということはないんだけれどね。
Posted by ブクログ
イギリス人陶芸家バーナード・リーチの他者視点による伝記フィクション
以下公式のあらすじ
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1954年、イギリス人陶芸家バーナード・リーチが大分の焼き物の里・小鹿田を訪れる。その世話係を命ぜられた高市は、亡父・亀乃介がかつてリーチに師事していたことを知らされる。
時は遡り1909年。横浜の洋食屋で働きながら芸術の世界に憧れを抱いていた亀乃介は、日本の美を学び、西洋と東洋の架け橋になろうと単身渡航した青年リーチと出会う。その人柄に魅せられた亀乃介は助手となり、彼の志をひたむきに支えていく。
柳宗悦や武者小路実篤ら白樺派の面々や、のちに陶芸家として偉大な足跡を残す富本憲吉、濱田庄司、河井寛次郎らと熱い友情を交わし、陶芸の才能を開花させていくリーチ。
やがて彼はさらなる成長を求めて、亀乃介や濱田を伴い帰国。イギリスの西端、セント・アイヴスに工房を開く。敬愛する「リーチ先生」の傍らで陶芸を究め続けたい。その想いを胸に遠い異国の地で懸命に働く亀乃介だったが、別れの時が訪れて――。著者渾身のアート小説、誕生!
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バーナード・リーチにまつわる、近代日本の陶芸のあれこれ
ヨーロッパでの、アーツ・アンド・クラフツ運動
日本における民藝運動
陶芸は美しい上に、実用的なものだという「用の美」
柳宗悦の「好いものは好い」という信念
イギリスに留学していた高村光太郎との出会いから日本への再訪
そして高村光雲の元に身を寄せて亀之介との知己を得る
柳宗悦との出会い
武者小路実篤、志賀直哉など白樺派との交流
富本憲吉による陶芸との邂逅
六代目 尾形乾山への弟子入りと七代目乾山の襲名
濱田庄司の来訪と陶芸技術の助成
イギリスへの帰国
そしてセント・アイヴスで「リーチ・ポタリー」の開設
バーナード・リーチという存在がなければ、日本の陶芸はどうなっていたのでしょうね?
浮世絵と同じく廃れていった可能性がある
柳宗悦による民藝運動
芸術は一部の芸術作品のみで成立するものではない
一番好きな場面は、関東大震災の後に亀乃介が日本に帰るべきか迷っている時のリーチ先生の一言のところ
「守破離」という概念は教えを請う弟子の立場の言葉ではあるけど
師匠の立場としても弟子離れが必要だという事なのでしょうね
親離れ子離れと同じように、どちらか一方で成立するものではないのだと初めて認識した
それにしても、ここまで詳細にバーナード・リーチという人物を描きながら
語り手の沖亀乃介が架空の存在というのに一番驚いた
開設によるとモデルはいないとの事だけど、ちょっと検索したらそれっぽい人はいるようで
松林靏之助、森亀之助、森田亀之助 あたりが混在して物語に組み込まれているようだ
原田マハさんは他の芸術系小説も含めて、史実とフィクションの境目がわからねぇ……
Posted by ブクログ
原田マハ先生の作品には毎回フィクションかノンフィクションかの区別がつかなくなるほど没頭させられるけれでも、今回もそんな作品です。
作品に登場するリーチ先生も高村光太郎も柳宗悦らも実在した人物だけれでも、彼らの功績といったものを、実在しない亀乃介、高市という親子を通じて知るという巧妙なストーリーで、読後はまた少し美術史に明るくなったような気にさせられるのでした。
それは「陶芸」という名の「冒険」だった、とリーチは言った。・・・・あの日々を、冒険と呼ばずしてなんと呼ぼうか。(作品から一部抜粋)
Posted by ブクログ
史実ベースのフィクションらしく、「リーチ先生」他たくさんの名だたる芸術家が登場してきました。
芸術関係は相変わらずからっきし、陶芸となるとなおさらですが、師を仰ぐ弟子の聡明な心、生き方をカメちゃんが教えてくれました。またもや、原田氏の作品に知らないことを教わり、少し興味まで持たせてもらいました。
「民陶」「用の美」に看過され、日常で接している陶器にも目を向けてみました。
Posted by ブクログ
今回は日本の民藝運動に影響与えたといわれる、イギリス陶芸家バーナードリーチをもとにしたフィクション。マハさんの変わらない芸術に対する情熱と人物に対する尊厳や憧れが伝わってくる話でした。
1954年、大分の焼き物の里・小鹿田を訪れた、バーナードリーチ。父の遺言で小鹿田の窯元に弟子入りしていた、沖高市(おき こういち)は、リーチのお世話係に任命され、そこで彼は、亡き父の亀之助がリーチとかつて師弟関係だったことを知ります。
時代は変わり、1909年となり、亀之助君の視点から物語が始まります。
戦時中のシリアスな要素は意外と少なく、多少物足りなさはありましたが、、
当時の日本の陶芸という芸術を広げる為に、実際に制作する中での数々の苦難や、芸術活動する中での葛藤、人間らしさを繊細に書かれています。
知らないことがあるからこそ、体験してみる、分からないことを肯定することから始まる、その大切さを教えてくれた作品でした。
Posted by ブクログ
次々に見聞きしている人物が登場して、その時代はこんな風だったのかもしれないなぁと思えた。リーチ先生や亀ちゃんの作り出す作品がこんなふうかなぁと思い浮かべて、「用の美」を追求していく人たちの姿がまぶしく感じられた。
Posted by ブクログ
民藝と時代の流れを知るのに非常に良い。
歴史上の人物としか捉えてこなかった芸術家たちのエネルギーや熱い想いがふつふつと伝わってくる。フィクションとはいえ、こんな会話があったのかなぁと思いを巡らせてほのぼのした。
Posted by ブクログ
受賞作品だけあって、すごい。何がすごいって、何にも捻りもドラマもない平穏なストーリー展開なのに、想像を遥か凌駕する読後の爽快感。先生の笑顔が想像できる。
Posted by ブクログ
史実からこんなにも物語を膨らませられるのは、さすが原田マハさん…!
良い人しか出てこないから気持ちよく安心して読めるのが良い。ただ逆にドキドキ感とかは少ない。あまりにも上手く進みすぎている感じがするのは否めない。だけど、この時代に日本人とイギリス人が芸術を通して隔たりを越えて交流してたんだと思うと、今ももっと出来ることがあるはず!と思った。
原田マハさんの小説を読むと、それまで興味を持っていなかった芸術分野に興味が湧いて新しい世界を知ることが出来る。
Posted by ブクログ
実在の人間国宝の方々が登場するので、てっきり主人公も実在の人物だと思ってた。(^_^;) 個人的に陶磁器は絵画と違って出来立ての輝きも美しいけれど、作中で「用の美」と表現されていたように、使い込んで現れる景色の移り変わりが陶磁器の本当の美だと思っている。陶磁器の美の世界は、侘び寂びの世界観を持つ日本人特有の感情と思っていたけれど、そういう感覚を持った欧米人がいて陶芸を極めていたことには驚いたな〜。リーチさんの展覧会があれば行ってみたい。(o^^o)
Posted by ブクログ
リーチ先生とカメちゃんの師弟関係が良かった。英国の陶器と言われたらウェッジウッド?ぐらいの知識しかなかったが、日本でも見かける「スリップウェア」はイギリスの伝統的な陶芸の手法だっんですね。
Posted by ブクログ
日本の陶芸に魅了されたイギリス人・バーナードリーチ(実在)と、その弟子を務め続け、自身も陶芸に身を投じてきた日本人・亀之介(フィクション)による感動の物語
ものすごく単純だけど、
陶芸をやってみたいと思った
こんな風に熱中するものに出会いたい!
Posted by ブクログ
人真似ではなく独自性が重要であり、また誰にも似てないことを見つけ出してこそ、本当の芸術家なんですね。
これはヨーロッパの印象派の強い思いにも繋がるものであり、全ての芸術に通じると改めて感じました。
1909年4月に亀乃助がリーチ先生にあった時から1979年4月に息子高市がイギリス・セント・アイヴスに行く迄の縁の繋がりに感激し涙が出てくる思いでした。志を同じくする仲間は、素晴らしい!
また、縁がシンシアまで繋がったのが嬉しかったです!
私は酒飲みなので、この地に地場のウィスキーを飲みに訪ねたいと思いますが、できれば飲む器は「陶器」でやりたいですね!
原田マハ先生も文学を探求する新しいジャンルのクリエイターであり、今後も新しい小説の発表に期待をしたいと思います。