原田マハのレビュー一覧
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〈俵屋宗達の生涯は謎のヴェールに包まれている。〉
その宗達に興味を抱き、京都国立博物館の研究員として働く望月彩は、俵屋宗達の代表作〈風神雷神図屏風〉を中心とする琳派の展覧会を開いた際、マカオ博物館の学芸員レイモンド・ウォンから面会を求められる。キリスト教美術を専門とする彼から、俵屋宗達に関係した史料らしきものが見つかったことを匂わせられ、彩はマカオに招かれる。そこで待っていたのは、バロック時代のヨーロッパの画家の手による『ユピテル、アイオロス(風神雷神)』の絵と十六世紀末に天正遣欧使節のひとりとして海を渡った原マルティノの署名が入った紙束。原マルティノが書いたと思わしき古文書には、『俵…屋 -
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戦前戦後の政治と歴史的事実の話が長くて、なんだこれは、歴史の授業?と思う部分を乗り越えて、一気にエンジンがかかる。
今まで考えたこともなかったけれど、誰かがお金を出して手に入れていなければ、海外の画家の描いた絵が日本にあるわけがない。美術館がなければ一般人がそれを鑑賞する機会なんてなかったんだ。
私財を投げ打って絵画や彫刻を買い求め、美術館を建てようとした人がいる。文化がなければ世界と対等には付き合えない。戦争に勝っていればいいってもんじゃぁない。
一つ一つが目から鱗の落ちる思い。
読み終わって、解説を読み、小説に出てきたほとんどの人が実在していたことを知る。参考資料の量がすごいのも納 -
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ネタバレあなたは、目が見えない、耳が聞こえない、話すこともできない三重苦で生きていくことを想像できるだろうか?
さてさてさんのような書き出しにしてみました。
舞台は、明治20年の青森県弘前。
明治維新後、政府は岩倉使節団を派遣し、その中に将来の日本の女子教育のために、女性も派遣される。9歳だった去場安もその一人。安は弱視であったが、持ち前の明るさと探求心から13年間アメリカのホイットニー家で愛されて育つ。
日本に帰国し、安は女子教育を目指すが、なかなかその役割は回ってこなかった。
父のツテで伊藤博文公に弘前の介良家の子女の家庭教師を紹介される。
しかし、その子女は目が見えない、耳が聞こえない、喋れない -
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実在した沖縄のニシムイ美術村を知れただけでも、読んで良かったと思える。
純粋に美術史としてニシムイ美術村を知りたいと思うなら、もちろんこちらの作品はフィクションも入っているだろうし、良くはない。
だけどより多くの人にニシムイ美術村を知ってもらい、興味を持ってもらうなら、この小説のようにフィクションも交えて、少し俗っぽいストーリーに仕立てる方が効果的。
美術史の専門書や、文学的すぎる小説だと美術のの敷居は低くならず、沢山の人には届かない。
だから原田マハさんが書く全てのアート小説は、朝ドラ風なストーリーで、誰にでも読みやすく、美術に親しみを持てるし、美術への興味が湧いてくる。好き嫌いはあ -
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一気見してしまった一冊。
20代の主人公が
ある事件をきっかけに後輩が自死してしまい,
人生の終着地を探している所から始まります。
とある田舎の尽き果ての地にある
”まぐだら屋”という食堂で
なぜが薬指の欠けたマリアという女性と出会います。
食と自然,人との繋がりで
生きる気力を取り戻し人生を再生していくストーリー。
まぐだら屋に出てくる献立と
調理の過程も鮮明に想像できるくらい
美味しそうでした!
主人公が直面した
ある事件というのはかなり重い内容で
まぐだら屋のマリアの過去も壮絶なのですが,
周囲の人々が抱えてきた複雑な人生やあたたかさが絡み合い傷を癒していくところに感動しました。
また -
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先日初めて原田マハさんの作品「楽園のカンヴァス」を読破し、京都でモネ展が開催されていることからもう少しモネのことを知りたいと思い、二作目として本書を読んでみました。これまで画家の解説本などを最後まで読み切ることはなかったが、原田マハさんはモネの生涯を自分の体験などを巧みに交えながら描いていて、最後まで楽しく読むことができました。モネの作品などについてさらに深く知るには他の解説書などを読む必要があるかもしれませんが、自分にとってはこの本から得られた知識だけでも十分にモネ展を楽しむことができるのではないかと期待しています。(残念ながら体調不良でモネ展へ行くことは延期に...)
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作家の名前で購入。あまり見かけない題名だったので期待していなかった分、感動的な内容だった。
永遠(とわ)という名のカナリアを父親に反対されながら飼い始めた娘の和音。ある日、カナリアが居なくなり、その後、離婚で母親も居なくなるという暗い展開から始まる。世界的な指揮者の父親に反発しながら生活する和音。高校生になってできた友人二人が素晴らしい。
父親はアメリカの有名楽団に行くことになったが、和音は残ることに。そこに現れたのは新しい母親と名乗る女性。無理矢理の新母親との二人暮らし。
母親のチェロ教育から逃げていた和音。逃げた母親と新母親には秘密の関係があった。
意外な男友達のピアノの進路やチェロに復帰 -
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装丁が美しくて一目で買ってしまった。原田マハ先生の長編は本当に読みやすく、言葉に力が溢れてる。大好き。メイベルの悪女っぷりたまらん。タブー視されているものを題材とした退廃的芸術はやはり面白い。自分が夏目漱石、谷崎潤一郎を好きな理由の一つかもしれない。彼らの作品は悪女に振り回される男を主人公とするが、こんかいの「サロメ」は悪女が主人公で、その点で自分には目新しい。ストーリーであるがルポタージュであると錯覚するほど作り込みが細かい。素晴らしい。解説も中野京子先生で文句なし。最後まで飽きずに読めた。オーブリービアズリーの作品をもっと見たいと思ったし、salome の原作も読まざるを得ない。