あらすじ
一枚の絵が、ふたりの止まった時間を動かし始める。たかむら画廊の青年専務・篁一輝(たかむら・かずき)と結婚した有吉美術館の副館長・菜穂は、出産を控えて東京を離れ、京都に長期逗留していた。妊婦としての生活に鬱々とする菜穂だったが、気分転換に出かけた老舗の画廊で、一枚の絵に心を奪われる。画廊の奥で、強い磁力を放つその絵を描いたのは、まだ無名の若き女性画家。深く、冷たい瞳を持つ彼女は、声を失くしていた――。京都の移ろう四季を背景に描かれる、若き画家の才能をめぐる人々の「業」。『楽園のカンヴァス』の著者、新境地の衝撃作。
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Posted by ブクログ
今日も関東は激暑でした。
本当に日本はどうなってしまったのか。
先日沖縄に旅行に行った友人が、沖縄は涼しかったよと言っていて、夏の沖縄は避暑地だったっけ?と不思議な感覚でその話を聞いていた。
庭のお花達の面倒を見るのも難しく、水を遣るのがせいぜい。しかも大汗かくので、大急ぎで終了する。庭の水撒きは、心のオアシスだったはずなのに。なんという違いだろう。
日本の古き良き夏は、どこへ。。
で、異邦人ですが。
久しぶりに星5としました。
面白い!よくできたお話でした。
特に、京都を舞台としているので、その京都らしさと画家の作品とがコラボしてなんとも言えぬ、世界観を醸し出していて、美しかった。
芸術に向き合うことの厳しさと美しさを描き、主人公が自分らしい生き方を見つけていく姿に静かな感動がありました。
真の強さと、芸術に対するブレない心。
若干菜穂の傍若無人さに、引くところもあるけど。笑笑 それは小説の主人公だからと、グッと堪えて。
それでもステキ゚+.゚(´▽`人)゚+.゚
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ジャンル分けするとミステリになるのだろうか。導入部の不可思議さと、結末に舌を巻いた。まるで不可思議な絵画の世界に迷い込んだようなふわふわとした奇妙な感覚がある(そんな話では全くないのに)。
芸術や美しさを見ると心が洗われる人間がほとんどだが、それを見ると狂わされる人間もいる。例えば古の神話に姿を見ただけで狂うものがいるように、美しさはある特定の人間にとっては劇薬以上の何かの役割を果たすのではないか。
本作の登場人物たちも、美術や芸術の美しさによって狂わされていく。ある者は性愛に、あるものは金に。不思議なのは狂わされた人間たちが誰一人として欠片も自らを省みない事だ。運が悪かった、とでも言うように。芸術に全てを振り切りすぎると人としての常識が才能の代償に抜け落ちるのかもしれない。
柔らかな破滅に向かってひた走るのに後味は悪くない。酒の苦味がまずくなく、癖になるのと同じように。
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高畑充希さん主演のドラマを観る前に、原作を読んでおこうと思い本作を手に取りました。作者はキュレーターとしての経験を活かして、特に震災後の美術館や画廊が抱える内情について赤裸々に描いています。また、主人公が暮らす京都の町並みの四季の移ろいの描写も素敵です。ハラハラする物語の展開も相まって、アートが好きで京都が好きという自分にとって、面白さを存分に堪能できる作品でした。さて、ドラマではカギを握るアート作品や京都の四季をどんなふうに映像化しているのか、楽しんで観ることにします。
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さすが原田マハさん。
文章使いが上手いからやはり引き込まれる。
章立ても良いところと特長。
このストーリー菜穂に振り回されました。
樹とあったその日から、やはりという感じはしましたが、面白かった。
個人的には、京都の描写もすごくおもしろく読みすすめられた。
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「異邦人」とは誰のことを指すのでしょうか?
読んでいる最中、私は屏風祭りで外から展示物を見る1人の観光客でした。物語は私たちには遠いような近いような、全てを目に焼き付ける傍観者の視点で進みます。
一年をかけて菜穂と一樹を取り巻く環境・心情の変化を追っていきます。一年を追うことで、登場人物のことをよく知る人物であったかのような、親近感を覚えました。それぞれがどのように人生を歩むのかを、花が咲くのを楽しみに待つ老人のように、またやっと食べられる美味しいご飯をかきこむ子供のようの読み進めていました。ページを捲る手が止まらないです。
京都の桜散るある日、蒸し暑い夏、紅葉の綺麗な秋、凍えるような冬、それぞれが肌に吸い付くように、感じられました。京都に住んでいた日のことがありありと目に浮かびます。
とても面白い作品です。また読み直したいです。
おすすめです。
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マハさんの知識量の多さに、また感心させられた。題材が京都というところが興味深く面白かった。
読み始めた時、あれ?男性が主人公か、珍しいのでは?と思ったけれど、すぐに男女両方の語りで物語が展開するようになり、結局最後も男性で締めたけれど女性の物語として終わった感じだった。
もう少し先まで知りたいけれど、これはこれで想像が膨らんで良かったのかも知れない。
長いけど最後まで読ませるマハさんの文章の魅力は本当に凄いな。
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いい意味で裏切られた。
マハさんはこんな作品も書くのかと驚いた。
登場人物がそれぞれ一癖も二癖もあって、キャラクターが濃かった。
京都の移りゆく風景と守られ続ける伝統も感じることができた。
菜穂はただの美術に魅せられた、わがままなお嬢様ではなかった。
どこまでも美術を愛し、祖父、いや父の意志を受け継ぎ、自分で生きる道を決めることができる人だった。
無慈悲なようでとてもかっこいい。
世界観にのめり込む作品でした。
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京都 それは別格の異空間
よそ者(異邦人)はただの通行人。そうして伝統や格を守ってきた。震災を契機に妊婦の菜穂がこの地に赴き絵画を通して自らの道を切り拓く。京都の四季移ろいや方言、祭り、しきたりなど盛りだくさんの内容で京都ステイしたような気になった。また最初会った樹と恋に落ちるのではと思ったがそうはならない。全体的にそんな感じで予想つかない方向へいくのが良かった。
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菜穂の傍若無人さと白根樹の意志のなさに少し引っ掛かるものの、生まれ持った才能がある者同士が強く惹かれ合う空気感が鮮明に伝わって良かった。この本を読んで、唐突に美術館で絵が見たくなり、ちょうど近くで開催していたモネ展へ行った。良い影響を与えてもらった。
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読み応えのあるアート小説だ。普段、絵画とは縁がない私にとって、非日常な世界に浸れたことが喜ばしい。震災の記憶と京都の奥深さ。鷹野先生の人間としての大きさ。そして、美術を一心に追求する菜穂の凄まじい執着。菜穂と樹の関係に驚愕!
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個人で美術館を開いている有吉不動産娘の菜穂
銀座老舗画廊息子の一樹
地震が起こり妊娠中の菜穂は京都へ避難しそこで無名の画家樹の絵を見つける
互いの家の業績不振
芸術にかける菜穂の思い家族や周りの人の思い
見えているだけではなく自分の意思を通すだけではなく互いの気持ちをぶつけ合い話していたら変わっていたのかと思う本だった
Posted by ブクログ
ドロドロした昼ドラのような男女関係
+
アートが紡ぐ感動
京都の風情、独創性や画家の作品を頭の中でイメージしながら読みました。
まるで自分も京都に行って日本画を目の前で観たように想像できて楽しく読ませてもらいました♪
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日本画や京都の伝統に興味を掻き立てられる一冊。
星4つにしたのは、ラストで厄介な人物があっけなく病死するので、ストーリー展開がそこだけ雑に感じたから。
それ以外は、さすがと唸ってしまうほど、美術の世界へどっぷり浸からせてくれる物語。
竹内栖鳳、見てみたいな。
Posted by ブクログ
暑くなって来ましたねw
ってな事で原田マハの『異邦人 いりびと』
マハさんらしく美術色全開の内容w
お嬢様育ちで家族が経営する会社の美術品を集めた美術館の副館長として働く有吉奈穂。
その旦那で美術画廊の専務の篁一輝。
その二人を取り巻く家族、美術、原発、新たな新人画家との複雑で熱い絡みがなんとも言えんw
兎に角、中盤から面白くなってネタバレしたいけど我慢しときます(笑)
2016年31冊目
Posted by ブクログ
原田さんのアートもの・・・ではあるのですが、いつものようなアート主軸というより、どちらかというと“人の業”が渦巻く様を描いた作品となっております。
資産家の娘で実家が所有する美術館の副館長・菜穂の視点と、彼女の夫で銀座の画廊の経営者の息子・一輝の視点が交互に綴れていく構成です。
原田さんの小説の登場人物にしては珍しく、この作品のメインキャラは我の強さや執着があったりと、所謂“いい人”ではないのですが、そんな生々しい人間たちの気持ちの変化や思惑の交差が、京都の移ろう四季の情景描写と見事に調和しているので、本来ドロドロな内容が情緒あふれる印象になっているのが流石です。
そして、ミステリアスな美貌の女性画家・白根樹の存在も際立っていましたね。
樹の抱える哀しい事情と菜穂の出生の秘密がリンクしてくる終盤は怒涛の展開でした。
個人的に京都は割としょっちゅう訪れているので、街並みを頭に思い浮かべながら、どっぷり浸らせて頂きました。やっぱり古の都は奥が深いですね。
Posted by ブクログ
京都に行きたくなるし、住みたくなる小説です。
訪れたところがある場所も登場するし、まだまだ知らないところもあるし、何度も京都を訪れているけれど、祇園祭や五山の送り火は見たことがなくて、でも、一度は行きたくて、この小説を読みながら行った気分を味わっていました。
Posted by ブクログ
「スイート・ホーム」を読んでから、こちらを読んだが、同じ作者なのかと驚くほど、世界観が違い驚いた。扱うのは美しい絵画だが、ドロドロした人間の心理があり、本当の世の中はこっちに近いのかと思った。
世知辛い世の中なら、小説だけでも「スイート・ホーム」のほんわかした話を読みたいと思った。
Posted by ブクログ
この時期、関東から出た人はそこそこいたのだと思う。そう言えば、子供とともにやってきたという人がいたなぁ、近くにも。
その避難先が京都で、その後に書家のところに厄介になれるってすごく恵まれている。芸術に慣れ親しんできた人ならではやな。
こんな計算高い夫いらないよ。子供は手に入った。子供ができたから京都に来られたと思うと、そうなる運命だったのよ。腹違いの妹もこれからいい方向に人生が向いていきそうな予感。他人に頼らず自分の力で。
Posted by ブクログ
表紙からも想像させるけど、結構ダークな感じ。
最初から一樹と克子の関係が怪しく光ってたけど、それは今後の展開の伏線になってたのかなと思った。照山と樹の関係、樹と菜穂の関係、照山と樹の父の関係、喜三郎と菜穂の関係、怪しい関係がうじゃうじゃ。
京都が舞台で祇園祭りなど詳しく書かれててそれだけでも面白かったけど、菜穂の出生の秘密がわかった時そんなこと考えもしてなかったから純粋に驚いた。思ってた展開より斜め上をいくようなお話でした。
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菜穂のこと、最初は世間知らずのお嬢様すぎると苦手意識を持ったけど、芸術に携わるためには並の家庭と教養、才能では無理だと中盤から分からされた。自分が良いと思ったもののためには何でもするという、序盤から一貫した態度が最後になって気持ちよかった。
反対に、一輝は自分の保身の時だけ凄く大胆な手を打って、それがことごとく失敗するという、、、。
芸術を愛し愛された者と、見放された者のドロドロ劇。
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見てはいけないものを見ている、ような感覚になった。面白かった!
人間関係が怪しいというか危ういというか、そんな感じだからかな。
本心をぶつけあえていたら結末は変わったのだろうか。
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東北震災で身重の主人公は東京から京都の書家宅に世話になる。そこでの美意識が身に沁みるが、いつまでもよそ者を思わされるのはこの美意識によるものだ。題はそれを表している。そして表紙の絵が三人である意味を読後に知る。
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この作家さんお得意の美術に関する話。
今回は画廊、美術館、画家のそれぞれの思いと、血縁関係が入り混じった物語になっている。
ワタシ自身は美術に関してまったく才能がないのでわからないのだが、わかる人には作品と出会った時に「刺さる」そうだ。
その「刺さる」と表現する人の中にも、才能の高い低いがあるようだ。
画廊や美術館で働く人は、無名の作家の作品を高値で買い取って有名になった時にさらに高値になることを見抜くチカラが必要らしい。
さらにその画家に個展などを開いて投資をし、世間に名を知らしめるようなこともするそうだ。
日本美術界もバブルの時にすごい金額でゴッホの絵を買ったというニュースを見たりしたが、恐ろしい世界だ。
この物語もそんな美術界とお金と人間関係の話。
面白かったです。
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京都の雅な世界の中で描かれる、人間の業。
「異邦人」として頑張る菜穂を描いているのかと思っていたが、菜穂は異邦人どころか京都にDNAを持っていた。まさかのどんでん返し。
ただ、その背景を知ると、菜穂の言動に合点がいく。モネの睡蓮が売られた時、友の訃報に触れたような悲しさ、と言っていたが、それもそのはずなんだろう。実の父と母が亡くなっている以上、自分には父が引き継いでくれた審美眼と、父が残してくれた絵画、美術館が菜穂にとってのよりどころ。それらが自分の意志とは関係なく第三者に渡される、しかもお金のために、というのは、自分の尊厳が傷つけられた気持ちになるのだろう。
また、この本によって、アートを取り巻く商売を学んだ。画家が描いた絵の売り手を画商が担い、コレクターへ売っていく。絵画は数々のコレクター(時には美術館)の手を渡り、永遠の時を生きる、、絵画が持つ悠久さを知った。
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画家と画商とコレクターの関係
生み出された名画は資産家のもとを渡り歩き財力のある方へと流れて行く
一時は留まり所有欲を満たしても誰の物でもないとか・・
姉妹の出会いも偶然ではなく必然に思えたりパトロン欲全開で支えようとジョーカを切った卓越した鑑定眼を持った菜緒の掟破りのマネジメント能力が発動した。京都って名士の紹介があるとどんどん扉が開いて進んでいけるとこなんだなと感じました。まあそれが叶うのは人を魅了することができるお宝を持ってる者なんだろうなとか
芸妓のしたたかな情念が二人の魂に共振したような・・
引き込まれて読み進みましたがラストが飽ちゃたのか以外とありそうな展開でさらっとまとめてしまってるのは集中力切らせたような着地で物足りなさがあるんですけど一輝は納得しちゃたんだろな。
Posted by ブクログ
最後の樹と菜穂が姉妹だったと分かるまで、吸い込まれるようにどうなるんや!て読み進めてた。
けど姉妹と分かって、うまくいきすぎる話で冷めてしまった。
けどやっぱりマハさんの書く女性は強い。素晴らしい。
京都生まれで知ってることも多かったけど、知らんことも多くて。京都の四季の移ろいやったり歴史を重んじてるところ、羨ましいと思えた。京都に住んでるのに今まで出来てなかったことが悔やまれるほど、せんさんなんかは綺麗な生き方。お金がなかったら出来ひんこともあるけど、いいなあ。
Posted by ブクログ
なんの不自由もなく、美術に親しみながらお嬢様として育った菜穂は、付き合いのある画廊の息子と結婚し、子を身ごもっていた。
原発事故によってお腹の子への影響を考え京都へと一時的に避難することにした菜穂だったが、次第に京都に魅了され、1枚の絵と出会ったことですべてが一変してしまう。
大学時代は京都で遊んでばかりいたので、空気感が懐かしく、また季節も丁度舞台と今が同じ頃なので、夏の持つ熱気なんかをより身近に感じながら読んだ。
大円団ではない物語の引き際が、その先に無限の可能性があってよかったな。
Posted by ブクログ
まあよくもこんだけ魅力的な女達を登場させたもんだと感心する。
一般人のこちらからすると、キラキラギラギラまぶしい女達。それに比べて力不足の男達、でも、その男達に守られ、しばられ、生きる現実。
絶対的な画力を持つ樹
絶対的な眼力を持つ菜緒
これが天下の宝刀のごとく発揮される内容は
ちょいつまらない感じがした。
克子と一樹の関係があっさり暴露される展開も物足りない。
後半の謎解き的な手法はちょっと、安易な感じがした。
京都感は満喫できる!!