あらすじ
一枚の絵が、ふたりの止まった時間を動かし始める。たかむら画廊の青年専務・篁一輝(たかむら・かずき)と結婚した有吉美術館の副館長・菜穂は、出産を控えて東京を離れ、京都に長期逗留していた。妊婦としての生活に鬱々とする菜穂だったが、気分転換に出かけた老舗の画廊で、一枚の絵に心を奪われる。画廊の奥で、強い磁力を放つその絵を描いたのは、まだ無名の若き女性画家。深く、冷たい瞳を持つ彼女は、声を失くしていた――。京都の移ろう四季を背景に描かれる、若き画家の才能をめぐる人々の「業」。『楽園のカンヴァス』の著者、新境地の衝撃作。
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Posted by ブクログ
京都 それは別格の異空間
よそ者(異邦人)はただの通行人。そうして伝統や格を守ってきた。震災を契機に妊婦の菜穂がこの地に赴き絵画を通して自らの道を切り拓く。京都の四季移ろいや方言、祭り、しきたりなど盛りだくさんの内容で京都ステイしたような気になった。また最初会った樹と恋に落ちるのではと思ったがそうはならない。全体的にそんな感じで予想つかない方向へいくのが良かった。
Posted by ブクログ
表紙からも想像させるけど、結構ダークな感じ。
最初から一樹と克子の関係が怪しく光ってたけど、それは今後の展開の伏線になってたのかなと思った。照山と樹の関係、樹と菜穂の関係、照山と樹の父の関係、喜三郎と菜穂の関係、怪しい関係がうじゃうじゃ。
京都が舞台で祇園祭りなど詳しく書かれててそれだけでも面白かったけど、菜穂の出生の秘密がわかった時そんなこと考えもしてなかったから純粋に驚いた。思ってた展開より斜め上をいくようなお話でした。
Posted by ブクログ
菜穂のこと、最初は世間知らずのお嬢様すぎると苦手意識を持ったけど、芸術に携わるためには並の家庭と教養、才能では無理だと中盤から分からされた。自分が良いと思ったもののためには何でもするという、序盤から一貫した態度が最後になって気持ちよかった。
反対に、一輝は自分の保身の時だけ凄く大胆な手を打って、それがことごとく失敗するという、、、。
芸術を愛し愛された者と、見放された者のドロドロ劇。
Posted by ブクログ
京都の雅な世界の中で描かれる、人間の業。
「異邦人」として頑張る菜穂を描いているのかと思っていたが、菜穂は異邦人どころか京都にDNAを持っていた。まさかのどんでん返し。
ただ、その背景を知ると、菜穂の言動に合点がいく。モネの睡蓮が売られた時、友の訃報に触れたような悲しさ、と言っていたが、それもそのはずなんだろう。実の父と母が亡くなっている以上、自分には父が引き継いでくれた審美眼と、父が残してくれた絵画、美術館が菜穂にとってのよりどころ。それらが自分の意志とは関係なく第三者に渡される、しかもお金のために、というのは、自分の尊厳が傷つけられた気持ちになるのだろう。
また、この本によって、アートを取り巻く商売を学んだ。画家が描いた絵の売り手を画商が担い、コレクターへ売っていく。絵画は数々のコレクター(時には美術館)の手を渡り、永遠の時を生きる、、絵画が持つ悠久さを知った。
Posted by ブクログ
最後の樹と菜穂が姉妹だったと分かるまで、吸い込まれるようにどうなるんや!て読み進めてた。
けど姉妹と分かって、うまくいきすぎる話で冷めてしまった。
けどやっぱりマハさんの書く女性は強い。素晴らしい。
京都生まれで知ってることも多かったけど、知らんことも多くて。京都の四季の移ろいやったり歴史を重んじてるところ、羨ましいと思えた。京都に住んでるのに今まで出来てなかったことが悔やまれるほど、せんさんなんかは綺麗な生き方。お金がなかったら出来ひんこともあるけど、いいなあ。