養老孟司のレビュー一覧
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今の社会では、自然そのものには『価値がない』のです。お金にならないかぎり価値がない。
そういう社会で、子どもにまともに価値がおかれるはずがない。さんざんお金をかけてもドラ息子になるかもしれない。
現代社会では、そういう先が読めないものには、利口な人は投資しないのです。だから子どもがいなくなる。
今の子どもは早く大人になれと言われているようなもの。だから幼児期というものは『やむを得ないもの』必要悪になっている。
都市の中では『ああすれば、こうなる』という合理性が徹底的に要求される。子育てはそうはいかない。自然そのものであるから。
子育てはシミュレーションが効かない。コントロールできない。努力・辛 -
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東日本大震災から1年4ヶ月が経った。震災直後は、関東に住む人間も、東北の痛みを分かち合い、譲り合って生きているように見えた。しかし、いまその風潮はなくなり、震災前と同じような風潮になっているのではないか。そんな疑問からこの本を読んだ。
この本は震災から3ヶ月後に出版された。茂木健一郎、養老孟司など9人が、当時の気持ちと復興に必要な精神性を述べている。
共通しているのは、私たち日本人が今までの概念を変えなければならないと主張している点だ。今まで、私たちは利便性を求め、経済を最優先し、進んできた。その結果が福島原発の事故につながっている。
未曾有の大震災を粛々と受け止め、譲り合い、分かち合う日本人 -
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ネタバレ日本の建築士がサラリーマンで占められていることの問題点を指摘されていたが、現代日本人の志向が全般的にそういう方向にあるということの結果が就業の形式をサラリーマンにしているのではないかと思っている。サラリーマンという形式によって面白みが無くなる傾向は否めないが、決して皆が自己を殺して表現しているということもなかろうし、面白みよりも「安く」かつ高い品質を求める需要先を考えれば、資材等の集中購買化等も避けて通れない選択なのだと思う。また、何よりサラリーマン建築士でも個性的な良い建物の設計を追究していることは間違いなく、成果があげられたときにはそういった建築物にも正当な評価を与えて欲しいと願っている。
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ネタバレ養老先生がまた変な事を言い出した。
日本人には思想・哲学ははないというが、「思想はない」という思想があると。また、日本人は特定の宗教は信仰していないと言うが、「特定の宗教は信仰していない」という一種の信条のようなものを持っていると。
よく言えば多層的に、悪く言えばアイディアの羅列のように日本人の「思想はないという思想」を分析している。大まかには、日本人にとっての「世間」が欧米人の「思想」に対応すると。脳内の思考をより抽象化して上に積み上げていく作業より、下に下げて、現実との結びつきを重視するのが日本人だと。
確かに、日本人が世界に送り出したもの、「食」「マンガ」「アニメ」「武道」「建築のセン -
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ネタバレ著名な作家などがそれぞれの3・11をふりかえり、これからどうすればよいかそれぞれの視点から提言を述べる作品。
この本で一番驚いたのは、病を患っていたため、この震災で不安や無力感を感じなかったといった著者がいたことだ。このことから、他人や未来への不安や自分の無力感はある程度自分に余裕がないと生じない感覚なのだと感じた。
しかし、震災直後に起こった買いだめの現象から、今回日本人が感じた不安のベクトルは自分に向いていなかっただろうかと感じた。
また、どん底はつづかないと励ましている著者がいるが、何もなくても、毎日が先の見えないどん底だと感じている人々である現代人に伝わる言葉なのだろうかと感じた。 -
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「ヒトの考え方の形式は、昔から変化していない。
変化するのは内容だけである。
科学も技術も、結局はヒトと同じモノの見方である。
コンピュータにそれができるだろうか。
できない。
なぜなら、もしそれが目の前に存在しても、
ヒトはそれに気づかないからである。
科学技術が引き起こす、予測不能な変化というのは、
論理的にはこれだけではないか。
もし変わるとすれば、人間が変わるしかない。
人間が変わるというのは、すなわち神経系が変わるということである。
神経系が変わるということは、何が起こるかという予測を超越するということである。
たとえばタバコや酒や麻薬で、ヒトは神経系に機能