岸由二の作品一覧
「岸由二」の「生きのびるための流域思考」「環境を知るとはどういうことか」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
- 作者をフォローする
- フォローすると、この作者の新刊が配信された際に、お知らせします。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
「岸由二」の「生きのびるための流域思考」「環境を知るとはどういうことか」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
ビジネス・実用
ビジネス・実用
ビジネス・実用
ビジネス・実用
Posted by ブクログ
神奈川県三浦半島の先端、小網代の谷は、奇跡の自然だ。
何が奇跡なのかというと、一つの流域、川が雨水を集める流れ始める源流から河口まで自然が残っていることである。
たくさんの偶然が重なって、小網代の森の自然は残ったといってもいい。
古くは水田があったところにゴルフ場の開発などが計画されながらも、開発が進捗せず長い時間に手付かずの自然となった。また、開発計画の途中でバブルが崩壊して積極的にゴルフ場開発ができなくなった。
大規模な開発計画があったからこそ、住宅などが細分化されて建たずに、手付かずで放置されていたのである。
また、バブル絶頂時のリゾート開発のときからも
、この貴重な自然を残していくのに、様々な議論が調整が繰り返されたのが読んでいてよく分かる。
「ポラーノ村を考える会」「小網代の森を守る会」「小網代野外活動調整会議」など、それぞれの時期で、開発計画の主体であった京浜急行電鉄、市や県などに小網代の自然保護の大切さを伝え保護のため活動してきた。
その活動の効果もあり、小網代の谷はついに保全地域となる。
この自然保護の方法が面白い。
自然に任せ人間の関わりを絶つわけではない。
むしろ生物多様性を持つ理想的な湿地帯を保つため、ササを刈ったり川の流路を変えたりした。
また木道を整備し、人が与える影響を最低限に抑えるようにした。
人間が自然に手を入れることについて反対する外部の意見もあった。しかし放っておくと、湿原は乾燥していき、ササなど乾燥した陸地の植物が生え、生物相が変わっていってしまう。
森や、川、湿原の動植物が多様性を持ったまま生きていける自然を、懸命に手を掛けて保っているのである。
現在、小網代の谷はいくつかのルールを守れば誰でも無料で入ることができる。木道の上のみを歩く、動植物を採集しないなど、ごく当たり前のことである。
いつか小網代の谷に行きたいと思う。そして、心ゆくまで動植物を観察したい。
Posted by ブクログ
三浦半島の先端にある小網代(こあじろ)という「源流から河口までまるまる保存されている自然」公園があります。都市に近い場所で、「流域」丸ごと保存されている場所は同緯度帯では世界でここだけ。
この本は、リゾート開発や宅地開発の波からどのようにこの自然が守られて、それが継続されて、公園になって、市民に支え続けられたか、を、実践的な「プロジェクト管理」の視点から記載されています。
今までの保全の常識とは異なる懐深い長期的な対策がこちら。
1.珍しい絶滅危惧種を見つけて貴重だから守れという
2.開発企業や自治体を「悪者」といいふらす
3.開発は何が何でも反対。木一本でも倒すな!
4.いろいろな人に声をかけて反対デモをする
5.政治家にお願いして開発反対の声を拡散する
ではないんです。上記は典型的な開発反対・自然保護の例。でも今回成功した対策はこちらなんです。
1.「流域丸ごとの自然」が貴重という。「多様性の保全」
2.開発企業・自治体を一緒にやっていこうとする。
3.開発反対!といわず賛成という。
4.反対デモなどはやらない
5.反対が得意な政治家や団体には声をかけない。
ということです。これじゃあ保全なんか出来ないんじゃないかと思って読み進めたのですが、「ステークホルダー」に寄り添って、関係者を絞り込むことでプロジェクトを言い方が悪いのですが、優位に進めていく様子がありありと分かります。
さて、一旦保全が決まった後も、どのように継続していくかが課題になります。その方法はこちらです。
1.せっかく守られた自然だから、モリには一切手入れをしない。「手付かず」
2.木は一本たりとも切らない
3.せっかくの自然だから、一切森のなかに人工物を入れない。
4.国立公園、県立公園にして、公園管理のプロに任せる
ではないのです。実際には
1.森には定期的に人が入り、水の流れから湿原の木々の生えかたから手入れをする。
2.重要な自然だからこそ時には木を切る。
3.人口の木道を上流から河口まで一本通す。
4.公園のプロが管理するだけでなく、NPOのスタッフが日常的な管理や案内を行う。
という、ことになってます。これは、開発こそされなかったものの、放置され荒れ果てた自然を、本来の姿に戻し、それを維持するため。そして、小網代自体は都市に密接している場所にあり、安全を第一として考えられる事故を事前に予防し、されに多くの市民に開放することにより市民に愛される自然にいるために必要なことなのです。
都市から遠くはなれた、人間の影響を受けない自然を守る場合との違いがここにあります。
実際の人工物は、ビジターセンターと一本の木道だけですが、この2つにより、むしろそれ以外の場所にひとが入り込まないので、多くの人間を受け入れても保全への影響を最小限に抑えています。
結果、湿原の植物もカニも昆虫も大挙して押し寄せ、大繁栄することになっています。
実はこの著者であり、実際にこの保全に最初から関わったのは慶応の先生なのですが、この人が「気持ちだけが先行」しがちな保全活動において、ある意味したたかとも思えるプロジェクト進行をすすめます。これは企業内でのプロジェクト管理にも通じるものがあると思います。
なお、注意点が一つ、、、流域保全なので、マムシとスズメバチもいます。行く時には白い服を着て(黒は熊と間違えて攻撃してきます)、ジュースなどの甘い飲み物は飲まないように(花だとおもってよってきます)してください。木道はマムシ対策でもあるので、木道以外は歩かないようにしてください。
Posted by ブクログ
気候が変わり、豪雨が多くなった今、河川の氾濫などの災害を防ぐための対策が必要です。
この本は主に東京都町田市の源流から神奈川県横浜市を通って流れる鶴見川の流域治水について、長く鶴見川流域で防災・自然保護に取り組んでいらっしゃる岸先生が紹介しています。
息子が小学生の時、夏休みの自由研究で源流から河口までの約42.5キロを徒歩または自転車で何日もかけて調べ、レポートにまとめたり、ボランティアの河川の清掃活動に参加したりしました。
そのおかげで私も「流域思考」が身につき、どれだけ防災のための治水対策が行われているかを知り、川を身近に感じ、安心して暮らすことができています。
「知る」ということの大切さを身をもって学んだ体験でした。
保水の森。
遊水池。
それらの整備のおかげで暴れ川と呼ばれた鶴見川も今では豪雨のあともあふれることなく無事でいられます。
大人になって個人が直接治水のためにできることは少ないかもしれないけれど、子供達が小さい頃に学んだことが、頭のどこかに残っていて、世の中や環境が良くなること、人を救うことにつながる力になれば嬉しいです。
また、小学生や若い世代が社会や理科の授業で流域思考、総合治水といったことを学び、安全な未来につなげていってくれたらいいなと思いました。