岸由二のレビュー一覧

  • 「奇跡の自然」の守りかた ──三浦半島・小網代の谷から

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     神奈川県三浦半島の先端、小網代の谷は、奇跡の自然だ。
     何が奇跡なのかというと、一つの流域、川が雨水を集める流れ始める源流から河口まで自然が残っていることである。

     たくさんの偶然が重なって、小網代の森の自然は残ったといってもいい。
     古くは水田があったところにゴルフ場の開発などが計画されながらも、開発が進捗せず長い時間に手付かずの自然となった。また、開発計画の途中でバブルが崩壊して積極的にゴルフ場開発ができなくなった。
     大規模な開発計画があったからこそ、住宅などが細分化されて建たずに、手付かずで放置されていたのである。

     また、バブル絶頂時のリゾート開発のときからも
    、この貴重な自然を残していくのに、様々な議論が調整が繰り返されたのが読んでいてよく分かる。
     「ポラーノ村を考える会」「小網代の森を守る会」「小網代野外活動調整会議」など、それぞれの時期で、開発計画の主体であった京浜急行電鉄、市や県などに小網代の自然保護の大切さを伝え保護のため活動してきた。
     その活動の効果もあり、小網代の谷はついに保全地域となる。

     この自然保護の方法が面白い。
     自然に任せ人間の関わりを絶つわけではない。
     むしろ生物多様性を持つ理想的な湿地帯を保つため、ササを刈ったり川の流路を変えたりした。
     また木道を整備し、人が与える影響を最低限に抑えるようにした。

     人間が自然に手を入れることについて反対する外部の意見もあった。しかし放っておくと、湿原は乾燥していき、ササなど乾燥した陸地の植物が生え、生物相が変わっていってしまう。
     森や、川、湿原の動植物が多様性を持ったまま生きていける自然を、懸命に手を掛けて保っているのである。

     現在、小網代の谷はいくつかのルールを守れば誰でも無料で入ることができる。木道の上のみを歩く、動植物を採集しないなど、ごく当たり前のことである。
     いつか小網代の谷に行きたいと思う。そして、心ゆくまで動植物を観察したい。

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    2017年06月05日
  • 「奇跡の自然」の守りかた ──三浦半島・小網代の谷から

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    ネタバレ

     三浦半島の先端にある小網代(こあじろ)という「源流から河口までまるまる保存されている自然」公園があります。都市に近い場所で、「流域」丸ごと保存されている場所は同緯度帯では世界でここだけ。
     この本は、リゾート開発や宅地開発の波からどのようにこの自然が守られて、それが継続されて、公園になって、市民に支え続けられたか、を、実践的な「プロジェクト管理」の視点から記載されています。
     今までの保全の常識とは異なる懐深い長期的な対策がこちら。
     1.珍しい絶滅危惧種を見つけて貴重だから守れという
     2.開発企業や自治体を「悪者」といいふらす
     3.開発は何が何でも反対。木一本でも倒すな!
     4.いろいろな人に声をかけて反対デモをする
     5.政治家にお願いして開発反対の声を拡散する

    ではないんです。上記は典型的な開発反対・自然保護の例。でも今回成功した対策はこちらなんです。
     1.「流域丸ごとの自然」が貴重という。「多様性の保全」
     2.開発企業・自治体を一緒にやっていこうとする。
     3.開発反対!といわず賛成という。
     4.反対デモなどはやらない
     5.反対が得意な政治家や団体には声をかけない。
    ということです。これじゃあ保全なんか出来ないんじゃないかと思って読み進めたのですが、「ステークホルダー」に寄り添って、関係者を絞り込むことでプロジェクトを言い方が悪いのですが、優位に進めていく様子がありありと分かります。

     さて、一旦保全が決まった後も、どのように継続していくかが課題になります。その方法はこちらです。
     1.せっかく守られた自然だから、モリには一切手入れをしない。「手付かず」
     2.木は一本たりとも切らない
     3.せっかくの自然だから、一切森のなかに人工物を入れない。
     4.国立公園、県立公園にして、公園管理のプロに任せる

     ではないのです。実際には

     1.森には定期的に人が入り、水の流れから湿原の木々の生えかたから手入れをする。
     2.重要な自然だからこそ時には木を切る。
     3.人口の木道を上流から河口まで一本通す。
     4.公園のプロが管理するだけでなく、NPOのスタッフが日常的な管理や案内を行う。

    という、ことになってます。これは、開発こそされなかったものの、放置され荒れ果てた自然を、本来の姿に戻し、それを維持するため。そして、小網代自体は都市に密接している場所にあり、安全を第一として考えられる事故を事前に予防し、されに多くの市民に開放することにより市民に愛される自然にいるために必要なことなのです。
     都市から遠くはなれた、人間の影響を受けない自然を守る場合との違いがここにあります。

     実際の人工物は、ビジターセンターと一本の木道だけですが、この2つにより、むしろそれ以外の場所にひとが入り込まないので、多くの人間を受け入れても保全への影響を最小限に抑えています。

     結果、湿原の植物もカニも昆虫も大挙して押し寄せ、大繁栄することになっています。
     
     実はこの著者であり、実際にこの保全に最初から関わったのは慶応の先生なのですが、この人が「気持ちだけが先行」しがちな保全活動において、ある意味したたかとも思えるプロジェクト進行をすすめます。これは企業内でのプロジェクト管理にも通じるものがあると思います。

     なお、注意点が一つ、、、流域保全なので、マムシとスズメバチもいます。行く時には白い服を着て(黒は熊と間違えて攻撃してきます)、ジュースなどの甘い飲み物は飲まないように(花だとおもってよってきます)してください。木道はマムシ対策でもあるので、木道以外は歩かないようにしてください。

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    2016年08月05日
  • 環境を知るとはどういうことか 流域思考のすすめ

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    環境についての、たくさんの話題があり、とても刺激的でした。

    その中でも、流域思考についてとても興味を持ちました。

    手軽に読めて、刺激を受けるのにとても良い本だと思います。

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    2012年04月26日
  • 環境を知るとはどういうことか 流域思考のすすめ

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    以前からずっと気になっていた場所、小網代。
    その小網代が載っていたので思わず買いました。
    小網代を養老氏と岸氏が歩きまわっての対談という、ちょっと変わった形式。
    内容的には小網代の話を皮切りに、「流域思考」について考えていくという構成です。子供の頃、川で遊び、川とともに育ってきた人には是非とも読んでいただきたい一冊です。

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    2010年07月16日
  • 生きのびるための流域思考

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    気候が変わり、豪雨が多くなった今、河川の氾濫などの災害を防ぐための対策が必要です。
    この本は主に東京都町田市の源流から神奈川県横浜市を通って流れる鶴見川の流域治水について、長く鶴見川流域で防災・自然保護に取り組んでいらっしゃる岸先生が紹介しています。

    息子が小学生の時、夏休みの自由研究で源流から河口までの約42.5キロを徒歩または自転車で何日もかけて調べ、レポートにまとめたり、ボランティアの河川の清掃活動に参加したりしました。
    そのおかげで私も「流域思考」が身につき、どれだけ防災のための治水対策が行われているかを知り、川を身近に感じ、安心して暮らすことができています。
    「知る」ということの大切さを身をもって学んだ体験でした。

    保水の森。
    遊水池。
    それらの整備のおかげで暴れ川と呼ばれた鶴見川も今では豪雨のあともあふれることなく無事でいられます。

    大人になって個人が直接治水のためにできることは少ないかもしれないけれど、子供達が小さい頃に学んだことが、頭のどこかに残っていて、世の中や環境が良くなること、人を救うことにつながる力になれば嬉しいです。
    また、小学生や若い世代が社会や理科の授業で流域思考、総合治水といったことを学び、安全な未来につなげていってくれたらいいなと思いました。

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    2024年03月10日
  • 「奇跡の自然」の守りかた ──三浦半島・小網代の谷から

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    神奈川県の小網代に、日本で唯一の源流から海までの生態系が維持されてる場がある。それが小網代だ。世界的にみてこの緯度のエリアは開発がすすんでるため世界でみてもここしかない。この奇跡を誰がうんだのか?どうやってそだてたのか?の本。
    流域まるごと保全するという発想はこれまでなかった。たとえば河口の海岸線に一本の道路をひくだけで、カニは産卵を陸でするため生態系が破壊される。一方で豊かな生物多様性を維持するには、ほったらかしにしておけばいいというわけでもなくここではNPOなどの多くの手をいれて多様性を維持している。
    生物的多様性の豊かな空間は、生物である人にとっても生き易く快適だろうとおもう。今後の都市開発にはそういう視点が必要になるのではないか?という考えるきっかけになった一冊。

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    2017年05月29日
  • 「奇跡の自然」の守りかた ──三浦半島・小網代の谷から

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    小網代には以前、何度か行ったことはある。最近、テレビなどで自然がよみがえり、干潟ができているようなことは知っていたが、こんな苦労があったとは。主題は2つで、一つは小網代に残された奇跡的な自然のこと、もう一つは、それを守り、再生するための30年にわたる努力かと。久しぶりに小網代に行ってみたくなる。

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    2016年06月30日
  • 環境を知るとはどういうことか 流域思考のすすめ

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    [ 内容 ]
    生物学者・岸由二は三浦半島の小網代や、都市河川である鶴見川の環境保全活動に尽力し確かな成果を挙げてきた。
    小網代は源流から海までまるごと自然のままで残っている、全国的にも稀有な流域である。
    本書で岸と養老孟司は共に小網代を訪れた後、「流域思考」を提唱する。
    自分が暮らす流域のすがたを把握することから、地球環境に対するリアルな認識が生まれるのだ。
    後半では元・国土交通省河川局長の竹村公太郎も鼎談に参加する。

    [ 目次 ]
    第1章 五月の小網代を歩く―完璧な流域を訪れて
    第2章 小網代はこうして守られた
    第3章 流域から考える
    第4章 日本人の流域思考
    第5章 流域思考が世界を救う
    第6章 自然とは「解」である

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

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    2010年07月13日
  • 環境を知るとはどういうことか 流域思考のすすめ

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    「流域思考」という考えは、なかなか面白いと思う。
    ぜひ環境教育等でも取り入れたいアイデアである。

    それにしても、この本から私が受けた最も強いインパクトは、
    今の私の生活が、自然からすっかり離れてしまっていて、
    ほぼ100%人工環境の中で完結してしまっていることを
    改めて痛感させられたことです。

    私と同様に、「人口世界」から殆ど出ないで生活している人は
    結構いると思うのだが、本当にそれでいいんだろうか・・・。
    将来何かしっぺ返しが来そうな気がする。

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    2009年12月09日
  • 生きのびるための流域思考

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    里山、里地、里海、防災、いずれにしても流域一体で考えねばならないという思いがある中で手に取った。流域ごとにかつての人類の暮らしがあったというこ、そうあらざるを得なかったことを考えるとあまりに今の私たちは流域の恩恵と恐れについて無意識である。

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    2024年06月10日
  • 生きのびるための流域思考

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    流域治水入門。総合治水とも言う。
    豪雨災害の発生は、その場の降水量だけで決まるものでは無く、上流の雨量、土地の保水力、遊水池、河川・下水整備など様々な要因で起こることがわかりやすく説明されている。
    鶴見川治水探検は面白い。他の河川の取り組みはどうなっているのだろうか。

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    2022年04月11日
  • 生きのびるための流域思考

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    なかなか気にすることもないことだったので勉強になった。意外だったのは山は木が多すぎると禿山より災害がひどくなる理論だ。植林も計画的に行わなければならないのか。

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    2022年03月03日
  • 環境を知るとはどういうことか 流域思考のすすめ

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    流域思考という考え方に興味があり気軽な気持ちで手に取った本書だが、環境保護活動と行政の関わりなど、少し込み入った内容だった。ただ頭で理解するよりも実際に自然を感じる事、特に子供時代の原体験が大切なのだと思った。次世代に美しい自然を残すために、養老先生が仰る自然の「解」を子供たちに体験させてあげる事も、我々大人たちの役目だと思う。

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    2012年12月16日
  • 環境を知るとはどういうことか 流域思考のすすめ

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    ○97産業文明がんぜ環境危機を引き起こしたか。産業文明を執行する意思決定や企画には、地球の要領とか生態系のキャパシティに配慮する感性が基本的に欠けている。
    ★そのとおりだけど、感性って?
    ○112物事を因果の蓄積と見ないで、バラバラの事件のぶつかり合いとして見ていく。
    ★因果関係から共通解を導き出した方が安心するんだろうけど、そこに硬直が生まれるとは思っていないんだろうな。
    ○177そろそろ下水の糞尿からリンを取るシステムを作らなければいけない。
    ★色んなものが枯渇していく中で、新たなシステムを望んでいるんだな。太陽電池だけじゃないんだ。

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    2009年11月07日