あらすじ
人間はなぜ音楽を生み出し、社会においてどのように役割づけてきたか? そして私たちはどのような曲を美しいと感じ、どうやってそれを受け入れていくのか? 謎の多い分野に脳科学と映画音楽の第一人者が挑む!
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Posted by ブクログ
脳に関する多数の著作を持つ解剖学者、養老氏と宮崎アニメなどの映画音楽を中心として知られる作曲家、久石氏の対談。
音楽が人々をとらえる仕組みを、人類や生物の起源までさかのぼる。視覚や触覚と比較しながら聴覚が脳に対して優位に働く様子が説明される。
お互いの立場で「いい音楽とは何か」に言及される。バッハやモーツァルトが多作だった理由。「意識」を取り巻く情報化と情報処理に、言葉の働き。
作曲にはオリジナリティだけでなく、根本に共感性が必要だという。多々あるロックやジャズの名演即興はそうなのかと、フッと理解したような気になるのである。
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物事の真理というものは、言葉だけでは説明しきれない。
芸術も言葉にできないものがあるからこそ、芸術として表現する。
オリジナルティとは、新しい共感を発見すること。
そして、良い音楽とは長く聴かれ、色褪せない。
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「バカの壁」の作者 養老孟司さんと、
ご存知、宮崎アニメや「おくりびと」の作曲をした 久石譲さんが
耳、音、聴覚をキーワードに、語り合う対談です。
考えただけで、わくわくする方同士の対談!
いや~、一気に読んでしまいました。
「なぜ人は音楽で感動するのか」など
人間が音楽を美しいと感じるメカニズムについて徹底的に語り合っています。
久石さんが音楽について感じていることを語ると、それは人間の脳がこんな風に働くから
音に対してそう感じるんだね~と養老さんがメカニズムを解説する。
そして、最終的には聴覚の持つ神秘の力を問い正す。
面白くないわけがない!というのが感想です(笑)
例えば、映画音楽の第一人者、久石さんが素朴な疑問としてあげているのが、
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映画に音楽をのせる際、厳密に映像に合わせて音楽をつけると、映像より音楽の方が先に聞こえてくるという現象が起きるということ。
映像は光だから、普通に考えると音速より早いはずなのになぜ??
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それに対し、養老さんが
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ある見たもの、聞いたものに対して
脳の神経細胞が伝達して意識が発生するまでの時間が、視覚系と聴覚系では違う。
だからズレて聞こえる。
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という説明をします。
そして、
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その2つの神経は元来別々のものだから、根本的にはそれは当然こと。
それを一緒に組み合わせて考えているのは人間だけだ。
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などと、脳のメカニズムを解説するのです。
他には、久石さんが
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今の時代、目から入ってくる情報にものすごく依存度が高くなっている気がする。
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と言えば、
養老さんが
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意識を失った人が意識を取り戻す時も、最初に耳が回復し、次に目が開くのを考えると、
生きていくときに基本となるのは、目よりもむしろ耳ではないか。
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という意見を述べる。
音好きとしては、音についての対話というだけで興味わくものですが、
それプラス「へ~~、そうなのか~」ということも多い。
音への感覚(それも久石さんの研ぎ澄まされた感覚)に養老さんのメスが入るという感じでしょうか。
音好きな方に(特に理系の方 笑)
オススメな本です。
ちなみに、養老さんは音楽は基本「ながら聞き」らしいです。
仕事の邪魔にならないものが名曲らしいですよ(笑)
本当に集中しているときは聞こえない。
それでも思考の途中で、ふっと気持ちがよそへ行く、そういう時に聞こえてくる音楽が気持ちのいいものだといい。
「聴きなさい!」とばかりに何かを強く訴えかけてくるようなものだと
具合が悪い。
なーんて書いてありました。
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耳に聞える音と目に見える景色は別物だということは、映像や音楽に係わる世界に身を置いたことのある者なら誰もが痛い目に逢わされて、痛切に思い知らされたことが何度となくあるだろう。
ところが、目からの情報と耳からの情報、この二つの異質な感覚を連合させたところにつくられたのが「言葉」であり、人間は「言葉」を持つことでこの二つの異なった「世界」を同じにしてしまうのだと言われると、思わずウーンと唸りたくなる。
なるほどという思いと、どこかおかしい、騙されているのではなかろうかという思いがないまぜになってくるのである。これは養老先生の話を聞いた時にしばしば起こる感慨であるが、それだけ刺激的であるということなのだろう。
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養老先生の本の中で個人的にはベスト!
後半の「呪いのことば」のところはまさしくその通りだと思ったし,久石さんのその表現の仕方,養老先生との感性のリンク,読んでいて引き込まれる本だった。
すばらしい。
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解剖学者の養老孟司と作曲家の久石譲の対談。
都会では人々は脳化しているそうで、田舎に参勤交代しようと言っています。ほかにもためになることをたくさん話しているので、お勧めです。ホイヘンスの振り子時計の話もおもしろいし、新書なのに読みやすい点も良いです。
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おもしろい!!
色々な身の回りの事柄が、音楽や脳科学や体のつくりに絡めてあって、
へー!!っていう新しい発見がいっぱいあった。
養老孟司みたいに、もっとどっしりと構えて、ちょっとした世界の変化になんか負けないくらい客観的に物事をとらえられたら、楽しいやろうなーって思った。
Posted by ブクログ
「情報化は現物を見て言葉にする作業」
・ものの特徴を説明するには違いを知る必要がある。何が情報化に値することなのか分かること。そのためにはたくさん見ておく必要がある。一匹の虫を見てどこを説明するか。何が他と違うのか。どこが他と同じなのか。どのような特徴があると言えるのか。他との違いを知らないと説明の要点が絞れない。
・情報化とは現物を見て情報に落とし込むこと。情報処理は情報を整理してまとめること。情報処理は2次情報を加工してるだけで現物は見ていない。クリエティブなのは情報化の領域で情報処理はつまらない作業になりがち。
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久石譲さんが音楽を担当された映画は何作も観てきたし、養老孟司さんの本もずいぶん読んできたけれど、おふたりの対談をこうして読むのは初めてかも!本が出たのは2009年。東日本大震災の前だったけれど、「第五章 共感性と創造」時代の共鳴のあたりのおもしろさや新しさにはゾクゾクするし、なるほどなぁ!と何度もひざを打つ。この先何が起こるかはわからないけれども、自分の一生は、その人ならではの作品。深い。
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非常にインテリジェンス溢れる二人の対談。どちらかというと養老先生の方のウエイトが大きい。
対談だけに、もうちょっと説明が欲しいかなーってところが、さらりと流されていたりして理解がしにくい部分がある。
やや年寄りの説教じみた所が目につくが
、普段教授として学生に接していることで感じている憤りが根底にあるのだろう。まぁ、自分は納得いくことばかりだったけど。
それにしても、知的な人の話は面白い。
Posted by ブクログ
音楽とは?とか、クラシックと歌謡曲とは一体何がどう違うのか?という、取り付くしまもなさそうな疑問を持ち続けてきた。本書のような対談式の音楽論本を読み漁っているが、今だ満足のいく納得感が得られない状況。音楽家と解剖学者の対談、というちょっと変わった取り組みでの話の進行は非常に面白いものがあった。養老先生のずばり言い切るところは小気味いいくらい。
しかし、読後、まだまだもやっとした感覚が頭から抜けずにいる。いましらばくこの道は続くのか、というところか(猛烈な解決要求があるわけではないが、興味がつきないので、類書は今後もあたっていこうと。本書はその意味で、また別の音楽への視点を得るきっかけをくれる内容ではある)。
Posted by ブクログ
タイトルからもっと音楽に特化したものかと思っていたけど、そんなことなくて日本社会の様々なことに触れていた。
養老さんの白熱具合に久石さんが少し引いてる感じがおもしろかった。
脳化の箇所で自分もほんとに「ああなれば、こうなる」って考えてばっかで、そら色々つまらんわと思った。
田舎と自然との触れ合いの重要性は十分にわかった。それでも、僕は田舎に参勤交代はしたくないけど。
にしても、音楽だけじゃなくて普遍的な所からとても示唆に富んでいて目から鱗やったなー
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
わたしたちはなぜ“耳”の重要性を忘れてしまったのか?
聴覚の持つ神秘の力を、第一人者が問う。
[ 目次 ]
第1章 なぜ人は音楽で感動するのか
第2章 感性の土壌
第3章 いい音楽とは何か
第4章 意識は暴走する
第5章 共感性と創造
第6章 人間はみな芸術家
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
解剖学者の養老孟司さんと音楽家の久石譲さんとの対談集です。
本書のタイトルや表紙、裏表紙そして帯に書かれている文章を読む限り、
これは音楽や聴覚についての対談の本だと思ってしまいがちですが、
読んでみるとそれだけではなく、
現代の社会の話や意識というものの話(これは聴覚もつながっている)
にも大分、時間を割いて(ページを割いて)話し合っておられる。
まず、序盤の養老さんの、クオリアの話からして目からうろこでした。
一つの言葉あって、それで表現したとたんにこぼれおちてしまうもの、質感、
それがクオリアだというのですが、
僕は20代の頃に音楽を作っていた時期がありますので、
その音楽の源泉としていたのがクオリアと名付けられるのだなと
やっとわかったようなところがありました。
また、音楽づくりの話でいえば、音楽というものの論理だけで
作ってしまえう音楽もあれば、エモーションやメッセージをモチーフとして
作られる音楽もある。後者は、それがいつ「降りてくる」かをまたなければならず、
前者の方法も使えないようだと音楽家としてはやっていけないみたいな話でした。
僕は、後者のタイプで、常に何かが「降りてくる」のを待ったり、無理に降ろしたり、
そうして音楽を作っていた。
これは、2年前に書いた小説もそう言うところがって、僕の創作に対する考え方っていうのは、
その方式しかありませんでしたし、それ以外は邪道なんじゃないかとすら考えていました。
それが違うんだなというのがわかって、今さらながら少し楽になったような気持ちがします。
本書の中での音楽の話でもっというと、売れる、売れないの話も興味深かったです。
売れる音楽というのは、共感性というものが強いから売れるのだといいます。
それで、共感性ばかりが強ければいいのかといえば、それは作り手としても、芸術作品という
観点からしても、そうではないんじゃないかと、久石さんも養老さんも疑問を持っています。
僕もこの意見には賛成で、共感性だけではなしに先見性や説明的なものや新しい概念が含まれているほうが、
たとえ売れなくたって価値は高いと思いますし、大体、売れるものだから価値が高いかと言えば
そうじゃないでしょう。
よく売れる安いハンバーガーがあったとして、その価値は否定しませんが、
それに至高(あるいはその近辺)の価値があるとはいえないのに近いような気がしました。
本書には、クラシックのどうどうどうたらの曲が素晴らしいとかそういうスノッブ的な
話はほぼありませんので、音楽というものに興味があり、社会一般にも興味がある人には
向いていると言えるでしょう。養老さんファン、久石さんファンは是非。
Posted by ブクログ
当たり前といえば当たり前だけど、
音楽を作る人は、他のいろいろなことにも考えを巡らせて生きていて、
「音楽バカ」などというが、決して音楽だけではない。
これを読んで、そういえば、久石氏が昔ミニマルをやっていたことを、
久しぶりに思い出して、
本文中に出てきた、新作を聴いてみようかと思う。
養老先生の本は、もういくつか読んでみたい。
Posted by ブクログ
古代ヨーロッパ人は数学、天文、幾何、音楽を四科として学びました。
音の連続に法則を発見し数学的に捉える。
それを革命的に再構築したのが音楽の父と呼ばれるバッハであり、現在のPOPミュージックもバッハの延長線にあるわけです。
と薀蓄を書いてみましたが、音楽を元にお二人が色々なことを論じ合っています。
音楽は学問でもありますからこういう学び方も面白いと思います。
Posted by ブクログ
養老さんはクラシックをよく聴くそうです。モーツァルトが好きだそうです。理由は邪魔しないからだそうです。いかにも聴いてくれと言う音楽は好きじゃないらしいです。俺は常々モーツァルトのいいところは邪魔しないところだと思ってたんですが、まさか同じ感想を持つ人がいるとはね。どうりでこの人の言っていることが妙に納得出来るわけです。多分物事をまっすぐ、世間と同じ角度から見てないんでしょう。一度テレビでも言ってました。「私は、まずハイって言わない」みたいなことを。これをその辺の天の邪鬼がやってるのと同じレベルで見られるとアレですが、大事なことです。本の中身でも触れていますが、目は見るため耳は聞く為についてます、当然ですけど。でもって、それぞれは違う解釈をする為に存在してると言ってます。耳で考えると言うことは、目で見た情報を処理して考えることとは又違うわけですね。
しかし、この人の本はいっぱい書店に並んでますが、だいたいどこかで田舎暮らしと虫に触れています。そして、人にとって大事なことが多く含まれています。是非読んでみてください。