あらすじ
日本人の「家族の絆」の実態を調査し続ける岩村暢子氏。耕さず農薬も肥料も使わない農業で強い米を作った岩澤信夫氏。植林活動で海を変え、震災も淡々と受け止める牡蠣(かき)養殖家畠山重篤氏。日本になかった合理的な間伐を普及する鋸谷(おがや)茂氏。ごくふつうの日常を研究する人、リアルな「モノ」に携わる人と解剖学者が、本当に大事な問題を論じ合う。「日常から消えた『現実』」「不耕起栽培で肥料危機に勝つ」「ダムは造ったふりでいい」「人工林を救う管理法」……地に足をつけて考える一冊。(目次より)◎震災後、家族の絆は回復したか ◎「ミーフェチ世代」の登場 ◎冬期湛水で無農薬・無肥料を実現 ◎現代の田んぼでは耕すことに意味はない ◎海は生きていた ◎気仙沼ユートピア計画 ◎日本の森林は外材輸入で守られている ◎林業は採算が合う
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Posted by ブクログ
4人の有識者との対談です。
畠山重篤さんの経歴がなんか知っているなと思ったら、小学生の頃に好きで何度も読んだ本のモデルになった人だった。
一次産業は上手くやれば、未来ある産業なのかなと思わせる内容だった。
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非常に考えさせられる対談内容でした。
自然と共存しておこなう産業の難しさと可能性。
そして食のあり方。
自分自身のこととしてまずは家庭食を大事にしないといけないなと。
また、ここに出てくる方々は自分が何とかしようという強い意志の元、すぐに学者さんや専門家にアポを取って教えを請いにいくバイタリティーが当たり前として語られるていることに感心してしまった。
また、養老さん的「モノヅクリ日本」説が非常に興味深かった。
Posted by ブクログ
先週、町田市民文学館で聞いた養老さんの講演がとても刺激的だったので、あっさり影響を受けて購入。一次産業の人たちの頼もしさ。それは、講演にもあったように、自分の感覚を意識へ、そしてそれを伝えたいという思いを持って情報化できているということ。そういう人たちのことばには力がある。体験から出たことばは揺るがない。その上に思いが乗っかるから、それが「届く」ことばになる。最近読んで、確かになにかを受け取った、と感じた本のいくつかが、その話を聞いて全部つながった、と思った。貴重な体験だった!
Posted by ブクログ
養老先生と第一次産業に携わる4人の方がたとの対談集。日本にはすごい人たちがいるなあと思った。皆現場でやっている人たちばかりだ。最近のどんな評論家さんや作家さんの言葉より、この4人の方がたの言葉のほうが、ずっとずっと力強い。未来に対して希望が持てた。
Posted by ブクログ
読みやすさ★★★
学べる★★★★★
紹介したい★★★
一気読み★★
読み返したい★★★★
戦後、経済優先で自然に手を加え続けた結果、日本の農業、漁業、林業はもはや回復不可能なのか。いや、自然の適応力は偉大だ。人間が手を加えなければ、勝手に回復していくのだ。人間の短絡的な発想や行いを、いつも自然は凌駕する。科学のない時代、人が自然と共生できていた時代。お金のためではない、入れ込める仕事。本当に持続可能なものは、サミットに出るような人たちではなく、本書に登場するような人たちが一番良く知っている。
Posted by ブクログ
基本的に若者批判なので、若い世代の人間としてはいい気持ちはしません。
基本的に「何かで成功した人」の話なので、その「何か」を礼賛するものになっています。
が、示唆に富んだ文章がそこここにあり、がまんして読めば得るものがあるなと思いました。
Posted by ブクログ
現代人の日常には、現実が無い 岩村暢子
岩村さんと言う方は毎年食DRIVEと言う定点観測をやってるらしい。同じ人に食生活アンケート、1週間のすべてのメニューの写真と日記、そして家族の誰が食べなぜそう言うメニューに下かの調査をし、食生活はこうしたいと言う意識と実際の矛盾を突き合わせる。その中で一緒に食事をせず、バラバラに食べる家族が増えて来ていると言う。う〜ん、高校あたりから自分で作って食ってる割合が高いので全く違和感を感じないなあ。ごちそうの意味が変わり、高価な物ではなく自分の好きな物だけを食べれるのがごちそうだと。それとご飯を残しちゃいけないと言われなくなってるらしい。
まあそう言う文脈で「家庭の食事という日常そのものに現実がなくなってきている」と書いてるんだが最初から母親が食事つくって、子供が手伝って家族一緒に食事と言う家族像ありきで個人的にはあまり共感できず。
田んぼには肥料も農薬もいらない 岩澤信雄
この前読んだ「食の終焉」によるとアメリカでは不耕起栽培は一般的になってきているらしい。ただし無農薬とは限らないし遺伝子組み換え食物を使ったりするのでの合理化、省力化が主目的だが。
土を耕すのは当たり前っぽいが目的は空気を通したり、雑草を生えなくしたり、排水性を良くしたりとか。しかしあまり科学的なデーターは揃っていないようだ。
土を耕す明らかなデメリットも有り、簡単に言うと表土が砂のように完走すると流出しやすくなること。アメリカの例では不耕起の畑は耕した畑より明らかに地面が盛り上がっていた。
肥料に関しては豆類を植えて解決する。豆を植えると根粒菌が窒素を固定するので肥料=主に窒素系を減らせる。稲の場合は冬期湛水という冬も田んぼに水をはるやり方との組み合わせで、田んぼが生き物だらけになるらしい。蛍が増えて観光客も増えるとそのうち何十人かは多少高くてもここの米が食べたくなると言う。
田んぼの不耕起はなかなか難しかったらしく、南方では直播できたが東北ではやはり苗を育てて植え替えている。1993年の冷害の年に他の田んぼが穂をつけないのに不耕起の田んぼだけが黄色く実った写真がすごい。田植機では稚苗を植えるのに対し昔ながらの田んぼでは苗代で成苗になってから植え替えたるので冷害に強いのだそうだ。
昔ながらのやり方と新しいやり方を組み合わせ、しかも農家はマーケティングが大事と言う辺り良い方向性だと思う。
家庭菜園で大豆を植え枝豆と味噌を作る運動というのも面白い。日本人が消費する味噌は年間10Kgほどで大豆20株ほど。
山と川に手を入れれば、漁業は復活する 畠山重篤
気仙沼の牡蠣と帆立の養殖業者で山に木を植える「森は海の恋人」の活動を続けている。最近では森から送られるミネラルが大事だと言うのはよく知られていると思うが、東北沖の世界三大漁場ははるかロシアのアムール川から流れ込む鉄分で支えられていると言うのは知らなかった。これと比べると黄河が断水する渤海湾で魚が捕れないのは当然のように思える。
鉄分が植物プランクトンの成長に必要で鉄が体内に取り込まれやすくするためには腐葉土に含まれる有機酸が必要なのだとか。それで広葉樹を植え腐葉土を増やすと海に流れ込み海産物が増える。
震災後の牡蠣の養殖を最初に助けてくれたのはフランスのコックたちでフランスの牡蠣が病死した際に宮城県産の種牡蠣が救った縁の恩返しだそうだ。さらにはルイ・ヴィトンも支援してくれている。
実際には色々問題も有るだろうがキックスターターみたいな仕組みも使えそうな気がする。単に募金するのではなく、1年後の牡蠣を先払いで買い、集まった金で機材を揃える。こうすると財務の状況が良くなるので金融機関の融資も下りやすくなりそうな気がするがどんなもんだろうかね。
気仙沼では防波堤は作らず高台に住むことを選んだらしい。だったら堤防を作ったことにしてその分他に金を使わせてほしいと。
「林学が無い国」の森林を救う 鋸谷茂
日本の林学界には健全な森の定説が無かった、日本の森林の4割は人工林で主に杉や檜、儲からないため間伐が適切に行われておらずひょろひょろの木が密集し下草もはえない。表土は流出し、根も大きくはらない。間伐は他の植生が生えるまでやらないと意味が無いらしい。上層は杉や檜が大きく枝を張る空間を確保し、下層、中層の広葉樹が腐葉土を形成する。このバランスを適当にすると健全な森林ができる。
密度管理の考え方は果樹園では実際にやっており、比率は杉林と一致するそうだ。
実際にはどうやっているか、間伐の講習会では将来性の有る木だけに印を付けるように言うとだいたい適正な本数になるそうだ。細かい基準ではなく何となくの感覚で良いと言うのが面白い。間伐の方法も切り倒さず立ち枯れにする方法をとっている。幹に切り込みを入れたり表皮をはいだりして成長しないようにして枯らし空いた空間に周りの木が枝を広げて育つ。枯れた木は土留めの効果やシカの進入に対する柵にもなる。林業の難しいのは植えて切るまで50年から100年単位な所だと思う。切った木は100年単位でしか回復しないので短期的な経済合理性と一致しないことがあり得る。所有権とは別に公共財としての管理が有った方が良いと言うことだろう。中国人が買ってもいいけど好き勝手してもらって言い訳ではない。
燃料としては木を使わないようになり森林面積は回復している部分も有るようだ。昔のお城は今ほど木が生い茂っていなかったし六甲も禿げ山だったとか。50〜100年がかりでやれば回復すると言うことはわかった。
実は後半3つの話は密接につながっていて最後に最初の食卓につながる。あとはちゃんと儲かる仕組みとかが組み合わせればおもしろそう。
Posted by ブクログ
とにかく、ごくふつうの日常を研究する人たちの、現場力がすばらしい。
リアルな「モノ」に携わる人と解剖学者が、本当に大事な問題を論じ合った本だ。
知に足をつけて考えることの重要性を思い知らされる本でした。
Posted by ブクログ
養老さんとの対談。独自の視点からのコメントは、やっぱり面白い。
一言で表現すれば、暮らしを支えるもの、だろうか。
サブタイトルにもあるけれど、第一次産業や、食に関することに取り組んでいる人との対談を通して日本の豊かさと、それを守るために必要なことがあるという実感が得られる。
でも、どうしたらいいのか、分からない。
私に、何ができるのだろうかと、考えなければならないのだろうけど……。
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クローバーの根粒菌を活用した不耕起栽培、カキ養殖のための植林活動など、これまでの常識や既成概念を打ち破るような仕事人との対談集。本書第三章で紹介されている流域思考という考え方が印象に残った。
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農業・漁業・林業・食卓事情の実態が。それぞれの最前線でプロジェクトを進める方々と養老猛司さんとの対談。市民の味方は市民。農林水産業は組織に踊らされて搾取されているイメージだけど、ちゃんと持続可能な未来を見つめて実践してこられた方々もいるんですよね。そういう活動をこそ報道したり行政からも広めていってほしいのに。日本中の人に読んでもらいたい一冊です。
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食、農、林、漁という、我々の生命を支える産業における賢人と養老先生が語り合う対談集。それぞれの道において異端でありながらも、それを本流に結び付けた実践者の取組みに触れる入門編という位置づけ。
とくに不耕起栽培の岩澤信夫さんは、この対談の直後に急逝されたということもあり、ご本人も30年かけて理論を創り上げたのでこれからだという想いを読者としても汲み取っていくべきだろう。
当然、これらの内容を盲信するだけでなく、先人たちの想いを受け継ぎながら次の世代に自然環境と調和した産業を残していくために革新し続けなければならない。
Posted by ブクログ
日本の将来は暗くない。すごい仕事人がいる。
(1)最初の岩村暢子さん、食卓の調査を通じて、日本の家庭の変化、アポしないと家族が集まれない家庭の状況、家族が
子供を面倒みないで、生活保護が増えるという分析など、相当リアル、説得力あり。
参考図書『変わる家族 変わる食卓』『親の顔がみてみたい 調査』
(2)農地を耕さないで冷害にも強い米をつくる岩澤信夫さん、冬期湛水と組み合わせて、ドジョウが発生して、植生が回復し、雑草が生えにくくなる。
(3)気仙沼でいち早く牡蠣養殖を復活、海を再生するために森の再生に取り組む、畠山重篤さん。
参考図書 養老孟司ほか『環境を知るとはどういうことか』
(4)福井県の林務職員から、鋸谷式の間伐方式を開発、森林の効率的な管理を提唱している、鋸谷茂さん。
鋸谷さんの提唱いている木の残し方を、林業の人に「将来性のある木で残したいものを印をつけてください」というと、鋸谷理論での密度といつもほとんど違わないという。人間の生き物としての感覚が正しいという。
もともと人間が太古の昔からもっている勘のようなものをばかにしてはいけないなと感じる。
Posted by ブクログ
4章ある。いずれの章も面白い。好きなのは、2章と3章。不耕起水田の話と、東北の牡蠣の養殖の話である。地震で被害を受けたときに、真っ先に援助したのは誰だったとか、北日本の好漁場に供給されるフルボ酸はどこから来るのかとか、不耕起の水田で稲がどのように強く育つのかとか、いろんなことが書いてある。
お勧めです。
Posted by ブクログ
世の中には様々な仕事がある。
ものを生み出す仕事、加工する仕事、それを届ける仕事。
さらにはそれを円滑に行うための様々なサービス、
娯楽、教育、等々...。
その中でももっとも根源的なものと思われる
第一次産業が、しかし今の日本では壊滅の危機に瀕している。
そんな農業、漁業、林業、そして食という
4つのジャンルから、現代の「日本のリアル」を探る試み。
経済を優先するあまり、存続が難しくなっている
日本の第一次産業であるが、その状況の中でも諦めずに
解決方法を考え、実行する人物たち。
彼らとの対談の中から、きっと日本再生のヒントが
見つかるものと期待する。
Posted by ブクログ
20120829 タイトルの通り。これからやれることがたくさんある。良い方向に向かうキッカケになればと思う。自分もできることを考えたくなった。
Posted by ブクログ
食事、農業、漁業、林業に携わる、4名の方々との対談。
でも話は食料・農業分野だけではなく、個と集団の在り方、教育の在り方、生物とは、また全体を通して、社会の移り変わりについて語られている。
自分と世代が違ったり、成形手段の違う人たちから聴くべき話って、本当にたくさんあるな、と思う。知らなくても生きていけるような時代になったけれど、だからこそ、ちゃんと地に足をつけて生きるためにも、私たちの生命の土台となっている一次産業と呼ばれる職に就く人々から、もっと学ぶ機会を自ら持ち続けたいと思った。
Posted by ブクログ
日本の現実を知る中で広い視野で日本を見てみたくなりました。現在の農業、漁業、林業、そして食卓について普段知ることのない世界を知ることができました。
Posted by ブクログ
信念を持って仕事に取り組む3者との対話集。特に食卓のスペシャリスト岩村暢子さんの著書はまた読もうと思う。嫁姑問題の捉え方を知りちょっと反省(親は何かしてあげる、という存在と思うところがそもそも違う)
Posted by ブクログ
第一章「現代人の日常には現実がない」には衝撃を受けました。
1930年半ばに生まれた人々は,戦中・戦後の食糧難を過ごし「昔ながらの家庭の食」を食べずに育ちました。そして,その子,1960年代に生まれた人々は,親から食を含めた「家」を受け継ぐことなく,新しい日本の家庭をつくりました。そういった環境で育った我々世代は,実際にできたかどうかというよりも,前向きな姿勢の方が重視され,評価されるようになりました。
このような結果,日常の家事は母親任せで,震災のボランティアには積極的な若者が生まれたということです。つまり若者は,日常の「現実」に対する関心が薄れ,非日常の「体験」のみを求めるようになってきたということです。日常の現実が消えることは,その最小単位である家族の絆が崩壊するということにつながります。
養老孟司氏と食卓,農業,漁業,林業の専門家との対談集ですが,それぞれ深い考察の上での対談であり,難しい言葉は使われず,読みやすい内容になっています。