山田文のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
軍隊こそトップダウンの典型であったはずなのに、それだけでは勝てなくなった。だから戦い方を変えるのだ。
これだけでも時代が大きく変わったと言わざるを得ない。
軍隊の場合の大目的は、最小の犠牲で戦争に勝つこと。
トップダウンの作戦だけでは、この目的が達成できなくなっているのだ。
確実に現場での戦闘が複雑化しており、遠く離れた本部からの指示だけでは限界なのだ。
トップの間違った指示で犠牲になるのはいつも現場だ。
だからこそ現場も慎重になる。
戦争に負けてしまうのであれば、戦略・戦術を変えていくしかない。
それは本部であれ、現場であれ思いは同じ事だ
実際にはどうすればよいか。
本書では、今までのトップダウン方式だけでなく、ネットワーク型組織を重ね合わせたハイブリッド版を提唱している。
これはこれで当然だ。
完全に現場だけに権限委譲を計るのではなく、今までの組織を維持したまま横連携を図れということだ。
もちろん言葉で語るのは簡単だが、実際にどうやってそれを実現するのか。
それが一番難しいのだ。
これらハイブリッドを実現するための仕組みを構築していった事例の数々を本書では紹介している。
会社でもこれら取り組みはそれなりにやっていて、分かりやすい所で言えば、定例の全員集会での情報共有や、メンバーに対し他部署の兼任辞令を出すなどだ。
これら一つ一つもその方法論であるが、実際にはなかなか機能しないのが現実だ。
どうしても自分自身の保身が先に立ってしまい、組織としての大目的を優先しなくなってしまう。
最近は「心理的安全性」の言葉も一般化したが、ここでのベースもこの心理的安全性が担保されることが前提である。
お互いの信頼関係は心理的安全性あればこそであるが、その状態が確約されなければ、誰が自分を犠牲にしてまで越境するだろうか。
そしてさらに必要なのは大目的だ。
軍隊では分かりやすいが、会社で言えばミッション・ビジョンだろうか。
結局勝たなければ意味がないのだから、全員で協力していくしかない。
そして仲間を信頼するしかない。例え隣の部署であっても。
縦割り組織では、部門間の意地の張り合いで一体誰と戦っているのか分からなくなる時があった。
まずはその状態を解消しなければならない。
組織間の権力闘争は本当にくだらない。
トップの保身も本当にくらだらない。
全員が自己を捨てて、チームのために、勝負に勝つために戦うという気持ちにならなければいけない。
これが実は本当に難しい。
しかし勝つためには絶対に必要なことなのだ。
そのことをまずは全員と共有することから始めるしかないのである。
(2022/6/25) -
Posted by ブクログ
シリーズ第2弾、カペスタン警視正の元夫に関連する事件勃発。
前作でおなじみのメンバーに新たな加入で、「変な警察官」集団がパワーアップ!
うーん、なんだかみんな仲良しでヨイコになってしまって、ちょっと物足りない。
自分としては、もう少し各人の「隠れた秘密」をにおわしながら付かず離れずのチーム戦だった第1話の方がよかったかも……。
でも、アイロン早がけ世界選手権で盛り上がったり、モンスターカーへ異常な愛情表現をしたり、ゲームアバター作成で犯人のモンタージュ写真を作ったり(それで「犯人」という名前でゲームするし)、潜入したカジノで酔っ払いド下手なゲームをしたりなど、吉本新喜劇風のコメディドラマもあったし、前作からのキャラクターたちの私生活の様子も垣間見えて、それなりに楽しめました。
たぶん、暗く悲惨な北欧ミステリの読後に読んだら、最高の気分転換になったかも……。
第3弾があったらそうしよう。 -
Posted by ブクログ
シリーズ2作目。パリ司法警察の掃き溜め部署の特別捜査班。今回は、中世からの生き残りと考える精神的に問題を抱えるサン・ロウと前作でほぼレギュラー登場している脚本家の飼い犬ピルーとアル中の飼いネズミ、ラタの1人と2匹が新たなメンバーだ。
彼らは、1か月前に警察官幹部を連続殺人犯として逮捕した。大手柄の筈が警察署内部からは身内を売った班として今まで以上に敬遠された
古い未解決事件専門が何故か今回は発生して2時間の殺人事件に駆り出される。
被害者は、カペスタン警視正の元夫の父親リュフュスだった。
捜査は、カペスタン班・捜査介入部・刑事部の3部署で当たる事となった。
時を同じくして、南フランスでも同様の手口で殺人事件が発生していた。
被害者は、ジャック・メール家具屋の経営者だが会社を利用して資金洗浄を行なっているらしい。また南フランスに来る前はべつの名前だった。
第3の事件が発生した。リヨンで事前に新聞紙上で死亡告知されていた元銀行家ヴェロウスキが絞殺された
リヨンはカペスタンが警察学校で訓練を受けた地だ。第1の事件被害者、元義父もリヨンに居た。
使えない警察官達の捜査により3件の事件の関連性が見えた。20年前にリヨンで起きた銀行強盗。駆けつけた警察官はリュフュスで銀行家はヴェロウスキ、犯人の1人はジャック・メール。
20年経て事件関係者3人が殺された。リュフュスに捕まったラミエールは1か月前に出所している。有力な容疑者で3部署が彼を追い詰めるもある朝公園で銃撃され殺された。
そんな中、特別班のマスコミ通オルシーニの妻と息子が銀行強盗の被害者で亡くなっていた事実が判る。復讐の為に4人を殺害したのか。
元夫の義父であり元警視正だったリュフュスは悪徳警官だったのか、
前作同様に、緩やかに事件捜査が始まる。激しいアクションシーンは無し。銃撃戦も無し。グロい描写も無し。使えない掃き溜めメンバーは結束力だけは立派でボスのカペスタン警視正を信用しチーム一丸となって介入捜査部や刑事部に負けない様、捜査にあたる。
今回の舞台は、南フランスプロバンス、リヨン、パリで景色や食事、ワイン等パリ人らしいゆったりとした雰囲気が感じられる所も前作と変わらず良い感じです。 -
Posted by ブクログ
カペスタン警視率いる、問題警察官たちの巣窟〈特別班〉の活躍を描くシリーズ第二作。
今回は過去の迷宮入り事件ではなく、起こったばかりの殺人事件の捜査を命じられる。と言っても現場に着いてみればやはり〈刑事部〉や〈捜査介入部(日本で言えば暴力団対策担当と立てこもりやテロ対策の突入隊との合体?)〉に邪魔者扱いされ、捜査資料も古くて役に立たないものしか回してもらえない。
しかし〈特別班〉には優位性がある。何しろ被害者はカペスタンの元夫ポールの父親で元警察官だったのだ。同時に何故起きたばかりの事件が〈特別班〉に回って来たのかも分かった。
同性愛者であることを理由に組織を追われたルブルタンや書いた小説にモデルとして実在の警察官を出し過ぎてしまったロジエール、コンビを組んだ相手が不幸になる死神ことトレズ、元ギャンブル依存症のエヴラールは警察官としては問題ないが、パソコンは駆使出来ても基本や常識が分からないダクスやスピード狂で自分の体より車が大事なレヴィッツ、アルコール依存性に近いメルロは大丈夫なのかと心配になる。
今回はさらに自分を中世の騎士と信じるサン=ロウなる、とんでもないメンバーが加入。
ロジエールが飼い犬と勤務するのにようやく慣れたところ、次はメルロがネズミを連れてきた。やはりカオス。
しかしカペスタン始めメンバーたちの良いところは議論はしても互いの人格や性格や信条、セクシャリティについては否定せず受け入れているところ。
例えば言わなくても分かるだろう当たり前のことすら理解出来ないダクスには一つ一つ注意して付箋に書かせる。レヴィッツが何台車をオシャカにしようと怒らない。メルロの止まらないお喋りは聞き流しても遮りはしない。
何だか学校のような雰囲気だが、そうやってそれぞれが受け入れられているからこそ、それぞれが得意分野で捜査に活躍している。
まさか中世の騎士がこんなに活躍するとは思わなかった。そしてメルロのネズミも。
肝心の事件の方だが、カペスタンの元義父の前にも同一犯人によると思われる事件が起きており、さらに新たな殺人事件も起こる。
元警察官、町の名士、背景不明な男。この三人の共通点を追う中で、カペスタンらは辛い事実を知ると同時に意外な人物が関係していることも知ることになる。
これは前作以上に辛い結末になるのか。
カペスタンの元夫が元コメディアンというのも意外だが、死神トレズの特技も意外だった。しかもその特技の世界大会があるとは。
このシリーズを読んでいると、フランスという国の裏側を改めて知る。権利や自由を主張する国というイメージだが、この作品では同性愛に抵抗があるし性差別もあり、移民や人種に対する侮蔑や差別も日常的なようだ。
〈捜査介入部〉と〈特別班〉との連絡係として〈特別班〉に役立たずな資料しか持って来ないディアマンはやがてその〈捜査介入部〉から弾かれることになる。その理由は正に私たちの知らないフランスの裏側事情による。
日本も外国人を全面的にまたは好意的に受け入れているとは言いがたいが、その理由はフランスの事情とは違うと思う。島国で長いこと外国人に慣れていなかった歴史や銃犯罪が日常的でないことも多いに関係していると思う。私なんて英語で話しかけられても逃げ出すしかない。学校で長いこと英語を勉強したにも関わらず。
〈特別班〉はこのまま肥大していくのか、どこに向かうのかも気になるが、カペスタンが元夫との関係をどうするのかも気になるなぁ。まだずっと先のことになるだろうけど。