山田文のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ご多分に漏れず、よく知らないのに知った気になってました。まずはフランシス・フクヤマ氏に対する偏見・誤解から脱出し、近しい所ら辺へ辿り着ける入門書なんだろうと思います。対話形式ですし、感覚として新書に近いです。
私は「成長」に対し懐疑的というか、神話めいた印象を拭うことができなかったのですが、成長のない世界はゼロサムの略奪ゲームになるという指摘は発見でした。また、国民は共同幻想(この単語は使われていません)というか、物語を共有することで構築されるとか、その物語は人種や民族や宗教ではダメだとか、基本に立ち返る言説が頻出する本でした。良かった。 -
Posted by ブクログ
気温1.5℃上昇で、気候大災害となる。あらゆるカーボンニュートラルの方策を行う必要があり、著者が投資しつつ行動していることについて解説されている。いろいろな環境本が存在するが、自分事で実践している人が、根拠を示しつつわかりやすく簡潔に述べている上で、最も納得しやすい内容になっている。
巷では、自らの金儲けの手段として世間を誘導しているかの如く囁かれてもいるが、賢明な読者であればそうではないことにも気づくはず。
貧困国の犠牲の上に成り立ってきた経済成長、そして気候変動によって大きな被害を受けるのも貧困国であることも説かれている。故に、温暖化の影響適応できるように支援を受けて然るべきと主張されているところは共感できる。ビジネスの視点で技術で克服する可能性を試みている、彼氏かできないことでもあり、それを企業や産業が今後の世界経済を牽引することで達成すべきとも主張。それを政策でもカバーするという言わば「市場・経済・政策」はネットゼロ必達のためのひかれなかればならない3つのレバーであるとビジネスの経験を通じて説明している。
今、日本でも自然環境保護と地球環境保全がぶつかり合う場面が少なからずみられ始めているが、国民や政府が、きちんとした理解で臨まないと、日本だけ世界から批判されることになりかねないと感じます。動植物や森林の保護と自然・再生可能エネルギーの普及面で、環境と経済のバランスを取りつつ、日本国内で最低限の何をする必要があるのかを関係性を持って政策、施策を定めなければならないと強く感じました。国民、民間任せではロスが大きく、結果、達成できず、地球環境の保全はおろか、人類が生きていけなくなることを自覚した。 -
Posted by ブクログ
もう増えるの?w
個性豊かな特別班の面々に早くも新たなメンバーが加わります
もちろん既存メンバーに負けない個性を持っています
2作目にしてメンバーが同僚から仲間になっているのが凄い伝わってきてなんだか嬉しくなっちゃいます
また巻末の解説にも言及がありますがこの作品の 魅力はなんといっても否定されない気持ち良さです
様々な個性が警察という組織の中で否定され続け疎外されてきた特別班のメンバーたちもここでは否定されずにそのままの個性を活かし持っている能力を最大限に発揮して活躍します
そしてそれはリーダーの主人公カペスタンが自然体で受け止め、受け入れ、信頼して任せてくれるからに他ならないのです
カペスタンは絶対に否定しません
そのままでいいんだと全身全霊で伝えてくれます
もちろんそれは特別班のメンバーだけでなく読み手にも向けられてる気がするのです
「あなたはあなたのままでいいんだ」と
自分を信じてくれるカペスタンを信じて今日もありのままの自分で生きていくぜ! -
Posted by ブクログ
【はじめに】
2019年末に中国で発生したコロナウィルスは瞬く間に世界中に拡散し、多くの命を奪い、社会的・経済的損失を拡大させた。コロナワクチンは、その影響の際限のない拡大を今ある程度までに抑えることに大きく貢献することとなった。本書は、このコロナワクチンが驚くべき速度で開発された成功ストーリーについて書かれている。
著者のジョー・ミラーは、ファイザー製ワクチン開発の主役となったビオンテック社を中心に多くの関係者にインタビューを行った。創業者のウールとエズレム夫妻が本書の主役だが、ビオンテックのその他の数多くの社員や投資家、ファイザーの重役・社員も実名で登場し、人間ドラマも含めて開発物語が紡がれている。
著者は、ビオンテックがこの成功を収める前から取材を開始している。そこで築いた信頼関係が、この本をまた信頼のおける深い物語としている。
【概要】
■ mRNA技術
ビオンテックは、もともとは患者固有の腫瘍向けにカスタマイズされたワクチンの開発技術としてmRNAに着目していた。このワクチンは、mRNAが不安定であるということ(そのために付加剤や冷却保存が必要)と、それがあまりにも新しいことを除けば、原理的には遺伝子情報だけを必要とするため開発が非常に早くなることが期待されていた。このmRNAの性質は、パーソナライズが必要で、かつ緊急投与を要する癌治療薬として期待されるところであったのだが、喫緊に必要とされたコロナワクチンとしてもまさに必要とされる性質でもあった。このmRNAワクチンの技術がこのタイミングで存在し、挑戦する意志とガッツがある人々の手にあったことは世界にとって幸運であったと思う。
本書では、一般的な免疫系の説明や、ワクチン開発の歴史、一般的な薬の開発プロセスなども詳しく説明されている。その上で、mRNAが「指名手配ポスター」となり、T細胞と連動してワクチンとしてどのように働くのか、その技術的な課題はどういうものであったのかも説明されていて勉強になる。自分の身体の中に入り、これだけ多くの人に摂取されたワクチンについてある程度その仕組みを知ることは世界に対する誠実さという面からも重要なことではないかと思う。
すでにウールがコロナ禍の2年前にビル・ゲイツと会い、癌治療薬として説明したmRNA技術についてゲイツがパンデミックの発生に対してワクチンを開発できるようなソリューションを準備しておいた方がよいと助言していたというエピソードは震える。このときの助言を受けてファイザーとインフルエンザワクチンの共同開発契約を交わしていたことが結果的に役に立ったのだ。
■ 開発速度
コロナワクチン開発においては開発速度が命だった。このウィルスが世界的脅威に発展するとわかる前に、このプロジェクトは始められなければならなかった。なぜなら状況はすぐにでも一時を争うようになるが、そのときではすでに時は遅しである状況だからだ。「プロジェクト・ライトスピード」と名付けられたこのワクチン開発プロジェクトは幾多の困難を乗り越えて最速で実現された。「まず最速を、それから最高を目指せ」もちろん、現実の世界では多くの命が失われ、気軽に間に合ったとはいえない状況であることは確かだが、少なくともこれなかりせばの世界と比較して、何人もの命と経済活動の時間を救ったことは確かだ。
ワクチン開発はまさしく時間との戦いであった。ひとつづつ試薬の効果を試すのではなく、数多くの候補を同時並行的に試していくという方法を取ったり、ワクチンを生産する工場をリスクを取って事前に確保したり、急に出てきた有力候補を時期を遅らせることなく治験に採用したり、といった苦労話が綴られる。
■ ファイザーとの協力体制
ビオンテックは、現在一般には「ファイザー製ワクチン」と認識されている通り、製薬大手ファイザーとの協力体制を取ることで実現された。安全性や効果を確認するための試験や、開発後の流通、それまでに必要となる資本とリソースがビオンテックにはなく、その調達を大手製薬会社との提携により獲得することが必要だったからだ。この提携の経緯もこの本では詳しいが、地球規模の危機を前にして、ファイザー社もできるだけ早くかつ大量にデリバリーを行うという目標に向け、上層部含めて志をひとつにして進められてきたことがわかる。タームシート締結に向けた権利交渉のシーンは担当者は文句を言っていたようだが、トップダウンでリスクをお互いに取ったからこそうまくいったのだと思わされる。
最後にB2.9と呼ばれるワクチンの盲検試験の結果がファイザー社からウールにもたらされ、その結果が想定をはるかに超える成功であったことを聞く場面は感動的である。成功が保証されない中で、いかに綱渡りであり、またいくつかの偶然にも助けられたことが本当によくわかる。ビオンテックにとっても、世界にとっても賭けに勝った瞬間だった。
【所感】
本書を通して読むとコロナワクチンはいくつかの偶然と強い意志の結果として完成して世に出されたものであることがわかる。そもそもワクチン開発というものは、その歴史上うまくいかないことの方が多かったし、安全性の確認などに時間がかかるものであった。そのワクチン開発の新しい手法としてmRNAを使った手法がこのタイミングで実用化されたこと、そしてその新しい手法を使ったにもかかわらず1年足らずで製品開発までこぎつけたのは、おそらくは我々にとって僥倖であったのだろう。
ビオンテックが開発したコロナワクチンは、タッチの差で間に合わず、自分は2021年6月に感染してしまったので、もう少し早ければ..と思うところなのだが、この物語は悲劇の中の一つの英雄譚として後の世に知られるべきだろう。もちろん、取材から再構築した物語であり、採用されなかったエピソードや、読み物として嘘にならない範囲で修飾が行われていることだろう。それでも、なお科学の勝利の物語として記憶されるべきだろう。そのことを確信できた本だった。
そして成功体験と資金を得たことによって、mRNA技術を用いたパーソナライズされたがんワクチンも遠くない将来に実現されることも期待している。ひとまず、この本を読んだので、3度打ったワクチンはすべてファイザー製にした。
コロナワクチン開発のことを簡単に知りたいという方には少し冗長かもしれないが、とにかくお薦め。 -
Posted by ブクログ
ネタバレすごく面白かった。温室効果ガスの排出を510億から0にしなければならない理由、現状の問題の細分化が簡潔にまとめられていた印象。
具体的な行動も第11章以降で述べられている。
第11章 ゼロ達成に向けた計画
イノベーションの供給を増やす
[1] これからの10年で、クリーン・エネルギーと気候関係の研究開発予算を五倍にする。
必要な技術
炭素を排出せずに生産される水素
フルシーズンもつグリッドスケールの電力貯蔵
電気燃料
次世代バイオ燃料
炭素ゼロのセメント
炭素ゼロの鋼鉄
植物由来や細胞由来の肉や乳製品
炭素ゼロの肥料
次世代核分裂
Fガスを含まない冷媒
核融合
炭素回収(直接空気回収と局所的な回収)
地下送電
炭素ゼロのプラスティック
地熱エネルギー
揚水発電
蓄熱
干魃や洪水に強い食用作物
炭素ゼロのパーム油の代替物
[2] 高リスク高リターンの研究開発プロジェクトに、より多くの資金を投じる。
[3] 研究開発を最大のニーズとマッチさせる。
[4] はじめから産業界と協働する。
イノベーションの需要に弾みをつける
購買力を行使する。
コストを下げてリスクを減らすインセンティブをつくる。
新技術を市場の送るインフラをつくる。
新技術がほかと競合できるようにルールを変える。
炭素に値段をつけるカーボン・プライシング。
グリーン電力基準。
グリーン燃料基準。
クリーン製品基準。
古いものを追い出す。
-
Posted by ブクログ
ビルゲイツが気候変動に対してとても勉強して、活動していることがわかった。技術の知識がバックグラウンドにあるので、数値やファクトに基づく記述が多くとても分かりやすかった。年間の温室効果ガス排出量を510億トンと明記し、排出元を割合で示していたのは、目標達成に向けたイメージが湧き良かった。グリーンプレミアムという、環境に配慮した製品とそうでない製品の価格の差をどう埋めるかに、技術革新や政策、市場の変化が大切と考えるなど、技術革新だけでなく、政策や市場といった社会の仕組みのイノベーションも大切だと改めて思った。政策や市場のイノベーションをどのように起こすか、ファクトから課題を探し、どのような解決策があるか考えていきたい。
-
Posted by ブクログ
「パリ警視庁迷宮捜査班」シリーズ2作目。
カぺスタン警視率いる、はみ出し者ばかりの特別班が活躍します。
アンヌ・カぺスタンは、優秀な刑事だがある事件の過剰防衛で休職、復帰後に新たな特別班を任されました。
迷宮入りした過去の事件を再捜査するのが専門ですが、今回は起きたばかりの事件の捜査にも加わることに。
なぜなら、被害者がカぺスタンの元夫の父親だったから。
元夫ポールは人気に陰りが見えているコメディアン、その父親というのは警視でした。
とはいえ、他の部署が資料をほぼ独占、特別班にはわずかな情報しか回ってきません。
カぺスタンは元夫に会うのも嫌だったのですが…
この気持ちが当初は暗く描かれているため、サイテーなやつで全然希望はないのかと思いきや、そうでもない?
部下たちの中でもしっかり者のㇽブルトンはゲイとカミングアウトしたら左遷され、ロジエールは警察の内情を暴露した内容の小説がヒットしたので睨まれた女流作家、若いエヴラールはギャンブル依存症の女性だが捜査はかなり地道。
パソコンに詳しいダクスが変わり者というのは他でもあるような設定だけど、やはり程度が違う。
スピード狂のレヴィッツ、危な過ぎ。
ペットの犬やネズミまで活躍する楽しさ!
そ、そして今回は~自ら銃士と名乗るアンリ・サン=ロウ警部が登場。
はい、「三銃士」なら大好きなので、わかりますが~
えっ、17世紀から生きているつもりなんですか?
それでよく警部でいられる…(笑)
これはもうドタバタに徹するのかしら?
と思うと、そうでもない。
舞台劇のような味わいと言いましょうか。
色々な要素を含み、事件には重さもあるがその描写に力点をおかず、創作なんだからこれぐらいぶっ飛んで面白くしなきゃ、でしょ?という余裕綽々なムード。
それぞれが爪弾きにされた理由をお互いに気にすることなく受け入れる空気を作りだしたカぺスタンの度量。
良さを引き出されたメンバーが、いざという時にけっこう一丸となるのです。
ゆっくり深呼吸したくなるような空気を醸し出して、おまけに死神とあだ名されるトレズの意外な出番まであり、笑顔で読み終われる。
今回も、面白かったです☆ -
Posted by ブクログ
“Project Light Speed” ビオンテック社 光速のワクチン開発全記録
今も世界中で繰り返し接種されているCOVID-19に対するmRNAワクチンの代表選手、ファイザーのワクチンの開発の全プロセスがわかる一冊です。ファイザーのワクチンとは言っても、ファイザーはいわば発売元であり開発・製造しているのはドイツの会社ビオンテック社です。
ビオンテック社はトルコ系ドイツ人(ドイツが労働力不足からトルコ移民を多数受け入れていた時代に移民してきたトルコ人の二世)夫妻が2008年に作った会社。夫妻とはウール・シャヒンとエズレム・テュレジです。それぞれケルン大学とザールラント大学出身の医師で起業家。
ビオンテック社は創業以来、mRNAを使った「がん免疫療法」の研究と実用化を目標としていました。21世紀になってそれまで扱いにくい分子であったmRNAが多くの研究者の努力によって次第に治療薬として使える可能性が見え始めていました。それは、たとえば前述のカタリン・カリコの開発した技術などがそれです(前述のように、カリコは2018年からビオンテックの副社長に就任しています)。
ビオンテック社では、それらの技術を統合しさらに日々出現する新手法を取り入れ、治療対象である「がん」の抗原部分のDNA配列さえわかれば
1.それに相応するmRNAを人工的に作り
2.mRNAをがん患者に投与することで生体にmRNAから抗原タンパクを作らせ
3.さらにそのタンパクが攻撃目標として認識され免疫反応を引き起こし
4.その活性化された免疫反応で「がん」そのものが攻撃される
というmRNA抗がん剤の開発の一連のプロセスを完成しつつあった・・・のです。
そのドンピシャのタイミングでCOVID-19パンデミックが起こったのです。武漢からヨーロッパに感染が広がり始め、中国の研究者がウイルスの遺伝子配列をインターネットに公開したのが2020年1月10日、ウール夫妻が自分たちのmRNA技術でCOVID-19に対するmRNAワクチンを作ることを決意したのは1月21日。日本の第1号患者が診断されたのが1月15日ですからビオンテックの動きの速さには驚かされます。
そこからウールの言う「Project Light Speed(光速プロジェクト)」がスタート。テクノロジー・人員・資金・治験・政治的駆け引きなどなど、さまざまに絡み合いながら進行しワクチンが完成し認可を受け、最初の一般人に接種されたのが10ヶ月後の2020年12月8日、驚異の速度です。
ワクチン開発は単に研究が好きなだけ・技術力だけではできません。テクノロジーへの目配せ(驚くべき論文渉猟量)・周辺技術への配慮・資金繰りにロジスティクス、そして何よりも人間に使用するための何相にも及ぶ治験。それらを着々とこなしていくビオンテック社のチーム力とウール夫妻の指導力はすごい。研究が好きなだけではなく、現実社会における実行力がものをいいますね。
さまざまなことがジャスト・タイミングで一気に結合して光速のワクチン開発。そしてそれが何十億人に接種されているという現実。もちろんビオンテック社とファイザーの得た利益も桁外れです。 -
Posted by ブクログ
世界の大気中に増える温室効果ガスは毎年510億トンに上る、その内訳は発電27%、製造(鉄鋼やセメント等)31%、農牧業(家畜や肥料)19%、移動(乗用車、トラック・トレーラー、飛行機、船)16%、冷暖房7%、これは世界的な統計ですが米国だと移動の比率が第一位となっていて、概ね先進国はその傾向が強いとのことです。地球温暖化・温室効果ガスの話では、発電と自動車が主にネタとなりますが、全てのケースを洗い出して論を進めるところが元プログラマーらしい現状分析です。
著者は元々サハラ以南の貧しいアフリカに心を痛めていて、この地域の電気が使えない6億人に電気を提供しようとしている中で、気候学者と話をすることがあり、この問題に目覚めたようです。著者の元々の活動は私も知っていて、以前はアフリカにもWindows売りたいのだと思っていましたが、この本を通して慈善家としてのビルゲイツ氏を少し分かった気がします。
著者の主張する2050年二酸化炭素排出ゼロに向けては、製造や農牧業に関しては大きな技術革新がないと難しそうなので、先ずは自動車と発電の二酸化炭素ゼロ化が急務です。
山林を切り倒して太陽光発電のパネルを設置するなどは本末転倒になるので、国土の狭い日本だと洋上風力が有望そうです。また、EUも認めたように原子力発電止む無しなのかもしれませんが、従来型の核分裂方式とは違った核融合方式に希望が見出せます。自動車(特に乗用車)は公共の交通機関の利用を推進して、必要最小限のEVそして自動運転に収斂していくのが望ましいですね。 -
Posted by ブクログ
気候変動という大きな問題に対するアプローチ、思考の手順が参考になる。
人類の進歩は素晴らしいという前提で、しかしマイナスの面もあることを認め、だからといって進歩を否定せず、解決策を考える姿勢に共感。
【前提】
◯目標
1気候大災害を防ぐには、ゼロを達成しなければならない
2太陽光や風力といったすでにある手段を、もっと早く効果的に展開する必要がある
3目標達成を可能にするブレークスルーを生み出し展開しなければならない
◯基本の数字(問題を数値化・具体化、前提理解)
・温室効果ガス年間排出量:510億トン(うちCO2は370億トン、炭素換算100億トン)
・2020年下半期の石油平均価格:1ガロン(約3.8リットル)あたり1ドル
※1バレル(42ガロン)42ドル
※石油日消費量40億ガロン → 安価、大量
・過去のエネルギー移行期間:30〜70年 → 時間を要する
◯思考ロジック(問い立て)
1 510億トンのうちどれだけか
・ゼロにするという第一の目標と結びつけてすべてを考える
・ある取組は意味ある削減量なのか。すなわち、増える見込みなのか変わらないのか
・将来的に、最低でも年間5億トン(世界の排出量の1%)を削減できる技術に資金提供する
2セメントはどうするつもりか
・温室効果ガスが排出される5つの異なる活動すべてに解決策が必要であることを心に留めておく
3どれだけの電力なのか(電源設備容量)
・世界:5000ギガワット
・アメリカ:1000ギガワット(日本:250ギガワット)
・中規模都市:1ギガワット
・小さな町村:1メガワット
・平均的なアメリカ家庭:1キロワット
※ただし、太陽光などは稼働率30%程度を考慮
4どれだけの空間が必要か
※本書の数値は正しくない可能性があるが、化石燃料>原子力>太陽光>水力>風力>バイオマス 程度を押さえておく
※参考:太陽光1kWに必要な面積15m2
5費用はいくらかかるのか
・グリーン・プレミアム(GP):化石燃料に比べて追加でかかる非有用
・GPが低いか全くないもの:今すぐ展開すべき。制度等のコスト以外の障壁を取り除く
・高いもの:技術開発等に投資を集中
【GHGを排出する5つの活動】
1電気を使う:27%
・アメリカでのGP:1.3~1.7セント/kWh(15%増)
※ アメリカ平均家庭電力消費量:29kWh/日
・バッテリー1kWh1、1000サイクル、100ドル
夜間電力コストは日中の約3倍
冬季電力コストはさらに大きい
発電容量を未だかつてない量確保する必要がある
2ものをつくる:31%
・鋼鉄:加熱還元、原材料としての炭素添加。50億トン、鋼鉄1トン製造に1.8トンCO2排出。GP16-29%
・コンクリート(セメント):原材料としてのカルシウムを取り出すための石灰石からのCO2排出。40億トン、1体1で排出。GP75-140%
・プラスチック:焼却・分解時にCO2排出。長期間固定。GP9-15%
①可能な限り全ての工程を電化する
②脱炭素化された電力網からその電気を獲得する
③残った排出分には炭素回収を用いる
④資材をもっと効率的に利用する
3ものを育てる:19%
・メタンのCO2比温室効果は28倍、NO265倍
・家畜腸内発酵:20億トン、3-ニトロオキシプロパノールによりメタン排出30%削減
・肥料による温室効果ガス:13億トン、半分以上は地下水や地表水に流出して汚染、NOとして空気中に漏出
・森林破壊
※植林の効果は限定的(1本の木が一生に吸収するCO2は5トン、焼却すると放出、植林しなかった際の土地利用)
4移動する:16%
・長距離、大型、高出力はバッテリーは不可
・バッテリー、次世代バイオ燃料、電気燃料(水素)
5冷やしたり暖めたりする:7%
・エアコン:2050年までに冷却のためのエネルギー需要は3倍
・現在購入されている典型的なエアコンは再高性能機種の1/3の効率
・ヒートポンプはアメリカでは11%しか普及していない
→既存の技術で大幅改善が可能。規制の問題
・フロンガス対策
・暖房については脱炭素化に向けては次世代バイオ燃料等のイノベーションが必要
【政府が目指すべき7つの目標】
1投資のギャップに注意する
・エネルギー産業は規制された資本集約型産業
・収入の0.3%程度しか研究開発に使われない
・利益が得られる見込みがなく民間セクターが投資しない研究開発に資金を投じる
2競争の場を公平にする
・グリーン・プレミアムをゼロにするには炭素を排出するものを高くする方法も(政策のイノベーション)
3市場以外の障壁を乗り越える
・例えば大家が建物設備を効率性の高いものに変えないのはエネルギー料金支払いが自分でないため
・インセンティブの適正化
4最先端の技術を反映させる
5公正な移行を計画する
6困難な課題にも取り組む
・蓄電、クリーンな燃料、セメント、鋼鉄、肥料など
7技術、政策、市場に同時に働きかける
・イノベーションを後押しし、新しい企業を誕生させて、新製品を早く市場に送り込むには3つを同時に動く仕組みが必要
【ゼロ達成に向けた計画】
・2030年までに排出を少し削減するためにすべことと、2050年までにゼロを達成することは根本的に違う(目先の削減のためにロックインされる取組もあることに注意)
・2030年の目標は2050年ゼロ実現の通過地点でなければならないことを意識 -
Posted by ブクログ
気候変動に関する本。ビル・ゲイツ著。
現在の温室効果ガスによる気候変動が、地球の規模で非常に大きな問題であることが改めてわかった。
温室効果ガスの削減に向けて、技術的な観点での様々なアプローチが、本書の中で紹介されている。気候変動は政治的な側面で捉えられるケースがよくあるが、それとは切り離し、テクノロジーによる解決策にフォーカスを当てている。エネルギーの生産・消費の仕方、農業、ロジスティクス、工業など、各分野における最新技術やイノベーションが非常に興味深く、研究開発を支援する財団の貢献もよくわかる。今後にむけて、個人レベルから国家レベルへの提案も示されており、各所で策定されるポリシーや戦略に影響を与えそうである。