あらすじ
ベルリンの壁崩壊から三〇年以上を経た二〇二一年に、民主主義とその根底にある価値観を擁護しなければならなくなるとは思っていなかった。
国際政治がふたたび景気後退、軍備拡張、社会不安、恐怖に支配されるとは想像しがたかった。現在の権威主義的な傾向とナショナリスト的な保護貿易主義が束の間の現象として終わるのか否かは、わたしたち民主主義諸国の強さにかかっている。
民主主義諸国はいま直面している課題にうまく対処できるのか。できないのなら、民主主義諸国をより回復力あるもの(レジリエント)にするにはどうすればいいのか。
――本書編者 マチルデ・ファスティング
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Posted by ブクログ
ご多分に漏れず、よく知らないのに知った気になってました。まずはフランシス・フクヤマ氏に対する偏見・誤解から脱出し、近しい所ら辺へ辿り着ける入門書なんだろうと思います。対話形式ですし、感覚として新書に近いです。
私は「成長」に対し懐疑的というか、神話めいた印象を拭うことができなかったのですが、成長のない世界はゼロサムの略奪ゲームになるという指摘は発見でした。また、国民は共同幻想(この単語は使われていません)というか、物語を共有することで構築されるとか、その物語は人種や民族や宗教ではダメだとか、基本に立ち返る言説が頻出する本でした。良かった。
Posted by ブクログ
昨今の世界情勢や閉塞感はどこから来るのか。
自由民主主義を構成するもの
近代国家であること、法の支配によること、制度が民主的な説明責任を果たすこと
現在の懸念
権威主義国家の台頭、政治の軸がアイデンティティによってきた、右派ポピュリストによる正統性主張と法制度の掘り崩し
自由民主主義の繁栄のために
社会の内側からの国民形成、国民理解
=伝統や歴史を土台にしたシンボル
自分たちの民主的な制度と諸価値の正統性をみんなが信じる
=ナショナル・アイデンティティ
政策についてよく考え反対者の意見にも耳を傾ける
=選挙に行き投票する
世界経済の自由化が凄まじいほどの格差を生み、解消へ動く右派ポピュリストによる法制度の掘り崩しと経済力を付け大国となった権威主義国家の台頭。これらの勢いに民主主義が押されている印象。
ナショナル・アイデンティティを持ち、伝統や歴史に基づく国民形成が肝要と説くが、今のところ権威主義が自由民主主義に取って代わることはないと若干歯切れが悪く感じる。
それほどかつてない危機感があるのだろう。
歴史は繰り返すのか、歴史から学べないのか。