砂原浩太朗のレビュー一覧
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藩邸の差配役…読んでみると、会社の総務課のようなイメージでした。
五郎兵衛が、実直にお勤めしていて静かで温かい雰囲気の中に小さな笑いあり、ちょっと不穏な動きもあり。
ぐいぐい引き込まれる感じではありませんが、花や虫、自然の描写も美しく、楽しんで読みました。
これはシリーズものになりそうな作品です。
この作家さんは野鳥好きですね。
小説で、頬白や山雀の名前が出てくるのは珍しいと思います。
特に気に入った野鳥の描写は
「翡翠(かわせみ)が一羽、五郎兵衛と並んで川面を滑っていく」
ある人を追って懸命に走る五郎兵衛と、並んで滑るように飛んで行くカワセミ…読みながら目に浮かぶようでした。 -
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『高瀬庄左衛門御留書』で山本周五郎賞を受賞した著者のデビュー作。
信長・秀吉・家康とめまぐるしく覇権がが移りゆく時代を潜り抜け、加賀百万石の礎を築いた前田利家、彼を側近として仕えた村井長頼を主人公とした歴史長編。
時に厳しく時に温かい利家と長頼との主従関係の固い絆が語られる。
長頼が問う。
「殿は・・・天下人になりたいと思われませぬので」と。
それに対して利家は
「・・・漢(おとこ)なら、だれしも天下を望もう。・・・だが、わしが目指すのは、天下一のもののふ」と答える。
利家の性格・時代状況のなかでの彼の位置を著す箇所ともいえる。
そして、秀吉と柴田勝家が覇を争う賤ヶ岳での戦いに臨み、どちらに着 -
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面白かった!!高瀬庄左衛門 、かっこええ、、。
50歳で隠居、お役目(郡方)は息子に譲り、その
いきなり息子が出張先で死亡する、というところから始まる。
かなり大変な事柄であり、その後もたくさん事件があり
事柄だけを並べると、どんなハードボイルドミステリ時代小説か?!
って感じなんだが、
全体的にほんと、どたばたしてなくて、
とっても静かで落ち着いていて、
スゥっと心が凪いだまま読める。文体の美しさと、
情景のすばらしさもあるかと思うが、
主役の庄左衛門はもちろん、志穂も弦之助も半次も余吾平も
大変好ましく、魅力あふれる。次郎右衛門めちゃめちゃかっこいい。
なんせ、年寄りが全員カッコ良すぎる。 -
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砂原さんを追って、6冊目。一時、だれた感無きにしもという作品、箇所もあるにはあったが。
これはよかった。若い頃、時代物にはまった後、定型的人情噺に厭いて、離れた(特に女流作家ものは)
近年の雑誌連載物をまとめているが概ね、江戸期に底辺の男女愛と行方を綴っている。
士農工商ががっつり社会の骨に組まれていた当時の社会。
幕末社会の風俗写真を見ても臭ってくるような時間だったことは想像に難くない。
まして長屋住まいなどは。
砂原氏はお家騒動、跡目もの、道場藩校と士族の日常を出しており、そちらも面白かったが、今回は「創造とはいえ、リアルに眼前に情景が見えてくる」ような作品揃いだった。
最期の「妾 -
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このところ、連続してとうっかモノを楽しんでいる。
帯にある「高瀬。。」「黛家。。」に続いてこれが記されているところを見ると、佳作とみられているのだろう。
思った通りの良作、朝に読み終えていい気持ちになれた。
筋でいえば、ありふれたといってもいいだろうが行間に流す余情がこなれている。
5編が収められている~若君失踪、入札疑惑、妖の女譚、正室の愛猫顛末、そして底流を流れていた藩邸の膿・・
きっちり骨組みを立てているから、伏線回収が収まるところへ行くのに違和感がなくすっきり
差配役 五郎兵衛、娘 七緒と澪 亡き妻の妹咲乃
五郎兵衛は40半ばか・・時折顔を出す聡明な少年 若君
国元 藩主和泉守
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時代小説は舞台が限られているからやむ得ないのだが、筋書きはありきたり・・だが、砂山氏の筆は違う!
何といっても骨太い。
時を、藩ののドラマはともに伏線がびっしり惹かれている。それは論理的にきっちり回収されており、読後の充実差に通じている。
1冊目で読んだ「高瀬庄左エ門」でも十分に満足したが、こちらはそれを上回る重厚、かつ複雑な筋の展開だ。
代々筆頭家老の家に生まれた3兄弟。
長ずるにしたがって、想いを抑えて人生が展開していき、藩の運命とリンクしてあたかも転がる石の如く半ば宿命ともいうような時間が流れた。
新三郎を主軸に置き、長兄次兄、そしてそれぞれの伴侶、女を配し、愛の種々の形が見事。
キ -
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市井を描く八篇からなる短編集。
砂原浩太朗さん、そう来たか!
長屋に住む人々の物語。
どういう展開になるのか楽しみにしていた。
腰高障子を引けば全てが見渡せるほどの狭さ。
井戸端でのかしましい声。
全編を通して伝わる、長屋のじとっとした空気が重苦しい。
「幼なじみ」
P183
〈いちど裏長屋に生まれたら、ふたたび表通りは歩けない〉
「錆び刀」は、浪人に落ちた者の話。
どうしようもなく自分の想いに流されてしまうが
清々しさも感じられる一編。
武士の矜持を描いた物語も読み応えありだが
精一杯生きる市井の人たちも良かった。
今作が初めてという読者のみなさん。
既刊もぜひ。