砂原浩太朗のレビュー一覧
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「藩邸差配役日日控」シリーズ第2弾。
神宮寺藩江戸藩邸の差配役・里村五郎兵衛が、持ち込まれる様々な厄介ごとを整えていく姿を描く6つの短篇。
差配役とは総務部総務課のようなお勤め。他所がやらないことを全て引き受けるいわば何でも屋。
決して切れ者という風情ではないが、穏やかで、思慮深く、つい面倒を引き受けてしまう人柄は頼りになる上司って感じ。
妻を早くに亡くし男手ひとつで娘二人を育てた五郎兵衛は娘の行く末にも心配の種が尽きない。
強面の上司の顔色を伺い、やる気のない部下を温かく見守り、気難しい同僚といつのまにか心を通わせる勤め人としての姿や、気の合う道場仲間との飲み会の様子などどのシーンも微笑ましい。
新たに判明した収賄事件の真相と、それに打ちのめされた五郎兵衛の姿が痛々しくて胸が痛む。そしていつのまにか仲良くなった浪岡と出した結論に心が震えて泣きそうになった。
七緒には夫の死を乗り越えて、次作では是非、進藤とご縁がありますように。 -
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架空藩の江戸屋敷で起こる細々とした事柄を担う「差配役」の責任者、現代でいえば部長あたりの40代武士が主人公の藩邸差配役日日控シリーズの第二弾。第一弾はそれなりに大きな次元というか謀が裏で動いていたが、第二弾は新たなエピソードも加わりつつ、その後日談として、より日常の細々した事柄、事件ともいえないような事件を取り扱った6編の連作短編となっている。それでは地味にすぎないかと思うが、そうならないところが砂原節の真骨頂だ。心が穏やかなままちょっとどきりとしたり、ハラハラしたり、もちろん最後にはそうきたか!とおでこをペチンとしたくなる仕掛けも仕込まれている。NHKのBSとかで映像化してくれないかしら。
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良いですね。藩邸差配役日日控シリーズ第二作。
舞台は神宮寺藩江戸藩邸。陰では“なんでも屋”と揶揄される差配役の里村五郎兵衛が主人公です。
前作から続く、五郎兵衛の二女の出生の秘密やお納戸方で起きた収賄事件を背景にしつつ、主人公の身辺で起きる些細な事件の顛末を綴った六つの連作短編です。
前作の感想に「どこか茫洋とした味わいの若手・安西はもう少し活躍させたかった」と書きましたが、本作でも相変わらずの茫洋ぶり。一方で、どこか剣呑だった江戸家老の懐刀・波岡喜四郎が意外な一面を出してきました。今後の展開が楽しみです。
五郎兵衛は今も道場通いを続けていますが、作中で「四十も半ばとなって、とうとう真剣での斬り合いかと……」と吐露するように、派手な剣劇があるわけではありません。第2話で大工の源蔵親方が「なにも起こらないのは、起こらぬようにしているお人がいるから」と五郎兵衛の心遣いに感じ入るように、登場人物たちの日常を丁寧に描き出した、しっとりとした情感と静謐感の漂う時代小説です。 -
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里村五郎兵衛の宮仕え日誌、その2。
武士の堅苦しさや、武士ならではの意地や気遣い、そんな中で五郎兵衛の人情が滲み出て、物語の他の人物たち、五郎兵衛の娘たち(七緒、澪)、亀千代君、ちょっと今時な下役の安西主税、五郎兵衛と新しい関係を結ぶ浪岡喜四郎など、読み進むうち、だんだん魅力を感じてくる。
「卒爾ながら(失礼ながら)」や「ご免候え」などの細かい言葉遣いなんかも、世界観として、グッとくるんですよ。
そして今回も、大きな謎が一つ、潜んでいる。
エピソードでは、安西の父、惣兵衛のちょっとした秘密や、梔子(くちなし)姫の思い、亀千代の心遣い、浪岡と五郎兵衛の関係など、それぞれの心の裡が、行間から伺えて感慨深い。
まだ続くと思われるので、楽しみ。青山文平さんの時代劇と共に、武士を描いたものとして、好きな小説になった。 -
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7万石の神宮寺藩の藩邸に勤める差配役、里村五郎兵衛の物語。
差配役とは、ありていに言えば何でも屋。海鼠塀の塗り直しとか、屋根の修理、書物の整理など、雑用ばかりと思いきや、事件が起こる。上野で花見の最中に、亀千代君が行方不明になったり、奥方の飼い猫探しが始まって、町中の猫を集める羽目になったり・・・。何やら権力争いの陰謀もあるようで、五郎兵衛の家族が巻き込まれる・・・。
最後に意外なことが明かされて驚く。
舞台と人物がしっかりしている、オーソドックスな時代ものだと思ったけれど、物語の仕掛けも面白かった。それぞれの人物もなかなか魅力的。実直だったり、堅物だったり、狸だったりするなかで、安西主税は面白い。
続編で、さらなる謎が解き明かされそう。 -
購入済み
砂原浩太朗の著作としては5冊目。藩邸の差配役と言われる「なんでも屋」の話ですが、砂原節はしっかりと出ており、安心して読めます。
現在に引き戻すと、企業の総務部庶務課の係長の物語と言えばよいのでしょうか。 -
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ネタバレ続編が出ていると知り、「まずは最初の作品から」と手に取った本書。
物語の軸となる一揆騒動は、郡奉行としての庄左衛門の矜持を示す山場だが、個人的にはこれをより後半に配置し、緊迫感を持ったまま幕を閉じる構成の方がと思ったが、しかし、それは、大きな事件(一揆)が終わっても、日常は続いていくという残酷な人生の本質が描かれているのかもしれない。
もう一つの軸は、亡き息子の嫁・志穂との関係。息子という共通の愛する人を失った二人が、絶望の果てに見つけた「縋るもの」としての関係性がある。道は間違っていると知りながらも抑えきれない志穂の恋情の激しさには、抗いがたい魅力があった。
庄左衛門は決してヒーローではない。理不尽な政争に巻き込まれても、「何が正しいか」を静かに問い続ける地味な男だ。一揆の収束も「被害を最小限に食い止める」という極めて現実的な解決策を選ぶ。この「足るを知る」生き方と一線を超えない矜持こそが、彼の本質だろう。
一方で、業を背負った蕎麦屋の半次や若き弦之介との軽妙な会話は実に楽しく、殺伐とした物語の中の救いとなっている。
本作が描くのは、大切なものを次々と失いながらも、どう立ち居振る舞うかという姿だ。理想的な英雄像を裏切り、執着や醜さを抱えながらも生きていく……
この余韻を抱えつつ、続編も読んでみようと思う。 -
Posted by ブクログ
目次
・帰ってきた
・向こうがわ
・死んでくれ
・さざなみ
・錆び刀
・幼なじみ
・半分
・妾の子
著者初の「市井もの」ということだが、「人情もの」ではない。
掛け違えた心が作り出すのは、取り返しのつかない痛みだったり別れだったり。
そう、江戸に住む庶民のすべてがいい人のわけはないし、善人と悪人の間にくっきりと線が引かれているわけでもないのは、現在と同じなのだ。
人間だもの。
耐えに耐えた挙句に良い結末を迎える、なんて話ばかりではないので、カタルシスが得られるかは読者しだい。
私は『帰ってきた』おみのの「あたしはあたしのもんだっ」が、結構好きだ。
元夫と、その弟分の現夫が彼女をめぐって「おみのはおれのもんだ!」と争っていた時に切った啖呵。
「――どいつもこいつも、こけにしやがって」
『幼なじみ』も、何かしみじみよかったな。
うらぶれた長屋住まいから飛び出して、大店の手代に上りつめた秀太郎(ひでたろう)。
幼なじみで弟分の梅吉が小僧として同じ店で働くことになり…。
秀太郎には明るい未来はないのかもしれないけれど、せめて梅吉は…。
後は『錆び刀』の、逆玉の輿を断って、同じ長屋でいつも親切にしてくれるおよしと添い遂げようと心を決めた途端のどんでん返しも面白かった。
でも、砂原浩太朗は武家ものを読みたいなあ。