砂原浩太朗のレビュー一覧

  • 藩邸差配役日日控

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    藩邸の差配役…読んでみると、会社の総務課のようなイメージでした。
    五郎兵衛が、実直にお勤めしていて静かで温かい雰囲気の中に小さな笑いあり、ちょっと不穏な動きもあり。

    ぐいぐい引き込まれる感じではありませんが、花や虫、自然の描写も美しく、楽しんで読みました。
    これはシリーズものになりそうな作品です。

    この作家さんは野鳥好きですね。
    小説で、頬白や山雀の名前が出てくるのは珍しいと思います。
    特に気に入った野鳥の描写は
    「翡翠(かわせみ)が一羽、五郎兵衛と並んで川面を滑っていく」
    ある人を追って懸命に走る五郎兵衛と、並んで滑るように飛んで行くカワセミ…読みながら目に浮かぶようでした。

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    2024年12月03日
  • 浅草寺子屋よろず暦

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    旗本の次男でありながら身分を隠して下町で寺子屋を開いている信吾に次々と問題がふりかかる。一つ一つの話のボリュームがちょうどよく、四季折々の花や空、風景描写に心が和む。最後の話はこんなに登場人物が一同に会するか!?と大袈裟に感じた。シリーズ化希望。

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    2024年11月23日
  • 浅草寺子屋よろず暦

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    ネタバレ

    帯の惹句の「天命」や「心震える」を期待すると,やや肩透かしかも.もっと軽めの市井ものと思えば楽しめる.

    本当の悪人が出てこない.主人公は,妾腹だけど兄家族全員に好かれてる.黒幕,江戸の暗黒街を牛耳る閑右衛門も,たぶんできることなら跡継ぎにしたいと思ってる.手下の岩蔵も一目置いてるふう.これも彼の人徳というか.

    続編が出て,閑右衛門と敵対しながらどこかで通じ合うみたいな,面白い関係が展開したらいいなと思う.「ずんといい男」になった信吾が見たい.

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    2024年11月14日
  • どうした、家康

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    家康というただ一人の物語でも、こんなにいっぱいあるもんなんだなあ、って思った。王道系も、恋愛系も、色々あって、「家康」を楽しめる。

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    2024年11月09日
  • 浅草寺子屋よろず暦

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    大滝信吾は、寺子屋を開き町人の子らに字などを教え
    穏やかな日々を過ごす。

    静かな時間ばかりではなく
    物騒な事件が長屋の人々を巻き込みながら襲ってくる。

    砂原さんの時代小説は読みやすい。
    でも、本作は少しさらっとし過ぎだろうか。

    市井を精一杯生きる人たち。
    裏でしか生きられない悪人たち。
    深く掘り下げた作品をお待ちしております。

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    2024年11月04日
  • 黛家の兄弟

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    前半は、初々しい、少年の主人公の成長と父、兄達の様子がその時代の景色と共にいきいきと描かれているいて、読んでいてストレートに楽しい。そして後半。13年もの時が、経ってしまっていた。あれあれ?あれあれ?の連続。そしてこの変化の奥には何かあるぞ。と思わせる展開。時代小説を越えた、人間社会の絡み合いが、最後まで興味深く読み進めた。何か悔しさや納得のいかないもどかしさをゴクンと飲み込む。現代と変わらね人の世を実感。

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    2024年10月12日
  • 高瀬庄左衛門御留書

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    この作家の作品は凛とした清々しさが持ち味であるように思える。本作も、済々とものがたりが進んでいくが、その中に人と人との交わりがあり、隠された事実が明らかになり、読者を物語に引き込んでいく。
    江戸時代の武士の世界も清い世界ばかりではないだろうが、ここに描かれているような倫理観/生活感が秩序を生んでいるのなら、とても魅力的であるように思う。

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    2024年10月03日
  • 読んで旅する鎌倉時代

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    鎌倉時代の鎌倉をテーマにして鶴岡八幡宮や銭洗弁天など場所に纏わる短編集。
    鎌倉はよく行っていたので全ての場所が分かって面白かった。しかし源頼朝は好きになれない。

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    2024年09月16日
  • いのちがけ 加賀百万石の礎

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    『高瀬庄左衛門御留書』で山本周五郎賞を受賞した著者のデビュー作。
    信長・秀吉・家康とめまぐるしく覇権がが移りゆく時代を潜り抜け、加賀百万石の礎を築いた前田利家、彼を側近として仕えた村井長頼を主人公とした歴史長編。
    時に厳しく時に温かい利家と長頼との主従関係の固い絆が語られる。
    長頼が問う。
    「殿は・・・天下人になりたいと思われませぬので」と。
    それに対して利家は
    「・・・漢(おとこ)なら、だれしも天下を望もう。・・・だが、わしが目指すのは、天下一のもののふ」と答える。
    利家の性格・時代状況のなかでの彼の位置を著す箇所ともいえる。
    そして、秀吉と柴田勝家が覇を争う賤ヶ岳での戦いに臨み、どちらに着

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    2024年09月15日
  • 黛家の兄弟

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    続きが気になって時間があれば読んでましたとてもおもしろかったので、他の作品も読んでみたいと思いました

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    2024年08月23日
  • 夜露がたり

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    町人ものの8つの短編集。神山藩シリーズ?で清涼な風のような物語を紡ぐ作者ですが、この短編はなかなか一筋縄ではいかない、心苦しくなるけど自業自得だよな、とかハッピーじゃないけど最悪ではないよな、とか微妙な感情にさせられる物語が続きます。ここらへんさすがの仕掛けだな、と思いつつ読み進めると、最後の最後で。。。あとは読んでのお楽しみ。

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    2024年07月04日
  • 高瀬庄左衛門御留書

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    面白かった!!高瀬庄左衛門 、かっこええ、、。
    50歳で隠居、お役目(郡方)は息子に譲り、その
    いきなり息子が出張先で死亡する、というところから始まる。
    かなり大変な事柄であり、その後もたくさん事件があり
    事柄だけを並べると、どんなハードボイルドミステリ時代小説か?!
    って感じなんだが、
    全体的にほんと、どたばたしてなくて、
    とっても静かで落ち着いていて、
    スゥっと心が凪いだまま読める。文体の美しさと、
    情景のすばらしさもあるかと思うが、
    主役の庄左衛門はもちろん、志穂も弦之助も半次も余吾平も
    大変好ましく、魅力あふれる。次郎右衛門めちゃめちゃかっこいい。
    なんせ、年寄りが全員カッコ良すぎる。

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    2024年06月14日
  • 夜露がたり

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    短編集8篇
    江戸の貧乏長屋の風景、人情が生きにくさの中できらりと光る。短編なのに最後まで分からない捻りの効いた落ちが面白い。「妾の子」が幸せなラストで良かった。

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    2024年06月10日
  • 夜露がたり

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    砂原さんを追って、6冊目。一時、だれた感無きにしもという作品、箇所もあるにはあったが。

    これはよかった。若い頃、時代物にはまった後、定型的人情噺に厭いて、離れた(特に女流作家ものは)
    近年の雑誌連載物をまとめているが概ね、江戸期に底辺の男女愛と行方を綴っている。

    士農工商ががっつり社会の骨に組まれていた当時の社会。
    幕末社会の風俗写真を見ても臭ってくるような時間だったことは想像に難くない。
    まして長屋住まいなどは。

    砂原氏はお家騒動、跡目もの、道場藩校と士族の日常を出しており、そちらも面白かったが、今回は「創造とはいえ、リアルに眼前に情景が見えてくる」ような作品揃いだった。

    最期の「妾

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    2024年06月07日
  • 藩邸差配役日日控

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    このところ、連続してとうっかモノを楽しんでいる。
    帯にある「高瀬。。」「黛家。。」に続いてこれが記されているところを見ると、佳作とみられているのだろう。
    思った通りの良作、朝に読み終えていい気持ちになれた。

    筋でいえば、ありふれたといってもいいだろうが行間に流す余情がこなれている。

    5編が収められている~若君失踪、入札疑惑、妖の女譚、正室の愛猫顛末、そして底流を流れていた藩邸の膿・・
    きっちり骨組みを立てているから、伏線回収が収まるところへ行くのに違和感がなくすっきり
    差配役 五郎兵衛、娘 七緒と澪 亡き妻の妹咲乃

    五郎兵衛は40半ばか・・時折顔を出す聡明な少年 若君
    国元 藩主和泉守

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    2024年05月28日
  • 黛家の兄弟

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    時代小説は舞台が限られているからやむ得ないのだが、筋書きはありきたり・・だが、砂山氏の筆は違う!
    何といっても骨太い。
    時を、藩ののドラマはともに伏線がびっしり惹かれている。それは論理的にきっちり回収されており、読後の充実差に通じている。

    1冊目で読んだ「高瀬庄左エ門」でも十分に満足したが、こちらはそれを上回る重厚、かつ複雑な筋の展開だ。
    代々筆頭家老の家に生まれた3兄弟。
    長ずるにしたがって、想いを抑えて人生が展開していき、藩の運命とリンクしてあたかも転がる石の如く半ば宿命ともいうような時間が流れた。

    新三郎を主軸に置き、長兄次兄、そしてそれぞれの伴侶、女を配し、愛の種々の形が見事。

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    2024年05月17日
  • 夜露がたり

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    江戸の長屋で慎ましく暮らす人々を描いた八篇の短編集。行間に漂う、しめやかな冥さと心の機微が秀逸。恨みつらみに気が鬱ぎつつも、彼らの生への執着や人情に微かな希望が見えた。

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    2024年04月03日
  • 高瀬庄左衛門御留書

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    ネタバレ

    この回の直木賞は粒揃いで本作もとても楽しみにしていたけど、藤沢周平っぽい語りと設定は期待通りなのに、どうもストンとこなかった。読解力不足か亡き息子の嫁がなんで五十過ぎの舅を慕っているのかが最後まで謎、、、。
    2024-017

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    2024年03月30日
  • 藩邸差配役日日控

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    時代小説に対する苦手意識はなくなったとはいえ、まだまだ自分から積極的に手を伸ばすほどではありません。それを知っている人なのにわざわざ貸してくれるのは、相当良い本ゆえのことでしょう。

    江戸藩邸の差配役が主人公。「何でも屋」と陰口を叩く者がいるとしても、『勤め』はおしなべて誰かが喜ぶようにできているものだという言い草に思わずにっこりしてしまう。聡い若君とのやりとりも楽しい。明るい話ばかりではなく、物騒な事件もたまに起きたりして、硬軟のバランスがちょうどいい。

    四季を通して藩邸を見ていたような気持ちになりました。

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    2024年03月26日
  • 夜露がたり

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    市井を描く八篇からなる短編集。
    砂原浩太朗さん、そう来たか!
    長屋に住む人々の物語。
    どういう展開になるのか楽しみにしていた。

    腰高障子を引けば全てが見渡せるほどの狭さ。
    井戸端でのかしましい声。
    全編を通して伝わる、長屋のじとっとした空気が重苦しい。

    「幼なじみ」
    P183
    〈いちど裏長屋に生まれたら、ふたたび表通りは歩けない〉

    「錆び刀」は、浪人に落ちた者の話。
    どうしようもなく自分の想いに流されてしまうが
    清々しさも感じられる一編。

    武士の矜持を描いた物語も読み応えありだが
    精一杯生きる市井の人たちも良かった。

    今作が初めてという読者のみなさん。
    既刊もぜひ。

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    2024年03月28日