砂原浩太朗のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ『高瀬庄左衛門御留書』の文章から浮かび上がる、静かなたたずまいに一読すぐにファンになった。
「神山藩シリーズ」第二弾ということで、またそのような作品を読めるものと思ったら、またがらりと趣向を変えてきた。
神山藩で代々筆頭家老を務めてきた黛家。
長男は家を継ぐとして、次男より先に三男が、大目付を務める黒沢家に婿にと求められる。
筆頭家老の座を虎視眈々と狙う次席家老。
行き場のない次男。
凡庸な藩主。
歴史小説はある程度事実を踏まえなければならないが、すべてフィクションの時代小説なら勧善懲悪であってほしい。
しかし、歯車のずれがどんどん大きくなっていき、三兄弟がただ兄弟という間柄だけで繋がる -
Posted by ブクログ
2022年第35回山本周五郎賞
歴史小説、時代小説から少し遠のいていましたが
一挙に引き込まれてしまいました。
架空の神山藩が舞台となります。
著者の時代シリーズに共通する舞台です。
そして、日本史ポンコツなので気楽にこの世界に入れる重要なポイントかもしれません。
筆頭家老黛家の三兄弟の物語、その中でも主人公は17歳の三男です。
家督は長男が継ぐ、三男は大目付の家へ婿養子へ、次男は藩政をめぐるトラブルに巻き込まれてしまいます。
若い兄弟は望まぬも藩の政争の渦中へ。
そして二部構成となっており、十三年後が描かれます。若者は三十歳となり藩政の中央に近づいています。
著者は、一貫してビルド -
Posted by ブクログ
作者自身の体験に基づいた、ノンフィクショクションに近い小説になっている。舞台は阪神淡路大震災。(この)「作品を書いたのは、震災に見舞われた神戸市の出身だからに他ならない。東京で暮らしていた主人公が帰郷し、家族を親戚のところに避難させるという大筋は私じしんの体験にもとづいている。」あとがきより。
さらっと読めますが、主人公や家族の心情と神戸市の被災の絡みが、丁寧に書かれており、想像を超えた想いに至ります。実際私が、そういう立場に置かれたら、何ができるのか、そういった災害に遭遇しなければ、やはりわからないでしょう。てすが、この本で、その追体験が出来るような錯覚になりました。まあ、本当になった場合は -
Posted by ブクログ
著者が自らの体験をもとに書いた小説です。阪神・淡路大震災発生の一報を受けた圭介の一週間が描かれていました。
こんなときでも両親の身勝手さを感じたこと、祖父に謝れなかったこと、そしてこの場から離れられることに圭介の揺れる思いを感じました。
友人とのやり取りも、努めて普通な感じでいたことが、余計にお互いを思う気持ちを表していたように思いました。
地元だけど、今住んでいないことが許されないことのように感じてしまうことは、震災が与えた大きな傷の一つのように思いました。
あのときから30年経ったけれども、私自身は経験していないからこそ、いつまでも忘れないことが必要なことだと思っています。どれだけ