砂原浩太朗のレビュー一覧

  • 黛家の兄弟

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    ネタバレ

    『高瀬庄左衛門御留書』の文章から浮かび上がる、静かなたたずまいに一読すぐにファンになった。
    「神山藩シリーズ」第二弾ということで、またそのような作品を読めるものと思ったら、またがらりと趣向を変えてきた。

    神山藩で代々筆頭家老を務めてきた黛家。
    長男は家を継ぐとして、次男より先に三男が、大目付を務める黒沢家に婿にと求められる。

    筆頭家老の座を虎視眈々と狙う次席家老。
    行き場のない次男。
    凡庸な藩主。

    歴史小説はある程度事実を踏まえなければならないが、すべてフィクションの時代小説なら勧善懲悪であってほしい。
    しかし、歯車のずれがどんどん大きくなっていき、三兄弟がただ兄弟という間柄だけで繋がる

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    2025年10月27日
  • 藩邸差配役日日控

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    江戸藩邸の差配役(なんでも屋)を主人公に描く連作中編集。藩主正室の愛猫を探す、ユーモアたっぷりの作品を挿みつつ、最後は藩主親子との意外な関わりが明かされる。後に続く作品が待たれる。

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    2025年10月17日
  • いのちがけ 加賀百万石の礎

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    デビュー作とは思えない完成度の高さに驚かされる。信長、秀吉、家康の、いわゆる「天下取り」の物語を借景にして、主人公村井長頼とその主君前田利家が周りの人間達と如何なる関係を築いていったかが丹念に描かれている至高の作品。

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    2025年10月14日
  • 浅草寺子屋よろず暦

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    久しぶりの時代小説
    最初から設定がわかりやすく、するすると読みやすかった。
    おゆうのお話がジーンとしてしまった。
    太一郎のお父さんのお話も好みだった。
    私が一番好きな人は、きよさんかもしれない
    縁の下の力持ちで、こんな人が近くにいて欲しい

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    2025年09月29日
  • 雫峠

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    凛とした品格のある静謐な文章と表現力。
    登場する人物もおなじだ。
    きっと作者、砂原さんも同じ雰囲気を纏った人なんだろうと想像される。

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    2025年08月27日
  • 雫峠

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    半夏生、たまたま読んでいた日とラジオで言っていた花言葉と重なり忘れられない花の名前となる。やはりこの作家の文章の雰囲気は好きだなぁ。前回の震災の話はあんまりよくなかったけど時代小説はしんみりと心に響く、

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    2025年07月04日
  • 雫峠

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    神山藩シリーズ第4作。今回は短編集。藩内の諍いをうまく丸め込む無能と言われた家老の話、若き藩主の振る舞い、士道に背きながら幼馴染との思いを遂げようとする下級武士、堤の造成に関わり命を落とす父子など、心に刺さる物語。神山の自然や土地柄が目に浮かぶようで、訪れてみたくなるほど。作者砂原浩太朗の力を感じる。今後も楽しみ。

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    2025年05月06日
  • 黛家の兄弟

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    2022年第35回山本周五郎賞

    歴史小説、時代小説から少し遠のいていましたが
    一挙に引き込まれてしまいました。

    架空の神山藩が舞台となります。
    著者の時代シリーズに共通する舞台です。
    そして、日本史ポンコツなので気楽にこの世界に入れる重要なポイントかもしれません。

    筆頭家老黛家の三兄弟の物語、その中でも主人公は17歳の三男です。
    家督は長男が継ぐ、三男は大目付の家へ婿養子へ、次男は藩政をめぐるトラブルに巻き込まれてしまいます。
    若い兄弟は望まぬも藩の政争の渦中へ。

    そして二部構成となっており、十三年後が描かれます。若者は三十歳となり藩政の中央に近づいています。

    著者は、一貫してビルド

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    2025年04月22日
  • 雫峠

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    神山藩シリーズということで少しおまけで5☆
    いずれも幸せうすい人間模様といったところか。
    とりわけ表題作『雫峠』の「この十年、だれも幸せにならなかった…」のセリフは非常に重く受け止めた。

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    2025年04月20日
  • 浅草寺子屋よろず暦

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    砂原さんの言葉の使い方や作品に漂う穏やかなものが好きだ。季節季節の花々や鳥たちが、たとえ緊張感あふれる場面でも、ふと目をむけた先にはそこにそんなものたちが、在る。

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    2025年04月19日
  • 雫峠

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    ほほう…そうきましたか。
    6編とも素敵な人間関係が描かれている。特に「華の面」の若き藩主と能のシテ方を修行する若者、そして「白い檻」の僻村に流された武士と百姓の関係がよかった。そこへ最後の「雫峠」。読む順番も最高だった。

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    2025年03月24日
  • 冬と瓦礫

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    2025.03.22
    阪神大震災から30年、直接に亡くなった方が出てこないからこそ、震災の惨さを伝えることができるのは筆者の力量だと感心しました。
    できそうでできないことを次々と描かれる筆者のファンになって良かったとしみじみと感じます。
    地震は怖い、起きてほしくない。

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    2025年03月22日
  • 雫峠

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    やはり砂原さんは、上手いなあと。毎日一編づつ程楽しみながら読み進めたい短編集でした。女ばかりの直木賞選考委員ではなかな選ばれないかもねえ。その前の候補になれないのは、文藝春秋がアホかな?

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    2025年03月10日
  • 冬と瓦礫

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    作者自身の体験に基づいた、ノンフィクショクションに近い小説になっている。舞台は阪神淡路大震災。(この)「作品を書いたのは、震災に見舞われた神戸市の出身だからに他ならない。東京で暮らしていた主人公が帰郷し、家族を親戚のところに避難させるという大筋は私じしんの体験にもとづいている。」あとがきより。
    さらっと読めますが、主人公や家族の心情と神戸市の被災の絡みが、丁寧に書かれており、想像を超えた想いに至ります。実際私が、そういう立場に置かれたら、何ができるのか、そういった災害に遭遇しなければ、やはりわからないでしょう。てすが、この本で、その追体験が出来るような錯覚になりました。まあ、本当になった場合は

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    2025年02月21日
  • 冬と瓦礫

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    著者が自らの体験をもとに書いた小説です。阪神・淡路大震災発生の一報を受けた圭介の一週間が描かれていました。

    こんなときでも両親の身勝手さを感じたこと、祖父に謝れなかったこと、そしてこの場から離れられることに圭介の揺れる思いを感じました。

    友人とのやり取りも、努めて普通な感じでいたことが、余計にお互いを思う気持ちを表していたように思いました。

    地元だけど、今住んでいないことが許されないことのように感じてしまうことは、震災が与えた大きな傷の一つのように思いました。

    あのときから30年経ったけれども、私自身は経験していないからこそ、いつまでも忘れないことが必要なことだと思っています。どれだけ

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    2025年02月15日
  • 浅草寺子屋よろず暦

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    砂原浩太朗のこれまでの作品と比べてずいぶん肩の力の抜けたものになっている。こういう路線ならこの先何作でも書き続けられるだろう。

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    2025年02月06日
  • 夜露がたり

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    短編なのにひとつひとつがしっかりとした一編となっていて、どの話もパターンは違い、辛い→少しの灯り、少しの灯り→やっぱり現実の深み、そして、少し「あっ」という展開。お見事です。そして、なんと言っても、日本語が上手。砂原さんの文章は気持ちよく、絵が浮かんできます。

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    2025年01月11日
  • 冬と瓦礫

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    当時の息遣いや雰囲気、状況などがとって分かるような書き方で、阪神大震災の経験もあるので自分としてはかじりついて読んでしまった。30年たった今となっても忘れられないし、考えさせられる事が多い本。

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    2025年01月05日
  • 浅草寺子屋よろず暦

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    舞台は下町浅草。寺子屋教師の信吾と彼を慕う子ども達の穏やかな日常が心地好い。町人らの信頼を得て、事件を解決してゆく信吾だが、突如思わぬ出自が証される。向後を模索し、独り苦悩し続ける信吾。結果、彼が下した決断とは…行間に立ち昇る江戸ッ子人情が温かい。続編、望む。

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    2024年12月02日
  • 浅草寺子屋よろず暦

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    浅草の寺子屋で子供達を教える大滝信吾が、周囲の様々な事態に向き合っていくなかでの人情の話。

    6話からなる物語は大変読みやすく、大きな破綻はなく静かな描写で大滝信吾と周囲の人々を描いていく。
    人の情に寄り添う話の展開が良い。
    6話目の展開は一気に謎解きとなり、3年後を迎えた次回作へ続く予感を持たせてくれる。
    面白かった。

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    2024年11月02日