砂原浩太朗のレビュー一覧
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購入済み
砂原浩太朗の著作としては5冊目。藩邸の差配役と言われる「なんでも屋」の話ですが、砂原節はしっかりと出ており、安心して読めます。
現在に引き戻すと、企業の総務部庶務課の係長の物語と言えばよいのでしょうか。 -
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ネタバレ続編が出ていると知り、「まずは最初の作品から」と手に取った本書。
物語の軸となる一揆騒動は、郡奉行としての庄左衛門の矜持を示す山場だが、個人的にはこれをより後半に配置し、緊迫感を持ったまま幕を閉じる構成の方がと思ったが、しかし、それは、大きな事件(一揆)が終わっても、日常は続いていくという残酷な人生の本質が描かれているのかもしれない。
もう一つの軸は、亡き息子の嫁・志穂との関係。息子という共通の愛する人を失った二人が、絶望の果てに見つけた「縋るもの」としての関係性がある。道は間違っていると知りながらも抑えきれない志穂の恋情の激しさには、抗いがたい魅力があった。
庄左衛門は決してヒーローではない。理不尽な政争に巻き込まれても、「何が正しいか」を静かに問い続ける地味な男だ。一揆の収束も「被害を最小限に食い止める」という極めて現実的な解決策を選ぶ。この「足るを知る」生き方と一線を超えない矜持こそが、彼の本質だろう。
一方で、業を背負った蕎麦屋の半次や若き弦之介との軽妙な会話は実に楽しく、殺伐とした物語の中の救いとなっている。
本作が描くのは、大切なものを次々と失いながらも、どう立ち居振る舞うかという姿だ。理想的な英雄像を裏切り、執着や醜さを抱えながらも生きていく……
この余韻を抱えつつ、続編も読んでみようと思う。 -
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目次
・帰ってきた
・向こうがわ
・死んでくれ
・さざなみ
・錆び刀
・幼なじみ
・半分
・妾の子
著者初の「市井もの」ということだが、「人情もの」ではない。
掛け違えた心が作り出すのは、取り返しのつかない痛みだったり別れだったり。
そう、江戸に住む庶民のすべてがいい人のわけはないし、善人と悪人の間にくっきりと線が引かれているわけでもないのは、現在と同じなのだ。
人間だもの。
耐えに耐えた挙句に良い結末を迎える、なんて話ばかりではないので、カタルシスが得られるかは読者しだい。
私は『帰ってきた』おみのの「あたしはあたしのもんだっ」が、結構好きだ。
元夫と、その弟分の現夫が彼女をめぐって「おみのはおれのもんだ!」と争っていた時に切った啖呵。
「――どいつもこいつも、こけにしやがって」
『幼なじみ』も、何かしみじみよかったな。
うらぶれた長屋住まいから飛び出して、大店の手代に上りつめた秀太郎(ひでたろう)。
幼なじみで弟分の梅吉が小僧として同じ店で働くことになり…。
秀太郎には明るい未来はないのかもしれないけれど、せめて梅吉は…。
後は『錆び刀』の、逆玉の輿を断って、同じ長屋でいつも親切にしてくれるおよしと添い遂げようと心を決めた途端のどんでん返しも面白かった。
でも、砂原浩太朗は武家ものを読みたいなあ。 -
Posted by ブクログ
表題通り武家の女性たちの美醜両面の感情を描いた短篇集で各話短いなかバランスよく巧みに纏められているなと感じました。彼女たちの心模様の変化は武家という立場にあることで起こる出来事に端を発するわけですが、一方でその感情の根本的な部分にじっと焦点を絞ってみれば、そこに映るのは現代のわたし達にも覚えのある普遍的な人間の揺らぎです。やや飛躍した感想にはなりますが、自分とはあらゆるものが違う相手の中にも自分の知っている何かが顕れ得るのだと改めて刻み込むことは、分断や悪辣な糾弾の蔓延る時代に人が他者を同じ人として捉える為の手掛かりにもなるように思うのです。
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サスペンスを織り込んだ親子三代のヒューマンドラマ時代小説。総次郎の実直さは、左大夫や武四郎のみならず、読者にも自然と感情移入を促す力がある。一方で、各章が短く、章ごとに総次郎と左大夫の視点が頻繁に切り替わる構成は、物語のテンポを落とし、感情にじっくり寄り添う叙情的な作風とは噛み合っていないようにも感じられた。
総次郎の成長が本作の大きな魅力の1つだが、心に残ったのは、成長の契機になった左大夫の「気などすまんでよい」という一言である。仕事において自分の気持ちは大切だが、万事が気の済む形で終わることはない。総次郎にとって厳しい状況下で、静かに一喝を入れるこの言葉は、強い余韻を残した。 -
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タイトルの示す通り、武家の女性~藩主正室から下級武士の妻まで身分も年齢も様々~を描いた短編集です。短編「深雪花」は木内昇さんの『雪夢往来』にも出てくる江戸時代のベストセラー『北越雪譜』やその中に描かれた雪の結晶図にまつわる話です。
読み始めてすぐに、山本周五郎/藤沢周平の遺沢を継ぐという言葉が頭に浮かびます。それくらい良い。しかし、読み進めるにつれ。。。。
悪い訳では無いのです。でも、どこか抜けきれておらず、「型に嵌った」とか「技巧的」といった言葉が思い浮かびます。うまいな~と思う一面「らしさ」はどこにあるのだ?という感覚です。
まあ、周五郎の若い頃や周平のデビュー数年後の多作期の作品なんかも似たようなもの。彼らはそこから「自分らしさ」を突き詰めて名作を生み出して行きました。砂原さんも、自分の「らしさ」に向き合ってそうなって頂きたいものです。 -
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18歳の草壁総次郎は、失踪した父に代わり町奉行を務めることになる
草壁家には代々、神山藩の町奉行を任されており、祖父は名判官だった
ある日、神山藩屈指の大店・信濃屋の奉公人が殺害される
そしてその死体のそばに、失踪した父のものに似た根付があるのに気がついた総次郎は名判官だった祖父に打ち明ける…
果たしてその真相とは…
初読み作家さんのミステリー時代劇!
どうやらシリーズものだったようだが、違和感なく読めた
ページが進みだしたのは殺害された死体が信濃屋の奉公人と判明した辺りから…
町奉行としての総次郎が殺人事件を追う過程で、父の失踪の謎がみえてくるのだが、これがまさかの展開…(笑)
しかしこの作品の魅力はミステリーとしてのおもしろさと共に、登場人物たちにある…
特に孫を陰ながら応援し、自らも探りを入れる名判官の祖父は心強い存在…
そして剣も学問もそこそこの総次郎の幼なじみ、武四郎はなぜか時に勘を働かせピンチを救う
そして脇を固める筆頭与力や華を添える女衆…
彼らに支えられながら町奉行としても人としても成長していく総次郎が頼もしい