砂原浩太朗のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
この方の作品はとにかく文面が緻密で美しい情景が浮かんできて圧倒される。
導入部では黛の三兄弟が内記の策略により翻弄される。選択を迫られる苦悩に新三郎の未熟は罪だ、と至らなさを痛感する場面、分かってしまう。無知であるのが恐ろしいんだ。
第二話になると成長した織部正(呼び方が役職で引き継がれているのが新鮮)が内記の懐刀になっているのだからどうしても勘ぐってしまう。
本当に疑う余地がなかったのだけど、十年近くも一緒にいたら情か移ってこやんのかと。
読み進めてたら物語の締めにはやはり、師の様な存在でもあったとわかり敵でもあったが複雑な思いが垣間見えた。
後半はミステリー的な感じもあり、騙し合いとドロド -
Posted by ブクログ
大昔、兄に勧められて読んだ「豊臣家の人々」は時代物に私を引きずり込んだ嚆矢だった。
すっかり砂原ファンになっての今、これをチョイス・・表題がら思わぬ時代物絵巻に入り込んで行った至福の時間を授かることが叶った。
ボリュームがあり、描写、文は淡々と抑えた筆致で進む。人によれば、退屈、冗漫と思えてしまうかもしれない。
しかし細部の風景情景、会話で駆使される手法言葉は流石の筆者。「そこにいたんかい?!」といい意味で突っ込みたくなるような表現、語がふんだんに配置されている。
時代は戦国末期から徳川の夜明け前。
村井長頼の語りで巻物は広げられていく・・登場する人は 数あまた…信長・秀吉・家康・信玄・義 -
Posted by ブクログ
めちゃ面白かった。
庄左衛門には関係ないが、
同藩の立花さんや啓一郎が学んだ藩校が、まだ構想程度だった時代の神山藩。
そして、『庄左衛門』よりもエンターテイメント性が飛躍的に高くなっている。
ミステリ、ツイスト、アクション、そしてロマンス
こなれてはりますな。
個人的には『庄左衛門』のほうが好きではある。
というのも
今度の主役は黛家三兄弟、そしてその末っ子が主役である。
若い、、
しかし、育成系の楽しさがある。
そして、きっと腐味を見出す人が多そうではある(あははは)
前作の庄左衛門もそうだが、部屋住の武家の次男三男以下同文たちが
養子や婿に入って、そのお家を盛り上げたり、
主家の長男に不幸 -
Posted by ブクログ
架空の神山藩を舞台にした江戸時代のこの物語は今までに読んだことのない文章の美しさがあった。江戸から離れた村の景色、季節のうつろい、村人や武士たちの生活、それぞれの描き方が実に美しい。主人公の描く絵が褒められたのと同じ言い方なら見事という他ない。
ストーリーは小さな出来事の積み重ねだが、少しの謎が次の話の伏線となって繋がってゆく展開もゆったりとしながら時には先を急ぎたくなるような、しかしそこでこの美しい文章を味わいたい気持ちが強くなって留まる、何か時代小説を読む楽しみを改めて感じさせてくれたところがある。
郡方という役回りはよく知らなかったが、藩の中で地道に生きてゆく主人公、その人柄もこの文章が -
Posted by ブクログ
時代小説家はそれぞれ架空の藩を作り上げ、自らの想像力で登場人物たちを自由に羽ばたかさせ、独自のシリーズを構成する。
藤沢周平氏の海坂藩、葉室麟氏の羽根藩や扇野藩しかり。
著者の場合は神山藩、そして本書では神宮藩。
5編の短中編からなり、それぞれ独立した話であるが、全編に通奏低音の如くお家騒動の兆しが漂う。
神宮寺藩江戸藩邸の差配役里村五郎兵衛は、なんでも屋の異名があり、様々な揉め事が持ち込まれる。
その対応に追われるうち、最終編で、江戸家老と留守居役の対立が表面化する。
主人公にも絶体絶命の危機が訪れ、苦渋の決断を迫られる。
そして最後に、予想外の秘事が明かされ、読み手も思わず唸ってしまう。