砂原浩太朗のレビュー一覧

  • 黛家の兄弟

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    この方の作品はとにかく文面が緻密で美しい情景が浮かんできて圧倒される。
    導入部では黛の三兄弟が内記の策略により翻弄される。選択を迫られる苦悩に新三郎の未熟は罪だ、と至らなさを痛感する場面、分かってしまう。無知であるのが恐ろしいんだ。
    第二話になると成長した織部正(呼び方が役職で引き継がれているのが新鮮)が内記の懐刀になっているのだからどうしても勘ぐってしまう。
    本当に疑う余地がなかったのだけど、十年近くも一緒にいたら情か移ってこやんのかと。
    読み進めてたら物語の締めにはやはり、師の様な存在でもあったとわかり敵でもあったが複雑な思いが垣間見えた。
    後半はミステリー的な感じもあり、騙し合いとドロド

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    2024年10月28日
  • 黛家の兄弟

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    とても面白かった。前作同様、かつての侍たちが持つ矜持と、現代人にも理解しやすい情や心理がとてもうまくミックスされていると思う。激しく豊かな想いを持ちながらも、自分を律し滅私奉公に徹する姿は美しい。
    神山藩シリーズ3作目も楽しみ。年末にでもゆっくり味わって読んでみたい。

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    2024年09月29日
  • いのちがけ 加賀百万石の礎

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    大昔、兄に勧められて読んだ「豊臣家の人々」は時代物に私を引きずり込んだ嚆矢だった。
    すっかり砂原ファンになっての今、これをチョイス・・表題がら思わぬ時代物絵巻に入り込んで行った至福の時間を授かることが叶った。

    ボリュームがあり、描写、文は淡々と抑えた筆致で進む。人によれば、退屈、冗漫と思えてしまうかもしれない。
    しかし細部の風景情景、会話で駆使される手法言葉は流石の筆者。「そこにいたんかい?!」といい意味で突っ込みたくなるような表現、語がふんだんに配置されている。

    時代は戦国末期から徳川の夜明け前。
    村井長頼の語りで巻物は広げられていく・・登場する人は 数あまた…信長・秀吉・家康・信玄・義

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    2024年08月22日
  • 逆転の戦国史 ~「天才」ではなかった信長、「叛臣」ではなかった光秀~

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    著者の見解、そしてたくさん読んできたのだろうと思われる通説と独自の考えが分かりやすく、そして最近冷めてきていた戦国時代小説を読みたい意欲に取り憑かれ読みたいジャンルが増えてきているが遅読に加え集中力が低下しているので悔しい。

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    2024年08月08日
  • 藩邸差配役日日控

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    祖父と対話している感覚になる。そのぐらい落ち着いていて安心感漂う文章。妻に先立たれ、独り身だが世話する女性がいるという設定にも紳士的かつ、放って置けない雰囲気を醸し出している。3冊とも恋愛にならないのが好感をもてそして老齢感が溢れ祖父に感じるのかも知れない。

    この本も文庫になったら購入したい

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    2024年08月02日
  • 夜露がたり

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    安定の砂原浩太朗。読み終わった後もやっとするような、やれやれと開き直るようなそんなお話が多く人間臭い感じがよかった。

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    2024年07月05日
  • 黛家の兄弟

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    めちゃ面白かった。
    庄左衛門には関係ないが、
    同藩の立花さんや啓一郎が学んだ藩校が、まだ構想程度だった時代の神山藩。
    そして、『庄左衛門』よりもエンターテイメント性が飛躍的に高くなっている。
    ミステリ、ツイスト、アクション、そしてロマンス
    こなれてはりますな。
    個人的には『庄左衛門』のほうが好きではある。
    というのも
    今度の主役は黛家三兄弟、そしてその末っ子が主役である。
    若い、、
    しかし、育成系の楽しさがある。
    そして、きっと腐味を見出す人が多そうではある(あははは)
    前作の庄左衛門もそうだが、部屋住の武家の次男三男以下同文たちが
    養子や婿に入って、そのお家を盛り上げたり、
    主家の長男に不幸

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    2024年06月24日
  • 黛家の兄弟

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    ネタバレ

    それぞれの人生を丁寧に描く。久しぶりに物語世界にはまり込むことができた。山本周五郎賞は裏切らない。兄弟の強い絆が最後に示されて、こちらは気づいていなかったので仇敵と一緒に驚いてしまった。

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    2024年06月02日
  • 高瀬庄左衛門御留書

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    単行本で読んで何回も読みたい本だったので意を決して購入。これから先もこのような温かみのあるまったりとした時間を一緒に過ごしていきたいと思える作家。三崎亜記氏の世界と共に老後も付き合っていきたい。

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    2024年05月03日
  • 高瀬庄左衛門御留書

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    架空の神山藩を舞台にした江戸時代のこの物語は今までに読んだことのない文章の美しさがあった。江戸から離れた村の景色、季節のうつろい、村人や武士たちの生活、それぞれの描き方が実に美しい。主人公の描く絵が褒められたのと同じ言い方なら見事という他ない。
    ストーリーは小さな出来事の積み重ねだが、少しの謎が次の話の伏線となって繋がってゆく展開もゆったりとしながら時には先を急ぎたくなるような、しかしそこでこの美しい文章を味わいたい気持ちが強くなって留まる、何か時代小説を読む楽しみを改めて感じさせてくれたところがある。
    郡方という役回りはよく知らなかったが、藩の中で地道に生きてゆく主人公、その人柄もこの文章が

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    2024年04月11日
  • 夜露がたり

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    江戸市井物の短編集
    氏の長編が大好きなのだがこれはこれでたいそう面白かった
    通り一遍の人情物と思わせて一捻りがあったりなかったり
    短編集としてのバランスが実に良い

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    2024年03月30日
  • 黛家の兄弟

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    「神山藩」シリーズ第2作目は、本屋が選ぶ時代小説大賞など4冠を獲得した『高瀬庄左衛門御留書』以上の傑作。
    今まで読まずにいたのが惜しまれたと思わずにはいられない第35回山本周五郎賞受賞作。
    神山藩で筆頭家老を勤める黛家の三男新三郎が主人公。
    三兄弟それぞれに描き分けられ、どんでん返し的なミステリー性もあって、これぞ時代小説と堪能の読後感。
    「それはわれらが、黛家の兄弟だからでござる」に、カタルシスを覚える。

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    2024年03月26日
  • 夜露がたり

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    市井の人を題材とする時代小説で、これまでの架空の神山藩の侍とは違っているのですが、砂原さんの文章のファンの方には楽しめると思います。短編集なのですが、8編通して「夜露がたり」ですね。

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    2024年03月04日
  • 夜露がたり

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    時代物小説ながら勧善懲悪ではなく、人間の業を肯定する結末に満足できた。人の心の理不尽さを描くことで、登場人物への感情移入を容易にしてくれた。
    8編の中でも「死んでくれ」「さざなみ」「錆び刀」「妾の子」が好みだ。
    砂原浩太朗作品は追いかけていきたい。

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    2024年02月23日
  • 黛家の兄弟

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    前作が良かったからすごく楽しみにしてたんだけど、期待以上だった!
    前作はもうちょっとほのぼの感というか、日常感があったけど、今回は凄くドロドロしてるし、人もいっぱい死ぬし、騙し騙され…って感じですごかった。
    次も楽しみー

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    2024年01月04日
  • 藩邸差配役日日控

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    「差配役」って今で言えば会社の総務に当たるんやろうか。「何でも屋」らしい。理不尽な仕事やお家騒動に巻き込まれながらも、季節の移ろいやふと見える路地の佇まい、居酒屋でのちょっとした酒の肴などの描写が静かに染み渡りリアルに感じる作品だ。砂原さんのこのシリーズはかなり好きだ。

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    2023年11月25日
  • 藩邸差配役日日控

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    失礼ながらよくある武士の連作短編集かなと読んでいたけど、終盤の展開がとても面白く全体の印象ががらっと変わり輝いた。登場人物たちが魅力的だったので是非続きが読みたい!

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    2023年10月21日
  • 藩邸差配役日日控

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    移り変わる季節の情景のもと藩邸差配役の五郎兵衛を中心に様々な事件が描かれる。
    「人が死ぬのは好みませぬ」という五郎兵衛はじめ登場人物もみな人間くさくていい。
    清々しい物語であった。

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    2023年09月05日
  • 藩邸差配役日日控

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    この作家の小説は、読んでいて心が温かくなる。
    「何でも屋」と蔑称される江戸藩邸の左配役、里村五郎兵衛。それこそ、正室の飼い猫の行方探しから、世子の行方不明の捜査まで。

    いくつかの事件や出来事を通して、藩の中の事情が明らかになってくる。

    結末には、藩主と抱えた秘密が明らかに。

    人となりが美しい。

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    2023年08月30日
  • 藩邸差配役日日控

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    時代小説家はそれぞれ架空の藩を作り上げ、自らの想像力で登場人物たちを自由に羽ばたかさせ、独自のシリーズを構成する。
    藤沢周平氏の海坂藩、葉室麟氏の羽根藩や扇野藩しかり。
    著者の場合は神山藩、そして本書では神宮藩。
    5編の短中編からなり、それぞれ独立した話であるが、全編に通奏低音の如くお家騒動の兆しが漂う。
    神宮寺藩江戸藩邸の差配役里村五郎兵衛は、なんでも屋の異名があり、様々な揉め事が持ち込まれる。
    その対応に追われるうち、最終編で、江戸家老と留守居役の対立が表面化する。
    主人公にも絶体絶命の危機が訪れ、苦渋の決断を迫られる。
    そして最後に、予想外の秘事が明かされ、読み手も思わず唸ってしまう。

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    2023年08月20日