あらすじ
第165回直木賞候補作、第34回山本周五郎賞候補作。「本の雑誌」2021年上半期ベスト10で第1位!
第9階野村胡堂文学賞、第15回舟橋聖一文学賞、第11回「本屋が選ぶ時代小説大賞」をそれぞれ受賞。
美しく生きるとは、誇りを持ち続けるとは何かを問う、正統派時代小説。
神山藩で、郡方を務める高瀬庄左衛門。50歳を前にして妻を亡くし、
さらに息子をも事故で失い、ただ倹しく老いてゆく身。残された嫁の志穂とともに、手慰みに絵を描きながら、
寂寥と悔恨の中に生きていた。しかしゆっくりと確実に、藩の政争の嵐が庄左衛門を襲う。
「心が洗われる」というのは、こういう感覚を言うのだと実感した。ーー作家・江上剛(朝日新聞6月5日)
この人がこれから作品をどんどん出していくのがドキドキするし嬉しい。すごい時代に立ち会っている気がする。
次回作も必ず読みたい! ーー北上次郎(YouTube「北上ラジオ」)
誰でも歳を取れば、違う生き方もあってのではとの悔悟を抱くもの。
その迷いにどう向き合うか。考えさせられた。ーー記者・佐藤憲一(読売新聞1月19日)
私は、作者がこれからの時代小説界をリードしていく存在になることを信じて疑わない。
ーー縄田一男(産経新聞2/21)
美しい物語だ。穏やかで、静かで、そして強い物語だ。ーー大矢博子(「小説すばる」3月号)
生きることの喜び、悲しみ、諦め、希望をすべてのみ込んだ時代小説ーー内藤麻里子(毎日新聞2/7)
主人公もさることながら脇の人物たちもよく書き込まれ魅力がある。ーー川本三郎(毎日新聞2/20)
人はどう生き、どう老いていくべきかの指針となる。(紀伊國屋書店仙台店 齊藤一弥さん)
全日本人に読んでほしい。(旭屋書店池袋店 礒部ゆきえさん【ダ・ヴィンチニュース3月6日】)
心情が清らかに流れ続けながら、激動の大河浪漫があり、心奪われました。ずっと浸っていたいこの至福の感覚を、
たくさんに人に味わってもらいたい。(うさぎや矢板店 山田恵理子さん)
様々な制限の中で生き、迷いながら歩み続け、心のわだかまりが少しずつ溶ける有り様に、自分の心にも穏やかな風が入り込んだ。
時代小説のすばらしさを感じた。(正文館書店本店 鶴田真さん)
厳しい現実を突き付けながらも生きることの温かさと優しさを感じさせてくれる。(くまざわ書店錦糸町店 阿久津武信さん)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
単行本で読んで何回も読みたい本だったので意を決して購入。これから先もこのような温かみのあるまったりとした時間を一緒に過ごしていきたいと思える作家。三崎亜記氏の世界と共に老後も付き合っていきたい。
Posted by ブクログ
架空の神山藩を舞台にした江戸時代のこの物語は今までに読んだことのない文章の美しさがあった。江戸から離れた村の景色、季節のうつろい、村人や武士たちの生活、それぞれの描き方が実に美しい。主人公の描く絵が褒められたのと同じ言い方なら見事という他ない。
ストーリーは小さな出来事の積み重ねだが、少しの謎が次の話の伏線となって繋がってゆく展開もゆったりとしながら時には先を急ぎたくなるような、しかしそこでこの美しい文章を味わいたい気持ちが強くなって留まる、何か時代小説を読む楽しみを改めて感じさせてくれたところがある。
郡方という役回りはよく知らなかったが、藩の中で地道に生きてゆく主人公、その人柄もこの文章が表しているのだろう。続きのシリーズもまた読んでみることにしよう。
それにしても蕎麦がうまそうだった。食べ物の描き方もいい。志穂が書いた絵の雰囲気もなんと無く伝わってくる。しみじみと味わい深く小説を楽しめてよかった。
Posted by ブクログ
まず、大変面白かったです。
舞台は神山藩、北陸あたりか?架空の藩です。
老年に近づく高瀬庄左衛門の周りで起きる事件や藩の闘争、多彩な伏線が物語の終わりに回収されて行きます。恋心、友情、剣と学問などを絡めてサスペンスのごとく物語は進む時代劇となっていましす?
Posted by ブクログ
庄左衛門さんは、反省したり、悩んだり、忖度したりする凄く普通の人。それが凄く良かった。
「人などと申すは、しょせん生きているだけで誰かのさまたげとなるもの」
「されど、ときには助けとなることもできましょう……均して平らなら、それで上等」
Posted by ブクログ
架空の藩、神山藩で役人を勤める主人公。いきなり息子を事故で亡くすところから始まり重たいなあ、と読み進める。
独り暮らしの生活が始まるが、息子の嫁や夜鳴き蕎麦屋、藩の同僚など人が集まり、得意の絵を嗜んだりして穏やかな日常に戻りつつあるが、事件に巻き込まれていく。
普段は落ち着いた様子である庄左衛門であるが、上司に詰問され凄く緊張したり、剣術がそれほど大した腕前でないところなど、平凡な部分に親近感を覚える。現代のサラリーマンの様。
が、昔の友に言い出せない事、江戸に送り出した息子の嫁への思い、思い通りに描けなくなった絵、胸に秘めた多くの思いを抱えこれからも生きていく姿に強さを感じた。
それでも最後、わずかに充実感がある描写があり、幸せな気持ちに。
砂原さんの作品、神山藩シリーズも読んでみたくなりました。
途中から面白く一気に読み終えた
二人の息子の嫁との日々を重ね読みましたが、抑えがちな筆ずかいがまことに好ましく欲を言えば前半に山が一つあればなおよかった。
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この作家の作品は凛とした清々しさが持ち味であるように思える。本作も、済々とものがたりが進んでいくが、その中に人と人との交わりがあり、隠された事実が明らかになり、読者を物語に引き込んでいく。
江戸時代の武士の世界も清い世界ばかりではないだろうが、ここに描かれているような倫理観/生活感が秩序を生んでいるのなら、とても魅力的であるように思う。
Posted by ブクログ
面白かった!!高瀬庄左衛門 、かっこええ、、。
50歳で隠居、お役目(郡方)は息子に譲り、その
いきなり息子が出張先で死亡する、というところから始まる。
かなり大変な事柄であり、その後もたくさん事件があり
事柄だけを並べると、どんなハードボイルドミステリ時代小説か?!
って感じなんだが、
全体的にほんと、どたばたしてなくて、
とっても静かで落ち着いていて、
スゥっと心が凪いだまま読める。文体の美しさと、
情景のすばらしさもあるかと思うが、
主役の庄左衛門はもちろん、志穂も弦之助も半次も余吾平も
大変好ましく、魅力あふれる。次郎右衛門めちゃめちゃかっこいい。
なんせ、年寄りが全員カッコ良すぎる。
敵役もそんなに後味悪くない。
神山藩の禄高は10万石、大名行列は300人弱
騎乗は10人ほど、
蟹雑炊が美味しくて、冬は雪に埋もれ、
台詞のはしばしにたまに感じる、これはあの藩
(まさに最近行ったあのサギコロニーの城のww)
そして、
なんといっても、庄左衛門の画を描くシーンが秀逸。
志穂と最初に描く燕も素晴らしいし、
文中に出てくる、鳥たちがまた脳内ビジュアル化を美しく彩る
庭の松の瑠璃鶲、
欅の影から聞こえる行行子
志穂の絵を見ている時におどろくほど近くで鳴いた春告鳥
装丁のヤマガラは最後の1ページを読み終わって、
本を閉じたあとに、目のなかにぐわーーっと入ってきて
すばらしい余韻をもたらしてくれた。
Posted by ブクログ
この回の直木賞は粒揃いで本作もとても楽しみにしていたけど、藤沢周平っぽい語りと設定は期待通りなのに、どうもストンとこなかった。読解力不足か亡き息子の嫁がなんで五十過ぎの舅を慕っているのかが最後まで謎、、、。
2024-017
Posted by ブクログ
2024.03.22
筆者の特徴は風景の描写にあると思う。特に静かな情景を描くのが得手ではないかと思う。
筆者の本を読んでいると心が静まる読書は多いと思う。
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慎ましく己の信念に従って生きること。
日々の変化の中に幸せはあること。
わかっていても小さな喜びだけを燃料に生きていくことは自分にはできない。憧れつつも自分の業の深さを再認識した。
武士の矜持、日本人が忘れている日本の心を見た気がした。
Posted by ブクログ
終始穏やかな物語
それなりに山あり谷ありの人生だが
主人公の人柄のせいか
あまり物語の波を感じない
でも退屈せず読めてホッとした心持ちになれる作品
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主人公が初老のオジサンで、剣が強いわけではなく、頭脳明晰というわけでもない。歳の割には、意外ともてるけど、どっちかというと小心者というところが、親近感が持てる。最終的に、大きなことを成し遂げたわけではないのに、なんか、凄い人物のように思えるのは、作者の筆力だろう。
Posted by ブクログ
受け入れざるを得ない息子の死、それは家の存続ができなくなるということ。一人になってしまっても自暴自棄にならず淡々と生きていくが、生来の優しい性分は自然と表に出てくるもので人とつながり騒動に巻き込まれていく。
人生は悪いことばかりではないと思える。
Posted by ブクログ
描かれる一つ一つのエピソードが、長短さまざまな起伏を持って収斂していくような、複雑な設計図に基づく小説という感じがする。構成の技巧というべきか。
登場人物も数多く、それぞれに背景とキャラクターを明確に与えらえてもいる。こういう人物が出てくるだろう、と予想しながら読むと、予想に違わず、出てくるし。
Posted by ブクログ
郷村廻りという役についている主人公の
2年間の出来事を描いた連作短編。
息子に跡目の大部分を譲って
自分は好きな絵を嗜みつつ
静かに暮らそうとしていた庄左衛門。
しかし、任地で息子は事故死し
嫁の志穂と悲しみを乗り越えていく。
やがて、任地を巻き込んだ
藩の政争の火種がくすぶりはじめ…。
死んだ息子の影が背景につきまとっていて
死の間際のいつもと違う行動の謎が
あとあとの話で明らかになっていく
ちょっとミステリな要素もありました。
息子の地位を奪ったとも言える弦之助や
屋台の店主から助け手になる半次なんかも
いいキャラクターで、おもしろかった。
Posted by ブクログ
書かれて事件は、大きな事件だが、大きな感情の起伏がなく落ち着いた感じで、話が進むのは、主人公の庄左衛門のキャラクターを反映したものだろうか。神山藩シリーズの次巻も、楽しみ。
神山藩のモデルは、加賀藩の支藩かな?