砂原浩太朗のレビュー一覧
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僕も震災後1週間はたっていただろうか、いくらかの水や食料を背負って親戚が暮らす西宮北口まで阪急電車に乗ってでかけた。この小説には一切書かれていなかったけれど、尼崎を過ぎた頃から車窓から見える景色が次第に尋常ならざるものに変わっていった。同じ車両に乗り合わせた人たちと重い重いため息がシンクロしたのを覚えている。そして西宮北口のトイレの状態も小説に表されている通りだった。僕は駅から親戚の家まで歩いたが、駅の周辺でも潰れてしまった家屋があちらこちらにあり、案内してくれた叔母には、「この家の下にまだ居てはるねん」と言われたことを覚えている。当事者は当事者なり、そうではなかったものたちにもグラデーション
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砂原さんが好んで使う架空の神山藩を舞台にした時代短編集。同じ藩を舞台にしていますが、相互の関連は有りません。
◇半夏生:泥まみれの仕事を厭わぬ父と河川氾濫の根本対策を提案をした息子。神山藩の普請方の一家を描いた物語。
◇江戸紫:江戸家老vs国本の側用人の政争。そこに「あくび大尽」と称される筆頭家老の息子が絡んで。
◇華の面:養子として神山藩に入った少年藩主と同い年の藩のお抱え能楽者の交流。
◇白い檻:政変のとばっちりで僻村に追いやられた武士は深雪の中で刺客に襲われ。
◇しぐれ:商家に押入り腕に傷を負った泥棒が・・・二転三転する物語
◇雫峠:DVに耐えかねて高禄の夫を殺害した義理の妹との逃避行
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購入済み
途中から面白く一気に読み終えた
二人の息子の嫁との日々を重ね読みましたが、抑えがちな筆ずかいがまことに好ましく欲を言えば前半に山が一つあればなおよかった。
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ネタバレ【収録作品】半夏生/江戸紫/華の面/白い檻/柳しぐれ/雫峠
神山藩を舞台に、そこに生きる人々を描いた短編集。
静かな語り口が好もしい。
「半夏生」誠実に地味な役目を全うする人々の姿を描く。
「江戸紫」軽快な話。
「華の面」お飾りのように戴かれた藩主の覚悟を能役者の目から描く。
「白い檻」刺客にも三分の理くらいはあるのだろうが、勝手さばかりが見えて情けない。
「柳しぐれ」トリッキーな語り口が面白い。喜三次が憎めない。
「雫峠」うかうかといろいろなものを見過ごし、やり過ごしてきたことのツケがきた感じ。最初にボタンを掛け違えてしまったわけだが、そうなると止めようはないのだろうか。最後に大きな決断 -
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阪神・淡路大震災を描いた砂原さんの現代小説です。
当時は東京住まいだった砂原さんが、震災の3日後に神戸の自宅に戻り、母と祖父母を遠隔地避難させた体験をもとに描かれた小説です。あとがきにもありますが、震災から15年後、砂原さんが時代小説作家としてデビューする前に書いたものに少し手を入れて、30年という節目に出版されたものだそうです。
大震災の物語と言えば、身近な人、愛する人を亡くした悲嘆や、そこからの復興を描くものと思いがちですが、これは「片隅の物語」です。本人は東京住まい。母と祖父母は神戸在住ですが、建物は大きな被害は受けたものの怪我はしていません(きわどい状況は有りましたが)。さらに言えば近