砂原浩太朗のレビュー一覧
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藩邸差配役日日控の続編。
藩の差配役の五郎兵衛の日々を静かに描くこのシリーズ、やっぱり良いなぁ。
御用大工の親方が言っていたという
「神宮寺さまのお仕事では、いつもなにも起こらない」
「なにも起こらないのは、起こらぬようにしているお人がいるからだ」
なんて、差配役の仕事をうまく表していて胸に響く。
今作でもまた、不穏な出来事があり五郎兵衛はまた心を乱しながらも実直に向き合っている。
娘たちの今後を含めて、続きが楽しみ。
今回も鳥たちが嬉しい
鶯の囀り、頬白の啼き声、雲雀の囀り、
松の梢に黄鶲、郭公の囀り、
耳をかすめそうなほど低いところを燕が一羽、通りすぎていった。 -
Posted by ブクログ
「高橋庄左衛門御留書」で直木賞候補になった作家。山本周五郎、藤沢周平の衣鉢を継ぐと言われるのが砂原浩太郎だそうだ。新シリーズ「差配役」の一作目。
言わば大会社の総務部部長みたいな里村五郎兵衛。「何でも屋」とも言われ謂わば中間管理職である。彼のの仕事を追った春から冬の初めへの物語。「衣鉢を継ぐ」と言われて、藤沢周平ファンとしては無視は出来ないが、判断は最後に述べる。
お世継ぎの失踪、入札騒動、部下の色恋騒動、正妻の猫探し、そして最後には、派閥の最終決戦に巻き込まれて行く。正に総務のお仕事です。
江戸屋敷は上屋敷は本郷、下屋敷は千駄木にあるらしく、亀千代ぎみの行方不明先は不忍池の弁天堂と、現代読者もイメージし易い様にと気配りをする作家だとお見受けした。差配役の仕事は、多くの点で総務部に似て、それも入り込み易い。最終章で伏線回収をきちんとするのも含めて、現代風、エンタメである。
衣鉢を継ぐためには、藤沢周平の暗い心情や、不幸を背負った女性像を引き継がなくても良いということは承知している。明るくても良い。しかし、「引っかかるもの」が欲しいのである。単なるお仕事小説では読む甲斐がない。文章は端正さを保ち、合格点迄いっているので、あと一冊読んで判断したい。 -
Posted by ブクログ
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歴史小説、時代小説と呼ばれるジャンルの本が好きで長年、読み続けています。
最初は歴史上有名な人物や事件を扱った作品が中心でしたが、近年は、日本史の授業では重視されない年代や、市井の人物を題材にした作品が多くなっています。
これまで触れたことのない著者の時代小説を探していたところ、『神山藩シリーズ』と呼ばれる作品群が、Audibleにラインアップされていることを知りました。
作品の舞台となっている時代や地方について、あえて事前には調べず、聴き始めることにしました。
題名になっている高瀬庄左衛門は、神山藩という地方の藩に仕えています。
息子も成人して神山藩に仕えており、自らが務めていた職を息子に譲る途上の、老境に差し掛かった武士です。
しかしその息子が、不慮の事故によって命を落としてしまいます。
一人息子がいなくなり、自らそして高瀬家の将来への道筋が見えなくなってしまった庄左衛門。
家に仕えていた小者に暇をやり、息子の嫁・志穂も実家に戻して、一人暮らしを始めます。
しかし志穂がほどなく、「義父上に絵を習いたい」と申し出てきます。
独学で絵を描いてきた庄左衛門ですが、「通いでなら」と、その願いを聞き入れて・・・という始まり。
一人ぼっちになり、このまま寂しく人生を終える道を辿るのかと思われた庄左衛門。
しかし、相手の話をよく聞く穏やかな人柄の彼の元には、老若男女問わずさまざまな人たちがやって来ます。
物語の軸になっているのが、そのような人々によって庄左衛門が巻き込まれてしまう、藩内の騒動。
どのような背景があるのか? なぜ、庄左衛門が巻き込まれてしまったのか? と、ミステリー小説を読むような感覚で聴き進めました。
あわせての読みどころが、周囲に翻弄されることで生じる、庄左衛門の心の揺れ動き。
嫁からの思わぬ申し出や、素性を知らない人との出会い、そして、旧知の人との再会。
「大変だな」という同情とすこしの羨ましさのような感情を抱きながら、いつしか”庄左衛門目線”になって聴いていました。
一度聴き終えてもういちど聴き直したので、序盤からさまざまな伏線が張り巡らされていたことに気づきました。
2021年出版の作品ですが、「2020年代の時代小説というのはずいぶん、進化しているのだな」と感じました。
神山藩というのは実在の藩ではなく、登場人物や事件はすべて、作者の頭の中で生み出されたもののようです。
作品としては完結しているように思われましたが、次作もAudibleにラインアップされているので、続けて聴いていこうと思います。
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