あらすじ
前田利家の忠臣・村井長頼が命を懸けて貫いた武士の本分。
加賀藩の祖・前田利家が流浪した若きころから大名になった後まで付き従った、股肱の臣・村井長頼。桶狭間、長篠、賤ヶ岳、……名だたる戦場を駆け抜け、利家の危難を幾度も救う。主君の肩越しに見た、信長、秀吉、家康ら天下人の姿。命懸けでで忠義を貫き通し、百万石の礎を築いた男を端正な文体で魅せる傑作。
『高瀬庄左衛門御留書』で話題の著者、鮮烈デビュー作!
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デビュー作とは思えない完成度の高さに驚かされる。信長、秀吉、家康の、いわゆる「天下取り」の物語を借景にして、主人公村井長頼とその主君前田利家が周りの人間達と如何なる関係を築いていったかが丹念に描かれている至高の作品。
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大昔、兄に勧められて読んだ「豊臣家の人々」は時代物に私を引きずり込んだ嚆矢だった。
すっかり砂原ファンになっての今、これをチョイス・・表題がら思わぬ時代物絵巻に入り込んで行った至福の時間を授かることが叶った。
ボリュームがあり、描写、文は淡々と抑えた筆致で進む。人によれば、退屈、冗漫と思えてしまうかもしれない。
しかし細部の風景情景、会話で駆使される手法言葉は流石の筆者。「そこにいたんかい?!」といい意味で突っ込みたくなるような表現、語がふんだんに配置されている。
時代は戦国末期から徳川の夜明け前。
村井長頼の語りで巻物は広げられていく・・登場する人は 数あまた…信長・秀吉・家康・信玄・義龍・半兵衛・強右衛門・光秀・政宗・・・だが長頼使えるところの前田利家、おまつは塑像の如く中心に配される。
初めて聞く長頼の名・・ウィキで見ると実在で1605没とある・・フムフム、彼が語ったニュアンスが更に鮮明になった。
戦国の世に特有の戦の布陣が如実に、鮮やかに綴られて、数々の権謀術数は飽きさせない。
個人的に最も気が引き込まれたのは320頁からラスト
秀吉亡き後の高台院が末を訪れ 尼僧の2人の如勝となり抱き合う姿
そして大阪城を巡る東西の・・あの時間前夜の暗雲(なんせ、時代小説は司馬遼からありとあらゆる作家を読み倒してきたので知ったつもりが嬉しくなる)
ここでにわかに浮上する長頼妻のみうの存在がかなり高得点‥作品当初で利家も絡む関係があり、椿の櫛(半分に折った思い出の品)が意味を持つ。
利家末期の情景も絡め、交わされる会話は絶妙
司馬遼、周五郎、藤沢・・なら「おなごの言葉は最後まで言わさず【・・・】となっているのが定番だっただけに。みうに「わたくしが話したいのです」と言わしめている♪
人物に与えた砂原さんならではのキャラも好み
面白いのは上記に羅列した数々の武将と長頼があったときの印象・・それぞれのその後の人生、戦功を思わしめるような描き方には舌を巻いた。
最期まで「こいつ嫌だな・・」と描かれた助右ヱ門も面白い。
淀君が利家の陣羽織に駄々をこね、自らの色鮮やかな打掛を投げつけるシーンはシネマグラフィック的♪
そして醍醐の花見も然り
ものの府はいつも命がけ・・という必死の思いがさらりと緩やかな川の流れにも似せて描かれた 時代物としては今年半期最高の作品だった
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長頼と利家の繋がりの強さ、読みごたえがあった。長頼が主と強く繫がる以前からのふたりをずっと追いかけていくのが楽しかった。長頼の成長が分かるのもまた楽しい。読み進めるにつれ、主従の絆が強まっていくのが分かる。
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前田利家の忠臣・村井長頼が命を懸けて貫いた武士の本分。名だたる戦場を駆け抜け、利家の危難を幾度も救う。主君の肩越しに見た、信長、秀吉、家康ら天下人の姿。
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前田利家の家臣、村井長頼視点の話。
有名な話(桶狭間とか本能寺とか)は全く触れずに、あまり有名ではない部分に焦点を当てた感じがよかった。信長や秀吉は晩年のふるまいは狂人ぽく書かれてるけど、利家は一貫してかっこよく書かれてた。
読後感もすごく良かった。
売る
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文末の時制(過去形と現在形)をほぼ一文ずつ入れ替える丁寧さ。そこから生まれる作者独自の端正な文体。そして抒情と余韻。かつてのこの国の女たちと男たちを縛った窮屈さと生きづらさ。にも拘らず、それらを受け止めたうえでの「凛」とした生きざま…。また砂原浩太朗に泣かされた…。
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「高瀬庄左衛門御留書」から神山藩シリーズを手掛けている著者の第一作。神山藩シリーズは全体的に抑えた雰囲気の中、巧みに盛り上がりと心情風景を描き出す作品群だが、本作は戦国時代を舞台としていることもあり、その後の著者の作風につながる雰囲気も出しつつ、いわゆる戦国時代小説的筆致もあるような作品になっている。特に最後の章が登場人物の心情をうまく表出させていて、面白く読むことができた。読み終わって、しんみりとした充実感を感じた。
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『高瀬庄左衛門御留書』で山本周五郎賞を受賞した著者のデビュー作。
信長・秀吉・家康とめまぐるしく覇権がが移りゆく時代を潜り抜け、加賀百万石の礎を築いた前田利家、彼を側近として仕えた村井長頼を主人公とした歴史長編。
時に厳しく時に温かい利家と長頼との主従関係の固い絆が語られる。
長頼が問う。
「殿は・・・天下人になりたいと思われませぬので」と。
それに対して利家は
「・・・漢(おとこ)なら、だれしも天下を望もう。・・・だが、わしが目指すのは、天下一のもののふ」と答える。
利家の性格・時代状況のなかでの彼の位置を著す箇所ともいえる。
そして、秀吉と柴田勝家が覇を争う賤ヶ岳での戦いに臨み、どちらに着くか、利家が決断を下す場面は圧巻である。
また、利家の側女であり長頼の妻ともなる「みう」も欠かせぬ存在であり、終盤、利家の正室まつ=芳春院と長頼との会合の場面も読み応えあり。
著者の以降の作品とはまた違った感のある小説。
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前田利家の家臣の目線からの本。時代が駆け足で進み、読み始めは物足りなさを感じたが、気づくとそれぞれの岐路での決断に心動かされていた。武士の生き様。命がけ。に感動。
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前田利家とその家来、村井長頼。信長の怒りをかって尾張を放逐されていた時期から物語は始まる。砂原浩太郎の作品を神山藩シリーズから読んだので、実在した人物を描く作品を初めて読んだ。信長から疎んじられていた時期から百万石の大大名になるまで利家に従った長頼の目を通して、主君たる寿栄のほか、信長、秀吉、家康という天下人の「ある日ある時」の様子を描いている。英雄たる利家そのものではなく、豪傑でもなく、知将でもない、忠義の家臣の長頼を描いたところが砂原浩太郎ののちの作品を思わせる。
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まだまだ未熟な村井長頼は、加賀百万石の前田利家に仕える。
ある乱戦の中、逃げ惑う長頼。
その姿を利家に見られていた。
「生きたい死にたいなど二の次」
「目の前の敵を斃せーそれだけを考えよっ」
利家の叱責が頭を離れない。
前田利家をより詳しく知ることができた。
時代小説が好きで何冊も読んでいるが
重厚なだけがいいわけではなく
砂原さんの作品のようにその時代を身近に感じ取ることができる
時代小説も必要だと思う。
作風が変わってしまわない様、そう願うのはわがままだろうか。
Posted by ブクログ
前田利家の家臣・村井長頼が主人公。その視点で語られる、信長、秀吉、家康、そして主君・利家の姿。
当事者ではなく、一歩引いた視点で描かれているのがいい。決して聡くもなければ要領もよくない長頼の武骨な誠実さも好もしい。
誰かを悪役にするのではなく、歴史の大きな流れを描いているところもいい。