砂原浩太朗のレビュー一覧

  • 雫峠

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    ネタバレ

    【収録作品】半夏生/江戸紫/華の面/白い檻/柳しぐれ/雫峠

    神山藩を舞台に、そこに生きる人々を描いた短編集。
    静かな語り口が好もしい。

    「半夏生」誠実に地味な役目を全うする人々の姿を描く。
    「江戸紫」軽快な話。
    「華の面」お飾りのように戴かれた藩主の覚悟を能役者の目から描く。
    「白い檻」刺客にも三分の理くらいはあるのだろうが、勝手さばかりが見えて情けない。
    「柳しぐれ」トリッキーな語り口が面白い。喜三次が憎めない。
    「雫峠」うかうかといろいろなものを見過ごし、やり過ごしてきたことのツケがきた感じ。最初にボタンを掛け違えてしまったわけだが、そうなると止めようはないのだろうか。最後に大きな決断をせざるを得なくなったが、せめてこのあとは静かに過ごせたらいい。

    どれも余韻が残るので、それぞれの連作なり長編なりを読みたくなった。

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    2025年02月18日
  • 浅草寺子屋よろず暦

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    久しぶりの砂原さんの江戸モノ。色と音の描写に心が凪ぐ。大滝信吾、新たな魅力的な主人公としてシリーズ化か。

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    2025年02月16日
  • 雫峠

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    「高瀬庄左衛門御留書」「黛家の兄弟」「霜月記」に続く待望の神山藩シリーズ第4弾。神山藩が舞台の短中編6編構成だが、「江戸紫」と表題作「雫峠」以外はそれほどの出来でもなく、「江戸紫」の素晴らしさで評価4にした感じ。砂原作品はじっくりとした味わい深い長編が持ち味だと思うので、この「江戸紫」のストーリをこのようなかたちで終わらせるのは非常に勿体ない感じがする。長編で読みたかったなあ。

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    2025年02月12日
  • 夜露がたり

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    江戸の下級藩士を主人公にした傑作を出してきた作者が町民の世界を描く、といっても基本路線は変わらないだろうと思っていたが、よくありそうな人情物語というのでもなく、現実の世の中を生き延びていくのは辛いという感じを滲み出しているストーリーが返って心地良いというか、うなづける話だったりする。
    江戸市井ものを書く名作家は数あれどあまり読んでこなかったので、次の展開があるなら読んでみたい。帯にある表と裏、感情のひだ、江戸の町民の生活は楽ではないし、みんなが人情味溢れる繋がりでもないだろうというあたりが、現代にも通じてくるのかなあ、とも思う。

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    2025年02月01日
  • 冬と瓦礫

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    あれから30年。阪神淡路大震災の惨状が蘇る。切断された高速道路、ひしゃげたビル、倒壊した人家…被災者の心境や現状を詳細に描写。故郷や祖父のことを想う圭介の気持ちが伝わった。

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    2025年01月23日
  • 冬と瓦礫

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    阪神・淡路大震災を描いた砂原さんの現代小説です。
    当時は東京住まいだった砂原さんが、震災の3日後に神戸の自宅に戻り、母と祖父母を遠隔地避難させた体験をもとに描かれた小説です。あとがきにもありますが、震災から15年後、砂原さんが時代小説作家としてデビューする前に書いたものに少し手を入れて、30年という節目に出版されたものだそうです。
    大震災の物語と言えば、身近な人、愛する人を亡くした悲嘆や、そこからの復興を描くものと思いがちですが、これは「片隅の物語」です。本人は東京住まい。母と祖父母は神戸在住ですが、建物は大きな被害は受けたものの怪我はしていません(きわどい状況は有りましたが)。さらに言えば近親者・知人・友人にも身体的な被害もありません。3人を三重の大叔母のもとに避難させますが母とは反目が有り、祖母はほとんど描かれず、唯一著者が気にする祖父もどこか反応が鈍く、家族愛の物語と言った風情はありません。
    読みながら西川美和さんが終戦を描いた『その日東京駅五時二十五分発』を思い出していました。大事件の周辺でどこか静かに進む物語。逆にリアリティーを感じます。駅のトイレの光景、友人の薬を入手するための薬局での騒動、重かった飲料水。あえて事件の中心に入らないリアリティ。
    そしてこのようなこ「片隅の物語」は他にも幾万もあったのでしょうね。
    大きな感動を呼ぶような話ではありませんが、片隅の痛みを感じられる物語です。

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    2024年12月28日
  • 浅草寺子屋よろず暦

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    寺子屋の先生、信吾は生徒や親のトラブルを解決しているうちに江戸の裏を仕切る大物の怒りを買ってしまう。

    良かった。江戸時代の人が抱える様々な問題。本人にそんなにやる気があるようには思えないがさらっと解決する。

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    2024年12月04日
  • 浅草寺子屋よろず暦

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    旗本の次男でありながら身分を隠して下町で寺子屋を開いている信吾に次々と問題がふりかかる。一つ一つの話のボリュームがちょうどよく、四季折々の花や空、風景描写に心が和む。最後の話はこんなに登場人物が一同に会するか!?と大袈裟に感じた。シリーズ化希望。

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    2024年11月23日
  • 浅草寺子屋よろず暦

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    ネタバレ

    帯の惹句の「天命」や「心震える」を期待すると,やや肩透かしかも.もっと軽めの市井ものと思えば楽しめる.

    本当の悪人が出てこない.主人公は,妾腹だけど兄家族全員に好かれてる.黒幕,江戸の暗黒街を牛耳る閑右衛門も,たぶんできることなら跡継ぎにしたいと思ってる.手下の岩蔵も一目置いてるふう.これも彼の人徳というか.

    続編が出て,閑右衛門と敵対しながらどこかで通じ合うみたいな,面白い関係が展開したらいいなと思う.「ずんといい男」になった信吾が見たい.

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    2024年11月14日
  • どうした、家康

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    家康というただ一人の物語でも、こんなにいっぱいあるもんなんだなあ、って思った。王道系も、恋愛系も、色々あって、「家康」を楽しめる。

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    2024年11月09日
  • 浅草寺子屋よろず暦

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    大滝信吾は、寺子屋を開き町人の子らに字などを教え
    穏やかな日々を過ごす。

    静かな時間ばかりではなく
    物騒な事件が長屋の人々を巻き込みながら襲ってくる。

    砂原さんの時代小説は読みやすい。
    でも、本作は少しさらっとし過ぎだろうか。

    市井を精一杯生きる人たち。
    裏でしか生きられない悪人たち。
    深く掘り下げた作品をお待ちしております。

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    2024年11月04日
  • 黛家の兄弟

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    前半は、初々しい、少年の主人公の成長と父、兄達の様子がその時代の景色と共にいきいきと描かれているいて、読んでいてストレートに楽しい。そして後半。13年もの時が、経ってしまっていた。あれあれ?あれあれ?の連続。そしてこの変化の奥には何かあるぞ。と思わせる展開。時代小説を越えた、人間社会の絡み合いが、最後まで興味深く読み進めた。何か悔しさや納得のいかないもどかしさをゴクンと飲み込む。現代と変わらね人の世を実感。

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    2024年10月12日
  • 高瀬庄左衛門御留書

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    この作家の作品は凛とした清々しさが持ち味であるように思える。本作も、済々とものがたりが進んでいくが、その中に人と人との交わりがあり、隠された事実が明らかになり、読者を物語に引き込んでいく。
    江戸時代の武士の世界も清い世界ばかりではないだろうが、ここに描かれているような倫理観/生活感が秩序を生んでいるのなら、とても魅力的であるように思う。

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    2024年10月03日
  • 読んで旅する鎌倉時代

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    鎌倉時代の鎌倉をテーマにして鶴岡八幡宮や銭洗弁天など場所に纏わる短編集。
    鎌倉はよく行っていたので全ての場所が分かって面白かった。しかし源頼朝は好きになれない。

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    2024年09月16日
  • いのちがけ 加賀百万石の礎

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    『高瀬庄左衛門御留書』で山本周五郎賞を受賞した著者のデビュー作。
    信長・秀吉・家康とめまぐるしく覇権がが移りゆく時代を潜り抜け、加賀百万石の礎を築いた前田利家、彼を側近として仕えた村井長頼を主人公とした歴史長編。
    時に厳しく時に温かい利家と長頼との主従関係の固い絆が語られる。
    長頼が問う。
    「殿は・・・天下人になりたいと思われませぬので」と。
    それに対して利家は
    「・・・漢(おとこ)なら、だれしも天下を望もう。・・・だが、わしが目指すのは、天下一のもののふ」と答える。
    利家の性格・時代状況のなかでの彼の位置を著す箇所ともいえる。
    そして、秀吉と柴田勝家が覇を争う賤ヶ岳での戦いに臨み、どちらに着くか、利家が決断を下す場面は圧巻である。
    また、利家の側女であり長頼の妻ともなる「みう」も欠かせぬ存在であり、終盤、利家の正室まつ=芳春院と長頼との会合の場面も読み応えあり。
    著者の以降の作品とはまた違った感のある小説。

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    2024年09月15日
  • 黛家の兄弟

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    続きが気になって時間があれば読んでましたとてもおもしろかったので、他の作品も読んでみたいと思いました

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    2024年08月23日
  • 夜露がたり

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    町人ものの8つの短編集。神山藩シリーズ?で清涼な風のような物語を紡ぐ作者ですが、この短編はなかなか一筋縄ではいかない、心苦しくなるけど自業自得だよな、とかハッピーじゃないけど最悪ではないよな、とか微妙な感情にさせられる物語が続きます。ここらへんさすがの仕掛けだな、と思いつつ読み進めると、最後の最後で。。。あとは読んでのお楽しみ。

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    2024年07月04日
  • 高瀬庄左衛門御留書

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    面白かった!!高瀬庄左衛門 、かっこええ、、。
    50歳で隠居、お役目(郡方)は息子に譲り、その
    いきなり息子が出張先で死亡する、というところから始まる。
    かなり大変な事柄であり、その後もたくさん事件があり
    事柄だけを並べると、どんなハードボイルドミステリ時代小説か?!
    って感じなんだが、
    全体的にほんと、どたばたしてなくて、
    とっても静かで落ち着いていて、
    スゥっと心が凪いだまま読める。文体の美しさと、
    情景のすばらしさもあるかと思うが、
    主役の庄左衛門はもちろん、志穂も弦之助も半次も余吾平も
    大変好ましく、魅力あふれる。次郎右衛門めちゃめちゃかっこいい。
    なんせ、年寄りが全員カッコ良すぎる。
    敵役もそんなに後味悪くない。
    神山藩の禄高は10万石、大名行列は300人弱
    騎乗は10人ほど、
    蟹雑炊が美味しくて、冬は雪に埋もれ、
    台詞のはしばしにたまに感じる、これはあの藩
    (まさに最近行ったあのサギコロニーの城のww)
    そして、
    なんといっても、庄左衛門の画を描くシーンが秀逸。
    志穂と最初に描く燕も素晴らしいし、
    文中に出てくる、鳥たちがまた脳内ビジュアル化を美しく彩る
    庭の松の瑠璃鶲、
    欅の影から聞こえる行行子
    志穂の絵を見ている時におどろくほど近くで鳴いた春告鳥
    装丁のヤマガラは最後の1ページを読み終わって、
    本を閉じたあとに、目のなかにぐわーーっと入ってきて
    すばらしい余韻をもたらしてくれた。

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    2024年06月14日
  • 夜露がたり

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    短編集8篇
    江戸の貧乏長屋の風景、人情が生きにくさの中できらりと光る。短編なのに最後まで分からない捻りの効いた落ちが面白い。「妾の子」が幸せなラストで良かった。

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    2024年06月10日
  • 夜露がたり

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    江戸の長屋で慎ましく暮らす人々を描いた八篇の短編集。行間に漂う、しめやかな冥さと心の機微が秀逸。恨みつらみに気が鬱ぎつつも、彼らの生への執着や人情に微かな希望が見えた。

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    2024年04月03日