砂原浩太朗のレビュー一覧
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『高瀬庄左衛門御留書』で山本周五郎賞を受賞した著者のデビュー作。
信長・秀吉・家康とめまぐるしく覇権がが移りゆく時代を潜り抜け、加賀百万石の礎を築いた前田利家、彼を側近として仕えた村井長頼を主人公とした歴史長編。
時に厳しく時に温かい利家と長頼との主従関係の固い絆が語られる。
長頼が問う。
「殿は・・・天下人になりたいと思われませぬので」と。
それに対して利家は
「・・・漢(おとこ)なら、だれしも天下を望もう。・・・だが、わしが目指すのは、天下一のもののふ」と答える。
利家の性格・時代状況のなかでの彼の位置を著す箇所ともいえる。
そして、秀吉と柴田勝家が覇を争う賤ヶ岳での戦いに臨み、どちらに着くか、利家が決断を下す場面は圧巻である。
また、利家の側女であり長頼の妻ともなる「みう」も欠かせぬ存在であり、終盤、利家の正室まつ=芳春院と長頼との会合の場面も読み応えあり。
著者の以降の作品とはまた違った感のある小説。 -
Posted by ブクログ
面白かった!!高瀬庄左衛門 、かっこええ、、。
50歳で隠居、お役目(郡方)は息子に譲り、その
いきなり息子が出張先で死亡する、というところから始まる。
かなり大変な事柄であり、その後もたくさん事件があり
事柄だけを並べると、どんなハードボイルドミステリ時代小説か?!
って感じなんだが、
全体的にほんと、どたばたしてなくて、
とっても静かで落ち着いていて、
スゥっと心が凪いだまま読める。文体の美しさと、
情景のすばらしさもあるかと思うが、
主役の庄左衛門はもちろん、志穂も弦之助も半次も余吾平も
大変好ましく、魅力あふれる。次郎右衛門めちゃめちゃかっこいい。
なんせ、年寄りが全員カッコ良すぎる。
敵役もそんなに後味悪くない。
神山藩の禄高は10万石、大名行列は300人弱
騎乗は10人ほど、
蟹雑炊が美味しくて、冬は雪に埋もれ、
台詞のはしばしにたまに感じる、これはあの藩
(まさに最近行ったあのサギコロニーの城のww)
そして、
なんといっても、庄左衛門の画を描くシーンが秀逸。
志穂と最初に描く燕も素晴らしいし、
文中に出てくる、鳥たちがまた脳内ビジュアル化を美しく彩る
庭の松の瑠璃鶲、
欅の影から聞こえる行行子
志穂の絵を見ている時におどろくほど近くで鳴いた春告鳥
装丁のヤマガラは最後の1ページを読み終わって、
本を閉じたあとに、目のなかにぐわーーっと入ってきて
すばらしい余韻をもたらしてくれた。 -
Posted by ブクログ
市井を描く八篇からなる短編集。
砂原浩太朗さん、そう来たか!
長屋に住む人々の物語。
どういう展開になるのか楽しみにしていた。
腰高障子を引けば全てが見渡せるほどの狭さ。
井戸端でのかしましい声。
全編を通して伝わる、長屋のじとっとした空気が重苦しい。
「幼なじみ」
P183
〈いちど裏長屋に生まれたら、ふたたび表通りは歩けない〉
「錆び刀」は、浪人に落ちた者の話。
どうしようもなく自分の想いに流されてしまうが
清々しさも感じられる一編。
武士の矜持を描いた物語も読み応えありだが
精一杯生きる市井の人たちも良かった。
今作が初めてという読者のみなさん。
既刊もぜひ。 -
Posted by ブクログ
市井物の時代短編集。8編「帰ってきた」「向こうがわ」「死んでくれ」「さざなみ」「錆び刀」「幼なじみ」「半分」「妾の子」
初期のどうしようもなく暗かった頃の藤沢周平を思い出します。
まあ、砂原さんご自身が「デビュー直後から藤沢周平への私淑を公言していた。」とおっしゃっているので影響を受けているのは間違い無いようです。
そうは言っても「焼き直し」ではありません。短編ながらストーリーのヒネリがやや強く、クルリと反転する感じは周平さんと少し違います。また、最後の一編を除き、主人公が闇に堕ちて行くところは似ていますが、その闇は初期の周平さんの様な漆黒ではなく、やや月明かりが差す闇の様です。
暗転ではなく、暗から明に転回する「妾の子」を最後に置き、少し晴れ晴れとした読後感になりました。