砂原浩太朗のレビュー一覧
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ネタバレ【収録作品】半夏生/江戸紫/華の面/白い檻/柳しぐれ/雫峠
神山藩を舞台に、そこに生きる人々を描いた短編集。
静かな語り口が好もしい。
「半夏生」誠実に地味な役目を全うする人々の姿を描く。
「江戸紫」軽快な話。
「華の面」お飾りのように戴かれた藩主の覚悟を能役者の目から描く。
「白い檻」刺客にも三分の理くらいはあるのだろうが、勝手さばかりが見えて情けない。
「柳しぐれ」トリッキーな語り口が面白い。喜三次が憎めない。
「雫峠」うかうかといろいろなものを見過ごし、やり過ごしてきたことのツケがきた感じ。最初にボタンを掛け違えてしまったわけだが、そうなると止めようはないのだろうか。最後に大きな決断をせざるを得なくなったが、せめてこのあとは静かに過ごせたらいい。
どれも余韻が残るので、それぞれの連作なり長編なりを読みたくなった。 -
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阪神・淡路大震災を描いた砂原さんの現代小説です。
当時は東京住まいだった砂原さんが、震災の3日後に神戸の自宅に戻り、母と祖父母を遠隔地避難させた体験をもとに描かれた小説です。あとがきにもありますが、震災から15年後、砂原さんが時代小説作家としてデビューする前に書いたものに少し手を入れて、30年という節目に出版されたものだそうです。
大震災の物語と言えば、身近な人、愛する人を亡くした悲嘆や、そこからの復興を描くものと思いがちですが、これは「片隅の物語」です。本人は東京住まい。母と祖父母は神戸在住ですが、建物は大きな被害は受けたものの怪我はしていません(きわどい状況は有りましたが)。さらに言えば近親者・知人・友人にも身体的な被害もありません。3人を三重の大叔母のもとに避難させますが母とは反目が有り、祖母はほとんど描かれず、唯一著者が気にする祖父もどこか反応が鈍く、家族愛の物語と言った風情はありません。
読みながら西川美和さんが終戦を描いた『その日東京駅五時二十五分発』を思い出していました。大事件の周辺でどこか静かに進む物語。逆にリアリティーを感じます。駅のトイレの光景、友人の薬を入手するための薬局での騒動、重かった飲料水。あえて事件の中心に入らないリアリティ。
そしてこのようなこ「片隅の物語」は他にも幾万もあったのでしょうね。
大きな感動を呼ぶような話ではありませんが、片隅の痛みを感じられる物語です。 -
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『高瀬庄左衛門御留書』で山本周五郎賞を受賞した著者のデビュー作。
信長・秀吉・家康とめまぐるしく覇権がが移りゆく時代を潜り抜け、加賀百万石の礎を築いた前田利家、彼を側近として仕えた村井長頼を主人公とした歴史長編。
時に厳しく時に温かい利家と長頼との主従関係の固い絆が語られる。
長頼が問う。
「殿は・・・天下人になりたいと思われませぬので」と。
それに対して利家は
「・・・漢(おとこ)なら、だれしも天下を望もう。・・・だが、わしが目指すのは、天下一のもののふ」と答える。
利家の性格・時代状況のなかでの彼の位置を著す箇所ともいえる。
そして、秀吉と柴田勝家が覇を争う賤ヶ岳での戦いに臨み、どちらに着くか、利家が決断を下す場面は圧巻である。
また、利家の側女であり長頼の妻ともなる「みう」も欠かせぬ存在であり、終盤、利家の正室まつ=芳春院と長頼との会合の場面も読み応えあり。
著者の以降の作品とはまた違った感のある小説。 -
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面白かった!!高瀬庄左衛門 、かっこええ、、。
50歳で隠居、お役目(郡方)は息子に譲り、その
いきなり息子が出張先で死亡する、というところから始まる。
かなり大変な事柄であり、その後もたくさん事件があり
事柄だけを並べると、どんなハードボイルドミステリ時代小説か?!
って感じなんだが、
全体的にほんと、どたばたしてなくて、
とっても静かで落ち着いていて、
スゥっと心が凪いだまま読める。文体の美しさと、
情景のすばらしさもあるかと思うが、
主役の庄左衛門はもちろん、志穂も弦之助も半次も余吾平も
大変好ましく、魅力あふれる。次郎右衛門めちゃめちゃかっこいい。
なんせ、年寄りが全員カッコ良すぎる。
敵役もそんなに後味悪くない。
神山藩の禄高は10万石、大名行列は300人弱
騎乗は10人ほど、
蟹雑炊が美味しくて、冬は雪に埋もれ、
台詞のはしばしにたまに感じる、これはあの藩
(まさに最近行ったあのサギコロニーの城のww)
そして、
なんといっても、庄左衛門の画を描くシーンが秀逸。
志穂と最初に描く燕も素晴らしいし、
文中に出てくる、鳥たちがまた脳内ビジュアル化を美しく彩る
庭の松の瑠璃鶲、
欅の影から聞こえる行行子
志穂の絵を見ている時におどろくほど近くで鳴いた春告鳥
装丁のヤマガラは最後の1ページを読み終わって、
本を閉じたあとに、目のなかにぐわーーっと入ってきて
すばらしい余韻をもたらしてくれた。