砂原浩太朗のレビュー一覧
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2年前に『黛家の兄弟』を読んだ以来の砂原さん。その時は強い印象を受けたが、今回はまだるっこさを感じながら読み進んでいた。しかしラストの”秋江賦”の展開で、差配役の頭として取りまとめをしていた里村五郎兵衛の存在感がぐんと増す。次女の澪の出生の秘密が明かされ、ミステリー仕立てに甘酸っぱさが加わり、終盤で本作を盛りたてたと思う。
藩主世子・亀千代の年齢設定はいったいいくつなのだろう。亀千代がおしのびで市中を出回った時『どれほど人出が多かろうと、結句、おのれ 一人いちにん であることにも変わりはなかった』と、こぼした言葉が忘れられない。亀千代が、時折り時代劇で描かれるようなぼんぼん風情でなく、藩主世子 -
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Posted by ブクログ
大河ドラマと合わせて読みました。
歴史は勝者が作るとはよく聞く話ですが、正史はそうなのだろうなとつくづく思います。そして、それだけではなく、歴史とは解釈なのだなと深く思います。特に歴史小説を読んだ後には。そして、このようなアンソロジーを読むと、一編ごとに少しずつ変わっていく(あるいは観点を変えていく、ずれていく)解釈が実に面白いものです。
一冊の長編を読み通すのも面白いのですが、これはある観点からの物語を深くしていくことだと思います。アンソロジーには多観点から読み解いていく、そして、一編ずつを積み重ねて一冊の流れを読み解いていく楽しみがあります。
私は背表紙に「高田崇文ほか」とあったので購入し -
Posted by ブクログ
決戦シリーズ第7弾。今回の舞台は「長篠の戦い」。
主戦場が設楽原だったということでタイトルになってます。鉄砲三段撃ちで有名なあの戦いです。
武田側は信玄ありきだったのだなぁ、と改めて感じました。偉大な先代の影響から、勝頼も宿老たちも逃げられなかったのだなぁ、と。信玄の遺産で勝ち続け、この戦いで使いつくしてしまったわけか。
そこから前を向く「ならば決戦を」。
少しでも残そうとする「くれないの言」。
敗北から這い上がろうとする話は、涙を憶えます。その後の武田の顛末を知っているだけに。
「表裏比興の者」は、伊東潤の「天地雷動」との相似として面白いです。真田昌輝と釣閑齋の作戦は似たものだけど、導き