砂原浩太朗のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
神山藩シリーズの二作目にして山本周五郎賞受賞作。その看板に偽りなしと言える作品でした。
四季を感じさせる美しい文章、登場人物の思惑や願い、意志が静かな文の中に息づいており、更にまるでミステリー作品を読んでいるかのように物語が展開していき、読んでいて飽きがこずひたすら読み進めてしまいました。
落着はもちろん着きますが、快晴のような晴れ晴れさはなく、一抹の哀愁のようなものが読み手にも残り、この出来事に巻き込まれた新三郎を含む全ての人々を脳裏に呼び起こしてくれます。
勧善懲悪のようなわかりやすさはありませんが、相対する者も一言で悪と言えぬ考えを与えてくれます。
時代小説と言うジャンルではありますが苦手な方も読んだことのない方にでも読みやすく、何より心理描写が素晴らしい作品です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ直前に小石川御薬園を舞台にした小説を読んでいた縁で手に取りました。
初めて読む作家さんです。
期待以上に良かったです!
少しずつ真相を探っていく短編連作。
主人公と同じく疑惑を深めながら読み進めました。
ラストは、黒幕の想いが若干拍子抜け感はありましたが、読後感は良かったです。
同僚や上司、看病中間など、主要な登場人物が魅力的でした。出番はあまりなかったけれど、北町の同心・水分様がお気に入り。
長三郎がほのかに想いを寄せるおそのちゃんとの仲も気になります。
なんとなく続きがあってもおかしくない終わり方でした。
まだまだ長三郎の成長を見届けたいので、シリーズ化を希望します。
-
Posted by ブクログ
藩邸差配役シリーズ大好き。一見派手ではないけどこういうのがいいんです…。
読み始めて前作の設定が頭から抜けていたので読み直してからこちらへ。前作のあの衝撃の真相をすっかり忘れていて同じところで驚くという…自分の鳥頭ぶりにもびっくり。
大工さんが言っていたとおり、五郎兵衛さんとの仕事は何も起こらないというのがほんとそれそれ!と思った。さりげない気の配りようが心地よい。いささか酔いが回った五郎兵衛さんをみんなでおうちに送り届けるエピソードに愛され具合が感じられてほほえましい。剣のたつ梔子姫の話が特に好き。
続きが気になるので、オール讀物で追っかけます! -
Posted by ブクログ
静かな佇まいの小説だった。わりとこうなるかな、というのは想像できたけど、最後まで読ませる力量はさすが。
神山藩筆頭家老の黛清左衛門が倒れた。その後は出仕もしている。兄壮十郎から、黒沢家への使いを頼まれる。長兄の栄之氶は靖姫と近々婚儀をあげる。三男の新三郎には黒沢家のりくに婿入りする。
義父の黒沢は早く新三郎に目付の仕事を教えようと、裁きの座に同席させたりする。そうこうしているうちに兄の荘十郎が家を出る。
家老の漆原の息子が、夜の街で悪さを働いている。訴えるものがいないため、現場を押さえるために、目付たちが交代で街に出かける。漆原に新三郎は斬られる。そこに荘十郎が現れて助けてくれたが、捕縛される。
漆原の娘は殿の側室となって子を設けている。漆原はその子を後継ぎに立てたい。漆原家に甲冑の者たちが集まる。目付としては赴かないわけにいかない。漆原の家には側室のおりうと、その子又次郎がいた。 -
Posted by ブクログ
「藩邸差配役日日控」の続編。
第1話 藩主和泉守正親が江戸参勤を終えて、地元に帰って行った。五郎兵衛は娘の七緒と亡き夫の形見を整理することにした。筆や硯などの筆記具とともに、日記が入っていた。
絵師の菅沼は最近自分が見張られているような気がするといっている。五郎兵衛が見張っていると、浪岡が菅沼を見張っていた。浪岡は菅沼に病身の妻の絵を描いてほしいと思っている。
第2話 江戸藩邸では御殿の修復工事が行われていて、源蔵という親方が工事を差配している。源蔵親方の顔色が悪いと聞いて五郎兵衛は様子を見に行ったが、本人に大丈夫だと言われてしまうと、どうにもしようがない。
第3話 端午の節句のお人形を飾った。後々のことも考えて、今年は迫水にやらせてみたが、人形の刀が落ちるというハプニングがあったものの速やかに修理に出し、滞りなく準備ができた。奥女中の玉と次女の澪が小太刀で立ち会っていた時に、玉がふらついたところをついてしまい、玉が倒れた。
第4話 安西が父のことで懸念があるという。今年になってから家を空けることが多くなり、たまに泊まってまでくるらしい。様子を見に行ってみると、彦坂もどこかから耳に入れたようで鉢合わせした。しかし安西の父はいない。女か博打だろうということになったが、士道不覚悟として切腹となっては目覚めが悪い。
第5話 浪岡の妻が亡くなったらしい。わざわざ挨拶に来てくれた。登美岡で呑んでいると、外で喧嘩の声が聞こえて見にいく。声をかけたら男が逃げて行った。前任者が不正でとばされた御納戸頭の窪田は、しきりと不正をしていないアピールをしてくるので疲れてしまう。
第6話 御納戸頭の汚職事件で兄のせいでお解き放ちになってしまった遠山俊次郎が、挙動不審で周囲を心配させている。そんなこともあり、事件を見返してみると、娘の七緒の亡き夫がどのように事件を見ていたかがわかるのであった。 -
Posted by ブクログ
神宮寺藩7万石江戸藩邸。左配役里村五郎兵衛のもとには日々事件が持ち込まれる。
第1話 ご世子の亀千代君が上野のお山に桜見物に行かれた。不忍池に差し掛かった頃、若君のお姿が消えていた。ご家老は無理に見つけずとも良いというが、そうは言っても。弁天堂から若君の守り刀がみつかる。
第2話 奥の調度を扱う商人の入れ札を行っている。随分と額の違う値が示されたが、御用商人が決まった。五郎兵衛は違和感を感じる。娘婿の河瀬新之氶は賄賂の汚名を着せられて切腹した。ご家老から入れ札やり直しを命じられる。
第3話 お滝が雇われたのはひと月ほど前のこと。以降藩士から雇い人までその姿を覗きにくる男が相次ぎ、厨まわりが難儀している。五郎兵衛は言われて見に行ったが、だからどうできるものでもない。しかし五郎兵衛が厨の女に御執心だという噂がたってしまった。女を巡って喧嘩まで起きてしまい、その男らを解雇するしかない。
第4話 正室のお煕さまの猫万寿丸が失踪した。それを探すのも左配方の仕事なのでしょうか?と部下が言う。黒と茶の猫を取り寄せてお目にかかると、誰がかわりを持てと言ったかと怒られてしまう。皆で探し回って、似たような猫がガンガン集められる。全滅。藩邸はすでに猫屋敷になりはてている。
第5話 殿様の心臓の具合が悪く、国許から江戸に出府してこない。半月前から藩邸の周りを得体の知れない影が徘徊しているとの噂がたっている。殿は実は本復されているが、江戸藩邸がふたつに割れているのをそのままにできないと言う。 -
Posted by ブクログ
先日、日経新聞で「さまざまなルーツ」という砂原浩太朗さんのエッセイを読ませていただいた。お名前は存じていたが、作品は未読であった。そのエッセイは一文が比較的短く、端正なリズムを感じる文章だと思った。
砂原さんご自身のルーツの一つ、父方の故郷とのつながりの中でいくつかの作品に触れられていた。その一つが北陸地方にある架空の「神山藩」を舞台とした「高瀬庄左衛門御留書」シリーズ。即座に「読みたい」という欲求に駆られてしまい、すぐさまネットでポチったのでした。
題名にもなっている「高瀬庄左衛門」は神山藩の「郡方」の役人。この郡方とは「藩政の中で農村に対する年や戸口、宗門、検断、訴訟などの政務を担当」する役人のこと。役の格付けの中では下級役人とのこと。藩中の役職による格というものが現代の社会や会社内の格になぞらえて納得できるところがある。
庄左衛門は既に息子に役職を譲ったところから話が始まる。話が始まるや否や息子が不慮の事故で亡くなり庄左衛門は復職。元々妻はすでに亡くなっており、息子は既婚であったが子供はなく、嫁は実家に帰し、彼の独り身の生活を中心に話が進んでいく。
庄左衛門は絵を描く才があり、実家へ帰した元嫁は義父を思ってか、絵を描くことを取得したいのか、彼に師事することになる。そのあたりから地方藩の一役人の平凡な生活ではなく、様々な登場人物たちと人情を交えながら凡人では味わえないストーリーを展開していく。
砂原さんが描く登場人物たちはとても魅力的で、読み進むにつれてストーリーにのめり込んでいく。艶っぽさあり、ハラハラドキドキあり、ページを捲る手が止まらない。
文章の端正なリズムに加えて、多少の疑問を残しながら話が進んでいくのである。早く前に進まないとわからなくなるではないか?と焦りつつ読み進めざるを得ない。
しかし、ちょうどいいタイミングで伏線が回収されていく。なかなか憎い演出だと思う。読者をストーリーの中に引き込む術なのだろう。私はまんまと作者の思い通りに操られ、ストーリーをありがたく「堪能」することができた。
ただ、最後までわからなかったことが数点。
一つは、息子の嫁であった「志穂」さんとの関係。思わせぶりな書き方はしていたが、もしそうだとしたら?結末は変わっていたはず。真相は闇の中である。
次に、事件が解決した後も、主犯核の浪人の旧友がどうして処罰されていなかったのか?そして最終的に庄左衛門と決闘することになったのか?庄左衛門は傷を負いながらも勝ったのだが、ことの顛末がどのように収められたのか?「どうなるんだ?」とハラハラしていると、それが明らかになる前に次の場面を迎えてしまう。
あとは、高瀬家が「養子を迎えるのか」どうか?ということ。
残念ながら、作中に触れられておらず、「読者の想像にお任せする!」というスタンスのようだ。
この「思わせぶり」のまま結末を迎えるところが、本作の面白いところなのだと思う。
しかし、たとえ小説の中とは言え、庄左衛門の年齢を考えると、当時では明らかにスーパーじいちゃんだろう。羨ましいような気分にもなってしまったのでした。
とても面白かったです。