【感想・ネタバレ】黛家の兄弟のレビュー

あらすじ

第165回直木賞、第34回山本周五郎賞候補『高瀬庄左衛門御留書』の砂原浩太朗が描く、
陥穽あり、乱刃あり、青春ありの躍動感溢れる時代小説。

道は違えど、思いはひとつ。
政争の嵐の中、三兄弟の絆が試される。
『高瀬庄左衛門御留書』の泰然たる感動から一転、今度は17歳の武士が主人公。

神山藩で代々筆頭家老の黛家。三男の新三郎は、兄たちとは付かず離れず、
道場仲間の圭蔵と穏やかな青春の日々を過ごしている。しかし人生の転機を迎え、
大目付を務める黒沢家に婿入りし、政務を学び始めていた。そのさなか、
黛家の未来を揺るがす大事件が起こる。その理不尽な顛末に、三兄弟は翻弄されていく。

令和の時代小説の新潮流「神山藩シリーズ」第二弾!

~「神山藩シリーズ」とは~
架空の藩「神山藩」を舞台とした砂原浩太朗の時代小説シリーズ。
それぞれ主人公も年代も違うので続き物ではないが、統一された
世界観で物語が紡がれる。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

『高瀬庄左衛門御留書』の文章から浮かび上がる、静かなたたずまいに一読すぐにファンになった。
「神山藩シリーズ」第二弾ということで、またそのような作品を読めるものと思ったら、またがらりと趣向を変えてきた。

神山藩で代々筆頭家老を務めてきた黛家。
長男は家を継ぐとして、次男より先に三男が、大目付を務める黒沢家に婿にと求められる。

筆頭家老の座を虎視眈々と狙う次席家老。
行き場のない次男。
凡庸な藩主。

歴史小説はある程度事実を踏まえなければならないが、すべてフィクションの時代小説なら勧善懲悪であってほしい。
しかし、歯車のずれがどんどん大きくなっていき、三兄弟がただ兄弟という間柄だけで繋がることは難しくなっていく。

一応、この事件はこういうことなのだろうなあ、こういう風に決着するといいなあ、などと思いながら読んでいるのだけど、そして途中までは確かにそのとおりに話が進んでいたはずなんだけど、最後の方はほとんど、怒涛の展開に翻弄されました。

「よき政とは、なんだと思う」
「だれも死なずにすむ、ということでござろう」
これのなんと難しいことか。
人の心の複雑さにより、善にも悪にもなり切れない半端ものであるのが大半なので。

この作品もまた、面白うございました。

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2025年10月27日

Posted by ブクログ

2022年第35回山本周五郎賞

歴史小説、時代小説から少し遠のいていましたが
一挙に引き込まれてしまいました。

架空の神山藩が舞台となります。
著者の時代シリーズに共通する舞台です。
そして、日本史ポンコツなので気楽にこの世界に入れる重要なポイントかもしれません。

筆頭家老黛家の三兄弟の物語、その中でも主人公は17歳の三男です。
家督は長男が継ぐ、三男は大目付の家へ婿養子へ、次男は藩政をめぐるトラブルに巻き込まれてしまいます。
若い兄弟は望まぬも藩の政争の渦中へ。

そして二部構成となっており、十三年後が描かれます。若者は三十歳となり藩政の中央に近づいています。

著者は、一貫してビルドウングスロマンを意識されていると何かで聞いた記憶があります。
権力闘争の中で兄弟の絆を若き武士達の成長を描くとても素敵な作品です
しかも派閥争い、藩主の跡目争いに関わるミステリーまで仕込まれています。
この作品があまり登録数が多くないのがミステリーです。

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2025年04月22日

Posted by ブクログ

この方の作品はとにかく文面が緻密で美しい情景が浮かんできて圧倒される。
導入部では黛の三兄弟が内記の策略により翻弄される。選択を迫られる苦悩に新三郎の未熟は罪だ、と至らなさを痛感する場面、分かってしまう。無知であるのが恐ろしいんだ。
第二話になると成長した織部正(呼び方が役職で引き継がれているのが新鮮)が内記の懐刀になっているのだからどうしても勘ぐってしまう。
本当に疑う余地がなかったのだけど、十年近くも一緒にいたら情か移ってこやんのかと。
読み進めてたら物語の締めにはやはり、師の様な存在でもあったとわかり敵でもあったが複雑な思いが垣間見えた。
後半はミステリー的な感じもあり、騙し合いとドロドロとした流れであったが、最後は爽やかな締め方でスッキリした。
後、男衆は裏表が激しかったが、女性は強く可愛い人が多かったのが印象に残った。

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2024年10月28日

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とても面白かった。前作同様、かつての侍たちが持つ矜持と、現代人にも理解しやすい情や心理がとてもうまくミックスされていると思う。激しく豊かな想いを持ちながらも、自分を律し滅私奉公に徹する姿は美しい。
神山藩シリーズ3作目も楽しみ。年末にでもゆっくり味わって読んでみたい。

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2024年09月29日

Posted by ブクログ

めちゃ面白かった。
庄左衛門には関係ないが、
同藩の立花さんや啓一郎が学んだ藩校が、まだ構想程度だった時代の神山藩。
そして、『庄左衛門』よりもエンターテイメント性が飛躍的に高くなっている。
ミステリ、ツイスト、アクション、そしてロマンス
こなれてはりますな。
個人的には『庄左衛門』のほうが好きではある。
というのも
今度の主役は黛家三兄弟、そしてその末っ子が主役である。
若い、、
しかし、育成系の楽しさがある。
そして、きっと腐味を見出す人が多そうではある(あははは)
前作の庄左衛門もそうだが、部屋住の武家の次男三男以下同文たちが
養子や婿に入って、そのお家を盛り上げたり、
主家の長男に不幸があったり差し障りがあって、元家に戻されるとか
そういう、ままあることながらあんまり物語になってこなかったタイプの
なんていうか、個人だけでなく”家”というパックを存続させるという
強い意志をもった人々が描かれるのが非常に面白い。
何かをなすときに、全てを薙ぎ倒していくいわゆる西洋スーパーヒーロー的なんではなく、
根回しをして、我慢をして、何がプライオリティなのか、というのを忘れず
周りの噂に屈せず、
これこそ、さぶらふもの、
侍である。
うっとりさせられた。
今作は、ものすんごくさらに長い期間の赤穂浪士的な黛と
平安の藤のような漆原、
というのが個人的な感想。
それが正しいとか正しくないとか、
司法にのっとってるとか、違法だとか、
そういうのではなく、何が大切か、という刀を
首につきつけられている心持ちのする作品であった。

あいかわらず、野鳥がええ感じに出てくる
「真鴨が一羽、燃え立ちような光を浴びながら水面をすべっていった。」
織部正(先代/舅)があげた笑い声に
「頬白の飛び立ってゆく音が耳にとまる」
友垣、情、血族、そして家

「おなじことなら、強い虫になられるがよい」

「所詮、個々の生に意味などないことは、いま足もとを這っている虫をみれば分かる。ただいのちをつなぎ、子や孫に伝えることだけが求められているすべてなのだろう。それでは満足できぬのが、おのれをふくめて、ひとという生きものの不幸というべきだった。」

余韻の良い小説である。

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2024年06月24日

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ネタバレ

それぞれの人生を丁寧に描く。久しぶりに物語世界にはまり込むことができた。山本周五郎賞は裏切らない。兄弟の強い絆が最後に示されて、こちらは気づいていなかったので仇敵と一緒に驚いてしまった。

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2024年06月02日

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「神山藩」シリーズ第2作目は、本屋が選ぶ時代小説大賞など4冠を獲得した『高瀬庄左衛門御留書』以上の傑作。
今まで読まずにいたのが惜しまれたと思わずにはいられない第35回山本周五郎賞受賞作。
神山藩で筆頭家老を勤める黛家の三男新三郎が主人公。
三兄弟それぞれに描き分けられ、どんでん返し的なミステリー性もあって、これぞ時代小説と堪能の読後感。
「それはわれらが、黛家の兄弟だからでござる」に、カタルシスを覚える。

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2024年03月26日

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前作が良かったからすごく楽しみにしてたんだけど、期待以上だった!
前作はもうちょっとほのぼの感というか、日常感があったけど、今回は凄くドロドロしてるし、人もいっぱい死ぬし、騙し騙され…って感じですごかった。
次も楽しみー

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2024年01月04日

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前半は、初々しい、少年の主人公の成長と父、兄達の様子がその時代の景色と共にいきいきと描かれているいて、読んでいてストレートに楽しい。そして後半。13年もの時が、経ってしまっていた。あれあれ?あれあれ?の連続。そしてこの変化の奥には何かあるぞ。と思わせる展開。時代小説を越えた、人間社会の絡み合いが、最後まで興味深く読み進めた。何か悔しさや納得のいかないもどかしさをゴクンと飲み込む。現代と変わらね人の世を実感。

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2024年10月12日

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続きが気になって時間があれば読んでましたとてもおもしろかったので、他の作品も読んでみたいと思いました

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2024年08月23日

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時代小説は舞台が限られているからやむ得ないのだが、筋書きはありきたり・・だが、砂山氏の筆は違う!
何といっても骨太い。
時を、藩ののドラマはともに伏線がびっしり惹かれている。それは論理的にきっちり回収されており、読後の充実差に通じている。

1冊目で読んだ「高瀬庄左エ門」でも十分に満足したが、こちらはそれを上回る重厚、かつ複雑な筋の展開だ。
代々筆頭家老の家に生まれた3兄弟。
長ずるにしたがって、想いを抑えて人生が展開していき、藩の運命とリンクしてあたかも転がる石の如く半ば宿命ともいうような時間が流れた。

新三郎を主軸に置き、長兄次兄、そしてそれぞれの伴侶、女を配し、愛の種々の形が見事。
キャラ立ちが良い・・りう、みや、すぎ、おとき・・・
最初の頃に登場した一人一人が歩みを見せ、皆それぞれに、タガを締めている。
最期の頁に登場する壮太に・・影のように寄り添ってきた圭蔵はもとより佐倉、五郎兵衛、登場が少なく、ヒール的立ち位置に餅を通わせた群像絵巻は素晴らしい。

次作、期待高まってしまう。

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2024年05月17日

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未熟であるが故に大切なものを守れない。
聞いた時は理解出来ていない言葉も、自身が経験することで腑に落ちる。そして、人へと引き継ぐことができる。人を理解するには時間がかかるが思いは伝わる。そんなことを感じ一冊。家族、親から子へ、人から人へ、といった人の繋がりを感じ、読後が心地よい。

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2024年01月19日

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この作品にも、いわゆる「悪人」は登場しない。誰もが、自分にとっての「正義」のために行動している。結果的に、勝利したものが正しいことになってしまうのは、「歴史」ってのは、そういうものだからなのかな?

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2024年01月07日

Posted by ブクログ

神山藩シリーズ第二弾
藩の相続が絡んだ派閥争い
雌伏する兄弟
策略に策略が重なる。
長い時間をかけて発現した策略
どんな状況の中でも信頼して行動できる兄弟の絆が鮮やかに描かれる。

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2024年02月03日

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