砂原浩太朗のレビュー一覧
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三十年前の阪神淡路大震災の物語。
携帯電話やインターネットが普及していないため当時の不便さというか時代を感じる。
当事者ではない圭介が東京から現地へ向かい様子を実況する形となるので、状況も悲惨さも強くは感じない。
それでひとまず一件落着やろ
進藤からしてみたらやはり帰っていく圭介はたとえ思いがあっても他人事にしか思えないのだろう。
ただもうすぐ発生すると言われる未曾有の大震災に対しての恐怖は呼び戻された。
何万人という人は死んでしまうんだ。
予想被災地の真ん中にいる我が身としてはもっと構えていなくてはいけないはずなのに何故かなんにも考えていなく、勝手に大丈夫と思っていた。か、考えたくもな -
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ネタバレ1995年の阪神・淡路大震災をテーマにした作品。
砂原さんの体験をもとに書かれたそうだが
時代小説に馴染みのある作家さんなので
本作はどのような感じなのか興味を持ち手にした。
震災後30年。
未曾有の出来事から今まで幾度も訪れた自然災害。
人間なんてちっぽけな生き物だな。
歯噛みする思いでやり過ごしてきたが
私はどの時も当事者ではないのだから
災害に遭われた方たちを完全に理解することはできないのだろう。
友人の自宅へ見舞いに訪れた圭介は〈東京にもどる〉ことができる。
P160
〈おまえも、じいちゃんばあちゃん逃したら、それでひとまず一件落着やろ〉
圭介に投げかけられた言葉。
〈その声を -
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「神山藩シリーズ」第4弾は6つの短編集。
前作「霜月記」の少し後の年代と思われる6つの物語は、お家の問題や城内の政を描いた前作までとは趣を異にする。
武家の娘、家老の嫡男、政から遠ざけられた若き藩主、流罪にされた武士、身分違いの家に婿養子として入った次男など、物語の中心たり得ない人々の心情を描いていく。
表題作「雫峠」の切なさはさることながら、一番好きなのは若き神山藩主の清々しいほどの覚悟を描いた「華の面」。
本家の三男から分家の藩主になった正寧を政から遠ざけようとした老獪な家臣の思惑を知りながら、自らのやり方で務めを果たそうとする姿に心打たれた。
一杯飯屋“壮”や、神山藩の銘酒“天の河 -
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30年前の阪神・淡路大震災の被災後一週間の出来事。作者本人の体験をもとに、自らの記憶を記録するという意図のもと小説という形でしか表し得ないものも含めて描いた作品。
時代物の砂原さんにしては珍しい現代物と思ったら、そういう経緯があったのかとあとがきを読んで納得。
同じ被災者であっても被害の大小、その後の身の振り方などは一様ではなく、被災者の間でも思いは様々なのだということが主人公とその友人のやり取りでわかる。
ましてや報道でしか知り得なかった者には何も言う資格はないんだろうし、分かったようなことも言えない。それはその後に起こった東日本大震災でも、昨年の能登半島地震で同じこと。そしてそれは地震 -
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砂原浩太朗の作品はこれまで何冊か手に取っており、
静かで凛とした雰囲気があって好き。
作者は15年ほど前にこの作品の原型を執筆したということで、最近のものには感じられない激しさや
人の心の暗い部分がたくさん描かれていて
正直に言うと、別の著書の本を読んでいるような気分になった。
阪神・淡路大震災が起こってからの七日間の出来事を
主人公(作者)が取った行動をそのまま綴った内容は、
30年前、わたしもその場所にいたことを思い出させる
少し苦しくつらい読書だった。
作者も感じているように
直接的な被害が少なかった者と
そうでなかった者との気持ちの差は決して埋まらないと思うのだけれど、
こうして毎