砂原浩太朗のレビュー一覧
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この方の作品はとにかく文面が緻密で美しい情景が浮かんできて圧倒される。
導入部では黛の三兄弟が内記の策略により翻弄される。選択を迫られる苦悩に新三郎の未熟は罪だ、と至らなさを痛感する場面、分かってしまう。無知であるのが恐ろしいんだ。
第二話になると成長した織部正(呼び方が役職で引き継がれているのが新鮮)が内記の懐刀になっているのだからどうしても勘ぐってしまう。
本当に疑う余地がなかったのだけど、十年近くも一緒にいたら情か移ってこやんのかと。
読み進めてたら物語の締めにはやはり、師の様な存在でもあったとわかり敵でもあったが複雑な思いが垣間見えた。
後半はミステリー的な感じもあり、騙し合いとドロドロとした流れであったが、最後は爽やかな締め方でスッキリした。
後、男衆は裏表が激しかったが、女性は強く可愛い人が多かったのが印象に残った。 -
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めちゃ面白かった。
庄左衛門には関係ないが、
同藩の立花さんや啓一郎が学んだ藩校が、まだ構想程度だった時代の神山藩。
そして、『庄左衛門』よりもエンターテイメント性が飛躍的に高くなっている。
ミステリ、ツイスト、アクション、そしてロマンス
こなれてはりますな。
個人的には『庄左衛門』のほうが好きではある。
というのも
今度の主役は黛家三兄弟、そしてその末っ子が主役である。
若い、、
しかし、育成系の楽しさがある。
そして、きっと腐味を見出す人が多そうではある(あははは)
前作の庄左衛門もそうだが、部屋住の武家の次男三男以下同文たちが
養子や婿に入って、そのお家を盛り上げたり、
主家の長男に不幸があったり差し障りがあって、元家に戻されるとか
そういう、ままあることながらあんまり物語になってこなかったタイプの
なんていうか、個人だけでなく”家”というパックを存続させるという
強い意志をもった人々が描かれるのが非常に面白い。
何かをなすときに、全てを薙ぎ倒していくいわゆる西洋スーパーヒーロー的なんではなく、
根回しをして、我慢をして、何がプライオリティなのか、というのを忘れず
周りの噂に屈せず、
これこそ、さぶらふもの、
侍である。
うっとりさせられた。
今作は、ものすんごくさらに長い期間の赤穂浪士的な黛と
平安の藤のような漆原、
というのが個人的な感想。
それが正しいとか正しくないとか、
司法にのっとってるとか、違法だとか、
そういうのではなく、何が大切か、という刀を
首につきつけられている心持ちのする作品であった。
あいかわらず、野鳥がええ感じに出てくる
「真鴨が一羽、燃え立ちような光を浴びながら水面をすべっていった。」
織部正(先代/舅)があげた笑い声に
「頬白の飛び立ってゆく音が耳にとまる」
友垣、情、血族、そして家
「おなじことなら、強い虫になられるがよい」
「所詮、個々の生に意味などないことは、いま足もとを這っている虫をみれば分かる。ただいのちをつなぎ、子や孫に伝えることだけが求められているすべてなのだろう。それでは満足できぬのが、おのれをふくめて、ひとという生きものの不幸というべきだった。」
余韻の良い小説である。 -
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架空の神山藩を舞台にした江戸時代のこの物語は今までに読んだことのない文章の美しさがあった。江戸から離れた村の景色、季節のうつろい、村人や武士たちの生活、それぞれの描き方が実に美しい。主人公の描く絵が褒められたのと同じ言い方なら見事という他ない。
ストーリーは小さな出来事の積み重ねだが、少しの謎が次の話の伏線となって繋がってゆく展開もゆったりとしながら時には先を急ぎたくなるような、しかしそこでこの美しい文章を味わいたい気持ちが強くなって留まる、何か時代小説を読む楽しみを改めて感じさせてくれたところがある。
郡方という役回りはよく知らなかったが、藩の中で地道に生きてゆく主人公、その人柄もこの文章が表しているのだろう。続きのシリーズもまた読んでみることにしよう。
それにしても蕎麦がうまそうだった。食べ物の描き方もいい。志穂が書いた絵の雰囲気もなんと無く伝わってくる。しみじみと味わい深く小説を楽しめてよかった。 -
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ネタバレ架空の藩、神山藩で役人を勤める主人公。いきなり息子を事故で亡くすところから始まり重たいなあ、と読み進める。
独り暮らしの生活が始まるが、息子の嫁や夜鳴き蕎麦屋、藩の同僚など人が集まり、得意の絵を嗜んだりして穏やかな日常に戻りつつあるが、事件に巻き込まれていく。
普段は落ち着いた様子である庄左衛門であるが、上司に詰問され凄く緊張したり、剣術がそれほど大した腕前でないところなど、平凡な部分に親近感を覚える。現代のサラリーマンの様。
が、昔の友に言い出せない事、江戸に送り出した息子の嫁への思い、思い通りに描けなくなった絵、胸に秘めた多くの思いを抱えこれからも生きていく姿に強さを感じた。
それでも最後、わずかに充実感がある描写があり、幸せな気持ちに。
砂原さんの作品、神山藩シリーズも読んでみたくなりました。