【感想・ネタバレ】藩邸差配役日日控のレビュー

あらすじ

里村五郎兵衛は、神宮寺藩江戸藩邸差配役を務めている。
陰で〈なんでも屋〉と揶揄される差配役には、藩邸内の揉め事が
大小問わず持ち込まれ、里村は対応に追われる毎日。
そんななか、桜見物に行った若君が行方知れずになった、という報せが。
すぐさま探索に向かおうとする里村だったが、
江戸家老に「むりに見つけずともよい」と謎めいた言葉を投げかけられ……。

最注目の時代小説家が描く、静謐にして痛快な物語。

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江戸藩邸の差配役(なんでも屋)を主人公に描く連作中編集。藩主正室の愛猫を探す、ユーモアたっぷりの作品を挿みつつ、最後は藩主親子との意外な関わりが明かされる。後に続く作品が待たれる。

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2025年10月17日

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祖父と対話している感覚になる。そのぐらい落ち着いていて安心感漂う文章。妻に先立たれ、独り身だが世話する女性がいるという設定にも紳士的かつ、放って置けない雰囲気を醸し出している。3冊とも恋愛にならないのが好感をもてそして老齢感が溢れ祖父に感じるのかも知れない。

この本も文庫になったら購入したい

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2024年08月02日

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「差配役」って今で言えば会社の総務に当たるんやろうか。「何でも屋」らしい。理不尽な仕事やお家騒動に巻き込まれながらも、季節の移ろいやふと見える路地の佇まい、居酒屋でのちょっとした酒の肴などの描写が静かに染み渡りリアルに感じる作品だ。砂原さんのこのシリーズはかなり好きだ。

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2023年11月25日

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失礼ながらよくある武士の連作短編集かなと読んでいたけど、終盤の展開がとても面白く全体の印象ががらっと変わり輝いた。登場人物たちが魅力的だったので是非続きが読みたい!

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2023年10月21日

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移り変わる季節の情景のもと藩邸差配役の五郎兵衛を中心に様々な事件が描かれる。
「人が死ぬのは好みませぬ」という五郎兵衛はじめ登場人物もみな人間くさくていい。
清々しい物語であった。

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2023年09月05日

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この作家の小説は、読んでいて心が温かくなる。
「何でも屋」と蔑称される江戸藩邸の左配役、里村五郎兵衛。それこそ、正室の飼い猫の行方探しから、世子の行方不明の捜査まで。

いくつかの事件や出来事を通して、藩の中の事情が明らかになってくる。

結末には、藩主と抱えた秘密が明らかに。

人となりが美しい。

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2023年08月30日

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時代小説家はそれぞれ架空の藩を作り上げ、自らの想像力で登場人物たちを自由に羽ばたかさせ、独自のシリーズを構成する。
藤沢周平氏の海坂藩、葉室麟氏の羽根藩や扇野藩しかり。
著者の場合は神山藩、そして本書では神宮藩。
5編の短中編からなり、それぞれ独立した話であるが、全編に通奏低音の如くお家騒動の兆しが漂う。
神宮寺藩江戸藩邸の差配役里村五郎兵衛は、なんでも屋の異名があり、様々な揉め事が持ち込まれる。
その対応に追われるうち、最終編で、江戸家老と留守居役の対立が表面化する。
主人公にも絶体絶命の危機が訪れ、苦渋の決断を迫られる。
そして最後に、予想外の秘事が明かされ、読み手も思わず唸ってしまう。
格調高い語りと、自然描写の静謐な文章に、藤沢周平著『三屋清左衛門残日録』を思い出す。

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2023年08月20日

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江戸の藩邸で差配役(何でも屋)を務める里村に持ち込まれる難題の数々。藩主の息子が行方不明になる。出入り商人の入札不正疑惑。邸の厨房に妙に色っぽい女が入ってきた。藩主の正室の飼い猫行方不明など。

すごく良かった。中間管理職小説としても江戸時代小説としても人間ドラマとしても素晴らしい。

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2023年07月31日

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最後のどんでん返しはビックリ。それぞれの短編で引っかかりを感じていたのですが、「そうきたか」と。
何故直木賞の選考スタッフはこれを無視したのだろう?

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2023年08月26日

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砂原氏の他の著名な著作と比べると地味な作品なのかもしれないが、氏の書きたいこと、伝えたいことが1番よくわかる佳作なのかもしれないと思った。
役人には違いないが差配役ということで、
「猫探しのエピソード」など決闘場面もほとんどないストーリー、それでも氏が大切にされているテーマ、軸は本作でも全くブレがない。
読み進めると他の作品と同様に、最後の最後まで引っ張られ、あと1章、あと数ページのところでドンデン返し。9回裏のさよならホームラン⚾️の心地よさ。私はこの作にも出会えて良かった。

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2025年10月18日

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藩邸の差配役…読んでみると、会社の総務課のようなイメージでした。
五郎兵衛が、実直にお勤めしていて静かで温かい雰囲気の中に小さな笑いあり、ちょっと不穏な動きもあり。

ぐいぐい引き込まれる感じではありませんが、花や虫、自然の描写も美しく、楽しんで読みました。
これはシリーズものになりそうな作品です。

この作家さんは野鳥好きですね。
小説で、頬白や山雀の名前が出てくるのは珍しいと思います。
特に気に入った野鳥の描写は
「翡翠(かわせみ)が一羽、五郎兵衛と並んで川面を滑っていく」
ある人を追って懸命に走る五郎兵衛と、並んで滑るように飛んで行くカワセミ…読みながら目に浮かぶようでした。

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2024年12月03日

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このところ、連続してとうっかモノを楽しんでいる。
帯にある「高瀬。。」「黛家。。」に続いてこれが記されているところを見ると、佳作とみられているのだろう。
思った通りの良作、朝に読み終えていい気持ちになれた。

筋でいえば、ありふれたといってもいいだろうが行間に流す余情がこなれている。

5編が収められている~若君失踪、入札疑惑、妖の女譚、正室の愛猫顛末、そして底流を流れていた藩邸の膿・・
きっちり骨組みを立てているから、伏線回収が収まるところへ行くのに違和感がなくすっきり
差配役 五郎兵衛、娘 七緒と澪 亡き妻の妹咲乃

五郎兵衛は40半ばか・・時折顔を出す聡明な少年 若君
国元 藩主和泉守
藩邸の狸 大久保、岩本、

お勤めは【しょ―もない事】ゆえの煩雑さ・・だからこそ人との細かい折衝は肝心
「薄い背」「鬢の白髪」「厚い唇」「眠そうな瞼」等など手垢が付いたとは失礼ながら、多用して散りばめ散ることがあるので舞台が眼前に現れる。
小物の情景・・茶碗の底のぬるい茶
雲の広がる空、橙色が染められていく夕景・・etc
神宮寺藩・・を神山藩と一緒に追わなきゃ。

引き続いて楽しめる作家・・だ

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2024年05月28日

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時代小説に対する苦手意識はなくなったとはいえ、まだまだ自分から積極的に手を伸ばすほどではありません。それを知っている人なのにわざわざ貸してくれるのは、相当良い本ゆえのことでしょう。

江戸藩邸の差配役が主人公。「何でも屋」と陰口を叩く者がいるとしても、『勤め』はおしなべて誰かが喜ぶようにできているものだという言い草に思わずにっこりしてしまう。聡い若君とのやりとりも楽しい。明るい話ばかりではなく、物騒な事件もたまに起きたりして、硬軟のバランスがちょうどいい。

四季を通して藩邸を見ていたような気持ちになりました。

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2024年03月26日

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ネタバレ

神宮寺藩差配役、里村五郎兵衛、差配役というのは企業で言えば総務部長といったところであろうか。若様のお世話から猫のお世話まで、果てはお家騒動まで、五郎兵衛の活躍と心労を描く。

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2024年02月13日

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ネタバレ

また良い感じの作家を見つけてしまった。
時おり読む時代小説も色々だが、時代は変わっても権力や組織を巡る人々の暮らしや有り様が面白い。
主人公は藩の秘密を抱えながらも娘二人との家族、毎日の総務的な業務に取り組みながら藩の色々なことに巻き込まれていく。ちょっと鬱屈してるけど筋を通す真面目で勤勉な僚吏という感じに好感が持てる。

作品紹介・あらすじ
『高瀬庄左衛門御留書』『黛家の兄弟』の著者による、清冽なる時代小説

消えた若君と、蠢く陰謀
その時、男は――。

江戸藩邸の“なんでも屋”――藩邸差配役・里村五郎兵衛
誰にもできぬお役を果たすのが、勤めにございます

里村五郎兵衛は、神宮寺藩江戸藩邸差配役を務めている。陰で“なんでも屋”と揶揄される差配役には、藩邸内の揉め事が大小問わず日々持ち込まれ、里村は対応に追われる毎日。そんななか、桜見物に行った若君が行方知れずになった、という報せが。すぐさま探索に向かおうとする里村だったが、江戸家老に「むりに見つけずともよいぞ」と謎めいた言葉を投げかけられ……。

最注目の時代小説家が描く、静謐にして痛快な物語

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2024年01月25日

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神宮寺藩江戸藩邸を舞台に何でも屋の差配役里村五郎兵衛の誠実で思いやりのある働きを描いている。登場人物も味のある面々で、物語もきな臭さはあるものの淡々と進み最後の章で一気に弾ける。読んでいてハズレのない書き手で、この本も面白かった。

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2023年12月18日

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2023.12.12
穏やかな筆致がさえているという印象が一番。主人公の役職は目の付け所が良いという印象。やはり、主人を持つサラリーマンはストレスたまるよなという印象

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2023年12月12日

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神宮寺藩江戸藩邸差配役・里村五郎兵衛。陰で「なんでも屋」と揶揄されながら、人がやらない仕事を諸々引き受けるお役目。そんな里村の元には大小様々な藩邸内の揉め事が持ち込まれる。
日日控という表題どおり、里村の業務日誌のような短編4篇に、藩邸内に蠢く謀略の行方が描かれる最終話を加えた5つの話。

なんといっても里村の佇まいがいい。「なんでも屋」と揶揄され、中には腐るものもいる下役たちに差配役の仕事の何たるかを諭す姿。里村の仕事に対する矜持に触れることで下役たちも自然と学んでいく、正に理想の上司。

前半の藩邸騒動記のような短編はそれぞれが気軽に読め、最終話「秋江賦」では全ての話が一つに繋がり重厚な長編のような構成に。
最後には全ての伏線が回収され、さらに驚きの事実も明らかに。里村が10歳の世子・亀千代に告げなければならなかった事実と、若君の尊厳を守るためと主君にさえ貫いた秘密には胸が熱くなった。

里村はさることながら、亀千代、澪、安西、曽根など脇を固める登場人物も皆魅力的で読み終わっても藩邸を去り難く後を引く感じ。
心がホッと温かくなる作品でした。

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2023年11月30日

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一行目:里村五郎兵衛は耳をうたがった。

この著者の作品は全て読んているが、似た雰囲気の小説なので、どれがどれだったか分からなくなってくる。

ただ、すごいなぁと思うのは、読むたびに、今回がいちばん面白いかもと毎度思わせられるところだ。
あと、装丁の色がきれいで、それも今回がいちばん綺麗かもと思う。

いつもだと、前のほうが良かったなとか、今回のほうがいいなとか割とはっきり判断できるが、ぼんやりした感じで毎度今回のほうがいいとずっと感じ続けられる、私にとっては不思議な作家さん。

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2023年11月01日

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P8
〈里村の家は代々、神宮寺藩七万石の江戸藩邸で差配役をつとめている〉
影では「何でも屋」と・・・。
里村五郎兵衛も障子の修繕の手配から人事まで何かと忙しい。

この時代、ひとつの間違いから「切腹」という事態になりかねない。
背中を冷たい汗がツーと流れる。
緊迫した様子もページの端々から伝わってくる。

世子・亀千代の物語でホッとひと息。
最終章「秋江賦(しゅうこうふ)」
亀千代はきっといい主君となるでしょう。

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2023年10月26日

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ネタバレ

短編なので読みやすかった。
あいかわらずどの登場人物も面白そうなバックグラウンドがありそうで、続編を読んでみたい。
とくに安西主税はけっこう剣の腕がたちそうで気になる。
それにしても「秋江賦」のまさかの結末に仰天した。

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2023年10月05日

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江戸時代の長閑で自然豊かな情景描写が秀逸。里村五郎兵衛は藩邸で差配役を司っている。若君の誘拐事件や奥方の愛猫探し…人々の感情の機微が見事。殿との秘事には仰天。

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2023年06月23日

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ネタバレ

【収録作品】拐し/黒い札/滝夜叉/猫不知/秋江賦

神宮寺藩江戸藩邸差配役を務める里村五郎兵衛の日々を描く。よい君主がいて、聡明な若君がいて、安泰かと思いきや、お決まりの藩を二分する権力闘争がある。
そのなかで、どちらにもくみせず、目立たないことこそ肝要と心得て、自分の務めを誠実に行う里村の姿が好もしい。妙に力の抜けた部下もいい味を出している。

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2023年06月18日

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ネタバレ

ずーとこの作者の話は、別の人の小説で読んだことがあるような話だと思ってた。なので面白いけどいまいち意外性がないというか、時代小説って歌舞伎のように様式美の世界から出ないものだったっけって思ってた。
今回の本は、別の作者のシリーズものに内容が似てる気もしたけど結構面白かった。
続編希望です。

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2023年05月20日

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 神宮寺藩江戸藩邸差配役、里村の周りで起こる些事から大事まで、藩邸の『何でも屋』の苦労を垣間見る時代小説。

 神宮寺藩江戸藩邸には、様々な役職の困りごとやよしなしごと、修繕から失せ物探しなど、他のお役の方々から『何でも屋』と称される差配役がいる。季節季節の行事に関しての種々の手配にとどまらず、お花見の最中に姿をくらました若君の捜索、いなくなった猫の捜索、果ては御家の家臣の権力闘争まで、日々持ち込まれる案件に翻弄される差配役・里村。果たしてお家騒動の行き着く先は、そして里村の選ぶのはどの道か。

 タイトルが『日日控』となっていたので、日々の困りごとや起きたことを淡々と記録しているような調子の物語を想像していましたが、思っていたよりもずっとしっかり『物語』でした。書籍の帯になっている、『誰にもできぬお役を果たすのが、勤めにございます』という一言、最後までとてもじんと響く言葉だった気がします。作中に『勤め』とは『誰かが喜ぶ』ようにできている、といった風の言葉があったように思いますが、自分のする仕事は誰かを喜ばせることができるんだ、と思えるのは幸せなことだなと改めて考えさせられました。

 お話自体は、ドラマティックな描き方というよりは、しんと静かな水面に波紋が浮かぶのを覗くような、静謐な空気がある描かれ方でした。面白かったのですが、エンターテイメントというよりはもっと静かな雰囲気で、不思議な印象が残る時代小説です。
 もう少しこの作品を味わっていたかったと余韻の残る、独特の世界観がありました。

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2025年07月11日

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時代小説なんだけど、気苦労が絶えないお仕事小説の一面も強かった。最後まで安心感のある流れ。もっと各キャラクター達との会話を見てみたかった感はあるかな。

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2024年04月16日

Posted by ブクログ

既刊神山藩3作のような新鮮さはなかったかな。
隠居と若嫁、三兄弟、祖父・父・孫と、
それぞれの関係性の静けさが面白かったが、
今作は、どこか急ぎ足な気がした。
何でも屋というところが、やや気にかかる。
ミステリーとかサスペンスとかの方向へ行かないでほしい。
砂原浩太朗と同時に、
乙川優三郎と藤沢周平を見比べてみると、
自分の好き嫌いがわかってくるような気がする。
砂原浩太朗は追っていきたい作家なので、
次も読んでみたいと思う。

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2024年02月13日

Posted by ブクログ

2年前に『黛家の兄弟』を読んだ以来の砂原さん。その時は強い印象を受けたが、今回はまだるっこさを感じながら読み進んでいた。しかしラストの”秋江賦”の展開で、差配役の頭として取りまとめをしていた里村五郎兵衛の存在感がぐんと増す。次女の澪の出生の秘密が明かされ、ミステリー仕立てに甘酸っぱさが加わり、終盤で本作を盛りたてたと思う。
藩主世子・亀千代の年齢設定はいったいいくつなのだろう。亀千代がおしのびで市中を出回った時『どれほど人出が多かろうと、結句、おのれ 一人いちにん であることにも変わりはなかった』と、こぼした言葉が忘れられない。亀千代が、時折り時代劇で描かれるようなぼんぼん風情でなく、藩主世子としての厳しさも窺え期待が増す。これほど粛々とした深い境地に辿り着ける聡明さを持つ彼はきっと立派な藩主になることだろう。

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2023年11月18日

Posted by ブクログ

砂原さんの諸作は、
善く言えば、時代小説の王道
悪く言えば、時代劇·時代小説のあるあるネタを繋ぎ合わせている
ように感じます。

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2023年10月19日

Posted by ブクログ

ゆったりとした時代小説でした。
政権争いが思ったよりあっけなく収束した感じですが、シリーズ化したら読み続けたいです。
亀千代君が大人びすぎていて、さすがお世継ぎなんでしょうがいじらしく思いました。
里村家の秘密…読んでいて腑に落ちなかったこともこれで納得でした。

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2023年09月13日

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