酒井昭伸のレビュー一覧
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新皇帝の栄華や民衆の熱狂なんかが描かれると思っていた自分の想定は全く甘かった。
苦手なSF、超絶独特の世界観・心理表現、私的には前作Duneよりも更に難解なセリフ回しや精神戦描写で全くサクサク読み進められないが、内容としてはとっても面白い。
前作を読み終わって今作を購入するまでの数日間、
あんなに『早く続きが読みたい』と思って待った自分にもビックリした。
来春、映画『DUNE: PART TWO』が公開されたら、また映画の画像使用ver. の表紙で発売されるのかな?そしたらまた買っちゃうな。監督はこの続編がベースのパート3やりたいと言ってたけど、是非それで!あの世界観・あの俳優たちでのト -
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ネタバレいやー面白かった。読みやすさでいえば鏖戦<凍月なのだが、両作品ともなんとも違う魅力があって、うなってしまった。(三体を読んだ時のエッセンスも感じた)
特大級のネタバレ以下
鏖戦/酒井昭伸訳
何がすごいってまずは、訳!絶対原典の方が簡単に書いてあるんでは?!と思いました(誉め言葉)。好みは分かれるかもしれませんが、私は結構好きでした。人vs異種族の戦いにおいて、異種族がいかに「読者含めた人」から離れた存在であるか、を示すべくの漢字も多用の訳…狙った効果の一つはそれかと考えているのですが、私は最初からやはり仏教感を感じてしまいまして、それは異端ではないので、なんだか最初から親しみが(?)ありまし -
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『ハイペリオン』シリーズ四部作完結編。多くの脅威が迫る中、ついに明かされる謎。果たして人類の運命は……?
文庫本で全8冊になるシリーズの最終巻である。あらゆる要素がてんこ盛りな本巻については、多くは語るまい。作者が書きたいことをすべて詰め込んだかのような、総決算のラストだった。
パクス、テクノコアの動きを描きつつ、やはりエンディミオンとアイネイアーを主軸として物語は進んでいく。情報を小出しにするアイネイアーの老獪さがもどかしいが、そうせざるを得ない理由もやがて明らかに。知能や精神担当でカリスマになっていくアイネイアーに対し、肉体派、冒険担当のエンディミオン。しかし、「覚醒」とタイトルにある -
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『エンディミオン』に続くシリーズ第四弾。オールドアース到着の4年後、エンディミオンの新たな冒険が始まる。
前作までの大冒険の末、たどり着いたオールドアースにて4年を過ごした一行。少女アイネイアーが12歳から16歳へ成長する姿を見守っているのかと思ったら、いつしか弟子のような立場になってしまっているエンディミオン。やがて人類の救世主として立つべき彼女の存在感は圧倒的なものになっていた。互いに惹かれあいながらもまだ男女としての関係がはっきりしないまま、エンディミオンは一人での旅立ちを命じられる。
今度は一人で冒険することになり、前作のような転位をしつつ、これまで以上にとんでもない目にあう。ネタ -
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惑星間を転位ゲートで繋げるテテュス河を舞台に過酷な逃亡劇が続くなか、意外な味方と恐るべき敵が現れる……。
イカダで逃亡しつつ各惑星を冒険する主人公たちと、ジャンプごとに死亡と復活を要求される最速の宇宙船で追跡する神父大佐たちの対比、この絵面が何よりも面白い。
神話の類型を彷彿とさせる現地種族チチャタクと賢者的な神父との出会いが冒険を盛り上げる。さらに深まるシュライクの謎、そして現れる脅威が、読者を怒涛のラストに引きずり込んでいく。
いくつもの危機を乗り越えていくたびに深まっていく主人公たちの絆。ヒロインが12歳の少女であるため、本作の段階では恋愛まで深まらないが、暗示的な描写が続編に期待 -
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『ハイペリオン』『ハイペリオンの没落』に続くシリーズ第三弾。前作から約300年、青年と少女の冒険が始まる。
ズバリ前作より読みやすい。親しみやすい若き主人公と、秘密を持った少女、従順で優秀なアンドロイド、有能だがおちゃめなしゃべる宇宙船など、魅力あるメンバーで繰り広げられる冒険活劇。
さらに、彼らを追跡するデ・ソヤ神父大佐とその部下たちも敵ながら好感がもてる上、その心熱き闘いの様子が主人公たちの冒険と交互に描かれていく。文章量的にもダブル主人公制といっていいだろう。
両者の距離が次第に縮まっていく逃亡劇と追跡劇のなかで、前作までの濃密な世界観が掘り下げられていき、新たな謎が浮かび上がる。 -
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ついに旅立った火星探検隊。クルー間で孤立するエルマは、火災や感染症など次々に発生する困難に立ち向かうが……。
果たして無事に火星にたどり着けるのか?が全体の筋のはずだが、宇宙に出て新たな意識に覚醒……することもなく、結局これ人権がテーマなの?と思うほど、宇宙飛行士どうしでの醜い争いが発生する。地上から引きずってきた性差別と人種差別が火種である。人間関係の軋轢に加えて、宇宙飛行上の物理的トラブルも多発するなか、ついに最悪の事態が……。
EVA(宇宙船外活動)の緊張感は宇宙飛行ものならでは。次々と襲い来る宇宙でのトラブルはドラマを盛り上げる。人的トラブルも多くは結論が出ない人権問題で、エルマの -
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ヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞。宇宙飛行士を目指す女性科学者・パイロットの姿を描いた歴史改変SF。
ハードSFの難解さはなく、サイエンス部分があまり理解できなくても人間ドラマとして楽しめる本作。
後半に入り、自らの弱点との戦いや宿敵パーカーとの対立が深化し、宇宙飛行士への思いがさらに強まっていく。
様々な困難のなかで、夫婦の絆やパイロット仲間たちとの関係が深まっていく姿は感動的だ。
ロケットの打ち上げや軍用ジェット機発進の描写は迫力があり、これは本物の宇宙飛行士やパイロットの助力があるという。また本作では、計算者をフィーチャーするため、IBM機の性能が低く見積もられているのも面白いと -
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House of the Dragonの原作だけど、この本自体は歴史学者(大学匠:アーチメイスター)が書いてGRRMが訳した(体裁の)ウェスタロスの歴史書(the World of Ice and Fire)(のターガリエン朝部分)だから「伝聞」や「残された記録」での構成で、真実かどうかはわからない部分もあるし、ドラマが原作にないその真実を描いてるのか、大河ドラマみたいに「史実ではないフィクション」なのか?が入れ替わってておもしろい。
人の話や書いたものを後世の人がまとめた文書を、さらに現代の人が訳した形の小説…ウンベルト・エーコの『前日島』とか夢野久作『ドグラマグラ』とかみたいで好き。
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長門有希が読んでたやつ。枠物語の古典『カンタベリー物語』風の体裁をとっているが、中身は極めて濃厚なSF。
28世紀の宇宙時代、巡礼という名目で7人の男女が旅をしながらそれぞれの物語を語っていく。この説明だけ見ると未来版もしくはSF版『カンタベリー物語』的なものを想像してしまう。そういった趣きもあるにはあるが、中世の多様なドラマが収録されていたかの古典に比べると、本作はガッツリとした一つの大きな物語が設定されていて、やや面食らった。枠物語の「枠」の部分――世界観のキーとなるシュライクの謎――が思いのほか濃厚で、長大なSF巨編ともいえる展開を広げるのだ。そのあたり、実質的には短篇集だった『デカメ -