あらすじ
遙か未来、銀河帝国の崩壊によって地球に帰還することを余儀なくされた人類は、誕生・死さえも完全管理する驚異の都市ダイアスパーを建造、安住の地と定めた。住民は都市の外に出ることを極度に恐れていたが、ただひとりアルヴィンだけは、未知の世界への憧れを抱きつづけていた。そして、ついに彼が都市の外へ、真実を求める扉を開いたとき、世界は……。
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成熟した文明、安定を得た歴史の終わり。人類はその先に何を見るのか。どれだけ文明や社会が進化しようともそこにあるのは、飽き足らずに新しい世界を求め続ける子どもの様な好奇心が人間の人間たりうる条件であった。
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銀河宇宙に進出した人類はその後滅びの道をたどり、地球にただひとつ自己完結型のユートピア都市を建設してその殻に閉じこもった。十億年の停滞を経た後、未知への探究心をおさえられない一人の若者が、ついに外の世界への扉を開く。
冒頭からVRゲーム?が出てきて面食らった。唯一都市の設定が面白く、人間のデジタル化、千年の寿命、心象の視覚化システム、オンライン通話などなど、これが1956年の小説であることに驚くばかり。地球全土は砂漠化しており、都市の外には何があるのか。主人公に共感して興味がおさえられないまま物語は引っ張られていく。探索の舞台はやがて星々の世界に広がり、人類の精神性とその進化にまで言及される。巨匠の先見性と想像力に度肝を抜かれっぱなしだった。脳みそが拡張されるような感覚を味わえる、とにかくクッソ面白かった一冊。
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12年振りのアーサー・C・クラーク。コロナの影響でどこにも行けないゴールデンウィークだからこそ、ハードSFでどっぷりと世界観に漬かりたいと思い読むことにした。
タイトルからは内容の想像が湧かないが、主人公である少年、アルヴィンの冒険譚といったところ。ただし、少年の冒険とそれを通じた成長を描くだけではなく、物語は人類の今後と宇宙の終焉まで見据えた壮大な物語へと発展してゆく。そのダイナミズムに圧倒される上に、人生の歩み方に関する哲学的な問いまで吹っ掛けられる心地にもなり、視覚的にも精神的にもガンガン揺さぶりをかけてくる、長期休暇に持って来いの小説だった。
この物語の舞台は、超絶凄いコンピュータに都市の全てをコントロールされ、あらゆる苦痛から解放された都市「ダイアスパー」から始まる。管理される世界というと、レイ・ブラッドベリ『華氏451度』、オーウェル『1984年』、ザミャーチン『われら』、ハスクリー『すばらしき新世界』……と、ディストピアと称されるSFを想起する。
私もこのジャンルは大好きでよく読むのだが、読んだ感想として必ずといってよいほど思うのが、「この世界はこの世界で、幸せはあるんじゃないかな」ということだ。自由という言葉の意味などは相対的なものなのだから、自分の周りの社会や、直近の過去や容易く想像できる近未来と比較しているのに過ぎないのだと思う。そうであれば、これから先に上述したような小説の世界観が到来したとしても、それがあまりにも急激な変化でなければ、自明のものとして受容できるのではないか、と。
で、本小説においてはその思いが極めて強かった(まあ、ざっと調べる限り、ディストピア小説なんて呼ばれていないのだけど)。ディストピア小説でよくある設定として、しっかり管理している体だけど結局崩壊する、といった世界観がある。ソ連崩壊的な。
これと対照的に、本小説の都市「ダイアスパー」では、実に十億年もの気が遠くなるような年月を、綻びもなく維持し続けている。もちろん、不穏なことも書いてはある。そこには子どもが存在せず、失意や悲劇という過剰がない故に失われてしまった「想い」がある。都市の外に出ることに恐怖感を植え付けられている。それでも、人はそうした揺りかごですやすやと眠るような幸せの中で生活しているのだ。ユートピアと呼んでさえ良いと思う。この均衡を崩す存在としてアルヴィンがいるが、その存在すらも都市の成立時に意図して組み込まれたものであり、人類はアルヴィンのような人物が現れないダイアスパーを作れた、ということになる。
小説の終盤でアルヴィンが自分の行動が本当に正しかったのかと自問自答する描写があるが、これも尤もなことだと思う。彼が行っているのは、見方によってはユートピアの破壊であるし、十億年単位で平和を維持できるシステムなど、現実には未来永劫出現しないかもしれない。
巻末の解説には、「宇宙に広がり、より高度の知性を身につけようとすることこそが知的生命の証なのだ」(p.476)とあるが、そもそもこうした前提自体に違和感をおぼえてしまう。
でも、この物語を一人の少年の物語と見るならば、アルヴィンは、心の持ち方や生きていく指針を探し求めているだけだ。ダイアスパーとリスを繋ぐことの是非は置いておくとして、彼のそうした気持ちは素敵だなと思う。アルヴィンは確かにユートピアを破壊してしまったのかもしれないが、既存の社会を最適解だと考える必要はないのだし、完全なユートピアなど望むべくもない現実世界においては、こうしたエネルギーこそが世界を動かしてゆくのだろう。
この物語において、アルヴィンは子どもの象徴として描かれる。子どもがこうした気持ちを持つものだとするのであれば、子どもが生まれ続ける限り……生命が受け継がれてゆく限り、生命は変化し続けることを運命づけられているのかもしれない。
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NHKの100分de名著で取り上げられるということで、積読を消化したのですが、予想以上の面白さにビックリしました。古典SFって思索的なイメージが強かったのですが、この作品はそのイメージにプラスして、冒険小説のようなワクワク感があるのです。
物語の舞台となるのはダイアスパーという都市。そこでは人間の誕生や死の概念すらも、現代とは全く違います。生まれてくる人間は、始めから成人の身体。不老不死となった人間は、死のタイミングも自ら選ぶようになり、その記憶はメモリーバンクに保存され、新しい身体へ移されます。そして、その記憶は概ね20才前後で蘇る。
そんな人間の誕生から、都市のシステムまで全て管理しているのが、政府や国家でななく、ダイアスパーにある巨大コンピュータ。このコンピュータの管理により、ダイアスパーは完全・完璧な都市として常に機能し続けているのです。
こうした設定が70年前のSFで既に書かれていたという事実……。改めてクラークのすごさを実感します。
この作品の主人公となるアルヴィンは、そんな完全・完璧な都市に違和感を持ちます。そして、都市の外の世界に思いをはせます。しかし都市の他の人々は、外の世界に対し恐怖心を持っていて……
そしてアルヴィンは徐々に都市の秘密に迫っていきます。謎の怪人物の登場、都市の地下に眠る巨大な地図、そして都市の外、他の惑星への誘い……。
アルヴィンの強い好奇心に読者である自分も感化されたのか、都市の秘密にアルヴィンが迫っていく描写が、どうしようもなくワクワクするのです。何より都市の地下に潜る場面は本当にワクワクしたなあ。映画のインディ・ジョーンズを観ているようというか。
アルヴィンの冒険はついに都市の外へ。未知の惑星、文化や自然、超能力。しかし、クラークの想像力はまだまだ終わりません。物語は際限なく広がり、アルヴィンの冒険は、これまで何千年と続いてきた都市や文明の関係性を揺るがす事態にまで、発展していきます。
作品を読み終えた段階で、これはSFの何のカテゴリに当たるのかな、と少し思いました。それほどこのSFで使われるギミックや設定は多いのです。未来社会、テクノロジー、管理社会、宇宙、ファーストコンタクト、超能力、異生物、ロボット、コンピュータ、そして神……
こうした様々な要素を使いこなし、際限なく広がる世界観や作品のビジョンを表現する。本当にただただ圧倒されます。
しかしそうした圧倒的な物語、世界観、ビジョンが展開され示されるなかで、人間の普遍的なものの素晴らしさを謳いあげている作品であるようにも思います。
未知のものに対する好奇心
外の世界を恐れない心
アルヴィンのこの心と行動が、文明、そして銀河系の新たな胎動となるのです。それだけ壮大な物語でありながらも、その根底にあるのが人間の誰しもが持つ心にあることに、クラークの人間観が表われているように思います。
クラーク作品のイメージは『幼年期の終わり』のような思想的な作品のイメージが強かったのですが、困難な状況の中で人の強さや技術の可能性を描いた作品であったり、ジュブナイルを描いたりと、人に対する熱さや暖かさを感じる作品もあったことを、この作品で思い出しました。
思索的な部分もありながら、人間の可能性を強く信じた作品でもあり、ジュブナイルもののような冒険、そして成長物語でもある。様々なSFの要素を、そして様々なクラークの側面を楽しめる贅沢で、そして面白い傑作でした!
Posted by ブクログ
人間を含めたあらゆる物質が管理され、究極的に快適に完成された都市。その外側には何があるのか?と疑問をもつストレンジャー。彼の疑問すらも計算されたもの?という大きな謎がストーリーの根幹です。
唯一の欠点は、10億年の進化を経て登場人物のビジュアルが現生人類とかけ離れてしまっており、映像としてイメージしづらい点。
終盤、人類が地球から宇宙へ再出発を目指します。実はこれは古代文明のお話しで、この人類の子孫が我々である…というスジかと期待しましたがどうやら外れたようです。
Posted by ブクログ
すごく俺好みの本。物語性がかなり強い。ディストピアな感じなんだけど、言葉に潤いがあって、柔らかい。同じクラークだけあって、幼年期の終わりに雰囲気は似ている。
Posted by ブクログ
ストーリーの滑らかさという点では多少難ありですが、読ませます、考えさせます。
最終盤なんか現在の地球世界を示唆しているようで。冒険心に満ちた世界の後に残るのは保守的な世界。
SFの究極の魅力は現在の人間世界の捉え方なんだろうと思う次第。
Posted by ブクログ
十億年後、不毛な砂漠の惑星と化した地球には唯一の都市ダイアスパーだけが残され、時の流れに抗して人間は永遠に人生を繰り返していた…。クラークの遠未来SFの頂点にして、人類の進化と停滞、壮大な未来と運命を謳う古典SFの名作。
「都市と星」(1956)アーサー·C·クラーク
#読書好きな人と繋がりたい
Posted by ブクログ
イギリスの作家アーサー・C・クラークの長篇SF作品『都市と星〔新訳版〕(原題:The City and The Stars)』を読みました。
アーサー・C・クラークの作品は4年前に読んだ『幼年期の終り』以来ですね。
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遙か未来、銀河帝国の崩壊によって地球に帰還することを余儀なくされた人類は、誕生・死さえも完全管理する驚異の都市ダイアスパーを建造、安住の地と定めた。
住民は都市の外に出ることを極度に恐れていたが、ただひとりアルヴィンだけは、未知の世界への憧れを抱きつづけていた。
そして、ついに彼が都市の外へ、真実を求める扉を開いたとき、世界は……。
20世紀SF界の巨匠が遺した、『幼年期の終り』と並ぶ思弁系SFの傑作、待望の完全新訳版。解説:中村融
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1956年(昭和31年)に発表された作品……『幼年期の終り』と並んでアーサー・C・クラークの代表作で、SF史上の傑作として知られている作品です。
ダイアスパーは巨大なドーム状の構造の建築物の内側にある都市であり、それは数億年の間中央コンピュータによって統御され、住居や街並み、人間という生命体に至るまで勝手に作り上げられ、勝手に修復されるという、人工的な、老いることのない都市だった……ダイアスパーに暮らす主人公の少年アルヴィンは、仲間たちとともに体感型のゲームで遊んだりと何ひとつ不自由ない生活を送っていたが、「ダイアスパーの外に出たい」という大きな願望を持っていた……。
宇宙に進出していた人類は、銀河帝国の崩壊によって地球に帰還することを余儀なくされた……さらにその10億年後、人の生死をも管理する都市ダイアスパーを舞台にした遥かな未来を描いた壮大なスケールの作品でした、、、
都市に閉じこもっている限りは安穏な暮らしが保証されているダイアスパーはユートピア都市のように描かれますが、本当の幸せを手に入れたとは思えないんですよねー ユートピアどころか、考えようによってはディストピアなのでは という印象でした。
そして、地球上で舞台となるのは、荒廃した土地の中に残るダイアスパーという都市とリスという村落集団……隔たれて異なる文化や価値観を持っており、生まれたときから成人の体系で肉体はほとんど衰えることがなく1,000年の寿命を持ち、体毛は頭にしか残っておらず、歯や爪もなくなり、男性の生殖器は体内に収納されるという驚くべき特徴を持つダイアスパーの人々と、外見や成長はほぼ現代の人類と同じだが、テレバシーで意志を通じ合わせることができるリスの人々、全く異なる進化を遂げた2つの人類の描写がとても印象深かったですね。
VR(ヴァーチャルリアリティ)的な描写や、AIとのやり取りを思わせるようなロボットとの会話等々も描かれており、70年近く前の作品とは思えないですねー 驚きました……後半は宇宙にも出て行き、他の惑星の探索をする等、色んな要素が詰まっているところも興味深かったです。
物語の世界観にどっぷり浸かることができましたねー 面白かったです。
Posted by ブクログ
不死と引き換えに生殖を捨てた人類、メモリーバンク、ヴァーチャル世界、都市を管理する全能の中央コンピュータ…「SFあるある」の設定が詰まっているが、これが1950年代に出版されたことを思うと改めてクラークの偉大さを実感する。個人的には、肉体を持たない宇宙知性、ヴァナモンドの強烈な存在感が印象的だった。クラークの発想は、スケールがあまりにも大きく、荘厳でピュアに精神的な、言ってしまえば霊的なものを強く感じることが多い。そして、美しい。
Posted by ブクログ
遙か先の未来、人間から死が失われた何千年もの生を何回も享受することができるダイアスパーと、テレパシーを発達させ自然と共に生きるリス。アルヴィンがダイアスパーから出て、リスを訪れ、さらに宇宙にまで飛び出る物語で、後半に差し掛かったあたりからはぐんと面白くなった。アルヴィンは久しぶりに誕生した子供ということで、勝手に小さい子供かな?と思っていたが、青年でした笑
普通に面白かったのだけど、もっと思索しながら読めたら良かったなと反省...なかなか言語化が難しい感情を引き起こしてくれた作品です
Posted by ブクログ
文庫本で500ページ程度と、とても長い訳ではないが内容ら非常に濃い。主人公と小説の世界観を一緒に旅したような、感覚となった。
生きる意味、理想の追求の果てに何があるか、という哲学的な問いも考えさせられる一冊。
Posted by ブクログ
地球のはるかな未来の姿、人類の行く末を哲学的な啓示で見せてくれる。SF的手法で思いもつかない未来の都市や人類を垣間見るだいご味を味わえる。今の感覚からいえば自然的には荒廃の極みの地球と、停滞した人類の中から、アルヴィンという未知への探求心に満ちた少年を主人公に、やはり前向きに進もう、という方向でしめくくる。それが、やっぱりそうでなくちゃ、と心地よい。
アルヴィンの住むダイアスパーが人類がコンピュータに生も管理されるという描写は映画「マトリックス」を思い浮かべる。実際文中でアルヴィンが中央コンピュータの前に立つ場面では「都市のパターンは、永遠に凍てついた状態でメモリーバンクに保存され、・・・壁面に埋め込まれた構成情報(マトリクス)と連動している」と表現される。
宇宙へ行ったその後の人類は不死を得、人工知能に管理され、あるいはテレパシーで意思疎通をしているが、新たな発見は無く、停滞している。はるか先の世界で争いの無い世界での停滞、というのは「幼年期の終わり」でも描かれている。はるか未来の地球が現在の感覚からすると「停滞」というのはクラークに限らず、映画でも多く描かれている。これはどうしてなのかなあ。
そして人類の進化の行き着く先は、物理的実態のない「意思の世界」というのも「幼年期の終わり」と同じく描かれている。
確か小松左京の「果てしなき流れの果てに」や手塚治虫の「火の鳥・宇宙編」もそんなだったような気がする。
文庫解説より「銀河帝国の崩壊」「都市と星」経過
1937「銀河帝国の崩壊」の原型となるものを執筆開始
1940 第1稿が完成
1948「銀河帝国の崩壊」の原型となる小説、米雑誌「アスタウンディング」4月号に発表
1953「銀河帝国の崩壊」改稿したものを単行本で発行
1954「銀河帝国の崩壊」を「都市と星」とする作業開始。ロンドンからシドニーへ渡る船上で。(スキューバダイビングに行く途中)
特に情報理論の発展により原子力がもたらしているよりさらに深い革命の起こることが暗示されていた”ため改稿してそれを織り込みたかった。
「銀河帝国の崩壊」を「都市と星」として改稿して発表
1956発表
2009.9.15発行 2020.2.15第3刷
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「都市」は地球文明の象徴であり、「星」は未来の象徴。
さらに、ダイアスパーは都会の、リスは田舎の象徴だと思う。田舎の人は、テレパシーで会話する。
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話の運びも細かく設計されている感じがするので、読みやすいし、起承転結もはっきりしている。個人的には『幼年期の終わり』の方が話のスケールは大きくないのかもしれないけど、イメージが大きく揺さぶられる感じがして好きだけど。
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最初の10億年を経た都市の在り様をめぐる冒険は
50年前の作品と思えぬ現代的SF面白さがあり
なぜ本作が作者の代表作として知られていないのかと
いぶかしむほどだが
七つの太陽星系と銀河帝国物語を接がれた全体を眺めると
なるほど『幼年期の終わり』に比べて
大きな差をつけられてしまうのも致し方なし
ただ作者の作品としては
第2に読まれるべき代表作には違いないと思う
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おもしろい。
タイトルに惹かれるて手に取っただけですが、予想の上、さらに斜め上の上を高速で軽やかに踊るストーリーでした。「人類」を進化の尺度で考えた視座に圧倒されました。
作品としては古典に入るほどの昔の作品なのに、全く設定、描写に古臭さがなく、新鮮。
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最後がちょっと締まりない。
それでもこれが50年以上前に書かれたものだとすると、すごい先見の明を感じる。
尚、ヴァナモンド登場の必要性がよく分からない。
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やっと読み終わった!ザ・冒険譚!
私はあまり夢らしい夢を見ないからか、いかにも面白い夢、みたいなSFを読むと、夢を見てるみたいで眠くなってしまう。そのせいか「都市と星」を電車の中で開くとすぐに眠くなってしまうので読み進めるのにやたら時間がかかってしまった。面白くなかった訳では決してない。
Posted by ブクログ
十億年以上先の地球に唯一残った都市ダイアスパー。人は何世代も生まれ変わり、前に生きた記憶が保持されるような世界。そこに一度も生まれ変わったことのない(=初めて生を受けた)主人公アルヴィンが生まれ、都市の外の世界に飛び出して行く。
ダイアスパーの成り立ちも興味深かったし、その完璧な世界に違和感をすんなり覚えられるのはアルヴィンが私たちと同じ立場だからだろうな、と思った。人が都市に文字通り作られて、生かされているというのは、健全な社会とは言えないであろうから。
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いわゆるSF小説というジャンルは初めて読みましたが、そういう免疫力がない自分でも楽しめる読み手を選ばない作品だと思います。宇宙レベルの長いスパンで地球や人類のことを考えさせられる。自分も如何に知らず知らずの内に狭い社会的通念に囚われ生きているのかと改めて気付かせられます。著者の他の作品も読んでみたくなりました。
Posted by ブクログ
「2001年宇宙の旅」の作者による独特の世界観のSF小説です。
面白くて一気に読んでしまいました。 荒廃し、砂漠で覆われた未来の地球。
そこに作られたシェルターに覆われた人口都市で 暮らす青年を主人公にした物語です。
青年は強い探究心を持って、外の世界への冒険を始めます。 人口都市の世界観や設定がとても細かく、
「もしかして遠い未来は本当にこうなってしまうのかな」と思えるレベルです。
単純に青年の冒険記としても面白いのですが、
SFの世界を通して我々が当たり前に宗教や哲学、社会システム、生活様式に
疑問符を与えるような内容になっています。
個人的には物語の終わりで語られる世界はまぁまぁありかなと思いつつ、
作者の描く気持ち悪いくらい高度に発展した人口都市にも憧れを抱いてしまいます。
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幼年期の終わりよりエンタメっぽくて面白かった。エルヴィンの冒険譚で、変な生物(種族)やロボットが出てきたり、人工の惑星が出てきたり。色々ロマンがあるね。なんと言っても10億年も外界と接触して来なかった世界という設定も面白い。序盤のダイアスパーの雰囲気は良い。ちょっと自然賞賛すぎな感じもあるえけど、ラストの話も想像力豊かでOK。
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あー、「銀河帝国」の続編か。読んでねー。
と思って引いたんだが、「銀河帝国の崩壊」の、作者自炊完成版と言ったところだったのか。
アーサーCクラークは、名作2001年がイマイチと感じたこともあって敬遠していたのだが、面白かった。
全体に古い。だって、1950年代だもんな。
どこかで見たよなあってのも逆で、この辺の大家のアイデアを、昨今の作品が取り入れていると言うか、二番三番煎じで、どうオリジナリティを出すのかってのが、相場だろう。
かつて銀河中に覇を唱えた銀河帝国が崩壊して、地球に閉じこもって数十億年。
コンピュータによる完全管理社会と、仕組まれた異分子はマトリックス彷彿だが、仮想現実ではなく、それをリアルで実現してる。
カウンター社会になる自然に属する社会。とはいえ原始ではなく、むしろ精神感応というアドバンテージを保持。
展開はあれよあれよと。
イデも出てきたな。イデじゃないけど。
社会の根底にある共通文化をひっくり返すのが、ストーリーの根底で、結局は「謎解き」に近いものがあるが、素直に読めた。
今、こういうアイデアを思いついて形にしても、所詮は二番煎じになってしまう。
悔しがってもしょうがない。
Posted by ブクログ
スケールも設定も壮大なのに話としてまとまっているのが凄いなと感じた。
何百億年という歳月で起こる宇宙規模の変化に、ダイアスパーという不死を実現させた超科学のユートピア…。
主人公アルヴィンの冒険譚としてもとても面白く、たくさんのロマンが詰まってるなと感じた。
特に好きだった描写は人間のいない惑星で植物が独自の進化を遂げている描写が凄く禍々しくて想像が膨らんでわくわくした。
また、子どもほどの精神年齢の知的生命体ヴァナモンドも印象に残った。
「幼年期の終わり」でもそうだったが、クラークは幼稚な知的生命体描くのが上手だなと思った。
あと訳者のセンスなのかとても文章が読みやすい。
Posted by ブクログ
もう決して出会うことがない筈だったダイアスパーの人とリスの人という全く異なる成長を遂げた2種属の人たちが、異端である主人公の活躍によって手を取り合うようになるという話。「もしも自分たちの性格や人生が気づかない内に全て生まれたときから定められていたら」といったことを想像することができて面白かった
Posted by ブクログ
中盤辺りまでワクワクして読めたが、後半は説明的に過去が語られ、少し残念だった。キャラクターがあまり掘り下げられておらず、作者の背景設定を見せるための存在という感じがした、
Posted by ブクログ
10億年後の未来.人類は銀河から撤退し,地球に閉じこもって永遠都市ダイアスパーを建設した.アルヴィンはダイアスパーの暮らしに違和感を感じ,都市の外の世界への探索を試みる.しかしそれは都市の市民達が恐怖とともに忌避する行為だった.ダイアスパーの外にはしかし,リスという全く違う考えをもった人々の住まうもう一つの都市があったのだ.そこでアルヴィンは銀河帝国最後の砦だったシャルミレインの湖で太古のロボットや巨大生物との邂逅を経て宇宙船を手に入れる.この宇宙船の登場シーンがまさにファイナルファンタジー.アルヴィンはリスで友人となったヒルヴァーとともに星間旅行に出発,「七つの太陽系」で驚異的な体験を重ねる.そこで高次生命体ともいうべきヴァナモンドと出逢う.地球に戻った彼らはダイアスパーとリスを結びつけて新たな時代を画すのであった.やや消化不良なところはあるが,後のクラークSFの源泉のような印象でした.