小尾芙佐のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
全く別の人格が、都合の良い場面で登場するというのは、実は理にかなっているのではないかと穿ってしまう。
主人公は本来引っ込み思案でオドオドした性格。別人格では、明るくて陽気な人格や、冷静で知的で芸術家肌の人格など、私もほしいと思うような羨ましいものもある。凶暴な人格もあるが、戦わなければならない場面も生活には存在する。
もちろん、それらの人格がきちんと意識下にあり、コントロールできれば、という条件がつくだろうが。
不思議なことだが、本人が見たら全く理解できない書籍を別人格が読破していたり、難解な数式をいとも簡単に解いてしまうというのは、多重人格者には本当にあり得るのだろうか?24人のビリーミリガ -
Posted by ブクログ
ネタバレもぐりと言われることを覚悟で告白するが、実はアーシュラ・K・ル=グィンという作家を知ったのはつい最近だ。
『ゲド戦記』はもちろんタイトルは知っていたが、ジュブナイルというイメージがあったため食指は伸びず。
今回手にとった理由は、『Dune』の解説で、12年おきに発表されるローカス紙でのオールタイム・ベストSFという賞で、『闇の左手』が1975年、87年、98年にそれぞれ3位、2位、3位で入賞していると知ったからだ。2012年には5位に入賞している。
ちなみにオールタイムと名がついているが、20世紀と21世紀に分かれている。
ヒューゴー賞とネビュラ賞に関してはいたるところで書かれているので割愛。 -
-
-
-
Posted by ブクログ
ネタバレ15歳3ヶ月のクリストファーはある真夜中、向かいの家の庭で犬のウエリントンが農作業用フォークに刺されて死んでいるのを発見。一人で数学の問題を解くのが好きで他人と関わるのは苦手なクリストファーだったが、犬を殺した犯人を突き止めようと聞き込みを開始する。父は調査を打ち切るよう言ってきたが、ルールの穴をついて近所の老婦人と話したクリストファーは病気で死んだ母にまつわる重大な隠し事を知ってしまう。
常に数学的で論理的な視点で世界を見ている少年が〈親〉という理不尽に直面する、一風変わったジュヴナイル・ミステリー。ふだん我々が"あるある"で済ませていることは論理的に考えると何も&q -
Posted by ブクログ
ネタバレまず最初に書いておきます。
泣きました。
でも、文句ならたくさんあります。
まず、タイトルの『消えた少年たち』。
上下巻合わせて1000ページ近くになるのに、実際に連続少年失踪事件のことが書かれ出したのは下巻の280ページを過ぎてから。
そして、それが動き出したのは、430ページ以降。
で、470ページで作品は了。
これでは消えた少年たちが浮かばれない。
ほぼほぼ、両親の思うに任せない社会生活と、育児の苦労。
会社の人間はことごとく裏に何かありそうだったのに、結局何もなかったね。
才能のあるコンピュータプログラマーを雇ってしたことといえば、才能の飼い殺しの上に数々の嫌がらせ。
そんなことに -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルと表紙から鑑みるに、複数の少年が消えてしまう話と思われる。
序章替わりの「ぼうず」という章で、なんとなく誰かが少年たちをさらう話だということがわかる。
しかし、本編ではまだ、誰も姿を消してはいない…と思う。
怪しいのは、主人公一家の長男であるスティーヴィ。
ベストセラーのパソコンゲームをデザインしたことのある父が、今や日々の生活にも事欠くほど収入が減ってしまったため、アメリカ南部の片田舎の学校に転校することになった。
元々繊細で大人しいスティーヴィは、南部なまりを聞き取ることができなかったためにクラスメイトと担任の先生にいじめられ、学校に行きたくないと思っている。
東部育ちで標準語を -
-
-
Posted by ブクログ
島で唯一の小さな書店「アイランド・ブックス」の店主、フィクリー。愛する妻を事故で亡くし、1人きり本を売る日々を送るうちに、偏屈な性格になっていた。
ある日、書店の中にぽつんと幼女が置き去りにされた。幼女の名前はマヤで、彼女の若い母親は遺体で発見された。
フィクリーは戸惑いながらも使命感を覚え、マヤを引き取り育てることに決める。そして時間は過ぎ、フィクリーは再び女性を愛することが出来るようになり…。
物語の冒頭、主人公のフィクリーはとても偏屈で嫌な男として映る。だけどそれには抱えた悲しみとか孤独感とか理由があって、読み進めるにつれて彼の人間的な魅力がどんどん明かされていく。
フィクリー以外もキ -
-
Posted by ブクログ
ネタバレロボットと人間の共生における葛藤を描いている。
ロボットは人間によって発明され、人間の暮らしをよくするために改良されてきた。
しかし、それとともに新たな課題に直面することとなる。ロボット工学三原則の第一条に"ロボットは人類にいかなる危険を及ぼしてはならない"というものがある。
最初のうちは、殺す殺さないとか直接的な危害を与えるか否かの単純な話から始まり、最終的には性能も格段に向上し、ロボットは人間の理解を超える思考の中で、人間を気づかれないように、幸福に向けて誘導していく。
つまり、ロボットを創造していた人間が、逆にロボットに支配されていく様子を描いていく。
人間は幸せであ