小尾芙佐のレビュー一覧

  • 五番目のサリー 上

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    全く別の人格が、都合の良い場面で登場するというのは、実は理にかなっているのではないかと穿ってしまう。
    主人公は本来引っ込み思案でオドオドした性格。別人格では、明るくて陽気な人格や、冷静で知的で芸術家肌の人格など、私もほしいと思うような羨ましいものもある。凶暴な人格もあるが、戦わなければならない場面も生活には存在する。
    もちろん、それらの人格がきちんと意識下にあり、コントロールできれば、という条件がつくだろうが。
    不思議なことだが、本人が見たら全く理解できない書籍を別人格が読破していたり、難解な数式をいとも簡単に解いてしまうというのは、多重人格者には本当にあり得るのだろうか?24人のビリーミリガ

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    2022年04月03日
  • 闇の左手

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    ネタバレ

    もぐりと言われることを覚悟で告白するが、実はアーシュラ・K・ル=グィンという作家を知ったのはつい最近だ。
    『ゲド戦記』はもちろんタイトルは知っていたが、ジュブナイルというイメージがあったため食指は伸びず。
    今回手にとった理由は、『Dune』の解説で、12年おきに発表されるローカス紙でのオールタイム・ベストSFという賞で、『闇の左手』が1975年、87年、98年にそれぞれ3位、2位、3位で入賞していると知ったからだ。2012年には5位に入賞している。
    ちなみにオールタイムと名がついているが、20世紀と21世紀に分かれている。
    ヒューゴー賞とネビュラ賞に関してはいたるところで書かれているので割愛。

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    2022年02月13日
  • 書店主フィクリーのものがたり

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    中学入試の過去問で出会いました。
    翻訳小説家なんて珍しい、と思いましたが、素敵な文章が印象的で全部読みたい!と思い購入。

    私は翻訳小説が割と好きなせいか、こちらの文章はとても読みやすく、この本のテーストに合った温かみのある翻訳だと思いました。

    割と普通な登場人物たちの心の動きが、丁寧に描かれていて、じわじわとこちらの心も動かされる、そんな小説です。

    自分の周囲の人たちも、何かのきっかけで深く話を聞いてみると、思いもかけないような苦労や体験していた、ということはありませんか?そんなことを思い起こさせられます。

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    2022年01月25日
  • 第三の女

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    ポアロ
    読後感は良い。途中がとにかく長い。なかなかちゃんとした事件が起こらず。
    ところでクリスティー作品ではよくなりすましやなりかわりの登場人物がいて、そのたびに「んなわけないやろ。気づくやろ」って思ってしまう。でも歌舞伎ではしょっちゅう役名◯◯実は△△、ってあってそんなに不自然とも思わないので、古典みたいなもので、現代ほど光量がないからって思えばよいのかな。

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    2021年12月07日
  • ママは何でも知っている

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    ママが強い安楽椅子探偵物で、古典的名作であるのに古さは感じさせない、十分に今も面白い作品だ。短編なので読みやすいし、ほんとうにママが強い。
    おつむの強さ、視点と気づき、閃き、そして経験とさらに強いママのママ(?)の存在により、このママは強いママにママでママ
    意外にも警部とは良い感じだし、息子の嫁との関係も喧嘩するほど仲が良い感じだし、息子同様にちょっと冷やってするやりとりもあってその点も面白かった。

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    2021年11月26日
  • 書店主フィクリーのものがたり

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    タイトル通り店主のものがたり。
    妻を亡くし書店に幼児置き去り、その子を引き取り育てる、恋愛、病床。
    本好きな家族や友人達に見送られるっていいなあと思いました。

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    2021年10月31日
  • 闇の左手

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    ゲド戦記で著名なアーシュラ・K・ル・グィンのヒューゴー賞・ネビュラ賞受賞作品。両性具有の人類という特異な社会を描いているのが最大の注目点であり、セックスとジェンダーをめぐる思考実験として考えさせられるものがある。後半の大部分をしめる真冬の氷原を越える旅が圧巻で、異星人との心の交流とその結末が深く心に残る。
    いっけんファンタジーぽい世界の背景に、長大なスペースオペラがまるまる収まりそうなSF設定があるのもすごい。
    全体的に重い話なので個人的な好みには外れるが、何十年も読まれ続けているのは納得。稀有な傑作なのは間違いない。

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    2021年10月23日
  • 闇の左手

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    わからないなりに食いついて読んだ。
    まったく違うものたちが、当然ゆえに見過ごされる誤解を通って隣りあい近づきあう、そのわずかだが貴重な時間と。繋がりが「絶えた」ときからみえてくる相手の拡がり。
    主人公(?)はきっとこの後も長いこと、おのれの住む星と文明のために動いたひとりのゲセン人を思い出すのだろうな。愛という観念さえ、通じ合っているかわからなくても。
    しかし。であれば「同盟」というのはなんだろう。文明を、『前進した自らこそが進化の到達点』と定義するのだったら悲しいことだなぁ。

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    2021年10月20日
  • 夜中に犬に起こった奇妙な事件

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    ネタバレ

    15歳3ヶ月のクリストファーはある真夜中、向かいの家の庭で犬のウエリントンが農作業用フォークに刺されて死んでいるのを発見。一人で数学の問題を解くのが好きで他人と関わるのは苦手なクリストファーだったが、犬を殺した犯人を突き止めようと聞き込みを開始する。父は調査を打ち切るよう言ってきたが、ルールの穴をついて近所の老婦人と話したクリストファーは病気で死んだ母にまつわる重大な隠し事を知ってしまう。


    常に数学的で論理的な視点で世界を見ている少年が〈親〉という理不尽に直面する、一風変わったジュヴナイル・ミステリー。ふだん我々が"あるある"で済ませていることは論理的に考えると何も&q

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    2021年10月07日
  • 消えた少年たち(下)

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    ネタバレ

    まず最初に書いておきます。
    泣きました。
    でも、文句ならたくさんあります。

    まず、タイトルの『消えた少年たち』。
    上下巻合わせて1000ページ近くになるのに、実際に連続少年失踪事件のことが書かれ出したのは下巻の280ページを過ぎてから。
    そして、それが動き出したのは、430ページ以降。
    で、470ページで作品は了。
    これでは消えた少年たちが浮かばれない。

    ほぼほぼ、両親の思うに任せない社会生活と、育児の苦労。
    会社の人間はことごとく裏に何かありそうだったのに、結局何もなかったね。
    才能のあるコンピュータプログラマーを雇ってしたことといえば、才能の飼い殺しの上に数々の嫌がらせ。
    そんなことに

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    2021年09月18日
  • 消えた少年たち(上)

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    ネタバレ

    タイトルと表紙から鑑みるに、複数の少年が消えてしまう話と思われる。
    序章替わりの「ぼうず」という章で、なんとなく誰かが少年たちをさらう話だということがわかる。
    しかし、本編ではまだ、誰も姿を消してはいない…と思う。

    怪しいのは、主人公一家の長男であるスティーヴィ。
    ベストセラーのパソコンゲームをデザインしたことのある父が、今や日々の生活にも事欠くほど収入が減ってしまったため、アメリカ南部の片田舎の学校に転校することになった。
    元々繊細で大人しいスティーヴィは、南部なまりを聞き取ることができなかったためにクラスメイトと担任の先生にいじめられ、学校に行きたくないと思っている。
    東部育ちで標準語を

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    2021年09月04日
  • 消えた少年たち(上)

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    ラストは衝撃でした。いろんな出来事や人間関係に悩まされながらも、懸命に生きる家族の姿も良かったです。信仰が生活の中心にある家族なのですが、宗教に懐疑的な立場からの指摘もあったりで、とても丁寧に書かれた本だと思いました。

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    2021年08月07日
  • IT(2)

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    2021.7.13
    本編ももちろん面白いんだけど、
    シャイニングファンがニヤリとするような小ネタもあって、流石キングだなあと。

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    2021年07月13日
  • ママは何でも知っている

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    このママ、最強でしょ。
    刑事である息子のデイビッドが扱う事件について、いくつか簡単な質問をするだけで解決してしまう。
    こんなに面白い安楽椅子探偵ものは初めてかも。
    世間一般の常識、人間心理、人生経験。
    この3つであっという間に真相にたどり着くのだから敵わない。

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    2021年07月12日
  • IT(1)

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    2021.7.9
    映画は古いのも新しいのもどっちも好きだけど、
    そういや原作読んでないなと思って今更だけど読み始めた。

    ダムのシーンが本当に大好き。

    自分は日本人だし、こんなデリーほどの田舎で過ごしてきたわけじゃないけど、不思議とルーザーズクラブのみんなとずっと友達のような気がしてきちゃう。
    この年齢の夏休みって、本当に何もかもが特別で宝物だよなあ〜。
    ホラー要素はまあ次巻以降に期待ってことで。。

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    2021年07月10日
  • 書店主フィクリーのものがたり

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    島で唯一の小さな書店「アイランド・ブックス」の店主、フィクリー。愛する妻を事故で亡くし、1人きり本を売る日々を送るうちに、偏屈な性格になっていた。
    ある日、書店の中にぽつんと幼女が置き去りにされた。幼女の名前はマヤで、彼女の若い母親は遺体で発見された。
    フィクリーは戸惑いながらも使命感を覚え、マヤを引き取り育てることに決める。そして時間は過ぎ、フィクリーは再び女性を愛することが出来るようになり…。

    物語の冒頭、主人公のフィクリーはとても偏屈で嫌な男として映る。だけどそれには抱えた悲しみとか孤独感とか理由があって、読み進めるにつれて彼の人間的な魅力がどんどん明かされていく。
    フィクリー以外もキ

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    2021年06月26日
  • 闇の左手

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    両性具有の人々の惑星<冬>。この星と外交関係を結ぶため、人類の同盟から派遣された使節ゲンリー・アイと、カルハイド王国の宰相だったエストラーベンの旅路の中で、芽生えたものは、友情でも愛情でもないと言えるし、且つ両方を兼ね備えたものとも言える。。。きっと名付けられたことのない、けどとても尊いもの。二人の旅の終わりを見届ける時、私たちも「性差」というものに違和感を覚えるはず。少なくとも私は覚えた。新鮮な体験だった。とにか世界観が緻密で圧倒される。

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    2021年06月12日
  • 闇の左手

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    いわゆる"ソフトSF"の代表作。
    執拗なまでの情景描写により、"冬"と呼ばれる惑星ゲセンの風景をありありと写し出している。
    それに加えて、途中途中にゲセンの伝承を挟むことで、世界観を完璧に構築。
    前半は掴み所のないエストラーベンに、後半どんどん惹き込まれてしまう人物描写も素晴らしかった。
    紛れもない傑作。

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    2021年05月16日
  • 書店主フィクリーのものがたり

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    いわた書店一万円選書のうちのひとつ。
    アメリカ小説らしい節回しが最初慣れずになんだかうざったく感じるものの、それぞれのキャラクターが立つ内容に引き込まれていきます。捨て子のマヤが可愛すぎて、でもその縁の繋がりがあまりにも切なすぎて、ひとりでいられないから本を読む、というAJの語りを繰り返し繰り返し読むのでした。

    日曜日の午後に、ワインとラザニアをお供に読むのをお勧めします。

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    2021年04月10日
  • われはロボット〔決定版〕

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    ネタバレ

    ロボットと人間の共生における葛藤を描いている。
    ロボットは人間によって発明され、人間の暮らしをよくするために改良されてきた。
    しかし、それとともに新たな課題に直面することとなる。ロボット工学三原則の第一条に"ロボットは人類にいかなる危険を及ぼしてはならない"というものがある。
    最初のうちは、殺す殺さないとか直接的な危害を与えるか否かの単純な話から始まり、最終的には性能も格段に向上し、ロボットは人間の理解を超える思考の中で、人間を気づかれないように、幸福に向けて誘導していく。
    つまり、ロボットを創造していた人間が、逆にロボットに支配されていく様子を描いていく。
    人間は幸せであ

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    2021年04月08日