小尾芙佐のレビュー一覧
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氷の惑星と両性種族。
銀河連合的な組織に所属する地球人が、使者となって極寒の辺境惑星(冬=ゲセン)へ訪れ、艱難辛苦を経て(冬)の連合入りを成立させる話。
中世ヨーロッパ的な国カルハイドと共産圏的なオルゴレインの二大勢力があり、知り合ったカルハイド人の親友(両性具有種族で政治家)とカルハイドを追われ、オルゴレインでも独り収容所送りとなる。しかし、親友エストラーベンの救出作戦で脱出。
南極に似た土地を二ヶ月逃避行して、再びカルハイドの王を訪れ、翻心させるまでのストーリー。
氷原の旅の終わりにエストラーベンは逃走中射殺されるが(ある意味自殺)、連合使者としての任務は成功し、エピローグで友の父と息子に日記を届ける流れは、ただただ切ない。
ちなみに、悪役は政治的に失脚するので宇宙戦争系では無く、主人公が両性具有者と恋人となるような展開も無い。(発情期に危うくはなるが、結局我慢するので)
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わたしはなあ、賢いお方とはちごうてねえ、神さまいうもんが、ほんとうはよう分からんのよ。
サイラスはなあ、故郷のランタン・ヤードで神さまのことを信じておったのに親友の裏切りで「盗人」にされてしまうたんよ。本当の盗人ではなかったのに牧師さんの前で「御神籤(おみくじ)」で盗人に決められてしもうたんよ。
そいでサイラスはなあ、なんもかんものうなってしもうて、とぼとぼと町を出て、ラヴィローいう村の片隅の砕石場の近くに小屋を建ててひっそりと機織り屋になったんよ。村人たちに「変人」とからかわれても何も言わんと、ただもう、真面目に機を織っとったと。サイラスの織った亜麻布はしっかりして美しもんじゃったから、注文した良家のご婦人方はサイラスに金貨、銀貨でお礼をしたそうじゃ。
サイラスには家族はおらんかったで、金貨、銀貨の使い道はなかったけんどな自分で稼いだ金銀の輝きが嬉しゅうて、毎晩、金貨、銀貨を数えて織り機の下の床に隠しておくことだけを楽しみ過ごしておった。
そうして15年もたったときにな、なんとサイラスが大事に床下に隠しておった金貨、銀貨が盗まれてしもうたんよ。ただ一つの慰みも無くなったしもうたサイラスはもぬけの殻になってしもうたんよ。
でもな、ある雪の日の晩にな、サイラスの小屋の暖炉の前に金が落ちとったんよ。「わたしの金貨が戻ってきた!」とおもって拾い上げようとしたら、なんとそれは金髪の赤ん坊だっと!
その日からな、サイラスは生まれ変わったんよ。故郷にいたころのように心に喜びが訪れ、サイラスは「お父ちゃん」になり、エピー(娘)もお父ちゃんを大事にして、可愛い、良い子に育ったんよ。
ところがな、エピーが十六歳になった時にな、エピーを引き取りたいいう、偉いお方が現れたんよ。十六年前にサイラスがやっと掴んだ幸せをまたもぎ取ろうするもんがな。いやな、お金持ちのお方にはサイラスにとって何が幸せが分からんかったんやわな。
わたしはなあ、キリスト教のことはよう分からんのやけど、神さまのことはなあ、なんとなく分かる気ィがするんやわ。サイラスはなあ、エピーのお父ちゃんになってからエピーと一緒にまた教会に行くようになったけどな、自分の小屋の暖炉をずっと大事にしてたんや。暖炉の前でエピーが見つかったからな。
つまりはなあ、暖炉とかそういう、そこにいる人間の行ないをずっと見てくれてるもんの中に神さまはおられると思うんよ。
それからな、神さまは悪いことした人間には罰を与えなさるけど、「悪いことした」自覚を忘れずにその後慎ましく暮らした人間を決して地獄に行かせるような非情なお方やないな。
このお話はなあ、読み終わったら、なんかこう気持ちがすーっとするお話やったな。
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Posted by ブクログ
エリザベス。田舎に住む5人姉妹の次女。才知。活発。そろそろ結婚の年齢。ある日、男ダーシーがエリザベスに求愛するが、エリザベスは身分が高く、お世辞の一つも言わないダーシーを「高慢」な男だと決めつけ、ダーシーを拒絶する。そして愛想のいい男ウィカムと付き合いはじめるが、ウィカムは実はだらしないただの女好きだと判明する。その後、エリザベスはダーシーが寛容で思いやりのある男であると気づき、自らの偏見を改め、ダーシーとの結婚を決める。ジェイン・オースティンAusten『高慢と偏見』1813 ※女性、10ポンド紙幣
●ウィカム。男。末娘リディアと駆け落ち。
〇ビングリー。男。温厚。ダーシーの親友。長女ジェインに興味。
〇ジェイン。長女。素直。控えめ。おしとやか。
〇ベネット。母。娘たちの玉の輿婚を目指す。
*日常会話にある空気、微妙な失礼、感情のズレ。人間観察。あらすじより会話とニュアンス。
ジェイン。女の子。孤児。チビ。顔色が悪い。ぶさいく。寄宿学校に入る。成績優秀。数年後、教師資格を得て、寄宿学校を出て、家庭教師に。家庭教師先の主人の男ロチェスターと恋仲になり、身分の違いを乗り越えて結婚を約束。しかし、結婚式当日、ロチェスターには精神を病んだ妻がいて、あまりに狂暴のため屋根裏に幽閉されていることを知る。ジェインは家庭教師先の家から去る▼ジェインは職を失い、金に困っていたところ、親戚の牧師の男に助けてもらう。牧師の男から、求婚され、一緒にインドに移住しようと持ちかけられるが、好きでもないため、迷っていると、「ジェイン、ジェイン」と自分の名前を呼ぶロチェスター(昔、結婚を約束した男)の声を聞く(幻聴)。嫌な予感がしたジェインは、ロチェスターの家に行くと、屋敷は焼け落ち、ロチェスターは左手を失い、失明していた。ロチェスターの妻は死亡。晴れて、ジェインとロチェスターは結婚、子供を産み、幸せに暮らす。シャーロット・ブロンテBrontë『ジェイン・エア』1847 ※ブロンテ三姉妹の長姉
●リード夫人。ジェインの叔母。いじわる。
〇ヘレン・バーンズ。女生徒。寄宿学校の友達。敬虔なキリスト教徒。学校の不衛生により肺病で死亡。
〇エドワード・フェアファックス・ロチェスター。ジェインがその娘(アーデル)の家庭教師として雇われた家の主人。
〇セント・ジョン。牧師。男。布教のためインドへ移住。
●ロチェスター夫人。狂って、屋敷に火をつける。
初恋を語る詩人は多いが、その後の恋を語る詩人が少ないのはなぜだろう。ジョージ・エリオットEliot『アダム・ビード』1859 ※男性名「ジョージ」だが女性
サイラス・マーナー。男。40歳。農村にある粗末な小屋で、機織りで布を織って暮らしている。親のいない赤ちゃん(エピー)を引き取り育てる。ジョージ・エリオットEliot『サイラス・マーナー』1861
・悪いことが起こると強く信じれば、それは起こらずにすむという、誰にでも染み付いている迷信。
夫婦をめぐる道徳。ジョージ・エリオットEliot『ミドルマーチ』1871
結婚を尻込みする人間は戦場から逃亡する兵士である▼最上の男は独身者の中にいる。最上の女は既婚者の中にいる。ロバート・ルイス・スティーヴンソンStevenson『若い人々のために』1883 ※スコットランド
ジキル博士。化学者。悪徳を求める心を抑えられない。そこで、自分の中に潜む悪を表出させる薬を発明。しかし徐々に制御が効かなくなり、突然ハイド(純粋悪)が出てくるように。ハイドは街角でぶつかり転倒した少女を執拗に踏みつける。また議員の男をステッキで殴り殺す。その後、ジキル博士の実験室で、ジキル博士の服を着たハイドの死体が発見される。ロバート・ルイス・スティーヴンソンStevenson『ジキル博士とハイド氏』1886
〇ジキル。悪への衝動。大柄。表向きは温厚。人望。医学者。国立協会員。学識。
●ハイド。純粋悪。小柄。薄気味わるい。青白い顔。残忍。冷酷。
〇アタスン。ジキルの友人。弁護士。謎の男ハイドの秘密を探る。
〇ラニョン。ジキルの友人。医者。ジキルの秘密を知りショックで死亡。
〇プール。ジキル博士の執事。
失敗をゆるすのは成功をゆるすよりもはるかにたやすい。チャールズ・ウォーナー『小さな旅』
ユーモアの利点は嘲(あざけ)りの笑で運命を平然と無視できることだ。ジョージ・ギッシング『三文文士』1891
絶望には独特の静けさがある。ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』1897
クルツ。コンゴ奥地で原始の闇の魔力に憑りつかれる。人間の内にある暗黒。文明が覆い隠した闇。未開世界で見た極限の生。クルツは「こわい、こわい」と叫びながら息絶える。ジョーゼフ・コンラッドConrad『闇の奥』1899
〇マーロウ。男。船乗り。アフリカ奥地コンゴにいる男クルツを救出するよう依頼を受ける。語り手。
見知らぬ国へ行く魅惑に満ちた恐れ。故国に帰る懐かしい安堵▼人々はローマが偉大であるからローマを愛したのではない。ローマは人々が愛したからこそ偉大になったのだ。ギルバート・チェスタトンChesterton『正統とは何か』1908
異なる価値観をもつ二つの家の交流。エドワード・モーガン・フォースターForster『ハワーズ・エンド』1910 ※ブルームズベリー・グループ
〇ヘレン・シュレーゲル。次女。教養。知性。内面重視。理想主義。
〇ヘンリー・ウィルコックス。実業家。実利追求。鈍感。保守主義・現実主義。
※自殺が罪悪であるのは、あとに残されるものの感情を顧みないからである。
インド人アズィズがイギリス人の婚約者アディラをレイプしようとしたとして逮捕、裁判にかけられる。被支配者側のインド人と支配者側のイギリス人の間の民族対立に発展。エドワード・モーガン・フォースターForster『インドへの道』1924
ヘンリ・ヒギンズ。言語学者。ロンドンの下町の貧しい花売りの娘(イライザ)を教育して、立派なレディに仕立て上げる。正しい発音・話し方・礼儀作法。バーナード・ショー『ピグマリオン』1913 ※「マイ・フェア・レディ」の原作
禁欲。青春。デイヴィッド・ハーバート・ロレンス『息子と恋人』1913
コンスタンス(コニー)。若い女。夫クリフォード・チャタレイは戦地で重症を負い、下半身が麻痺。車いすの生活。夫は傲慢で自意識の強い男。性生活もない。コニーは夫との肉体関係のない精神生活に満足できず、家の森番の男メラーズと不倫、妊娠。夫にばれてしまい、森番の男は解雇される。女は離婚を求めるが夫は認めず、女は夫の元を去る。デイヴィッド・ハーバート・ロレンスLawrence『チャタレイ夫人の恋人』1928
※イギリスで過激な性描写が問題となり削除版が出版される。
ローラ。庭でパーティの準備をしていると、近くで交通事故があり、人が亡くなったらしい。母にパーティの中止を提案するが、母は聞く耳をもたない。ローラは亡くなった人の家を訪れる、若い男の死に顔を見つめ、人生に疑念を感じる。キャサリン・マンスフィールド『園遊会』1921
机の上。インクつぼに蠅(ハエ)が入り込む。その蠅をつまみ取り、紙の上にそっと置く。蠅はピクピク動いている。蠅の上からインクを一滴ぽたりとたらす。さらにもう一滴。蠅は動かなくなる。死んで横たわる蠅を見て、惨じめな気持ちになる。キャサリン・マンスフィールド『蠅』1922
フィリップ・ケアリ。男。孤児になり牧師の叔父に育てられる。生まれつき足首が曲がっている。劣等感。歪んだ性格。ドイツに遊学し、宗教・倫理的な意識・しがらみから解放されていく。ウィリアム・サマセット・モームMaugham『人間の絆』1915
チャールズ・ストリックランド。男。妻と2人の子供を捨てて画家になる。芸術至上主義。自己中心。放浪の末、タヒチに住み着き、島の女と結婚。ハンセン病に罹りながら、小さな小屋で絵を描く。小屋の絵は焼き払うよう言い残して息を引き取る▼人は時に自分のつけた仮面を完璧なまでにつけこなし、やがて本当に人から見える仮面どおりの人間になってしまうことがある▼毎日きらいなことを二つずつ行うのは魂のためによいこと▼苦しみは人間を気弱くし、執念深くする。ウィリアム・サマセット・モームMaugham『月と六ペンス』1919
〇ダーク・ストルーヴ。画家。オランダ人。愛妻家。
〇ブランシュ。ストルーヴの妻。ストリックランドと不倫するも、捨てられて自殺。
美人はなぜつまらぬ男と結婚するのか。それは賢い男が美人と結婚しないからだ。ウィリアム・サマセット・モームMaugham『呪われた男』
若さの唯一の欠点はあまりに早く歳をとってしまうことだ。アガサ・クリスティChristie『秘密機関』1922
レベッカ。美貌。才知。没落貴族マキシムと結婚。ある日、レベッカは行方不明になり、海底の帆船からレベッカの死体が発見される。ダフネ・デュ・モーリア『レベッカ』1938 ※ヒッチコック映画「レベッカ」の原作
南海の孤島に取り残された少年たち。島で共同生活を始めるが、徐々に秩序が壊れ、殺し合いが始まる。ウィリアム・ゴールディングGolding『蠅の王』1954
〇ラルフ。12歳。リーダーに選出。良識。合理的。
〇ピギー。ひ弱。ぜんそく。肥満児。知的。ジャック一味に殺される。
●ジャック。狩猟隊。粗野。独裁。顔を迷彩色に塗る。殺した豚の顔を斬り落とし杭にさす。豚の顔に蠅が群がる。悪の象徴。森に火をつける。
〇サイモン。独特。神秘的。予言。蠅の王から「私はお前の一部だ」と言われ、意識を失う。ジャック一味に殺される。
スミス。17歳。労働者階級。母子家庭。窃盗罪で少年院に入所。少年院の院長は、スミスに長距離走の才能があることを知り、自分の名誉のためにスミスを大会に出場させ、優勝させることを思いつく。大会が開幕。スミスは院長の思惑通り、トップで最終コーナーに差し掛かる。しかし、急にゆっくり走り始め、ついには止まってしまい、2位のランナーに抜かれてしまう。オレは大人の思い通りにはならない。アラン・シリトーSillitoe『長距離走者の孤独』1958
アンソニー・バージェスBurgess『時計じかけのオレンジ』1962
イギリスの田園風景の品格。わかりやすいドラマや「見せ場」がないからこそ偉大。美しさの持つ落ち着き、慎ましさ。自らの美しさと偉大さをよく知っているので、大声で叫ぶ必要がない。カズオ・イシグロ『日の名残り』1989
※ダーリントン・ホール。貴族の屋敷。オックスフォードの近く。
〇スティーヴンス。執事。老齢。名誉・品位・伝統など形式を重んじる。
〇ファラデイ。アメリカ人。屋敷を購入。 -
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2018年に亡くなってしまったSF、ファンタジーの女王アーシュラ・K・ル=グウィンが1969年に発表したハイニッシュ・ユニバースに連なる作品の一つ。
ジェンダーを持たない種族が住む惑星《冬》のカルハイド王国と、その隣国オルゴレインに宇宙連合エクーメンの使者であり人間である主人公が外交官として訪れるというもの。
それもあってフェミニズムSFの代名詞的作品とも言われている。
1969年の作品でありながら、今読んでも古びてない強度がある。それは世界観構築が細かいところにも行き渡っていることと、ハイニッシュ・ユニバースによって世界が時代を超えて広がっていることも多きい。
そして性の規範に囚われない種族との、恋愛とは違うが、ある種の繋がりのようなものが描かれていることも価値観の多様性が広がる現代でも古びない理由でもあると感じる。
全然関係ない話だが、闇の左手というタイトルを聞くと、二元論的な意味も合わせて『狩人の夜』のロバート・ミッチャムのL-O-V-Eの右手とH-A-T-Eの左手を思い出してしまう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ辻村深月さんの傲慢と善良を2019年に読んでからずーっと読んでみたいと思っていて、でも、200年以上前のイギリス文学・・・私に読みこなせる?と躊躇すること早6年。(長っ)
そんな時インスタのフォロワーさんのレビューを読み、背中を押されてようやく手に取りました!
心配は杞憂に終わり、とても楽しく読み進めることが出来ました~
結婚適齢期の娘達が住む町に、身分も高くお金持ちの独身男性が越してきて・・・という恋愛物語です。。
主人公の母親は身分と金で人を判断する、そしてそれを大っぴらに口にする下品な人。
父は事なかれ主義。
娘たちは、美人で上品で優しく慎ましやかな長女、才知あふれる次女(この子が主人公ね)、ウンチク好きな真面目っ子の三女、染まりやすい四女、ふらふらチャラチャラ女子の五女と個性豊か。
その他にも、結婚を100%打算で選んだ親友や、身分や名誉のために人の恋路を邪魔する人、地位の高さにひれ伏す人などがコミカルに描かれていて、こう紹介しただけでも現代人も魅かれるキャスト&設定でしょ。
私の若い時は合コンが全盛期だったし、3高(高学歴、高収入、高身長)がモテの条件だったりしたので(笑)、毎週のように行われる舞踏会、地位や身分・財産・両親の出自などが評価基準、などは、私の若い頃の価値基準そのまんまで笑えました。
上巻のラストは衝撃的なお手紙で終わるので、下巻が気になって仕方ありません。。 -
Posted by ブクログ
光文社古典新訳文庫です
今回のレビューは長いよ!
はい、以前から私、海外文学を読む時に翻訳者の方に注目してみるのも読書の楽しさのひとつになるのでは?ということをのたまっていたわけです
で、今回”あの”オスカー・ワイルドを読むぞ!と思い立ち、いつもお世話になっている光文社古典新訳文庫さんを調べてみたところオスカー・ワイルドは四作品ラインナップされていたんですが、これがなんと全て翻訳者さんが違うんですよ!
普通、各出版社さんで海外の作品を刊行する時は一人の作家さんに対して一人の翻訳者さん
多くても二人ってところなんですね
それが、四作品全て違うってこれ相当珍しいことなんです
そこにはもちろん光文社古典新訳文庫なりの意図があるんだと思うんですが、とりあえずこれはもうその意図を明確にするためにも一気に読んでやろうと
一気に読み比べてやろうと考えたわけです
まぁ、読むまでもなくなんとなくそれぞれの作品にあった翻訳者さんなんだろうなとという意図は感じられちゃうんですがw
まずは、今さらかもしれませんが、オスカー・ワイルドについて
オスカー・フィンガル・オフラハティ・ウィルス・ワイルド(英: Oscar Fingal O'Flahertie Wills Wilde、1854年10月16日 - 1900年11月30日)は、アイルランド出身の詩人、作家、劇作家。
耽美的・退廃的・懐疑的だった19世紀末文学の旗手のように語られる。多彩な文筆活動を行ったが、男色を咎められて収監され、出獄後、失意から回復しないままに没した。(ウィキペディアより引用)
「三島由紀夫が愛した」なんて書くと作風が想像できちゃったりするんですが、そういう意味では由紀夫ちゃんも凄い(ファンに怒られろ)
まず、ワイルド自身が非常に多彩ということもあるんですが、光文社古典新訳文庫における作品と翻訳者さんの組み合わせについても見ていきます
『幸福な王子/柘榴の家 』訳:小尾芙佐
小尾芙佐さんの代表作と言えば『アルジャーノンに花束を 』(キイス)ですよね
あの感動的な物語は小尾芙佐さんの翻訳あってこそです
さらに小尾芙佐さんと言えば、SF翻訳の大御所福島正実さん(わいもずいぶんお世話になりました)のお弟子さんで、基本はSFの翻訳なんです
他にも『われはロボット』(アシモフ)『夏への扉』(ハインライン)『火星のタイム・スリップ』(ディック)など超有名なSF作家の翻訳を手がけています
The科学!というようなハードなSFというよりはどちらかというとおとぎ話のようなほんわかしたSFが多いイメージ
AとFならFのイメージ(あ、藤子の話ね)
近年は海外の名作と呼ばれるような作品も手がけていて、大胆な意訳でわかりやすさが特徴とわいが勝手に思ってます
そしてなんと今作を翻訳されたのは84歳のとき!84歳でまだ現役バリバリしかも「新訳」!すげー
『カンタヴィルの幽霊/スフィンクス 』訳:南條竹則
代表作は『幽霊船』(ミドルトン)『怪談』(ハーン)『インスマスの影 クトゥルー神話傑作選』(ラヴクラフト)など、ゴシックホラーと言われるような「おどろおどろしい」という形容詞がぴったりな作品が並びます
ミステリーも手がけていて『黒死荘の殺人』(ディクスン)『ブラウン神父の無心』(チェスタトン)などこちらもちょっとホラーより
あえて(だと思う)古くさい表現を多用することで奇怪な雰囲気を醸し出してる気がします
そして実は作家としても多くの作品を出していて読んだことはないんですが、不思議な世界観の幻想小説とのことです
そして南條竹則さん現在65歳でなお活躍中の大ベテランです
『サロメ』訳:平野啓一郎
はい、ここで来ました芥川賞作家!現代日本の純文学を代表する作家さんです
とかいいつつ私未読ですごめんなさい
で、平野啓一郎さん翻訳は初出になるのかな?おそらく
皆さん当然知ってる通り『サロメ』は戯曲なんですが、1960年には三島由紀夫の演出で舞台化されてるんですよね(ちなみに『サロメ』を初めて日本に紹介したのは森鴎外)
そして平野啓一郎さんと言えば三島由紀夫賞最年少選考委員ですよ!(ここで繋がる!)
もう平野啓一郎さんにお願いした光文社が偉い
『ドリアン・グレイの肖像』訳:仁木めぐみ
ぜんぜん知らん人
代表作は『死ぬ瞬間の5つの後悔』(ウェア)『僕は人生を巻き戻す』(マーフィー)『見て見ぬふりをする社会』(ヘファーナン)などだそうなんですが、やっぱり全く知らん
で、調べてみたらノンフィクション系の翻訳者さんでした
多くは心の奥底に潜む闇みたいなところに焦点をあてたものが多く、精神疾患を抱えた人の実話みたいなんを中心に翻訳されてました
もしかしたら大抜擢なのかも
うーん、まずやっぱ改めて光文社すげーな!と
めっちゃ力入れてるやん
翻訳者さんを見ることでなんとなーくそれぞれの作品の雰囲気みたいなんが見えてきません?
見えてこない?あ、そう
はい、じゃあ『幸福な王子/柘榴の家 』のレビュー
童話です!ワイルドが自分の子どもたちに語って聞かせるために作ったとされてるんです(ちなみにワイルドは最初普通に結婚してます)
でね、もちろん童話ですから色々と教訓も含まれてるんですが、ワイルドの童話だいたい最後死ぬんよね
みんな知ってる『幸福な王子』も王子溶かされるし、燕は冬の寒さに耐えられず死ぬし
だいたい最後死ぬ童話、子どもたちに語るなよワイルド、怖ぇーじゃん!て思うんですけど、なんていうか残酷な美しさみたいなんが感じられるんですよね
「死」によって閉じられる物語
でもどんな人生も「死」によって終わるっていうのは、単純な事実で、このことから目を背けないってことも、子どもたちに教えるべき重要なピースなのかなと思ったりしました
はい、まずはワイルドの作品の中では割と平穏な作品から入りました
次々行きますよ! -
Posted by ブクログ
「光の前にはいつも闇がある。だから暗闇のほうが光よりも速く進むはず」
自閉症と診断を受けている主人公のルゥはそのアイデアを胸のうちで温めている。
裏表紙のあらすじで「光の前にはいつも闇がある。だから暗闇のほうが光よりも速く進むはず」という言葉を読んだだけで、内容もまったく知らないうちから、深く感動して泣いてしまいそうになる。なぜ感動したのか自分でも思うわからない。それどころかそのセンテンスが果たしてなにを意図しているのかさえもわからぬまま、泣きそうになる。そういったことが、この小説のなかにはあふれている。
ルゥの語りによって物語は進む。『アルジャーノンに花束を』に似ているとのことだったが、実際には似ているところもあればそうでないところもある。この物語は、新開発の自閉症の治療法を、ルゥが受けることにするかどうか、その過程に重きをおいている。『アルジャーノンに花束を』のように、自閉症の状態と、自閉症でなくなった状態がどう違うかに重きをおいた作品ではない。
自閉症とはなにかということをルゥは突き詰めていく。自閉症であることによってなにを失ってきたのか、自閉症でなくなることによってなにを失うのか。自閉症であることはノーマルであることとどう違うのか。ノーマルとはどれだけノーマルなのか。はたして私たちは治療されなければならない存在なのか。その問いは果てしのないものだ。そして切実だ。
作中での描写や発言の意図を完全に理解するのは難しい。理解することが難しいことが、この本の持つ魅力になっている。そして理解するのが難しいことはルゥが自閉症だからだという人もいるだろう。一方で他者の言動からその人の思考を推測することはつねに不可能なことなのだともいえる。一見繋がっているようにみえる論理も、一見充溢しているようにみえる意味内容も、果たしてこれまで一度でも本当の意味で理解されえたことはあっただろうか? この問いかけは、作中で繰り返し扱われる、ノーマルは自閉症性をいっさい排除しているのか、ノーマルと自閉症のあいだで誰がどうやって線を引いているのか、自閉症は異常なのか、という問いかけに呼応する。意味はつねにひとつのアナロジーであり、理解とはアナロジーによって生み出されるものだ。意味の理解とはひとつの構造であるはずだ。ゆえに、ルゥの語りの「真意」を知ることはできずとも、私たちはその文章を理解することができる。そこに、祈りを読みとることができる。翻って、意味がわからないということそのものが、そのまま、ある祈りなのだ。 -
Posted by ブクログ
フィリップ・K・ディックの1955年に発表された第一長篇。世界観や用語の説明不足などは、最初の作品からだったのかと納得。という訳で、誰にもおすすめできませんが、個人的にはとても面白い作品だと思いました。
世界を統べる権力者が、公共偶然発生装置(ボトル) による無作為な攣動(トイッチ)によって決められる世界。それは、ランダムに抜擢し、あるいは蹴おとし、ランダムな間隔でランダムに権力者を選び出す。人は、権力を独占できず、安泰した地位など存在しない。誰も独裁者になろうとしてもなれない世界。
そのような社会機構である、九惑星連邦の最高権力者(クイズマスター)であったヴェリックがこれにより退位(クワック)させられ、代わりに選ばれた(ボトルされた)のは、プレストン会(謎の太陽系10番惑星「炎の月」の存在を示唆したジョン・プレストンを信仰する)会長のカートライト。
その地位についてから24時間後には公認の刺客が指名大会で選任されて、一度に一人ずつクイズマスターを殺しにくる挑戦方式が、退任まで続きます。周囲を守ってくれるのは、ティープと呼ばれる人の思考波を捕えるテレパスの部隊。その間隙をついて命を狙う第一の刺客は、退位させられたヴェリックが送り込んだキース・ペリグ。果たしてティープ部隊は守り切ることができるのか…。
と、ここから怒涛の展開が始まるのですが、はっきり言ってこのキース・ペリグのスペックがチート過ぎて笑えます。読みながら「そんなアホな…」と呟いてしまうほど無茶苦茶でした。それにしても、最高権力者になって、日々命を狙われる世界…しかも全世界公認とは何という罰ゲームなんでしょうね。着任早々、キース・ペリグのようなチートキャラに命を狙われるカートライトが気の毒でした。
ラストは謎の太陽系10番惑星での、あるメッセージで終わりますが、遥か西の方で起きている戦争を考えると、現代では受け入れられない考えですね。ある意味、時代を反映した考え方だなと思いました。