小尾芙佐のレビュー一覧
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評判通りの素晴らしい作品。読んで良かった。
知能が上がるにつれて、教授らが持つ無意識の偏見や、パン屋の人々からの扱いなど、チャーリーが今まで気づかなかった部分に気づいてしまった時は、読んでいる私までも苦しくて、先を読むのを少し躊躇してしまった。
チャーリーはなぜ賢くなりたかったのか。根底にあるのは、普通になって、母親に愛されたいがあったように思えた。それ自体は、天才でも白痴でも普通の人でも、当たり前に持っている欲望だ。
だが不幸にも、実験が成功しすぎたのか、彼は結局普通にはなれなかった。そのため、彼に純粋な愛情を注ぐ相手がおらず、そこにもチャーリーの孤独を感じた。アリスからチャーリーへの情は -
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読むたびに問いを投げかけてくる作品で、定期的に読み直している。
知能が急激に向上していく主人公の内面は、最初は無邪気な希望に満ちているが、次第に周囲との関係や自分自身の変化に苦しんでいく。その過程が日記形式で描かれ、喜びも孤独も、悲しみも辛さも嬉しさも、すぐそばにいるように感じられ、感情移入せずにはいられなかった。
印象的なのは、知性が高まるほど人の残酷さをより深く理解してしまう点。
賢くなることが必ずしも幸福につながるわけではないという事実は、読むたびに胸に重くのしかかる。
また、アルジャーノンの存在は主人公の運命を映し出す鏡のようで、チャーリー自身がいずれ直面する現実をより残酷に、そして -
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人間の根本的に大切なことについて改めて実感させられた。
チャーリーは手術により急激に知識を得て、天才になるが、そうなるにつれて、本来持っていた素直さや誠実さ、素敵な笑顔を失っていき、傲慢になり、孤独を感じるようになる。たしかに知識があると視野が広がるが、それよりも優しさや誠実さ、笑顔といったものがとても大切だと気付かされた。
チャーリーは最終的に元の状態に戻ることになるのだが、その時に天才のときには失われかけていたチャーリー自身の持つ人としての魅力が再び現れて、優しさにあふれるチャーリーの姿にすごく泣きそうになった。
すごく感情の揺さぶられる衝撃を受けた本だった。
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ネタバレ
チャーリーがあの刹那的に生きてたときに、最初で最後、アリスと交わったときに、彼にとっての本当の幸せに気づいたのだろうと思う。
なんだか皮肉なものだよな。人が輝くのも星が輝くのも、いや命が輝く瞬間というのはいつも、命が消えゆく瞬間でもあるのかもしれない。
儚いとはこういう事なのだろう。
遺された人や想いは生き続けるし、世界も周り続ける。
のちの解説でその人は人生で3度アルジャーノンに花束をを読んだそうだが、3回目の涙はチャーリーが救われたという涙であったそう。あれを救いと捉えるのは僕にはまだ少し難しい。今の僕には救いとは言えそうにない。言語化できない。救いだけでは言い表せない最後のような気 -
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ネタバレタイトルに惹かれて読んでみた。
原題の"THE SPEED OF DARK"を『くらやみの速さをどれくらい』と訳したセンスが素晴らしい。
ルウ目線の文章と健常者目線の文章がはっきりと違いが分かるように訳されていてすごい。文が破綻している訳でもないのに、これは"普通"の人が書いたものではないなと分かる。
書いていることの中身が違うというのはもちろんあるが、前後の文のつながりが薄かったり、短文が多かったりと"普通"の人と文章構成が全然違って、とても読みづらかった。
読みづらかったがこういう風に考えている人も社会にはいるんだろうなあとい -
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人間は考える葦である。
本当にそうなのかもしれない。
人間はこんな素晴らしい作品をかけるのですね。
そりゃ空くらい飛べるよな~。
悪を可能にさせるのは知能である
とはよく言ったもので、
無知は決して罪などではなく、
紛うことなき純粋さなのだろう。
それは善悪の次元に存在しない。
では、人の知能を人工的にあげることは罪なのだろうか。
物語中でチャーリーが、白痴が禁忌を犯し、
普通を知ることは罪であるはずがない。
と言う意のことを言っていて、
私は自分の至らなさに泣きそうになった。
彼は産まれた時から彼以外の何者でもなく、
ひとりの人間であり、知る権利があるのだ。
その方法をさずけること、それ -
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ネタバレなぜ一人きりでこの惑星へ送られてきたのか、と言う問いに対してゲンリーの言った台詞、「一人ではあなた方の世界を変えることはできない。しかしぼくはあなた方の世界によって変えられることができる。」が印象に残った。
あくまで同盟は各々に主体的に決めてもらうと言うスタンスだったはずのゲンリーが、エストラーベンの愛国心を超えた人類への忠誠心に突き動かされ、彼に報いるため、星船を呼ぶ。さらにその過程で同郷のはずの仲間よりも、ゲセン人に愛着を持つようになる。
文化も価値観も身体構造すら異なる相手と、理解しきれぬまま友情が芽生え、その地に愛着がわき、変わってしまう様子が面白かった。
帰属意識や性、性のない社会で -
Posted by ブクログ
両性具有の人類が出てくるSF小説、としか覚えていなかったこの作品を、30年以上ぶりに手に取った。大学のゼミで取り上げられた作品で、怠惰な学生だった私は日本語訳の文庫本を読んだのだった…。
宇宙に点在する星々を訪ねてくるエクーメンの使節の想い、その行動を可能にするエクーメンという組織の大きさと盤石さに、物語を読み進めるうちに圧倒される。
空を飛べるなどと考えたこともない国の住人が、異星人の使節に自らの命を賭して行動を共にするにはどれほどの頭脳と勇気が必要だろう?
作者は著名であるものの、2018年に亡くなっていたことを知らなかった。
長く読まれる作品にはそれだけの理由がある。
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