小尾芙佐のレビュー一覧
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進駸堂書店×早川書房コラボカバー作品。
自閉症者枠で高度な仕事についているルゥが新たな治療の被験者となることを選ぶまでの彼の世界があまりにも豊かで瑞々しく、深く、そして美しすぎて、ずっとその世界にいて欲しいと思ってしまう。けどそれはあくまで部外者の気持ち。
ノーマルなルゥとして新しい人生を歩き始めた彼の、その人生は「元ルゥ」の人生よりも先にある暗闇だったのか、あるいは逆か。
「自閉症」という病気だから読者の気持ちは大きくぶれる。別の病気だったらだれもが生まれ変わった彼を祝福するだろう。
本当は、どっちが幸せなのか。それは誰が決めるのか。 -
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まさに高慢と偏見で。
典型的少女漫画みたいな流れで、現代にもパターンとしてはよくある。
現代少女漫画を読めば、またこのパターンかよ!という。
だけど、とても面白かった。
いかに金持ちと結婚できるか?二十歳過ぎるともう遅いという感覚。
キャラクターがはっきりしていて、面白い。すれ違いでイライラするところとか意外性からときめくのとかも王道だけど、だいたい結末はわかってるのに、先はどうなるのか早く知りたくなる。
ちょっと気になったのが、ダーシーなど男性で「〜ですもの」という訳。ちょっと女性っぽいので、「〜ですから」とかそういう感じにしたらいいのになと思った。
イギリスBBCドラマ、コリン・ファ -
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自閉症の治療が開発されたとき、彼らは何を決断するのか。結末はとても意外だったし、主人公ルゥを応援するような気持ちで読んでいた私には切ないような気がしたが、彼の生活を体感してきたかのような物語のあとではルゥの決断以外にあり得ないような気もする。それが彼にとって幸せだったのか、読み終わってからも分からない。
SF小説のジャンルになっているが、自閉症の(となっているけどアスペルガーと思われる)ルゥの一人称で書かれる物語は、彼らが世界をどう知覚しているのかが肌で感じられてとてもリアル。
ルゥがノーマル(正常)な人に抱く感情はとても共感するものがあって、読めば読むほど、なにが自閉的で、なにがノーマルな -
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ネタバレ子供から大人になる。11歳のころに出来ていたことができなくなる。そして、忘却。
肉体的なものでもなく知識的なことでもない。精神的なこと、想像力。「不安と欲望」。世間の目の意識と世間の目を気にしないこと。
小学校あたりのことを思い出してしまったが、仲の良かった友達はいまなにをしているのか。知る手段はある。が、。
離れていく感覚。精神的に。小学校から中学校にかけて。仮初な感覚がロックンロールに通じる。
今度は居場所を提供する側になる。もう、あのような体験や感覚を共有できることは二度とないのだろう。時間的なリミットがある。ただ、これは子供の時には絶対にわからない。
これが悪いことではなく、当 -
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おっさん刑事&ロボット刑事の相棒ものSFミステリー第2弾が新しい訳で登場だ!う~ん惜しい…現代の作品だったら絶対同人誌が出るのに…。アシモフ先生は時代を先取りしすぎたんだ。
とにかくロボットのダニールがエロい。とてもエロい。正直言って、ヒロインが全裸で登場するシーンより、ダニールが「ロボットであることを証明しろ」と命令されて無表情で服をはだけるシーンの方が断然エロいと思う。そこには禁欲的なエロスがある。
ミステリーとしては極めて型破りな手法がとられているため、ミステリーとしてこれはどうなんだ!?と思ってしまう部分もあるが、それも含めて楽しんだもの勝ちだ。
古い訳のものを手元に置いていないので今 -
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もしも自閉症の完全な治療が可能になったら。
最先端の臨床試験と精神遅滞の主人公をとりまく世界を描いた小説、と聞いたら多くの人はダニエル・キイスの名作『アルジャーノンに花束を』を連想することと思います。
「あんたは、健常者の友だちといつもいっしょにいる」エミー
「隠喩だと言うなら―鯨は砂漠のシンボルとも言えるわね」ルシア
エリザベス・ムーンの近未来小説『くらやみの速さはどれくらい』は、自閉症である主人公が同じく自閉症の仲間たちと彼らが言うところの健常者(ノーマル)との生活の狭間で突如新たな治療法の実験台となることを薦められる物語。
「むかしむかし、機械は二たす二もできなかった -
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21世紀版『アルジャーノンに花束を』なんて嘘である。
作者の狙いは自閉症者の視点から人間社会を描くことのようだからである。
近未来、自閉症が幼少期の治療により治癒する時代。ルーはその治療の恩恵に浴せなかった世代で、コミュニケーション技術のトレーニングにより、社会参加はできているものの、「正常者」とのコミュニケーションに困難を抱えている。会社の上司が替わり、自閉症の障害を改善する実験的な治療を強要されそうになる。というのがストーリーだが、ルーを取り巻く人間たちがルーの一人称で語られるのが本書の味わい。
自閉症者は言葉に騙されない。字義的にしか捉えられない傾向があるため、正常者たちの用いる -
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はらはらしながらページを捲った本であった。
学生時代に読んでおけば良かったと思う良本。
『嵐が丘』よりもこちらの本の方がすき。
『赤毛のアン』と比較研究されてもいるようで、アンファンとしても興味深い。
大円団の結末で本当にほっとした。
セントジョンと結婚してしまったら、暗い気持ちのまま本を閉じていたであろう。
セントジョンは本文中でジェインが述べていたとおり、ジェインを道具だと思っている。
よくもまあジェインの気持ちを聞かず、あなたは私と結婚すべきなのですと言ったことを言えるものである。最近恋愛結婚した自分としては、読み流せなかった。それとも当時のイギリスでは男性の言ったことは絶対だったのだろ -
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よかった‼︎
2011年『ジェーン・エア』が俳優、ストーリー共にとても良かったので、その流れで原作を読む。
映画はうまく要所をまとめていたと思う。いくらか省かれていることや、より登場人物の思いや考えを知るには原作を読む方が良い。
ジェインのような幼少期の境遇で、誰かを愛して愛されることはどれほど幸せなことか。
ジェインは美人ではない。でも、信念があり、自分はどうすべきかという決定を人に左右されずに決められる。
でも、ちゃんと女性らしさもある。人に何かをしてもらうだけのバカ女じゃない。
こういう人間像に惹かれるからこの作品も好きなんだと思う。
(私はボヴァリー夫人みたいなのは苦手)
訳者 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ安楽椅子探偵もの。
『ミミズクとオリーブ』の妻や、ミズ=マープルなど家庭や小さな世界で生きている女性が、「人の営みや心の動きは変わらない」とばかりにお料理や編み物をしながら、謎を解くスタイルは同じだが、基本上品な科のご婦人たちと比べると、この『ママ』は一味違う。
ブロンクスに住むユダヤ系の未亡人は、がみがみうるさいし、大学出の嫁の鼻をへしおるチャンスを常に見逃さない、ママっていうよりおふくろ、いや『オカン』だ。大阪の下町に住んでいる豹柄着ている系の。
息子がママの様子うかがいに週末一緒にとるディナーの席で、警察官である彼が冤罪を産みかけているのを少ない質問で阻止するのである。
洗練されていない -
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