小尾芙佐のレビュー一覧
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自閉症であるルウは症状と付き合いつつ、仕事に趣味と自分なりに充実した日々を過ごしていた。しかしある日ルウは、彼の職場の上司から、自閉症治療の実験台になることを要求される。
語り手となるのは自閉症患者のルウ。この語りが非常に繊細です。普段自分たちが会話している中では考えもしていないようなことがルウの語りでは描かれます。そこには自閉症というテーマとしっかりと向き合った著者の努力が表れていると思います。
そしてフェンシング場での人間関係や社内政治、ルウに対する何者かからの嫌がらせなど、そうした出来事を通し、ルウは自閉症の自分と”ノーマル”の人たちの違いは何なのか。
また治療を受け自閉症で -
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回想、そして現代ともにITとの最終対決に向かう4巻。
冗長には感じなかったものの、それでもやはりどこかで長すぎるだろう、という印象のあった『IT』でしたが、読み終えてみるとその長さがあったからラストの涙しそうな感覚が味わえたのかとも思えます。
モダンホラーの帝王と呼ばれるだけあって、ITの変身するさまざまなモンスターの描写にはかなりの迫力があり、それをただ子供たちが倒すという回想部分だけのストーリーでも、逆に大人がITを倒すという現代のパートだけのストーリーでも十分面白いとは思いました。ただそれだけではキングの代表作と呼ばれるまでの作品にはならなかったと思います。
この二つの時代 -
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ディックの諸作品はどれも印象的なタイトルだ。「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」や「ユービック」など、どれもインパクトのあるタイトル。そんな中で「火星のタイムスリップ」というある意味ベタなタイトルのこの作品。黒の背景にスタイリッシュなデザインを施した新装版ラインナップにもなかなか入ってこず、どうなのかと思ってました。
が、陳腐なタイトルにだまされてはいけない。傑作!
なんだ、この不安でいっぱいの居心地の悪さにもかかわらず、どうしても読んでしまうこの感覚。まるで本にとり憑かれてしまうようです。
ヤク中の変なおっさんなんて思っててごめん。ディック恐るべし!
この秋はディック祭りだな。 -
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ネタバレ人類の植民が進みつつある火星。圧倒的な水不足を背景に絶大な権力を持つ水利組合の長アーニイ・コットは、火星の開発計画に伴う利権争いに出遅れ、地球の資産家達に先を越されてしまう。損失を取り返さんと憤怒に燃えるアーニイが目を付けたのは、常人と異なる時間感覚を有しているらしい自閉症の少年マンフレッドだった。マンフレッドの能力を利用して過去の改変を図るアーニイ、他者とコミュニケーションを取ることが全く出来ないマンフレッド、マンフレッドと意思疎通するための機械の開発をアーニイに命じられる技師のジャック、三者の異なる思惑が、火星の運命を思いがけぬ方向へと導いていくことになるが・・・。
うひゃー、やられた。 -
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自分が本格的にスティーヴン・キングにハマったきっかけとなった一冊。
少年時代、各々コンプレックスを抱えた「はみだしクラブ」の7人。
次々と子供が行方不明になる事件が、姿を持たない化け物「IT」の仕業であると気づいた彼らは、子供だけがもつ「信じる力」を使ってそれを撃退する。
しかし27年の月日が経ち、再び同じ怪事件が起き、彼らはあの日の約束のもと、一同に会するが・・・。
キングの作品のほとんどに言えることだけど、長いです。
クッソ長いです。
でも、本当に面白いから読み始めるとどんどん読み進めてしまって、必ず、寝不足になる。
「友情×ホラー×子供の夢」。そんな感じ。 -
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夜更かししてまで一気に読んでしまった。後半のわくわく感はすごい。
それぞれこれまでの自分の自意識や浅はかさを恥じるエリザベスとダーシーが、向き直って惹かれあい、結びついていく過程の面白さ!
そうよね、こうでなくちゃ!という気持ちにさせる大団円のラストもよい。
こうなることはわかっているけれども、ハッピーエンドであるべきだ。
たしかに上流階級の話で、そこには労働のつらさや生活への心配はないからこその浮世離れした感じはあるけれど、フィクション、ロマンスとして楽しむにはこれでいい。当時の社会では階級は大事なことだったのだろうけれど。
登場人物の美点や欠点、気持ちの移り変わり、そして恋愛感情はどの時 -
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ネタバレThird Girlとは、部屋を何人かで借りるときに、
最初に借りた契約人が、2人で協同で利用していて、
もう一人、一緒に分担するときに、第三の女と呼ぶ。
部屋数が多ければ、第四、第五もあるらしい。
周囲から、精神的に追い詰められた人の、心理的な葛藤を表している。
自分で、自分が何をしたかをはっきりとは覚えていない。
そんな人が、犯罪に巻き込まれたときに、犯人であることを押し付けられてしまう。
ポアロは、冷静に事態を調べる。
自分だけでなく、警察や調査担当、探偵小説家にまで調査をお願いする。
今回は、調査だけでなく、精神科医による支援もある。
結末は、ある意味でハッピ -
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「本の雑誌」で推薦されていました。
力のこもった作品です。
引っ越してきた一家に、つぎつぎに問題が降りかかります。
夫、妻、三人の子供…そして新しく生まれてきた赤ちゃん。
家族それぞれが直面する問題には、ありがちなことだけでなく~日常に潜む悪と狂気が見え隠れします。
家族同士が愛し合っていても起こる~葛藤や誤解もあり。
細かい描写の積み重ねには、実生活を一部反映したリアリティがあります。
人はいかにして問題に立ち向かうべきか?
勇気を持って大きな問題にも取り組み、素晴らしい作品と言ってもいい。
かなり重い内容だけど、充実しています。
こんな風に解決していけるんだね!という部分と。
他にどうすれ -
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すーっごくおもしろかった。
タイトルからただのミステリーだと思ってよみはじめたんだけど、実のところ、夫婦の、家族の物語でした。
あと、主人公がフリーのプログラマーで。
1983年ころのコンピューター業界を舞台にした話。アタリショックのころ。
今だったらiPhoneアプリの世界になるんだろうなー、みたいな感じ。
コモドール64、彼の職場でのトラブル、契約をめぐるごたごたなんかは、この業界の人にとってはいろいろ楽しめます。
こんなセリフも。
上P18
もっとひどいことになっていたかもしれないのだ。たとえばアップルでプログラムの仕事にありつくとか。
下p22
「あなたは間違っています、ディッキー