小尾芙佐のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
毎週金曜の夜、刑事のデイビッドは妻を連れ、ブロンクスの実家へママを訪れる。
安楽椅子探偵の傑作らしいと聞いて初読み。外国の作家について、ミステリーの歴史については全く詳しくないので初対面の作家だった。なるほど確かに安楽椅子探偵の最たるものって感じ。刑事の息子の話を聞いて二、三質問するだけで答えを導く“ママ”。とにかく昔話だったり近所の噂話だったり余計な話も多いけど、余分な話はしないママ。皮肉屋で、料理が上手くて、口うるさいママ。短編でおなかいっぱいになる会話量に慣れるまではちょっと読みづらさもあったけど、慣れるとその会話劇の巧みさが楽しい。息子は話すのが上手すぎるし妻はちょっかいレベルがいつまでも上達しなくてちょうどいいし、ママの質問は読者に最適のヒントになる。うーんなるほど、上手い。好きなのは『ママが泣いた』と『ママと呪いのミンクのコート』かな。 -
Posted by ブクログ
ミステリの導入はその後に始まる又は既に始まっている事件をどのように捉えるかを決定付ける重要なポイントだと思っているのだけど、本作ほど実態を掴めない導入は珍しいかもしれない
ポアロを頼ってやって来た依頼人、けれど彼女が口にしたのは「自分が犯したらしい殺人について相談したい」などとちょっと要領を得ないものだし、結局依頼をしないままに帰ってしまう
これ程までに「これから事件が始まるぞ!」と思えない導入はやはり珍しく思える
ただ、ポアロは依頼人が去り際に口にした「年をとりすぎていらっしゃるから」なんて言葉に触発されて動き出すのだから、別の意味で面白さがあるが
本作の特徴的な点は先に上げた導入部も有るだろうけど、殺人事件が一向に見つからないという点も上げられるね
依頼人になる筈だったノーマが殺人について言及したのに彼女の周囲にそれらしき殺人は無い
彼女の人間関係を探ってみても殺人が起きそうな気配は彼女以外から一切感じない
夢遊病のように歩き回るノーマが夢の中で人を殺し、それがいずれ現実に起きるのではないかと誤解してしまう程に殺人の気配は希薄
もう一つの特徴は殺人事件が見つからない為にポアロが手にする情報も方向性が生まれない事だね
何処に殺人が有るか判らない。だから探すべき情報も判らない。そうしてポアロや読者に提示される情報はバラバラ過ぎて推理の役に立つものが混じっているのかすら曖昧
物語が進展するのはやはり隠された殺人が見つかってから。でも、それだってその死が何を意味しているのか全く判然としない
それだけにポアロが「サード・ガール」の意味から事件の真相に気付き、更に事件が新たな展開を迎える流れは秀逸 -
Posted by ブクログ
ネタバレ解説を少し読んでゲド戦記の作者だったこと、そして女性だったことに気づく。
本書の舞台は非常に寒く、気候が厳しい惑星“冬”であり、その舞台設定だけでも興味がそそられるが、そこに住む異星人は両性具有という特徴を持つ。
このゲセン人の特徴による社会には、著者の女性ならではの感覚が反映されており興味深く、気づかされる部分もあった。
繁殖期(?)には女性にも男性にもなりうるため、直前まで伴侶と自分「どちらが妊娠するか分からない」ことで、妊娠・出産、子育てに対する性的な差別感覚がないことや、
繁殖期以外では第二次成長期前の子供のような性的状態に戻る(= 性からくる身体の変調から解放される)という発想は、現代でも(というより現代だからこそ)考えさせられる性別に関するテーマのように思われる。 -
Posted by ブクログ
読むきっかけは、映画「ブリジットジョーンズ」が大好きで、そこに出てくるマーク・ダーシーが
高慢と偏見のダーシー氏をモデルにしていると知ったから。
終始、コリンファースのイメージで読み進めました。
読み終わって思ったのは、いつの世も男はお金、女は美貌あってのことなのかなぁと。
ダーシーはエリザベスの溌剌としたところなど内面に惹かれたことが強調されていたが、ジェインもエリザベスも美貌の持ち主。
そしてコリンズと結婚したシャーロットは?
それにしてもミセス・ベネットが恥ずかしく腹立たしい。
あの母が育てたはずなのに上の娘2人はまともな羞恥心や優しさをもっているのが不思議。
これも現代でもあることですね。
-
Posted by ブクログ
死者は墓から蘇り、生者は若返って子宮へ回帰する。そんな時間逆転現象が起こった「逆まわりの世界」が舞台。死者の再生と売却を請け負うセバスチャンは、ユーディ教の始祖ピークを掘り出したことをきっかけに、ピークをめぐる様々な派閥の抗争に巻き込まれ…
死者は蘇り、生者は子宮に帰る?なんというトンデモ設定。面白いのはこのトンデモ設定を実生活にまで落とし込んでいるところ。例えば、本来、生者は食物を食べて消化しますが、この世界では生者は食物を胃袋から皿に戻します。あるいは、子宮に帰る生者のためにあえてセックスをしたりと、なんだか因果関係がめちゃくちゃ。だけでなく、蘇った死者の売却権は発掘者に帰属したりと、この世界を前提にした社会構造も出来上がっているよう。ただ、ここまで実生活に落とし込まれると、読み進めるうちに、いろいろ矛盾を感じてしまって、破綻した設定に感じてしまうのですが、それはそれとして、強引に物語を展開する剛腕はディックならでは、といったところでしょうか。ディックだから許してしまえる気もします。 -
Posted by ブクログ
殺人を犯した“かも”しれないという依頼人の登場で始まる死体なき殺人事件。当人に自覚のない殺人事件とはー?
年寄り扱いされたことを根に持ち、オリヴァ夫人の趣旨のぼやけた会話にうんざりするポアロは人間らしく魅力的なキャラクターで、ポアロに合わせてついつい他の登場人物にも感情移入をしてしまう。始めの4/5でゆっくりと謎や設定をばら撒き、最後にパズルのピースを勢いよく当てはめていくようなストーリー展開で、ポアロと共に謎を解明したい人向け。灰色の脳細胞を持つ名探偵に圧倒されたいなら短編集?久しぶりにアガサクリスティの作品を読んだので、こんな感じの作風だったかなと少し違和感を覚えたが、どんでん返しの展開は相変わらずだ。ただ、他作品は余韻を引くような終幕を迎えたように記憶していたので、突然謎が解明してスパンッと話が終わるのには驚いた。車やエレベーターが登場するなど現代的な印象を抱かせる作品だった。「第3の女」というタイトルはあたかも殺人事件に第3の関係者がいるかのように感じさせ、ある意味読者に対するミスリードとも捉えられなくもないが、これは和訳の問題だろう。The Third Girlであれば、事件関係者を意味するのだろうが、原作はThird Girlなので、作中にオリヴァ夫人が解説するように「メインではない」というニュアンスでこの表現を使用しているのだろう。それとも敢えて定冠詞を付けないことで、二重に含みを持たせているのだろうか。ところで、ソニアの本の件は結局何だったのだか気になる。