小尾芙佐のレビュー一覧

  • サイラス・マーナー

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    孤独な守銭奴サイラスが、失った金貨と引き換えに金髪の孤児エピーと出会うことで、彼の止まっていた人生が動き出すという物語。今作の面白かった点の一つは、サイラスとゴッドフリーの対比描写である。エピーを受け入れた結果、孤独を免れ幸せな人生を送ったサイラス。一方エピーを当初受け入れなかった結果、自らの秘密に怯え、子宝に恵まれない人生を送ったゴッドフリー。このような因果応報的な展開は読んでいて爽快だった。また、実の父ゴッドフリーとの血の繋がりよりも、育ての父サイラスからの愛情の方が大切であることをエピーが告白するシーンは、爽快以上に感動的である。

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    2025年10月29日
  • アルジャーノンに花束を〔新版〕

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    ネタバレ

    ドールにゴミを食べさせて人格成形を行うスマホゲームが出たときに話題になったので読んでみた。長く続く話題作なのでと、ページを捲ってみたらびっくり。なんと読みにくい。次第に読みやすくはなるものの、あまり感情移入はできず、伝えたいことはふんわりと伝わるが、深い感銘を受けるようなものではなかった。生活している中で勝手に各々認知している人間の中の階級と、それを知らぬまま幸せに過ごしていた主人公が真実と向き合った後もやさしいまま、というようなお話だった。きっとハッピーエンド。

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    2025年12月07日
  • 五番目のサリー 下

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    ネタバレ

    サリーは、ロジャーの催眠術で人格統合されていく。
    相性のいい精神科医に出会えてよかった。
    素直に過去の自分を出すことができ、生きたいと感じるように。
    今のタイミングて読むのがきつかったので時間をおいて再読したい。

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    2025年10月03日
  • 五番目のサリー 上

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    ネタバレ

    サリーの中には、時々あらわれる4人がいる。デリー、ノラ、性的にあけすけなベラ、暴力的なジンクス。激しい頭痛が起こると別人格に変わる。ビリー・ミリガンほどではないが記憶にない自分が他人に見えていることは、どんなに恐怖か…
    下巻へ続く

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    2025年10月03日
  • 始まりの場所

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    正統派のファンタジー。こういう本に出会えるから、たまに古本屋さんをのぞきたくなってしまうのよね。
    ハヤカワ文庫FTをせっせと読んでいた若い頃を思い出すなあ。

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    2025年08月22日
  • 赦しへの四つの道

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    ネタバレ

    赦しのタイトルの通り、相互理解と赦しが主題になっている。前提としてこの作品は「ハイニッシュサイクル」、ル・グィンの想像した世界観を前提にしているらしい。
    かつて一大勢力を誇りありとあらゆる宇宙に植民を行った惑星ハイン。地球もこのハイン人たちの植民の結果起こった文明のひとつである。ハイン文明は一度滅亡し、もはやハイン人たちが植民したという事実すらそれぞれの星で忘れ去られるほどの長い月日が経った。その後再興したハイン文明が再度かつての植民惑星を発見し、星間戦争も経てやがては「宇宙連合エクーメン」が成立、再度様々な星に使節を送って連合の成立を試みる……という世界観。
    この作品集で主な舞台になっている

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    2025年08月13日
  • 闇の左手

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    ネタバレ

     両性具有の人類とはどんなものだろう。そして、彼らの統治する社会はどんな物になるだろう?性別という概念がそもそも存在しない世界、混ざりあって溶けている世界の常識や世界の仕組みは?本作は『冬』と呼ばれる閉ざされた惑星ゲセンで、両性具有の人類が作り上げた世界の様相と、その惑星の中で巻き起こる国家間の陰謀を描いている。
     こう書くと随分壮大な話に見える。実際この物語は壮大な世界観を持ち、『両性具有の人類による社会』を丹念な筆致で描いているのだが、おそらく本作の本旨はその設定の重厚さにあるのではない。その両性具有の社会にやってきた私たちと同じく性別のある人類――惑星連合エクーメンの使節、ゲンリー・アイ

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    2025年08月12日
  • 第三の女

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    ポアロもの。

    ある朝、ポアロの元に「自分が犯したらしい殺人について相談したい」と、ノーマという若い娘が訪ねてきます。
    ですが、ポアロを見た彼女は「(ポアロが)お年寄りすぎるから・・」と、結局何も告げないまま去ってしまい・・。

    朝食を邪魔された挙句に「年を取り過ぎている」(←言わば、“オジイは無用!”ってこと?)と、言われてしまい、しょっぱなから大ダメージのポアロがお気の毒。
    とはいえ、“腹は立つけど、殺人があったのか気になる”ってことで、オリヴァ夫人全面協力のもと、捜査を開始することに・・。

    さて、「殺人しちゃったかも・・?」と言っているノーマなんですが、話を聞いても支離滅裂だしあまりの

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    2025年08月06日
  • 闇の左手

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    異世界というか、異星におけるリアリティを追求した作品。背景設定は作り込まれているように感じたが、今となっては小説だけでなく、漫画やゲームでもこのぐらいは普通な気もした。
    雪原の逃避行は圧巻だが、横断後の結末にかけては陳腐な印象もあった。

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    2025年08月04日
  • ママは何でも知っている

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    ネタバレ

    なるほどこれが安楽椅子探偵物といわれるものか。謎解きにはあんまり興味がなかったので、主人公は随分マザコンなんだなぁとかアメリカにも嫁姑問題はあるんだなぁとかいうことが気になった笑

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    2025年08月03日
  • IT(4)

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    ネタバレ

    ここまでは面白かったが最終巻でよくわからなくなってしまった。SF的な展開だったか。
    人物描写は素晴らしい。でも肝心のITという存在にあまり納得できなかった。何もかも操作できる存在が、素手の人間に負けるイメージがわかない。
    それとベヴァリーが全員と性行為をする必要がないように思えた。いくら友だちとして全員好きとはいえ、11歳の少女に不自然な役割をさせているように思える。手のひらの血の絆だけでも十分ではないか。
    これだけ死闘を繰り広げても、最後には何があったかも忘れて、仲間のことすら思い出せなくなるのがとても悲しかった。

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    2025年07月25日
  • IT(3)

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    ネタバレ

    エディの骨折の章を読むのが精神的につらかった。エディと母親との関係が最も深刻に感じる。自分の居場所を息子に求め、そのためなら息子の自由を奪うことも厭わない姿は醜悪だった。彼女がこうなった理由は夫を失ったことがきっかけだった。
    ヘンリーは父親の影響で差別心と暴力が絡み合って暴走し、なぜ父親がこういう人物なのかといえば戦争に行ってから変わったのだという。
    こういった人物描写が素晴らしい。何を考えているか、どんな過去があるのか、ひとりひとり掘り下げていくことで物語に厚みが増していく。
    クラブハウスで儀式を行った際に見たITは意外だったが、最終巻で更に明らかになるのだろうか。ほかの登場人物像は詳しく明

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    2025年07月25日
  • IT(2)

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    ネタバレ

    第2巻、どんどん面白くなってきた。
    ついに、やっと仲間たちが再会するシーンは感慨深かった。ここに集結するまで、いい大人であるみんなが現在どんな生活をしているかを知った上で、全員の子ども時代を振り返っている。そのために自分も仲間の一員になったかのような感覚で、まるで一緒に立ち向かっているように感じられる。
    感情移入や共感とは違っていて、これは共有かもしれない。その土地や時代を共有した者たちにだけわかる何かを、無関係の読者である私がなぜか感じている。こんな小説は初めてだ。
    少年少女の思い出には懐かしく楽しいだけではない、紛れもない恐怖も混ざっているが、みんなが親友になった連帯感の中で聞く体験談はい

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    2025年07月12日
  • ロカノンの世界

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    ネタバレ

    ル・グウィンが世に問うた最初の作品だそうな。
    SFがFTに溶けてくカンジ。これまで読んできたル・グウィン作品の中では『ゲド戦記』の風合いが最も濃い。つまり、好みの部類ではある。

    ハイニッシュ・ユニバースのシリーズは意図的に避けてきた。ル・グウィンを知った頃はFTにハマっており、その頃SFを意図的に避けていたのだが、その延長線上にあたるだけで他意はない。先立っては『銀河英雄伝説』のシリーズも通読していたので、それ系が苦手とかキライとかいうわけではないと思うが、なんで避けていたのかはよく覚えていない。以後、機会を失い続けてきた。

    SFがFTに溶けてスペオペになった。クライマックスが超展開。ル・

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    2025年07月07日
  • IT(1)

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    ネタバレ

    子どものみずみずしい感性が懐かしく感じられて良かった。友だちと新しいことを考えるときの楽しみや、秘密基地に集まるときのワクワク、親にすべてを話しているわけではなくて、子どもには子どもの世界がある。
    そんな子どもたちが良い子にしていても関係なく、次々に餌食になっている事態は本物の恐怖をつれてくる。ピエロの正体はなんなのか、27年前に何があったのか、大人になった少年少女たちはこれからどうするのか……それを楽しみにしながらも今はまだ少年たちの冒険を読んでいたいなと思う。

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    2025年07月01日
  • 闇の左手

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    ネタバレ

    "光は暗闇の左手(ゆんで)
    暗闇は光の右手(めて)。" p.282

    仰ぎ見るばかりだった偉大な先達に親しみを覚えたのは、二度目か三度目かの『シルマリルの物語』再読の最中だった。トールキン教授の稚気ともいうべき設定を見出して、あの偉大なる世界記述者にも厨二病があった!という喜びを覚えたのである。こちらのレベルへひきずりおろした昏い喜びではない。そういうこともあるのかという、自然現象、不変の真理の発見に近いかもしれない。
    すなわち、厨二病は誰にでもある。違いは、公言するかしないかだけ。
    厨二病を押し通して面白ければいいが、そういうことは稀であろう。そのようなものは、物語として

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    2025年06月17日
  • 闇の左手

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    ビブリオバトルでチャンプ本になり、読んでみたい小説でした。
    異星における壮大な世界観。
    映像化すれば、きっと見に行く。
    他の作品も気になるので、いずれ読んでみようと思ってます。

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    2025年05月22日
  • ママは何でも知っている

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    面白いんだけど、謎に挑戦しようとすると難しいかもしれない。結構昔の本で、当時の常識や風俗を知っていないと解けない謎がいくつかある。(当時のニューヨークの様子やユダヤ教の習慣など)1950年台のアメリカ文化に詳しい人なら解けるかも。

    純粋な読み物として楽しむことをおすすめします!

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    2025年05月14日
  • 夜中に犬に起こった奇妙な事件

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    なかなか印象深い流れ、最後までどうなるかわからない
    いい意味でリアリティがあり、終わり方tも良かった

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    2025年04月17日
  • 火星のタイム・スリップ

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    再読。といっても前に読んだのはたぶん20年以上前で、ほぼ初読状態。
    ディックらしい作品の一つ。ぐにゃぐにゃと歪んだ現実を五感すべてで感じられるかのように読ませられる書きぶり。時間の狂い方すら歪んでる進行。モラルなんか無いが人との繋がりは持たずにいられない登場人物たち。読むのに相当の精神力が必要で、アルコールかクスリか何かの力を借りたくなる、でもページを捲らずにはいられない、そんな傑作。
    でも、きっと次は読まないかなあ。ラストの読後感が気持ちよくなさすぎる。
    あと、ハインラインの『明日を超えて』と同様、今なら出版できないと思われる表現が頻発するので、気分を害するかも。

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    2025年03月30日