小尾芙佐のレビュー一覧
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アーシュラ・K・ル=グインの言の葉の樹を読みました。闇の左手と同じ世界設定の中で語られる、原題はTELLING(語り)というSF物語でした。アカと呼ばれる世界では伝統的な文化を捨て去り、継承者を迫害し本や記録を破壊する圧政がしかれていた。そこに地球から派遣された文化人類学者の女性サティは地方にはまだその伝統を継承している人たちが残っているはずと考えて、風前の灯火である伝統的な文化を守ろうとするのだが...ちなみにサティはインドの女神でシヴァの妃です。これも、この物語の隠し味になっています。この物語を読みながら、つらつら考えたのは、文化というのはその担い手がその文化の中で生活していくからこその文化であり、絶滅した動物の剥製のようなものは文化ではないということでした。例えば方言なども一つの文化ですが、その言葉を使って生活している人たちがいるからこその文化なのであって、その基盤が壊れてしまえば後は衰退するだけだと思います。そして、いったん壊れてしまった文化は元に戻すことはできないんだろうなあ、ということです。ヨーロッパの人たちがネイティブアメリカンや南米の文明を破壊してしまった後では、その文化を復元することはもうできないのだから。
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本書の主人公で20歳に満たない「ジェイン・エア」は、『自分の顔の筋肉の動きを抑えることにも必死だった』や、『ある衝動が、ある力が私を振り向かせた』のような、恋愛に於いて瑞々しさを見せる微笑ましさがありながら、富や階級、慣習などには決して物怖じせず、悩み苦しみながらも自分の道をひた進む生き方を貫く姿には、きっと当時の本国の女性たちに大きな希望と勇気を与えたのだろうと思う。
ただ、下巻に関しては途中で読むペースが全く上がらなくなってしまい、その理由を詳しく書くとネタばれに繋がってしまうため、書き方が難しいのだが、私にはやや意外で冗長な展開があったことと、ある人物の人間性の見えづらさと宗教の関わり具合がいまいち理解できなかったことがあり、それらは会話の場面を多用することにより互いの人間性を更に深く考察する、本書の特徴と噛み合っていないのではないかと感じてしまったからで、作品全体として見ると『嵐が丘』の方が好きな私は、つくづくダメ人間に胸を打たれ共感を寄せてしまうんだなということを、これでもかと痛感させてくれた。 -
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ネタバレ「不朽の名作!」と言われる程の感動はしなかった。
読み終わった後の何とも言えない感情がもどかしい。あっけなく終わった印象。
家族との再会シーンが印象的。
父親はチャーリィをチャーリィだと認識できなかった。きっと父親にとって息子の知能などどうでもよくて、ただ息子を愛していたんだろうなと思う。
妹はずっと、兄の知能が上がることを望んでいた。だからこそ、再会した時に快く出迎えた。
母親は再会を喜び、そして昔のチャーリィを重ねてヒステリーを起こす。息子をそのままに愛してやりたい。でも、知能のある子だったらどんなによかっただろう。
科学者たちに、そしてアリスに。チャーリィは利用されたのか、それとも愛されたのか。最後まで、彼らの目にチャーリィは「人間」として写っていなかったように見えた。
チャーリィが論文を完成させる直前に立てた問い、「どうしてここまで孤独なのか」。
これに答えが出なかったことが、知能と人情のベクトルの差を表していて一番好きなポイントかもしれない。
アルジャーノンの死がさらっと書かれたのは、世間がアルジャーノンを実験対象としてしか見ていないからだろうなと思う。 -
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安楽椅子探偵もの。
実は以前に一度チャレンジしたけど途中で断念した作品。
あれから約2年。有栖川さんの火村シリーズで安楽椅子探偵の面白さを知って再チャレンジ。
ママは刑事である息子から事件の話を聞いているだけ。脳内だけで歪みや矛盾を完璧に突き止めて真相に辿り着く。
「なぜそこ?」という思いもよらない質問をするのに、それがちゃんと真相につながっていくから面白い。
これをママは家族との食事を楽しみ、嫁とのバトルまで交えながら、サラッとやってしまうんだからすごい。
それにしても嫁姑バトルがバチバチ。
ママも強いけど、嫁も言われっぱなしではない。「でもそれはおかしくないですか?」とママに突っ込めるのは嫁だけ。息子はママと嫁の板挟み。
息子が話を持ち込み、ママが推理し、嫁が横からツッコミを入れる。
よく考えたらこの三人はなかなかいいバランスなのかもしれない。
心理描写が好きなので、ロジック中心の謎解きはやっぱり私の好みとは違う。
でもママと息子と嫁のやり取りに人間味を感じられて、面白さがわからなかった2年前と比べると、今回は自分なりに楽しめた。
表紙はユーモアがあってかわいくて好き。 -
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日本で映像化されたドラマは2作とも拝聴していたので内容自体は新鮮味もなくある程度予測がついたが原作は一度読んでみたかったので読破できて良かった。
執筆当時の障害者は偏見と差別に塗れていて読んでいて苦しくなる部分があったが人間の悩みの根底には親子関係が根強く影響していることが分かった。
母親への愛情を得るために危険な手術まで受けて知能を得たいと願うチャーリーの直向きさには感動した。知能を得たことにより親しみや愛着というものが失われ孤独になっていく様が自分のように感じた。自分の不遇をないものにねだりするのではなくあるものを生かして生きていくしかない思える作品。