千早茜のレビュー一覧
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“共犯者にしたかったの あなたを_”
千早茜さんの耽美な世界
今宵も堪能いたしました♡
むせ返るような“女”の匂いが色濃く漂い
哀しき過去を背負った女と
彼女に囚われた男たちの
妖しくも美しい短編が描かれている
それはまるで…妖しくもその美しさに魅了され
あえて囚われることを望んだ蝶のようでもあり…
深緑の蔦(つた)の中に映える真紅に心奪われ
その蔦に絡めとられたい…と思わせるような
耽美な世界観だった
ふたつの物語が繋がったとき
隠された真実が明らかになる
幻想的で不穏な空気が常に流れているのに
不思議とこの世界にとどまっていたい…
ああ…好き…… 抗えな -
Posted by ブクログ
ネタバレ羽野のことをとても淋しい人間だと思う
けど、それはわたしが違うタイプだからで、同じ人生を送っていないから 幼少期の体験は良くも悪くも影響を与えすぎる
彼のように人との関わりを避けて傷つけ傷つけられることから避けていたらきっと楽なのだと思う 過不足のない状態 でもそれは本当に充実していると言えるのだろうか 心は、その底では?ずっとジュースを差し出す誰かを求めているように思えた
「でも、あの子は結婚に向いていると思うわ。自分を殺すことを愛や喜びと思えるタイプだから」
うすうすそうだと分かっていながらも認めたくなかったところを刺された気がする -
Posted by ブクログ
薄い微笑みを誰かに見せたくなる気持ちが分かるというか、人間はどんな場所に辿り着いても、悲しみや孤独は消えないのだろうかという、一種の諦観めいたものを抱えながらも誰かを求めたくなる、そんな矛盾した存在に愛しさと苛立ちがない交ぜになることくらい分かっていたのにね、何なんだろう、このもどかしさは。
物語があるようで無いような心境を抱いたのは、その登場人物のことをどうこう考えるのではなく、そこから自分の人生と重なるものを抜き出して、自分とどう向き合うのかを教えてくれるようでもあり、あくまで他人じゃないのよということを強く実感させられたのは、物語に登場する『ファム・ファタール』という言葉も同様であ -
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「透明な夜の香り」が好きだった千早茜さん。
文庫新刊が発売されたので手に取った。
親の都合で東京から瀬戸内の小島で暮らす祖父母の家に預けられた葉。閉鎖的で男尊女卑の考えが根強く残る島で出会ったのは祖父と暮らす真以。
2人の少女時代から大人になるまでの物語。
第一部「海」では2人の少女時代、第二部「陸」(おか)では2人の別れから20年後の話が書かれている。他作品でも書かれているが、島ってどうしてこんなに生きにくい場所なんだろうか。
自分のプライバシーまで島民全員に知られるなんて恐ろしすぎる。
自分ではどうしようもない家族のことまでネタにされ蔑まれるのは辛い。
血縁からは逃げたくても逃げられな -
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誰もが知るおとぎ話をモチーフにした7つの現代物語。
「迷子のきまり」はヘンゼルとグレーテルを下敷きにする。
おとぎ話は残酷なものも多かった。
だいぶ前に、本当は残酷だったおとぎ話、のような書籍が流行ったことがあった。
それを思い出させる、なんだか嫌な感じのする物語だった。
私はとっくの昔に大人になって、世界は綺麗事だけでは成り立ってはいないことも、
汚くて卑しくて目を背けたいことが多いことも知っている。
だから、そのうちの一つ、児童買春があることもわかっている。
だけど、小さな命を産んで育てる身としては到底許し難いし、理解もしたくない。
もし我が子が被害者になったら、私は自身の自由も立場も、 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ好きな作家さんの短編集。短編集は物語の世界に入りにくくて元々あまり得意ではないんだけど、人形がテーマになっているものが多くて気になって読んだ。
個人的に印象に残ったのは、時計職人が戦争で大切な人を亡くし、それから人型の時計(だけど人を殺す)を作るという『ロゼット』、幼い頃に本を通じて仲良くなった男女がすれ違いその思い出で今を生きる『モンデンキント』かなぁ。
他にも記憶を食べる『スヴニール』とか世界観が気になる『ビースト』も良かった。
いろいろな世界、時代で描かれている作品で、どれかは響く作品があるのは短編集の良いところ。逆に、読みにくい作品があるのも事実。面白いんだけど、どういうことだったん -
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千早さんの西洋童話の現代的な新解釈により、童話の内容を身近な出来事として自身の想像の範疇に置き換えることができ、童話の「裏の意味」を考えさせられた。あとがきで、千早さんは「西洋童話にはうまく馴染めなかった」と記されているが、私も小さい頃、童話の世界観に対して心躍らせられながらも若干の恐ろしさを感じていたような記憶があり、なんとなく共感できる部分があった。今振り返ってみると、それは、キラキラしたベールを纏う「教訓性」や「勧善懲悪」への気づきや違和感のような感情だったのかもしれないと思った。本作は、その辺りをうまく掬い取っており、人間のドロドロとした恐ろしさ、醜さ、それらの背景となる社会問題がより
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高村さんのお料理が終始美味しそうで、私もこんなふうにお料理を振る舞えるようになりたいな〜と思った。
最後、高村さんが関係を潔く断ち切って、伊東くんと華がもう一度やり直していくが、後味が良かった。自分のやりたいこと、ほしいものに向き合って進んでいってほしい。
以下、印象に残ったフレーズ。
風景を描く言葉の美しさがすごいと思った。
普段自身も目にするような光景、そのすてきさが言葉にしっかり込められていて、あの風景はこんな言葉で表現できるのか、と思った。
「選べる自由って一番を見失うよね」
「見あげると、桜が咲いていた。音もなく降ってくる。枝先にぽんぽんと咲く白い塊はホイップクリームのようで、やわ