柚木麻子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
短編小説集
全編共通したテーマとしては、女性の自立でしょうか
まぁ、例外的な作もあるけれども
大体は柚木麻子さんのいつも通りのテイストなシスターフッドの物語
・Come Come Kan!!
新人賞を受賞したものの、次作について編集者からダメ出しされ続けて、掲載されない新人作家の覚子
そんな彼女は打ち合わせが行われていた文藝春秋のサロンにある菊池寛の像に話しかけられる
そこで語られる菊池寛の思いとアドバイス
文藝春秋は菊池寛が始めた会社だとか、芥川賞と直木賞は菊池寛が始めたとか、サロンも昔ながらの文豪同士の交流の場として作られたとかの情報は知ってる
「オール讀物」も、どんな人でも発言できる場としての雑誌なのに
最近は格調を編集者が気にするようになったという嘆き
個人的には、どんな雑誌であれ路線は少しずつでも変わっていくものだし、そこはしょうがないのでは?と思うけどね
新人作家のムーブと言えば「私にふさわしいホテル」を思い出すけど
あっちよりは今作の人たちはまとも
別の新人作家のアヤメが傷ついた建売住宅
どの家も想定する家族があって、自分が対象から省かれているような感覚
確かに、私も離婚して一人で戸建てに住んでたけど
明らかに一人用の住宅ではないですからね
一人用だとマンションになってしまう
あと、雑誌掲載のデビュー作を連作短編にという依頼は確かによくあるようだ
柚木麻子さんもその辺について書いた文章がどこかにあったはず
ネット記事か?
まぁ、読者としては読みやすいし、個人的にも連作短編は好きなのだけど
作家さんからしたら、「それは短編であって、長編ではありません」というのも頷ける
・渚ホテルで会いましょう
かつて、自著の不倫小説の舞台として有名になったホテルにやってきた大御所作家
しかし、その土地もホテルも自作の集客効果はなくなったようで、まったく異なるコンセプトになっている
そんなホテルで出会った子連れの父親との交流
大御所作家の東十条は「私にふさわしいホテル」に出てきた人と同じと思っていいのですよね?
モデルとしては渡辺淳一が大部分で、五木寛之の要素も入ってる感じ
そんなバリバリのジェンダー観を持ってる作家が、ワンオペで子供を世話する父親を目の当たりにする事で芽生えるブラザーフッド
昔ながらの男臭い関係ではなく、女性同士の連帯やケアとしてのシスターフッドの裏返しとしてのブラザーフッド
こんな物語も世の中にもっとあってもいいと思う
あと、義母が、お母さんは地獄にいるって言ってる状況
多分、そのまんまの意味ではなく、比喩なのだろうなぁと思って読んでたけど
確かに、地獄と表現したくなるのはわかる
せめて修羅場と呼んでやってくれw
・勇者タケルと魔法の国のプリンセス
確信犯として女性専用車両に乗り込んだら、何故か昔やったゲームを模した異世界に転移し、勇者として扱われることになった中年男性のお話
プリンセスを救う勇者として扱われる世界
何というか、勇者の扱いが酷いのだけど、あっちの世界ではそうなるまでの過去がわったわけで
そりゃぁそうなるわなとは思う
過去の勇者同士が連帯すれば問題は解決するけれども、それができない人たちばかりというのが、男性への揶揄を感じる
そして、結局のところ勇者はプリンセスだったというオチ
女性専用車両に乗る男性の話や動画はネットでたまに見かける
彼らがどんな事情でそんな事をしてるのかはわからないけど、世間の風潮に一石を投じたいのだろうな
一応、女性専用車両は依頼ベースのため、男性が乗り込んではいけない法的な根拠はないのだけど
場合によっては過失が認められて社会的な死を迎えるリスクをわかってやっているのだろうか?
そんな事を前提にすると、確かに勇者とも言えるなぁ
・エルゴと不倫鮨
会員制イタリアン創作鮨店に、エルゴの抱っこ紐で子供を抱えて入店してきた女性のお話
鮨にワインを合わせるような隠れ家的高級鮨店で好みの女性社員と訪れた部長
下心があるため、お店の特別感や食の蘊蓄で女性を落とそうとしていたところ
お店のオーナーの知り合いだという、授乳期が終わった赤子連れの中年女性ややってくる
卒乳したため飲む気満々でやってきた物書きらしき女性は、店の雰囲気をもろともせずに、自由奔放に自らのオーダーを通していく
そんな彼女に圧倒される同席者達
私も基本的には生魚にワインを合わせるのは反対
余程上手に組み合わせないと生臭さを感じやすいから
まぁ、そんなに知識はないので、イメージ先行の偏見ですが
でも、作中の組み合わせでガブガブと飲み干していく姿を見るに
もしかして、それならアリなのでは?と思ってしまう
お店にそぐわない振る舞いだとしても、お店は一応お客を選ぶ権利があるわけで
オーナーがいいって言うのであれば仕方がないところがある
それにしても、オーナーは本当によかったのか?
ラストの展開が実にシスターフッド的
・立っている者は舅でも使え
夫の浮気で子供を連れて実家に帰った女性が、何故か追いかけてきた舅をこき使いながら同居するお話
コーヒーチェーンの創業家の息子と結婚して子供も出来たが、夫の浮気で田舎に戻って離婚調停中の桃
そんな中、舅が住まわせて欲しいとやってくる
桃は、追い返す目的で家事や息子の世話などを押し付けるが、なんとかこなそうとする舅
そんな不思議な関係の同居生活
説明されても、やはり嫁の実家までやってきた舅の意図がわからん
それまで自分で家事をやってこなかったのに
何を思ってやってきたのだろう?
それに家事と子守りに悪戦苦闘しつつ音を上げないのも不思議
作中では語られていない事情が、何かあったのだろうなぁとは感じる
・あしみじおじさん
貧困の中でも自らの人生を生きようとする女性と、それを応援したい教授のお話
美容整形外科の待合室に置いてあった、「世界名作全集」の「ハイジ」を読んで価値観を変化させた亜子
美容外科の受付をしている友人の好意で全集を貰い受け「赤毛のアン」「少女ポリアンナ」「小公女セーラ」「あしながおじさん」「家なき子」「若草物語」を読んで、少女たちの共通点に気付く
結局は誰かからの援助で成長して成功する物語だと
そこで亜子はお金持ちと知り合うため、友人の伝手でお金持ちのお話相手のような便利屋として派遣される仕事を始める
落ちぶれたお金持ちの家のお隣さんに又貸しされた先での行動が正に「おもしれー女」
まぁ、本人も自覚しつつきっぱりと反論してるのだけど、そこで面白がってくれるのは坊っちゃんの方ではないところが柚木さんらしい展開
あと、教授の気づき
変化したのは彼女たちではなく、支援すると決めた人たちという指摘
確かになー
世の中には、もしかしたら彼女たちのような女性がいっぱいいるのかもしれないけど、それを援助しようとする人達の価値観が変わらないから救われない人達も沢山いそう
あと、あしながおじさんのように、誰が援助したのかを隠すのは自己満という指摘も正にそう
・アパート一階はカフェー
同潤会大塚女子アパートメントの1階に開店したカフェと、それを援助した菊池寛のお話
女子専用アパートや谷崎潤一郎の二番目の妻として嫁ぐ事が決まっている古川丁未子も史実に基づいている
何より、菊池寛が出資したとか、金だけ出して余計な口出しをしなかったとかも本当らしい
菊池寛は、下心や見返りを求めて女性に接するのではなく、自分が面白そうと思った事は応援するし
それでいて自分が首を突っ込まずにきっぱりと線を引くというような事を他にもやっていたそうな
何というか、「勇者タケルと魔法の国のプリンセス」と対比されているのだろうな
アンフェミにしても、チン騎士にしても、女性にうざ絡みする輩は現代でもわんさかいる
ネットなんかでは多数観測されるし
この物語でも何か手伝える事はないかと一見優しそうな男も登場するけど
その土台には、女性は守ってやらねばという、ある意味で下に見ている感情が伺い知れる
全体を通して、冒頭で書いている通り、柚木麻子さんらしいシスターフッドの物語を感じる
と読み終わった感想を抱いているところに
「解説 菊池寛」でもの凄く笑ってしまった
こんなん笑うしかねぇだろw
やはり、柚木麻子さんは「おもしれー女」過ぎる
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分かるし、刺さるし、救われる――自由になれる7つの物語。
編集者にダメ出しをされ続ける新人作家、女性専用車両に乗り込んでしまったびっくりするほど老けた四十五歳男性、男たちの意地悪にさらされないために美容整形をしようとする十九歳女性……などなど、なぜか微妙に社会と歯車の噛み合わない人々のもどかしさを、しなやかな筆致とユーモアで軽やかに飛び越えていく短編集。
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Posted by ブクログ
75歳の正子が、炎上や再就職、メルカリ、家族や旧友との再会など、現代社会の出来事に真正面から向き合っていく物語。
読み始めは『ランチのアッコちゃん』シリーズのような軽やかさを予想していたけれど、実際には「今の時代をどう生きるか」というテーマを、ユーモアを交えながら描いた作品だった。
『風と共に去りぬ』を巡る価値観の変化や、「過去にこだわろうにも、未来がない」という言葉など、考えさせられる場面も多い。
一方で、メルカリや遺品整理といった身近な題材は共感しやすく、柚木麻子さんらしい食べ物の描写も健在だった。
少し都合よく物事が進みすぎると感じる部分はあったものの、それも正子自身の行動力があってこそだと思うと、不思議と納得できる。
読後は、「マジカルグランマ」というタイトルの意味も含めて、正子という一人の女性が最後まで自分らしく生き切った物語として印象に残った。 -
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アッコちゃんと1週間過ごすと、あら不思議!
進むべき道が見えてくる!
ライトなお仕事小説なんだけど、
おかっぱ頭のアッコちゃんが、
リアルに想像できて、
ドラマ見てるみたい。
外見も年齢も違うのに、
なんかマツコデラックスのイメージなんだよね、
アッコちゃん。
私は恵まれた職場で不満やストレスは
少ないんだけど、最近モヤモヤすることがあり。
アッコちゃんに相談して、
1週間で私をガツンと変えて欲しいな。
古い考えや過去のやり方に囚われ過ぎている私。
叩き切って欲しいわ。
人生楽しまなくちゃね、
思いっきりやらなくちゃね、
でも人には優しくね。
そんなメッセージを本から受け取りました、 -
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全4話の短編はどれも心に刺さるものばかりでしたが、特に印象的だったのが「梅田駅アンダーワールド」です。
就職活動という「正解」を求められるプレッシャーの中で、私たちは知らぬ間に「他人軸」で生きる苦しさに縛られていないでしょうか。
物語の中で、主人公のサエは面接に遅刻するという、社会人としては致命的な失敗をします。しかし、梅田駅の地下迷宮で途方に暮れながら、必死に周囲の人に声をかけ、助けを求める彼女の姿は、決して「ダメな人間」ではありませんでした。
スマートに地図を見て目的地へ向かうことだけが正解ではなく、見知らぬ他者に臆せず関わり、助けを借りる力。それこそが、彼女が本来持っていた「武器」であり、その失敗があったからこそ、彼女はやっと自分自身と向き合うことができたのです。
この話を読んで、強く感じたことがあります。
「大学を卒業したら就職しなければならない」という、誰もが疑わないレールの上を走ることだけが人生ではありません。
他人と自分を比較し、世間体や平均的な幸せを基準にすると、人生は途端に「行き詰まり」を見せます。しかし、他人軸を手放した瞬間、その行き詰まりは「本来の自分」へ戻るためのサインに変わります。
何かうまくいかないことがあっても、それは失敗ではなく、未来のための「経験」です。
「これからよくしていけばいい」
そう思えたとき、不思議と心が凪いでいくのを感じました。自分の人生という物語の主人公は、自分自身です。他人と比べることをやめて、自分の心地よさを大切に歩んでいこう。そんな前向きな勇気を、この本から受け取りました。 -
Posted by ブクログ
これまで柚木さんの長編作品、『らんたん』や『Butter』を読んできて、その重厚な物語の深みや人間心理の鋭さに深く浸ってきた私にとって、今回のシリーズはまた少し違った、とても新鮮な読書体験でした。
物語の軸となるのは、強烈な個性と行動力を持つアッコさんと、彼女に振り回されながらも少しずつ自分らしさを取り戻していくミチコ。ページをめくるたびに、読んでいるこちらまで背筋が伸びるような前向きなパワーをもらいました。
特に心に残ったのは、『ゆとりのビアガーデン』の中で描かれていたこんな言葉です。
「できないことは補い合えばいい」
「いろいろ考えすぎるより、行動に起こした方がいい」
これまでの私は、何かを始める前に「どうすればいいか」「これでいいのか」と、つい頭の中で悩みすぎてしまうことがありました。
「完璧でなくていい。できないことは補い合い、まずは体を使って動いてみる。」
失敗を恐れず、むしろ行動することそのものを楽しむという、人生を軽やかに駆け抜けるためのヒントのように感じました。 -
Posted by ブクログ
白柚木と黒柚木。どちらもあります。
BUTTER読後、他の作品も読みたいと思っていたら
見つけたこちら。バブル期のOLの努力が報われない扱いに心底苛々させられつつ、まさかの友情にグッときたり。掌から渡されたお鮨から始まるストーリーの終わりの美しさが、よかったなー。
「男女の仲に過渡期があるように、女友達も心がぴたりと合わさる時期があり、やがてその高まりは少しずつ薄れていく。ずっと続いていく穏やかな友情ら愛情もあるのだろうが、ついに自分には手にすることが出来なかった。しかし、一時でも彼女達と強くつながった瞬間があったことを、大切に記憶しておこうと思う。それでいい。今あるものだけでいい。多くを求めすぎると、すべてを失うことがある。」
お昼にくら寿司に行きました。ハレの日ではない贅沢のパターン。。。 -
Posted by ブクログ
女性同士の友情をずっと描いている柚木さんの本。『BUTTER』とはまた違った女性同士の友情が描かれています。百合文学作家である楊双子の作品を読んだ後に、柚木麻子の作品を読んだのはいいタイミングだったと思います。
主人公の志村栄利子は商社勤めのバリキャリ美人。でも彼女は同性の友達かいないことをコンプレックスに感じていて、無理やり友達を作ろうと画策していく。そのターゲットとなったのが主婦ブロガーの丸尾翔子。はじめは意気投合した2人だったが、栄利子の異常さを感じた翔子は栄利子との付き合いを避け始める。
女性同士の友情はもちろん、共感がキーワードだなと思った。読書の感想でも、「主人公に共感できるかできないか」が作品に対する評価の重要基準になっている人が多いように感じる。自分と感じ方や考え方が同じであることが、そんなに重要なのか考えさせられる作品だと思う。
栄利子の中高時代の同級生の圭子、栄利子の勤務先の派遣社員の真織の存在も作品の中ですごくいい働きをしている。同性の友達をたくさん持つ真織が、読者にとって共感しづらい人物として設定されているのがすごく良いと思った。真織が栄利子に詰め寄る場面はしんどかったです。
『BUTTER』はバターがキーアイテムだったけど、この作品はナイルパーチという大型の肉食淡水魚がキーアイテムになっている。人間に住む環境を変えられたことで自らの凶暴性を自覚してしまったナイルパーチと、自分の人間関係や生活環境を変えようとした結果いろんなものを失ったり絶望したりする栄利子と翔子の姿が重なる。