あらすじ
らんたんの灯を絶やさないで。それは教育という名の希望なのだから――。伊勢に生まれた河井道は、札幌で新渡戸稲造に学び、米ブリンマー大学に留学、帰国後は津田梅子が創設した女子英学塾で教えた。良妻賢母ではなく、ひとりの人間として生きるための女学校をつくろうと、道は教え子の渡辺ゆりと奔走する。明治・大正・昭和の女子教育を築いた〈魂の姉妹〉(シスターフッド)を描く、輝きに満ちた大河小説!(解説・村岡恵理)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
河井道の史実を元にした小説
柚木麻子さんの母校 恵泉女学園中学・高等学校の創立者 河井道
その道とシスターフッドとして支え続けた一色ゆりとの絆を描いた、ある意味で女子大河小説
柚木麻子さんは、実際に在学していた90代の方々にも取材をしたそうな
そして皆、戦時中でも学校が「楽しかった」という
そんな学校の設立の経緯と運営のあれこれ
河井道と一色ゆり
冒頭は、一色乕児が渡辺ゆりにプロポーズするところから始まる
河井道とはシスターフッドなため、自分と結婚するという事は河井道とも一緒に暮らすということ
そんな条件を受け入れて結婚した乕児も、当時としてはかなりの変わり者のように思える
シスターフッドとは、イエス・キリストのもとに集う姉妹、つまりは血縁関係を持たない女性同士の絆の事
そんな二人が理想の女学校を立ち上げた経緯と、その後の運営のあれこれが描かれている
河井道は三重県生まれで神職の娘
父が友人への資金トラブルで信頼が失墜し、北海道に移住
父がキリスト教に傾倒して改宗
そこで出会った新渡戸稲造に見出され、アメリカ留学のため、女子留学を支援するという津田梅子の元に行く
ブリンマー大学卒業後は津田梅子の女子英学塾時代で勤務
そこで、生徒であった一色ゆりと出会い、押しかけ女房的に同居する事になる
主人公は河井道だけれども、実在する関係者も多数登場するし
河井道が津田梅子の一番弟子のような立場のため、日本に於ける女性の自立に関するエピソードが多数
津田梅子の学校の生徒達で有名な人もいるし、他にも実在の人物が多数登場する
平塚らいてう
山川菊栄
神近市子
伊藤野枝
広岡浅子
村岡花子
市川房枝
柳原白蓮
それぞれで本になる、むしろそんな本が存在しているような面々
正に、日本のフェミニズムのアベンジャーズのような作品
男性でも、新渡戸稲造、有島武郎、野口英世、ロックフェラー、ボナ・フェラーズ、太宰治、白洲次郎など
河井道はとにかく目的意識がはっきりしていて、そのためには諦める事がない
お金はないし、時には計画性もない
だが情熱はある
女子教育という灯りを絶やさない決意を感じる
戦時下でも強かに学校を存続させる対応をする
国策と女子教育との狭間で、のらりくらりと抜け道や言い訳で生徒達の安全と生活を守ろうとする
「学園だけは楽しく」「それが私たちにできる戦い」だと生徒達を励ます
題名の「らんたん」は津田梅子も留学していたブリンマー大学の行事に由来する
先輩が後輩にランタンの火を継承する儀式
上級生から下級生に知識の象徴として継承されるランターンの火
---------------
らんたんの灯を絶やさないで。それは教育という名の希望なのだから──。
---------------
光をシェアして社会を明るく照らしていこうという指針
当時、女学校と言えば良妻賢母という教育が基本だった中
ひとりの人間として生きるための女学校が必要だと尽力した河井道
作中で、度々シスターフッドの理念が出てくる
「女が手を取り合わなければ、男たちはすぐ戦争を始めてしまう」
「女たちが手を取り合えば男たちは戦争ができなくなる」
多分、こういった事が一番言いたかった事なのかと感じた
執筆の経緯としては、近所の屋敷からそこに住む老婦人の話を思いついて執筆したのが「マジカルグランマ」
そしてその屋敷は、実は母校の創立者である河井道と一色ゆりの暮らした一色邸である事を知る
そこで河井道についての話を書こうとして母校の資料室に出入りしていたが、コロナ禍のためそれもできなくなる
しかし、母校に入れなくなっても、他の偉人の記録を調べると河井道の記述が見つかるという
あと、子供を連れて行ける取材先がないけれども
「子どもが泣き声を出せない場所は、どこかいびつで変なのよ」という作中の言葉の通り、母校では子供の泣き声が迷惑ではないという理由もあったようだ
解説は村岡花子の孫の村岡理恵
作中に登場する関係者に解説を依頼できるのも、史実を元にした小説ならではですね
---------------
この灯は、「妻」や「母」ではなく、「私」のためにある。
明治・大正・昭和の女子教育を築いた女性たちを描く大河小説!
世界中が熱狂する『BUTTER』著者の原点がここに――。
らんたんの灯を絶やさないで。それは教育という名の希望なのだから――。伊勢に生まれた河井道は、札幌で新渡戸稲造に学び、米ブリンマー大学に留学、帰国後は津田梅子が創設した女子英学塾で教えた。良妻賢母ではなく、ひとりの人間として生きるための女学校をつくろうと、道は教え子の渡辺ゆりと奔走する。明治・大正・昭和の女子教育を築いた〈魂の姉妹〉を描く、輝きに満ちた大河小説!(解説・村岡恵理)
---------------
Posted by ブクログ
柚木さんの歴史物。全く期待せず正直読んだらすごく面白かった。朝ドラの主役の人たちが次々出て来てびっくり!連帯したり失敗したりとにかくでも人生を楽しんでいる様子が読んでいてすごく楽しかった。
Posted by ブクログ
素晴らしいです!柚木さん、恵泉の中高で立大出身なのか。ご自身の母校の創始者をこんなに素晴らしい小説で描き切って、道先生も喜んでるだろうなぁ。なんでBUTTERとかいう小説の方が人気あるのかわからん、どう考えてもこっちでしょうー!あの激動の時代を生きたこれだけの歴史上の人物たちをいきいきと交差させて道先生はじめ多くの教育者たちの苦労と功績をよくこんなにも立体的に情感豊かに描いたものだと感服した。実際にそんな会話を交わしていたんじゃないかと思うほど読んでてワクワクした。伊藤野枝の人生が火傷しそうな熱さなら、河合道先生の人生はキラキラしていて颯爽としていて眩しくて目が眩むよう。堂々たる体格で自信と慈愛と行動力にあふれ、誰とでもすぐに仲良くなりどんな世の中もかき分けて進んでいく道先生、誰もが慕いたくなるそんな先生が老いて病んで小さくなり長年の親友に甘える姿に胸がギュッと締め付けられた。こんなに愛と希望と活気に溢れる学校で学べた女生徒たちが心底羨ましい。恵泉よ永遠なれ。
Posted by ブクログ
宝石のように心に残る1冊になった。読み終えるのに時間がかかったが、涙で読めなくなったり(初老は涙もろい)、作中の有名人物のことを調べたりしていたせい。ヒロイン陣はもちろん、乕児さんのキャラクターも魅力的。
恵泉女学園の創立者である河井道とその教え子である一色ゆりを中心としたシスターフッドの物語。明治大正昭和にかけての河合道の生き方を辿り、同時に日本の歴史を辿る。教科書に出てくるような作家や社会活動家と、道との関わりが面白い。何よりも恋愛ではない女性同士の特別な繋がりシスターフッドに憧れた。
Posted by ブクログ
河井道さんがNHKの朝ドラ「あさが来た」と「花子とアン」、「ばけばけ」を横に縫いとるような、大河小説でした。
暗くて重い時代も、あたたかくおいしいものや明るく女学生の笑い声とともに響くような、女性のしなやかさ、やさしさ、強さ、朗らかさに包まれて光を失わずに進んだ、という恵泉女学園のお話。
女性の放つ光を外から見るような、なんともあたたかく、でも気持ちのいいお話でした。
柚木麻子さんの心はここからできているのか、となんだか納得するような気持ちになりました。
歴史観や宗教観はそれぞれだけど、女性のもつ光、という点でとても良かった。
津田梅子、広岡朝子、白州次郎や、有島武郎に太宰治…、戦後復興の話はもっと知られても良いなあ、と思います。
いつかドラマか映画になったら必ず観ます。
Posted by ブクログ
歴史に名を刻む人たちは、その人たちで繋がりがあるこたをすごく実感した。自分の信じる道をまっすぐに生きることの難しさ、でもだからこそ得るものがあひますね。
Posted by ブクログ
読み応えありました。700ページ越えにこれは中々読み終えるのには日数がかかりそう…と思いましたが、面白くて先に先にと読み進めてしまいました。読み終えてしまったのがもったいない。シリーズ化にして欲しかったです。もっと主人公の人生と周りにいる人達の人生を読んでみたい。
主人公は明治〜昭和を生き、話しに出てくる人達は有名な人ばかりでそれもまた読んでいて楽しいです。
もし子供の頃にこの本と出会えていたら、学ぶとは何か自分の国はどんな国なのかを考える事が出来ただろうな、そうしたらもう少し勉強頑張れただろうなと思ってみたり。
長いお話ですが、子供にも読んでみてほしい本です。
Posted by ブクログ
教育の基本となった「平和のための国際親善」と「生活・労働としての園芸」、恵泉女学園大学がなくなったのは、残念だな…とあらためて感じました。
中高に受け継がれているようで、道先生のらんたんはつながっているのかなと思う。
戦前から戦後にわたる女子教育と女性の権利獲得の運動の歴史を感じられる読み応えのある一冊でした。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白かった、、、史実を淡々と述べる作品でなくて、道とゆりの美しいシスターフッド、そして女性教育を解放して著名人の登場に度々胸が躍った。特に女性教育の始祖でもある梅子と捨松の死別シーンは本当に感動した。今私たちがこうして自由に生きられるのも、先人のおかげだと思うと、この自由を思う存分全うするのが、この時代に女として産まれたせめてものの使命なのかなと思う。
Posted by ブクログ
戦前から戦後まで、一貫して、男女の対等な社会を目指して女子教育を切り開いていった河井道先生の一代記。現代にも通じる内容でもあり、道先生の気合の入った信念に敬服する。
Posted by ブクログ
自身も私立女子中高出身であったこともあり、女子教育に奔走した恵泉創立者の物語に興味があって読みました。
今当たり前とされている女性の教育を受ける権利や参政権、社会進出はこの時代の方々のおかげであると、感謝の思いが溢れた。史実を元にしたフィクションなので、現実はこれよりも大変だっただろうな…と思いを馳せました。
戦禍でも学校運営(教育)を途絶えさせてはいけない、次の世代は今の世代より必ず優れている、という道先生の言葉が印象に残り、母や娘にも読ませたい作品となりました。
(柚木麻子さんの作品を初めて読んだけど、内容のせいもあってか同じような話・エピソードが人を変えて何度も繰り返されるな〜とも思ってしまった。「それが〇〇と知るのはその〇年後のことだった」というような言い回しも頻出してた。)
Posted by ブクログ
恵泉女学園創立者の河井道を主人公に、明治期以降、日本の女性の地位向上に奮闘した人々を描く大河小説。
明治期、まだ女性は「家」に従属するものであり、独立した「個」とは見做されていなかった。
個人の夢なんかより「奥様」になり子をなすことを要請する日本社会に抗い、女子の自立を目指した津田梅子が主宰した女子英学塾。
そこから、主人公の河井道をはじめ多くの女性が、日本の女性の地位向上のために立ち上がっていく。
新渡戸稲造、津田梅子に始まって、平塚らいてうや山川菊栄、市川房枝…などなど、歴史で習った有名人が出るわ出るわ。
こんなにも多くの人たちが、それぞれにできるやり方で世の中を変えようと奮闘してきたのかと、頭が下がる思いになる。
主人公の河井道は、キリスト教の「シェアの精神」を体現した人物で、自らの善意は惜しみなく分け与えるとともに、他人の善意も有り難く受け取る。そうやって、感謝の輪が広がり、活動の輪が広がっていく姿は、まさに河井道が若き日に留学先のブリンマー大で見たランタンの継承そのもののようだ。
小説の組み方も、過剰な装飾はしない。ただただ、河井道ら、多くの登場人物の生き様がもう重厚なドラマなのである。とはいえ、それを引き立てるためのちょっとした仕掛け(随所で形を変えて登場する"暗闇"は旧時代の象徴だろうし、ちょっと可哀想な描かれ方をしている徳富蘆花や有島武郎は分かりやすい対比)を散りばめているところに、著者のうまさを感じた。
700ページを読み切ったとき、河井道ら、この激動の時代を戦い抜いた彼女たち自身が希望の灯となり、その灯が次から次へと広がって、暗闇を明るく照らし出す……そんな情景が自然と心に浮かんだ。
教育の重さを改めて感じ、少なくとも我が子の親としての自分の責任を感じて背筋を正す思いだ。
Posted by ブクログ
津田梅子から戦後まで、連綿と続くシスターフッドの物語。
メインは、恵泉女学園の創始者、河井道と教え子の一色ゆり。
解説は村岡恵里で、もしやと思ったら村岡花子の義理の孫だった。
明治~昭和まで、活躍した女性たちがたくさん登場するが、みんなそれぞれに考えがあり、決して一枚岩ではない。
それでも、女性の地位向上のためにゆる~く連帯する様子がシスターフッドなのか。
しかし、登場する男性は総じてクズばかり。
まともな男が、ゆりの夫の一色乕児しかいない。
あ、新渡戸稲造も良い男に描かれていた。
有島武郎に至っては、相当ひどい書かれようである。
その有島が、道の心の闇を照らす亡霊として、死後も登場し続けるのもまた興味深い。
それにしても、明治の頃から日本の男は、若い女性が楽しそうにしているのが気に入らないんだな……。
「女が死なないとドラマにならない」って、なんだそりゃ。
Posted by ブクログ
とても読み応えがあり、読み終えるのに結構時間がかかった。
日本の女子教育、女性の生き方についてや教育の本質についても深く考えさせられた
。戦前、戦中、戦後と河井道という女性を主人公に、沢山の登場人物が登場する。
巻末の参考文献の膨大な数に圧倒。これだけの長い物語を書くのに、相当な時代考証と労力が必要だったと思い、本当に凄い。
女性たちが生き生きと自由に力強く道を切り開いていく姿がとても輝いていて清々しい。
Posted by ブクログ
女性が自立すること、対等に扱われることを頑張った人たちがたくさん出てきた。今だと当たり前に感じるけど、明治時代からそのような運動をしていた人がいたことにびっくりした。道先生の発想の転換に何度も驚かされた。
Posted by ブクログ
読み応えのある一冊です。
明治〜昭和にかけて、一人の人間として生きるための女子教育の礎を築いた河井道のお話。日本の婦人運動(今で言うフェミニズム)を切り開いた平塚らいてうや市川房枝、翻訳家の村岡花子等名だたる著名人との交流も織り込まれて楽しかった。
Posted by ブクログ
らんたんとはランターン(ランプ)のことで、教育の志や灯火を次の世代へ引き継ぐという意味が込められている。本書は、アメリカ留学後に日本で女子のための英語塾を開いた津田梅子の後を継ぐ、河井道と一色ゆりの物語である(恵泉女学園を創設した二人)。明治から昭和にかけて、日本の女子による女子のための教育を切り拓いた歴史を描くと同時に、道先生とゆりさんのシスターフッドの物語でもある。文庫で700ページ近い大作で読み応えがあるが、柚木麻子による「女子の自由と自立」を描いた物語が面白くないはずはない。
「シスターフッド」という観点にはあまり馴染みがなかったため、新鮮に感じた。キリスト教的な思想なのだろうか。光を分かち合うという哲学のもと、精力的に社会活動を推進する主人公二人。その対比として、津田梅子と大山捨松の関係性も描かれる。また、アナーキーな改革派の平塚らいてう、翻訳家の村田花子や石井桃子なども登場し、この時代を生きた女性たちの知的好奇心と行動力には脱帽する。(のちに社会を動かす人々が互いに知り合いであったことも興味深い。世間は狭く、類は友を呼ぶということなのだろう。)
当然インターネットも旅客機もない時代に、道とゆりはアメリカへ留学し、世界を股にかけて視察やネットワーキングを繰り返した。帰国後は教育に携わり、世界中の知人から支援を受けながら女子校を設立する。勇敢さ、フットワークの軽さ、活動量に圧倒される。(資金がなくても活動を始めると、世界のどこかから寄付の小切手が届くという展開が何度もあり、創作ならご都合主義と批判されそうだが、史実なのだろう。)
中年になってから再びニューヨークに留学した際には、音楽鑑賞の場で偶然ロックフェラー一族と知り合い、ディナーに招かれるなど、彼女たちのオープンマインドは数々のセレンディピティをもたらした。時には何年も手紙のやり取りしかできない二人だが、厚い信頼のもと、それぞれの場所で同じ志を持ち続ける。これが史実に基づくということに、ただただ圧倒される。ひとりの人生は、こんなにも劇的で豊かになり得るのだろうか。
現代を振り返れば、女子も男子と同じように教育を受けられ、一定の自由も獲得し、海外も身近になった。しかしそのせいか、あの時代の女性たちのように使命感を持って精力的に活動する人は目立たないように思える。(戦後に特権階級がなくなり、一億総中流となったからだろうか。)インターネットで情報収集できる時代になったはずなのに、世界の見通しはむしろ悪くなっているように感じる。らんたんはどこに引き継がれているのだろう。
個人的には、働く女性として、日々の業務をこなしながらプライベートで社会を動かす活動を成し得たのはなぜか、という点にも関心を持って読み進めた(自分は仕事でいっぱいいっぱいの日々なので笑)。北極星のように常に目指すもの、揺るがない信念があり、動き続けると、こういう人生になるのかもしれないと思った。
Posted by ブクログ
柚木麻子さんの中高の母校、恵泉女学園の創立者河井道を軸に、日本の女子教育の歩みを描いた歴史小説となっています。
ただし一人の偉人伝ではなく、女性たちの活躍が連なり、群像的な構造です。
単行本は2021年刊行。
第一部は文芸誌「きらら」第二部はウェブきらら、第三部は書き下ろしとなります。
タイトル『らんたん』は、アメリカのキリスト教系学校における灯火の儀式に由来するそうです。灯りを手渡す行為は、教育や信念の継承を象徴。本作における女性たちの連帯、いわゆるシスターフッドの主題と重なります。
読み始めすぐに NHKの連続テレビ小説でそのまま使えるわと思いましたが 著者も狙ってたみたいですね。
作中には、津田梅子の存在も見え隠れし、女子教育の先輩とし道を切り拓いた女性たちが、交差していきます。
2020年前後という発表時期も、津田塾120周年と重なって女子教育史を描くにはタイムリーでした。一方で、恵泉女学園大学が募集停止に至っている現在を思うと、本作が描く理想と現実の距離も感じるところです。
女性達の活躍に多くの同時代の人物が関わっていきます。
新渡戸稲造は理解者として描かれ、
有島武郎は女性との関係性において批判的に
徳冨蘆花には家庭内での強い抑圧性を
さらに当時の女流文学者たちも数多く登場し、作品世界は単なる個人史にとどまらず、広い文化史的広がりを持たせます。
巻末の参考文献の量からも、書き込もうとした密度の高さがうかがえる。
一方で構成面では、冒頭に提示される道・ゆり・ゆりの夫による関係性、いわば「シスターフッドの正門」から入る視点が、
その後の展開の中でやや後景に退き、物語はよりオーソドックスな歴史小説の流れへ移っってしまう。個人的な希望としては、このテーマを
もう少し維持して欲しかったです。
作者の熱量を感じる作品でした。
Posted by ブクログ
ラノベ系いっぱい読んでからの本書だったから、読み応え抜群で、読んでも読んでも頁が減りませんでした。恵泉女学園短期大学の創設者河井道と、彼女を取り巻く女性たちの知(教育)を求める戦いが描かれます。戦前から戦後まで、現代との文化の違いはあれど、不思議とその世界観に引き込まれました。
Posted by ブクログ
アンソロジーでは読んだことはありましたが、長編では初めての柚木麻子さん。また大河小説そのものも初めてでした。
河井道が日本女性に教育を、男女平等に…と強い発信をしてきた女性を、この『らんたん』で初めて知りました。
道が生涯を全うするまで、関東大震災、第二次世界大戦と明治・大正・昭和と激動の年を駆け抜け、今の日本女性が教育を受けられるのも、仕事も男性と一緒に働けるのも、道とその周りにいる女性たちが国と戦い続けてきた証なんだと感銘を受けた。
道の子どもへの教育の仕方は印象深い。各々の意見を持ってて問題ないような『多様性』を重視されていた。ここまで人間を客観的な目線で寛大な心を持ってるのは、令和にいないのではないかと。もし道が現在生存していたら何を思うのだろう…。働きやすい環境ではあるけど、少子化も進んだ現在を見てどう感じるのだろう?と考えてしまった。
道は偉大であり現在へとしっかり引き継がれている。
戦時中のような状態が今でも続いているのであれば、日本女性は苦しい思いをしていたに違いない。
私たちに希望の光となる「らんたん」が灯してくれた。彼女の思いを信じて、しっかり日々を過ごしていきたいと思います。
Posted by ブクログ
ようやく読み終わった!まさに大河小説。胸が熱くなる場面が多くあり、自分も日本で生きる女性として「らんたん」の光を受け継いでいかなければと強く思った。
Posted by ブクログ
河井道さんという女性を主人公にした史実を基にした小説。
当時の有名人いっぱい出てくる!
女子教育から女性の地位向上を目指す。
いまの私たち女性が自由に動き回れるのもこの時代の方々が頑張り踏ん張ってくれたおかげですね。
当たり前に享受できていることも昔は女性だからできなかったこともある。
未来のためにも今度は私たちが奮闘する番だと思った。
なにかできることはないかとおもふ。
Posted by ブクログ
とにかく登場人物が多い!
後に知ることになる。とかそう言う系の文章で一旦締め括られ後に再び登場するんだけど、誰のことだったか覚えていない!笑 面白さがあったのは第3部かな!物語がいい感じにトントンと進んでいく感じ。恵泉という学校は恥ずかしながら知らなかったのだけど、この本を読んで知ることが出来て良かった。キリスト教には全く関心もなかったけれど、それは知ろうとしなかったからなのかもしれない。ぜひ朝ドラで見たい作品!
Posted by ブクログ
すごい一代記。
教育はとても大事。特に戦争をしない国にするにはとても大事だと思う。戦争をしてる国の人々はきっと戦争についてきちんと教育を受けなかった人たちなんだろうな、と感じるから。
世界中を飛び回り、いろいろな国の人と交流して、そのいいところを日本に持ち帰り、押し付けがましくなく少女たちに教えた人、身につけさせた人、それができた人、という印象を受けた。
あの戦争の時代に学校で英語を教えてた?楽しいイベントをたくさんやってた?そんなことできたなんてすごい。コロナ禍のとき、家の中でもなんだか騒いだり楽しんだりしてはいけないような気になった。あれの何十倍もの見えない圧力がかかっていたはずの時期だよね。すごい。
でも、日々楽しむことはとても大事。ほんとにその通り。
全部に賛同はできないけど、違う意見も受け入れる姿勢が身につくなら、とても素敵な教育なんだと思う。
Posted by ブクログ
河井道。
伊勢神宮神職の父が明治維新で失職。家族で北海道に移住することに。父はキリスト教に改宗し、道もキリスト教系の学校へ進む。
新渡戸稲造と知り合い、上京後、津田梅子の教えを受け、アメリカへ留学。
帰国後、津田梅子が創設した女子英学塾の教師となり、生涯の友・シスターフッド・渡辺ゆりと出会う。
アメリカでの学びをもとに、『光はシェア』することを目指し、女性教育に力を入れ、恵泉女学園を創設。
戦時中は、その思想が危険視されることに…
天璋院篤姫、大山巌,津田梅子、大山捨松、新渡戸稲造、野口英世、広岡浅子、平岡らいてう、村岡花子、柳原白蓮、有島武郎、ロックフェラー、マッカーサー、市川房枝、吉田茂、白洲次郎…
歴史上の人物が次から次へと。
大河ドラマと朝ドラを一度に観ているような。
淡々と長い…
河井道の華麗なる交友関係だった。
男尊女卑のたいへんな時代だったと。
そんな時代に戦ってきた道たちがいたからこそ今があるのだと。
でもほんとに長かった…
Posted by ブクログ
河合道先生の目まぐるしい人生と、女性の教育や権利の為にものすごく多くの女性たちが力を尽くしてくれた事に驚き通しの一冊でした。
内容は、文庫本の裏表紙のあらすじに、"大河小説"とありますが、まさに大河ドラマとして一年通して見てみたいと思わせるボリュームです。
そのせいか、読んでいて出来事や人物を追いかけているだけのような感覚になったのが、少し残念な点ではありましたが。
河合道先生の人生を描くなら、一冊では足りないのは納得です。こんなに素敵な女性を知る事が出来て、読んでよかったと思いました。