田辺聖子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『ブスの愚痴録』という面白そうなタイトルに惹かれて手に取った作品。
「ブス」や「愚痴」なんてマイナスのイメージが強いけど田辺聖子さんが書くと面白そう。
どんなブスが登場するのか、外見ブス?中身がブス?読んでみてのお楽しみ。
ブスなんて今ならハラスメントに触れてしまうような言葉だけど、そこはさすが昭和ならではで不適切でも多少はOK?(連載は昭和)
読み進めると「あれっ」ちょっと違う、ブスの愚痴ではなくブスへの愚痴だった。
この作品って男性の視点で描かれているんだけど著者は女性作家なのに男性の心理がリアルで「男の気持ちがなんでそこまでわかるの?」と思わされるほどの筆力が凄い!
また文章も著者持ち前の底抜けの明るさと軽快な関西弁(田辺大阪弁)がマッチして嫌味でなくコミカルで面白おかしく読み進められちゃうのも魅力のひとつ。
ブスや醜女がテーマの九つの短編集
とあるがそこまでブスは多く登場しない。
ただ共通するのは女性は逞しい。
印象に残ったのが『泣き上戸の天女』
何歳になっても気持ちは乙女、「籍を入れよう」と言った次の日に居なくなってしまった。
その理由がなんとも滑稽で、主人公の男がつくづく「天女やなぁ」「歳月に古びぬ女の可愛いらしさを持っていたトモエ」と思いを馳せる姿が悲壮感はなく面白がって居るところが良かった。
トモエは「独り生きた女の碑」に属していた。
戦争に若い男性をとられ結婚の夢を奪われたり、夫を亡くしたりと幸せを奪われた女性達が居る。「一人の花婿にトラック一杯の花嫁」と以前読んだ『女達の太平洋戦争』に描かれているのを思い出した。
まだこの年代の女性達には地続きなんだなと感じた。
女性には逞しさの他に何歳になっても可愛いらしさを持っていて貰いたいと思うのは男の我が儘なんだろうな。
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Posted by ブクログ
ネタバレ粗筋の最初の一文通り、軍国少女で文学少女の話だった。
まさか女子ながら玉砕を覚悟していようとは。
これが当時の女子たちの代表的な姿かと言われると、彼女が作中でも「変わり者」と評されていたところを鑑みるに、極端な例かもしれない。
彼女の友達にも極論に走る子、冷静に見ている子、様々だったので。
ともあれ、戦時中を生きた少女の日常として読んだ。
驚いたのは作中でも実際の文章ごと紹介された小説の数々。
ツッコミどころはあれど、あの内容を10代の少女が書いたのかと思うと脅威を覚えるほど。
ただ玉砕を覚悟していたはずの少女が、空襲を経験し、終戦を迎える頃には何事に対しても「ほんまかいな」と思うようになり、最終的には「生きたい」とまで思えるようになった変化にも驚かされた。
それもまた10代の少女にとって戦争の影響が大きかった証左なのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレずっと読みたかったけど、自分の今の状況と似ている今こそ読む時だ!と思って読み始めた一冊。
私にも言い寄りたいけど、言い寄れない相手がいる。他の人には言い寄られるのに、この人からは言い寄られない。乃里子みたいに、周りの人に好意があるとバレたくなくて変に冷たくしたり、興味のないフリをしたり、素直になれない。私はこの小説を読む前にきっと最終的にゴロちゃんと上手く行くんだろうな、フラフラしてても結ばれる、王道ストーリーなんだろうなと思っていたけど、そうじゃなかった。ゴロちゃんの戸籍が汚れる前に、乃里子はなんで素直になれなかった?と思うけど、あんなシチュエーションはないけど実際素直になれない気持ちはわかる。私は自分からご飯に誘ったりもできない、向こうから誘ってくれたらいいのにな、と何回も思ったけど、上手く誘われなくてもう半年は過ぎた。大人になると尚更難しい気がする。コミュニティが同じだと周りの目もきになって、素直になれないで逆に冷たくなる。
でも、この小説を読んでやっぱり誰かに取れれたくはないなと思った。好きな相手がいるなら素直にならないともったいないなと。
いつか、この本を思い出すとき、私のこの恋は成立していて欲しいなと思う。そんな祈りを込めて星3つ。 -
Posted by ブクログ
初めて読む作家さん。どの短編も女性が主人公で、女性の様々な心情を解像度高く描き出す描写力の巧みさが魅力的だった。
そして、大概においてどうしようもない男が登場するのだが、誰しもが憎もうにも憎めない造形が成されているのが面白い。
関西弁の会話のテンポが再現された筆致も流石で、失われつつあるコテコテな言い回しが関西人の私にも新鮮で心地良かった。
印象に残ったのは「うすうす知ってた」と表題作の「ジョゼと虎と魚たち」だ。
前者は身につまされる話だった。主人公の心情を追いながら、これって私のことなのではないかと共感することしきりで、自分の胸の内を文章化されたようで気恥ずかしい。
後者は、高飛車なジョゼが不思議と愛しくて仕方なくなる。恒夫との純愛が素敵だが、いつかの破綻を予感させる切ない余韻が堪らない。実写版やアニメ版が観たくなった。
理解出来ない感情を咀嚼するのに苦労したりもしたけれど、男ながら女性の心理に共感出来たりもして、こういうのに性別は関係無いよなと、改めて感じた次第だ。
もし田辺先生が生きておられたら、性が多様化した現代でどのような物語を紡がれるのだろうかと、とても気になった。きっと、素敵な作品を書かれたに違いない。