あらすじ
辛く切ない大失恋のあと、剛から海の見えるマンションを見せられて、つい「結婚、する!」と叫んでしまった乃里子、33歳。結婚生活はゴージャスそのもの。しかし、金持ちだが傲慢な剛の家族とも距離を置き、贅沢にも飽き、どこかヒトゴトのように感じていた。「私」の生活はどこにある?
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Posted by ブクログ
一番好きな小説。
色変わりする気持ちや心の揺れ動きを軽やかなタッチで描く田辺聖子さんの筆力に圧巻。昔の空気感が溢れているのに、重苦しい生活の悩みや人の心の繊細な動きは普遍的で、現代を生きる自分と何ら変わりなく思う。
剛ちゃんは決して良い奴ではないのに、ここまで魅力的なのはどうしてだろう?と思いながら続編「苺をつぶしながら」を読んでみるとまさかの再登場。
もしかしたら剛は田辺聖子さんのお気に入りなのかもしれない、と思って読み返したら一層楽しめました。
Posted by ブクログ
人生でトップレベルに好きな本です
乃里子三部作のなかでもぶっささりでした。良すぎて悲しくなるくらい。終わっちゃうのが泣けてくるくらい!でもページを読む手は止まらない
楽しみに身を委ねる自由な精神と、彼に抱く優しさとか憐憫とか諦めとか依存とか刺激のあいだに揺れる乃里子の心情がたまらなく理解できる
Posted by ブクログ
東神戸にある海の見える豪華なマンションで、剛と一緒に暮らしている乃里子、33歳。
一緒に住むことをあれほど拒否していたのに、剛に素敵なマンションを見せられたとたん、「結婚する!」と叫んでしまったのである。
乃里子は今の生活を金持ちごっこと呼んでいて、剛の親族が集まるパーティーにも馴染めないし、剛も乃里子のデザイナーという仕事に関心がなく、何の興味も示さない。
剛との生活は贅沢だけど、本当の自分はどこにあるのかしら。
たまに起こる剛の不機嫌が怖くて、仕方なく「はい」と言ってしまったり、夫婦って、お芝居っ気がないと上手くやっていけないのかしら。
剛には剛の言い分があるし、いちいち逆らっていては溝が深まっていくばかりで切なくなってきます。
男女が一緒に暮らすということは、本当に難しい。
結婚して家におさまっている女性の気持ちを、こんなにも興味深く面白く描いてくださったことに感動し、共感するとともにものすごく勉強になりました。
このような時代をこえた素晴らしい作品に出会えてほんとによかったです。
前向きに生きる乃里子をずっと応援したくなります。
Posted by ブクログ
この人は恋愛における細かい想いの変化を表すのが本当にうまい。
この人しか考えられないしどんなことでも愛せる、から、もう無理なんだろうな、となるところまでを一冊で書き切れるのがすごいと思った。
愛しいと思っていたことが全部だるくなるのも。
田辺聖子の本の中でいちばん好きな作品かもしれない。
あと、この男が結構亭主関白というか束縛系というか前時代的だった。まあ、ちょっと昔の本だからな。
「好きやったわ。とても、たのしかったし。何もかも好きでたまらないくらい。たのしかったわ、三年間
どうしてこんなことになったのか、わからないけど。もう前みたいにできない」
「ここにいてくれ。乃里ちゃんのしたいようにするから」
「ああ、そうしたいわ。とても」
この辺が恋愛の最後をすごく上手く描いてると思う。
Posted by ブクログ
だましだまし上手くやってきたつもりなのに、許せていたことが許せなくなって、笑い声よりも沈黙で息が苦しくなっていく。季節の移ろいを自分だけが感じているような、静かな物語だった。
夫の機嫌を取り、食事の支度をし、夫を立てるように親戚付き合いをし、プライベートを詮索される。そんな生活を続けた乃里子は、「私」ではなく「夫の一部」となってしまった自分に気づく。男性から見たら「結婚したならば当たり前だ」と思うのかもしれない。けれど、結婚によって妻が強いられるあれこれは本当に当たり前なのだろうか。このシーンを読んだとき、「あなたは?」と自身にも問いかけられているようでぞっとした。私は? 私は結婚前と変わらず今も、「私」のまま?
小説だけでも素晴らしかったのに、一文字も抜かりのないあとがき。心のうちをぴしゃりと言い当てる田辺聖子さんの言葉に、彼女が選んだ職業が小説家で本当に良かった…と思った。
Posted by ブクログ
後書きに人生の全てが詰まってた。愛の苦瓜のような小説。ずっと同じ気持ちで一緒に居続けるのは無理に近いし、居続けていたとしてもだましだましっていう言葉がしっくりくる。あと一冊で終わっちゃうのが悲しすぎて
Posted by ブクログ
なんていうかすごく、すごく、気持ちがわかってしまう。切なくて息苦しさが読んでて共感して、鼓動がドキドキした。私は剛さんに惹かれてるんだなぁと思う。
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「言い寄る」が春から初夏そして梅雨の季節だとすれば、
「私的生活」は盛夏から秋そして冬の季節だと私は感じた。
これは実体験ではないかと思うほど、登場人物のセリフ全てがリアルに描かれている。特に剛の俺様的な態度には、絶対にモデルがいるはずだと思わせる。私の夫もまさに剛タイプで自己中心で人を常に見下している。違うのは夫は一庶民に過ぎないのと容姿が残念なところだ。そして夫の本能的で傲慢な振舞いを見ていると私は心の中で軽蔑しているが、なぜか不器用な夫が不憫にも思える。だから乃里子の気持ちはよくわかる。
やがて乃里子の妻の役を降りるカウントダウンが始まると、無性に泣きなくなった。その先にはあるがままに生きられる生活が待っている。その生活はきっと幸せであると乃里子は信じている。
強い女性だな。そこは私と違うな。
乃里子は何度か男性と密会したり、飲みに行ったりして、
剛に咎められるが「そりゃ人妻がそんなことしちゃアカンでしょ」と私も思ってしまった。
でもうっかり感情のままに行動してしまうのも乃里子の魅力でもあるんだな、と思った。
Posted by ブクログ
田辺聖子さんの作品好きなのに、これは初めて読みました。
すごく私的な感想です。
まるで、昔の私のことみたいだった。
こんなに贅沢じゃなかったけど、何不自由ない生活、好きな人との生活のはずが、どんどん自由や、自分らしさが失われて行く感じ。
「私が30年かけて作ってきた生活」、愛してやまない生活、それらから乃里子を引き離したい剛、土足で彼女の城に踏み込み、勝手に怒り出す剛。
まさに自分のことみたいだって思った。
罪はないのに、ひどく辛い。それは罪なんだよ。誰も裁けないけど。
昔の私に読ませたい。
そしたらもっと人生変わっていたかも。
それでいいんだよ、って。
私も乃里子と同じく、笑顔が消え、何も面白くなくなった。
そして、乃里子と同じ様に一人になり、自由を取り戻した。
私は爽快感と限りない解放感で、とにかく幸せだった。
でも、一緒にいた時間に愛があったことは本当なんだよ。
あの頃この本を読んでたら、もっと勇気をもらえただろう。田辺聖子さんが私の経験なんかよりもっと以前にこの本を書かれていた、その年代に書いていた、その事実だけでもすごい。
しなやかに自由に。
本の帯に、「私、この作品を書くために生まれてきたのかもしれへんわ」とある。
たくさんの女性がこの本に元気付けられると思う。
この感覚、人に説明しても全然伝わらないと思ってた。
でも、田辺聖子さんがこんなに素晴らしく細やかに、書かれている。本当に素晴らしい作家だと思う。
Posted by ブクログ
大失恋を吹っ切って、
玉の輿に乗っかった。
乃里子 33歳。幸せは、ここに あるのか?
ゴージャスな甘い生活を
噛み締めているはずなのに。
甘いはず、と思い込み、
苦味に気づかないフリしてたかもーーー。
愛されること、愛することへの揺らぎ。
温度差が広がってゆく やりとり。
大御所 お聖さんの文章は、
軽やかなテンポで流れるけれど、
深く、強く、突き刺さる描写だらけ。
「これはいっても仕方なかんべえ」
二人の合言葉が、切なく響く…
Posted by ブクログ
乃里子シリーズ第二弾。
剛と結婚して生活はゴージャスになったものの、友達との付き合いを制限され鬱屈した日々の乃里子が痛々しい。
『言い寄る』の快活さがなくなった彼女を救った中杉氏が
いい味出してますね。
私も緊(しば)られるのが嫌いなので何だか彼女の気持ちがわかるような気がしました。
結局剛も「子供作れ」言うしな…。
田辺さんは女の本音を描くのが上手と思いました。
Posted by ブクログ
結婚して三年。独身のときのようにあちこちで恋はうまれないし、昔の男と再会しても心の動きはあの頃のようにはいかない。決定的な何かがあるわけではないが、ただ日常のなかで変化していくものがある。「だましだまし」の行く末を見届けて、ああ……と項垂れてしまった。
Posted by ブクログ
バブル期の関西の金持ちの暮らしが随所に書かれて、旅行とは違った気分にさせてくれた。
六甲の別荘で山の空気と静けさを堪能しながらの食事。デパートの外商との買い物。関西の古い邸宅の様子などなど。。
物語についてだが、剛の家の人間はいけすかない人間で、彼らと心からの交流ができず、距離をとることで心を落ち着かせる乃里子。
剛とのイチャイチャが唯一心を解放する場所だったが、物語が進むにつれ段々疲れ、最終的に剛から家のこともやれと言われることで、それもできなくなった。
その後、自分の気持ちに正直な乃里子が印象的
私的生活を犠牲にして剛の家に合わせることもできたのに、離婚したことので。
剛も自分の気持ちに正直でのびのびしてる乃里子が好きだから離婚をしたんだろうか。
金銭を理由に乃里子と離婚しないこともできたんだから。
Posted by ブクログ
「言い寄る」に続く2作目
今回も田辺聖子さんの書き方が惚れ惚れしながら読み終えた!
2作とも物語の終わらせ方が好き。
全てを明るみにして、「こうなりました!」と終わるんじゃなくて、「おそらくこうなるだろうな」の印象だけ与えて、あとは読者の考えにおまかせする感じ。
だから、それまでの思い出や出来事が綺麗なまま終えれるような気がした。
剛も乃里子も素敵な所は多いけど、恋愛難し。
お金持ちって大変ねとおもった。
ただ剛も乃里子もやっぱり根は浮ついてるもの同士なんだろと思った。
乃里子は前作で、顔をベコベコに殴られたのに関わらず、いつもふわふわしてて面白いまである。
だけど、乃里子が男女問わずそれぞれの人に抱く印象の捉え方はすごく好きだし、共感出来た。
次作どうなるかとても楽しみ!!
Posted by ブクログ
あまりにも生々しく、あとがきの筆者の言葉を借りれば苦瓜のような後味が残る小説。
剛との生活の中で少しずつ自分を削り取られてすっかり空っぽになってしまった乃里子が自分を取り戻す為にした決断にエールを送りたい。
Posted by ブクログ
2022.08.21
予定終了。
結婚してないけど、色々考えさせられる気がした。
役者になって、今の人と結婚に持って行くこともできる。けどその気になれない。違うけどちょっと通ずる所を感じた。
今役者になって耐えたら、死ぬ時にはよかったって思える人生になる可能性もあるもんね。
叶姉妹の真珠のネックレスのパールを一粒ずつ捨てている時と同じ状況かも。
Posted by ブクログ
読み終わるのにえらく時間がかかりましたが、田辺聖子さんの3部作の2冊目です。
毎月1冊だけ購入するマイルールの今月の本です。
乃里子の結婚生活が書かれています。
いちゃついている結婚生活が特に大きな事件が起こって壊れるのでもなく、少しずつ何かがかわってきてしまう。
その辺がとてもリアルに感じられました。
3冊目も乃里子のその後を知りたいので、追いかけます。
Posted by ブクログ
センスの良い人が読んでる本を読みたくなるので、お友達のmさんが読んでた本を予備知識なしで読む。
読み終わってから3部作の2作目と知る…でもそう感じないくらい登場人物の描写がわかりやすかった。
古い小説なので、出てくるものがバブリーだったり、その中で生活する主人公たちも昔の映画を観てるような感覚で読んだ。
逆行するけど、1作目で少し前の乃里子と剛をこれから読めるのも楽しみ。
Posted by ブクログ
確かに、夫婦の会話の中で、それを言ったらお終いよ…ということはある。相手にも自分にもだましだましでないと長い婚姻関係は続けられないものね。
人生いろいろあるよね。
今後の乃里子の生き方が楽しみ。
Posted by ブクログ
言い寄る→苺をつぶしながら→私的生活
って順番間違えて読んだけど
おもしろかったーせつないー
最後の方、だんだんのりこが変わっていく感じ
切ないー ごうー
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文章が面白い。主人公のりこの心境が()で挿入されてるのとか、新鮮でおもしろい。
古本屋で買ってきて読み終わって、初版が1981年って分かってびっくり。男と女っていうテーマはいつの時代もあって、いつの時代もおんなじようなことを悩んでるんだなって。
のりこは奔放な女性のはずなのに、剛のご機嫌とりもするし、言いたいことも言わない。自分の意思で尽くしてるのに、相手のことを小馬鹿にする。やってることと思ってることはアンバランスだけど、その矛盾に現実味がある。
私は、自分の手で、自分の城に火をつけてきたことなんか、むろん、言わない。剛を喜ばせてあげようということばかり考えてる。/私の私的生活は、みんな剛に吸収されてしまって、私自身の存在すらなく、剛の私的生活の一部分として私が僅かに生き残ってるだけだって。/人間はさびしいもので、共同生活者を求めながら、それでいてつねに、愛とプライドの重みを両手ではかって、苦しまずにいられない。
Posted by ブクログ
少しずつ少しずつ人は変わっていくのだなとおもった。ある日突然自分が変化していたことに気付き、今まで自分が収まっていた場所にはまらなくなってしまう。そうなったら環境を変えるか自分を変えるしかない。
Posted by ブクログ
乃里子は好きだけど、剛ちゃんと結婚するのはわからんな〜。男と女のことは当事者同士でないとわからないのか。
生活の描写が素敵。
乃里子が出来る中年男に魅かれてるのはすごいわかる!
Posted by ブクログ
☆4 水無瀬
「乃里子三部作」第二作。結婚中。『苺をつぶしながら』の評価が高いが私はこれがいっとう好き。自分らしく在ることを一切諦めないのだ、素敵だ。お金の使いっぷりも素敵。
☆4 容
寄り添うことと侵食すること、分かち合うことと押し入ること、の、違いに心を配らなければ共に生きることは難しい。それでも男は我儘で可愛く女も奔放で愛らしい。結婚しよかなと思ったら一度読むべき。
Posted by ブクログ
自由奔放な主人公と思いきや、結婚してみると貞操観念をしっかり守り、旦那の機嫌も取るわ、家族とも上手くやり出すわ……
でも、フラストレーションの溜まりすぎなのか最終的には。。。
個人的には序盤に出てきた動物園のボス猿の話が後半に効いてくる感じがたまらなく良くて笑った。
後、自由奔放な人ほど嫁や婿に入ると家庭的になるっていうのは今も昔も同じように感じた
Posted by ブクログ
1976(昭和51)年作。
「乃理子三部作」の、『言い寄る』に続く2作目。
1作目ラストでの失恋のあと、お金持ちで遊び好きのチャラチャラした「剛」と結婚し、それなりに楽しそうに暮らしている。
前作同様に、要所要所で繊細だがかなり「ユルい」文体でどんどん進む。
最後にいたってどうやら剛との結婚生活は破綻に至るようなのだが、離婚を決意する主人公の心理はわかるようでわからないところもある。女性が読んだら共感するのかもしれないが、一般的な男性はやはり首をかしげるかもしれない。
さて再び独身となった乃理子はどうなるのか。そして、彼女は自らの人生のなりゆきにどのような意味と物語を見出していくのだろうか。
Posted by ブクログ
楽観的な主人公とか、あんまり好みじゃない。
と思いつつ、読後は乃里子シリーズぽちりました。
安定に、明るくおもしろい。
乃里子さん自分にはないもの持っててなんか惹かれました。
Posted by ブクログ
にがい。
作中に出てきた、ブリジットバルドーの言葉
しあわせに生きるためには、こっそり一人で生きることだ、
に尽きる話だと思う。
夫婦って、二人三脚で生きていくのが理想なんだろうけれど
それぞれ違う世界をどこかに持っていないと、
色々なことを許せなくなっていく。
許せなくなると、
だんだん、リズムが合わなくなって
二人では歩けなくなる。