呉勝浩のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
そう遠くない近未来を描いたSF小説。
本書に登場する最新技術や食べ物、睡眠時周波学習などは便利だろうと思う一方で、ICチップによる人間管理には非常に強い恐怖を感じた。
科学の進歩と人間の在り方を問われているようにも思えた。
本書の主人公・堤下与太郎は、特殊能力やリーダー的資質を備えているわけではなく、非常に平凡な男。彼は些細なきっかけから世界規模の陰謀に巻き込まれていく。次々と展開が変化し、読者も振り回されるような構成になっている。
しかし、本書で惜しいと感じた点もあった。主人公が命をかけて挑むゲームの設定や登場キャラクターが、全体的に非常にわかりにくい。本来なら手に汗握る展開であるはずだが、ゲーム内での緊張感は十分に伝わってこなかった。
それでもゲーム部分を除けば、近未来の設定には驚かされる点が多かった。近未来でありながら電力問題を持ってくる視点には驚かされた。なかでも本文にあった「賢さが、むしろ愚かさを増幅させる時代」というフレーズは強く印象に残り、今後ますます便利になる社会への警鐘のようだと感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ近未来SFが難しいのは、世界設定をある程度自由にできる反面、「この出来事は本当に起こりうる」と読者が納得するための足場が弱くなりやすい点です。現実を舞台にしたサスペンスが持つ緊迫感は、制度や常識という“枠”があるからこそ成立します。
『爆弾』シリーズは警察組織や裁判所という枠組みがあり、現代の東京という舞台があることで、緊張感がありました。『アトミック・ブレイバー』では、格闘ゲーム《アトミック・ブレイバー5》を物語の中枢に据え、平凡なサラリーマン・堤下与太郎がゲームを攻略して世界を救えるのか、というストーリーは格闘ゲーム愛好家には面白いのかもしれません。
しかしながら、堤下与太郎の争奪を繰り広げる、万能のようにも見える国家機関「平和安全庁」とそれに対する「神國立命會」と「ウリヨラ教」の使える力の差があまりに大きく、それを解消する道筋が丁寧に描かれていないことで、説得力が薄れてしまいました。
例えば、「ウリヨラ教」が与太郎を「平和安全庁」から奪取する蒲田の民家の場面。デリバリー業者が訪ねてきてこの場面で普通玄関を開けるだろうか?また、厳重な警戒の「平和安全庁」の施設に「神國立命會」はどうやって侵入し、どうやって脱出したのか?気にならない人は気にならないのかもしれませんが、ゲームのルールなど論理性が大事な小説の中で、どうやって与太郎を奪取するか、という現実ベースのかなり難易度の高いゲームでそこをスルーされてしまっては興趣が削がれました。
「平凡なサラリーマン・堤下与太郎がゲームを攻略して世界を救えるのか」という設定自体は面白いと思いますが、現実世界の動きがやや「ご都合主義」で引っかかるところがありました。
「爆弾3」に期待します。 -
Posted by ブクログ
ネタバレスワン、爆弾ときて、次はどんなドンパチかと思えば なんと格ゲー(格闘技ゲーム)。ミステリー感もなく、警察との駆け引きもなく、ただただ格ゲー。好きな人にはささるかも。設定以外は誉めるところなし。これカテゴリーはSFなのかもしれないけど、格ゲーなので現代文学ということで。
設定:小型核爆弾が新宿や欧州各都市で爆発して、犯人は判らず、人類は他民族を信じられずに排外主義に陥った世界感。チップを耳や手に埋め込む人が大多数で、個人のモニターが政府によってされても仕方がないという世界感。さらに個人の暴走をモニターするために、脳内の配線を書き換えて人を殺すことをできなくする(ただし特権階級は除く)というプロジェクト。これを阻止する役目を与えられたのが我らが堤下与太郎。
近未来テクノロジーは簡単に地球を破滅させられる力を誰にでも与えることが可能。一部の暴徒による地球の破滅を防ぐには、各人のプライバシーの制限や禁忌事項の強制もやむなし という考え方は わかる気もする。法の支配に変わるテクノロジーによる世界が 未来には必然なのかも。特権階級の例外なしでお願いします。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ導入では惹きつけられたが結末は尻窄み感を感じた。目撃者の切り崩し、人の記憶の曖昧さみたいなのが徐々にわかっていくのは良かったのだけど、越智さんの正体をなんとなく察したあたりがピークだったかなと。越智さんのお兄さんの動機も、結局社会的に弱かった人が社会でやっていくためにはどんな手を使ってもお金を作ることが重要なのは現実的だけれど。誰もが認めるいい先生たちが、影では道徳に外れていて、そこらへんの乖離とかはすごく良かったけど、それに対する復讐とお金の作り方が少し短絡的に思えてしまった。
一つ読み飛ばしてしまったのかもなのだけど。おじいさんが自殺した現場の道徳の時間です、というメッセージ。書いた人がわかった時に道徳という言葉がここで出てくるのが少し不自然?あまりに偶然が過ぎるというか、小説の都合上と感じたというか。他を模倣したにしても、あの場面で道徳と書けるか。他の授業だったら何になるかと聞かれても困るけど。書いた子たちは道徳の問題だと言った犯人の台本は読んでいたけど、その事件自体のことは知らなかったのではないかと思って。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ・あらすじ
「村瀬梓を預かっている。すぐに警察に通報しないと村瀬は死ぬ事になる」という電話が村瀬梓がアルバイトとして勤務しているコールセンターに届く。
また犯人は同時に村瀬梓が所属する芸能事務所には1億円を、警察には100人の人間を用意させていた。
犯人の目的はなんなのか?村瀬梓は無事に帰って来れるのか。
・感想
コールセンターへの電話や100人の警察官をSNSを使って翻弄するとか芸能事務所社長の怪しい過去とか色々思わせぶりで一つ一つの要素はワクワクしたんだけど…最終形態は「なんだか色々勿体無い…」が1番の感想かな。
呉先生の創作手法的に仕方ないかもだけどーー。
でも呉先生が作品に込めるテーマって分かりやすく伝わってくる。
解説でもある通りに今回のテーマは「贖罪」「罪と罰」なんだろう。
室戸とか正体不明の復讐者という立ち位置だった序盤から、かなり失速してしまったけど。
コールセンターのシステムを使ってのトリックはやっぱり呉先生がそこで働いてた経験があるから考えついたんだろうな。
知らない業種のお仕事小説としても興味深かった。