伊東潤のレビュー一覧
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本のタイトル「鋼鉄の城塞」の名の通り、戦艦大和は、まさに鉄でできたお城。日本の造船技術の総力を結集して造り上げた最強の戦艦でした。
しかし、昭和20年4月7日14時23分、沖縄海上特攻作戦の途上、坊ノ岬沖で米軍戦闘機の激しい爆撃を受け、海に沈みました。前途ある三千人余の若者たちの夢や希望とともに・・・
この本は、大和を作る技師たちにスポットをあてて描かれています。CGもAIもない時代に、数cmの誤差も許されない現場の技術者たちの努力・能力に、驚くばかりでした。主人公の占部健はじめ多くは架空の人物が中心ですが、山本五十六など実在の人物も登場しました。そして、占部健を慕う池田武邦(実在の人物 -
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ネタバレ【鋼鉄の城塞】 伊東 潤 著
戦艦「大和」の建造ストーリーで、ほぼ一気読みコースでした。『戦艦大和ノ最期』やレイテ海戦などは多数出版されていますが、大和建造の物語はあまりないのではないでしょうか(と、思ったら、巻末の「参考文献」には結構あげられていました)。
著者は本当によく調べていて、戦艦の建造、特に大和のように極秘レベルでの建造が如何に難しく大変なことかがよくわかりました。「ワシントン条約~ロンドン条約」で戦艦の数が制限されるなか、ひとつの戦艦の装備を如何に充実させて対抗するかの苦闘が書かれています。
前半は技術者としての苦闘を、後半ではロマンス、ミステリーを織り交ぜての進行( -
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父が残した秘伝書を抱え、加藤清正のもとで難攻不落の城造りに挑む藤九郎の一代記。
「城とは、戦をせぬための道具だ」
鬼と呼ばれた清正の、「戦は嫌いだ」という本音と、そのために堅固な城を築くのだという意思が、この一言に凝縮されている。
無理と分かっていながら無理難題を提示する清正と、無理と思いながらも無理とは言わずその期待に全力で応えようとする藤九郎。藤九郎を慕い信頼して支えていこうとする人々。それぞれが熱く尊い。
随所に惜しみなく描き込まれる築城のノウハウがまたとても興味深く、読み進めながらも知りたい!調べたい!と、探究欲が刺激される。
今すぐ『城めぐり』に出発したくなる一冊。 -
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あまりにも切ない物語。
見てきたように語れる著者の作品の中でにあっても、際立つ白眉だ。
「愚挙」「捨て石」といわれる水戸天狗党の挙兵。
悲惨すぎる末路へと、物語は冷酷に進んでいく。
しかしたとえ結果的に愚かな行為だったとしても、そこには生きている人たちがいて、信頼関係を築き、見えない未来に向けて熱い想いを燃やしていたのだ。
著者はそれぞれの思惑を、またそれぞれにやむにやまれぬ背景を、丁寧に説いていく。したがい読み手は、登場人物たちとの信頼関係に巻き込まれてしまう。
何度、この本を中途で閉じたことだろう。
未来を知るとは、これほどつらいものなのか。
できれば、彼らが幸せな段階で時が止まっ -
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信長、秀吉の影として、政治や武士社会において茶の湯を使って様々な利害調整をした男、千利休。当時茶の湯が無事にとってなくてはならない存在であったことが理解できた。茶の湯は、荒ぶる武士の心を鎮めるとともに、茶道具の価値を高めて富を得るために信長によって利用された。利休の立ち振る舞いや、秀吉との駆け引きなど、当時も今も相手の数手先を読むことの難しさや、武士社会の理不尽さをまじまじと感じさせられた。
個人的に面白いと感じたのは、利休と丿貫(へちかん)、前者は世のためにあらゆることを犠牲にし、後者は茶の湯そのものを極めることを生きがいにした男、対極のような人生だが、どちらの生き方が幸せだったのか、その